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新設住宅・非住宅の着工統計|持家・貸家・分譲・床面積の推移と内訳【2026年版】

日本の新設住宅着工戸数は、2024年に81.6万戸となり、2002年の114.6万戸から22年で約29%縮小しました。利用関係別では持家・貸家・分譲の3区分が中核で、人口減・世帯減・住宅取得者層の縮小が長期減少の構造要因です。建築着工床面積も同期間で縮小傾向にあり、2024年で住宅65.7百万m²、非住宅38.7百万m²と2010年代前半の水準から低下しています。一方で建設投資金額は単価上昇で拡大しており、物量と金額の乖離が直近10年の構造的特徴です。本ページでは住宅・非住宅の利用形態別動向と背景を整理します。

2024年 新設住宅着工
81.6万戸
持家22.3 / 貸家35.7 / 分譲22.9万戸
出典: 日建連chart5-2 (国交省 建築着工統計)
2002→2024縮小
-29%
114.6万戸 → 81.6万戸
出典: CREX算出
2024年 非住宅床面積
39百万m²
住宅65.71百万m² / 構成比37.09% (非住宅)
出典: 日建連chart5-2

新設住宅着工戸数の推移(2002-2024)

単位: 千戸
03757501,1251,5001,146021,2490581910921158122081624
出典: 国土交通省 建築着工統計調査 (新設住宅着工戸数、2002-2024年)
年度20022003200420052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024
千戸1145.601173.601,1931,2491,2851,0361,039775819841893987880921974946.40952.90883.70812.20865.90860.80800.20816
前年比
読み解き

新設住宅着工戸数は2002年の114.6万戸から2024年の81.6万戸へ、22年で約29% 縮小しました。リーマン・ショック後の2009年に77.5万戸まで急減し、アベノミクスと低金利・住宅ローン減税で90万戸台まで回復した時期もありましたが、2020年以降は再び80万戸前後で推移。直近2024年は前年比 +2.0%(80.0 → 81.6万戸)の小幅回復に留まりました。

長期縮小の最大要因は人口減少と世帯数の頭打ちで、生産年齢人口の減少に伴い住宅取得者層(30-49歳)が構造的に縮小していることが背景。建築コスト上昇(資材費・労務費)と住宅ローン金利の上昇懸念も取得意欲を抑制し、中長期では70-80万戸の水準が定着する可能性が高い見通しです。

住宅着工の利用関係別動向

持家・貸家・分譲・給与住宅

持家 — 22.3万戸(注文住宅)

概要

持家は施主が自ら居住する目的で取得する注文住宅・建売住宅で、住宅メーカー(積水ハウス・大和ハウス・住友林業・パナソニック ホームズ・ヘーベルハウス等)と地場の工務店が主要プレイヤー。2024年の持家着工は22.3万戸(前年比 +1.6%、2023年21.96万戸→ 2024年22.31万戸)で、ピーク時(2000年代前半)の36-37万戸から約4割減少しています。

動向

住宅取得層(30-49歳)の縮小、注文住宅の単価上昇(建築費の急上昇)、建売住宅・中古住宅へのシフトが減少要因。フラット35等の住宅ローン利用は底堅い一方、変動金利の上昇懸念と建材・労務費の高騰で取得意欲が抑制される構図です。

背景・要因

(1)住宅取得者層の人口減、(2)首都圏では地価高騰で持家取得が困難化、(3)ライフスタイル多様化(賃貸志向・コンパクト住宅志向)、(4)ZEH(ゼロエネルギーハウス)対応コストの上昇、の4要因。住宅メーカー各社は単価上昇を受け入れる富裕層・高仕様志向の顧客にターゲットを絞り、収益性確保を重視する戦略にシフトしています。

貸家 — 35.7万戸(賃貸住宅・アパート)

概要

貸家は賃貸住宅として建設される住宅で、賃貸住宅専門会社(大東建託・東建コーポレーション・レオパレス21等)と地場の不動産会社・建設会社が主要プレイヤー。2024年の貸家着工は35.7万戸(前年比 +4.8%、2023年34.04 → 2024年35.69万戸)で、3区分の中で最大の比重を占めます。

動向

低金利環境下での相続税対策・節税目的の貸家建設が長期的に貸家着工を押し上げてきました。直近では金利上昇と建築コスト高騰でこの動きが減速しているものの、貸家は持家・分譲より柔軟に建設可能で、需要の地域性に応じた供給が継続。サブリース問題(家賃保証契約の解約・減額トラブル)以降は契約条件の透明化が進んでいます。

背景・要因

(1)相続税対策と土地活用ニーズの継続性、(2)単身世帯・高齢世帯の賃貸ニーズ拡大、(3)地方での空き家リスク回避としての中規模アパート供給、(4)外国人居住者・インバウンド向け宿泊施設への転用機会、の4要因。中長期では地域の人口動態と需給バランスに応じた建設が定着し、ピーク時より絞られた水準で推移する見通しです。

分譲 — 22.9万戸(マンション・建売戸建)

概要

分譲は分譲マンションと建売戸建住宅の合計で、不動産ディベロッパー(三井不動産・三菱地所・住友不動産・東急不動産・野村不動産等)と建売住宅メーカー(飯田グループHD・オープンハウス等)が主要プレイヤー。2024年の分譲着工は22.9万戸(前年比 -2.4%、2023年23.50 → 2024年22.94万戸)です。

動向

首都圏マンションは価格高騰(2024年新築マンション平均価格8,000万円超、過去最高水準)で実需層の取得が困難化する一方、富裕層・投資層の需要が継続。建売戸建は飯田グループHD・オープンハウス等の大手が首都圏・関西圏で大量供給を維持。長谷工コーポレーション(マンション建築国内首位)は分譲マンションの供給支援で重要な役割を担います。

背景・要因

(1)建築費高騰によるマンション販売価格の上昇、(2)共働き世帯の都心志向(職住近接ニーズ)、(3)建売戸建の地方拠点拡大、(4)投資用区分マンション・地方マンション市場の縮小、の4要因。中長期では首都圏・関西圏の都心マンション市場と地方の建売市場の二極化が進み、地方の分譲マンション供給は構造的に縮小する見通しです。

給与住宅 — 6.6千戸(社宅・寮)

概要

給与住宅は企業が従業員向けに供給する社宅・寮で、4区分の中で最も規模が小さい区分。2024年の給与住宅着工は6,606戸(前年比 +29.1%、2023年5,118 → 2024年6,606戸)と一時的な増加を示しましたが、長期的には企業の福利厚生政策の見直しに伴い縮小傾向です。

動向

大企業の社宅縮小(賃貸物件の借り上げ・住宅手当への切り替え)が継続し、給与住宅としての新設着工は限定的。一方、製造業の工場新設に伴う寮・宿舎の建設や、半導体・データセンター関連の地方工場立地に伴う従業員向け宿舎需要は局所的に発生しています。

背景・要因

(1)企業の福利厚生コスト削減、(2)従業員の住居選択の自由度尊重、(3)社宅制度の老朽化(既存社宅の処分・建替の少なさ)、の3要因。中長期では給与住宅の新設は限定的に推移し、住宅着工全体への影響は小さい構造です。

建築着工床面積の推移:住宅vs非住宅(2002-2024)

単位: 万m²
住宅非住宅
05,00010,00015,00020,00017,10302030418,600050607080912,200101112131413,000151617181911,4302021222310,44524
出典: 国土交通省 建築着工統計調査 (床面積、住宅 + 非住宅、2002-2024年)
年度20022003200420052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024
住宅万m²11,01411,17811,20811,40011,6009,3009,2007,2007,8008,0008,3009,2007,8008,0008,3008,0008,0067,6956,9387,4417,1826,5526,571
非住宅万m²6,0896,4757,0707,2007,2006,4005,9004,1004,4004,7005,2005,6005,3005,0005,1005,3005,1024,7984,4924,8064,6904,2793,874
合計(万m²17,10317,65318,27818,60018,80015,70015,10011,30012,20012,70013,50014,80013,10013,00013,40013,30013,10812,49311,43012,24711,87210,83110,445
前年比+3.2%+3.5%+1.8%+1.1%-16.5%-3.8%-25.2%+8.0%+4.1%+6.3%+9.6%-11.5%-0.8%+3.1%-0.7%-1.4%-4.7%-8.5%+7.1%-3.1%-8.8%-3.6%
読み解き

建築着工床面積(住宅 + 非住宅)は2002年の17,103万m² から2024年の10,445万m² へ -39% 縮小しました。住宅着工床面積は2002年11,014万m² → 2024年6,571万m² へ -40%、非住宅着工床面積は同期間で6,089万m² → 3,874万m² へ -36% 縮小と、両者ともに長期で縮小傾向にあります。直近10年に絞ると、2014年(住宅7,800万m² / 非住宅5,300万m²)と比べても2024年は住宅 -16% / 非住宅 -27% の縮小です。

物量の縮小と対照的に、建設投資(金額)は2014年47.5兆円 → 2025年75.6兆円へ拡大しています。乖離の主因は、資材費・労務費の上昇、物流倉庫・データセンター・半導体工場など単価の高い大型案件の増加、再開発に伴うハイグレード建築の比重拡大、の3点。物量(床面積)と金額の乖離が直近10年の構造的特徴で、建設業界の質的変化(少量・高単価へのシフト)を示しています。

非住宅着工床面積の用途別推移(2002-2024)

単位: 百万m²
倉庫工場事務所店舗学校病院
01530456042.102030451.3050607080930101112131435.61516171819322021222329.624
出典: 国土交通省 建築着工統計調査 (非住宅、用途別床面積、2002-2024年)
年度20022003200420052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024
倉庫百万m²6.807.307.909.101087.704.104.405.506.5078.208.108.709.908.801011.9013.4012.8011.8010.40
工場百万m²8.809.9013.5014.2015.5012.1012.705.506.507.308.5087.708.908.309.2010.107.705.907.208.707.306.70
事務所百万m²6.807.608.107.807.907.408.607.105.505.806.106.306.206.106.706.706.106.506.107.6066.205.30
店舗百万m²10.4010.6011.4012.5011.30138.305.505.705.207.408.407.106.105.605.505.204.204.104.204.303.603.80
学校百万m²4.904.604.304.704.103.8044.304.404.404.604.804.203.703.102.302.502.302.201.902.5022.20
病院百万m²4.403.903.703332.302.303.504.603.704.203.402.702.802.101.602.101.802.101.901.401.20
合計(百万m²42.1043.9048.9051.3051.8047.3043.6028.803032.8036.8038.7036.8035.6035.2035.7034.3032.803236.4036.2032.3029.60
前年比+4.3%+11.4%+4.9%+1.0%-8.7%-7.8%-33.9%+4.2%+9.3%+12.2%+5.2%-4.9%-3.3%-1.1%+1.4%-3.9%-4.4%-2.4%+13.8%-0.5%-10.8%-8.4%
読み解き

2024年の非住宅着工床面積(用途別)は、倉庫10.4 / 工場6.7 / 事務所5.3 / 店舗3.8 / 学校2.2 / 病院1.2(百万m²)。直近で最大は倉庫だが、2021年のピーク(13.4百万m²)から-23% 縮小しています。

長期トレンドを見ると、店舗(2003年10.6 → 2024年3.8、約 -64%)・工場(2005年14.2 → 2024年6.7、約 -53%)・学校・病院 はいずれも構造的に縮小、事務所も2018年以降ジリ貧。EC拡大とデータセンター需要を背景に倉庫だけが2010年代後半に急拡大して2021年にピークを付けたが、2022年以降の金利上昇局面で頭打ち。非住宅 = 倉庫 一本足打法という偏った構造が、用途別データから明確に読み取れます。

非住宅着工の用途別動向

事務所・店舗・工場・倉庫・その他

倉庫 — 2021年ピーク後はやや縮小(2024年10.4百万m²)

概要

非住宅の中で最大の用途が倉庫で、2024年の倉庫着工床面積は10.4百万m²。ピークは2021年(13.4百万m²)で、2024年は ピーク比-23% とやや縮小。EC拡大に伴う物流倉庫の大型化、生成AI・クラウド需要を背景としたデータセンター新設が中核要因として2010年代後半から急拡大した一方、2022年以降は金利上昇と既存物流施設の供給過剰懸念で着工ペースが鈍化しています。

動向

首都圏・関西圏・中部圏の湾岸エリア・高速道路IC周辺で大型物流倉庫が継続的に着工。三井不動産・三菱地所・GLP・プロロジス等の物流不動産大手が大規模物流施設を開発。データセンターはAWS・Microsoft Azure・Google Cloudのハイパースケーラー需要が中核で、首都圏 + 北海道(千歳)・西日本での新設立地が進行中です。

背景・要因

長期需要を支える要因は、(1)EC化率の継続上昇、(2)3PL(物流アウトソーシング)市場の拡大、(3)生成AI・データセンター需要、(4)倉庫の大型化・自動化(マテハン・WMS連動)、の4点。直近の調整要因は、(5)金利上昇と建設コスト高騰、(6)首都圏湾岸の供給過剰、(7)テナント獲得期間の長期化、の3点。スーパーゼネコン4社(特に鹿島の米国Core5)は北米物流倉庫開発で収益基盤を確保しつつ、国内では選別的受注に移行しています。

工場 — 2005年ピークから半減水準(2024年6.7百万m²)

概要

工場用途の着工床面積は、2006年の15.5百万m² ピークから2024年の6.7百万m² へ ピーク比-57% と長期で大きく縮小。背景は製造業の海外移転と国内生産能力の縮小が長期トレンドで、近年の半導体・EV関連の国内立地は局所的な下支えに留まっています。

動向

TSMC熊本工場(JASM)、ラピダス千歳工場、キオクシア四日市・北上工場の増設、東京エレクトロン・ディスコ等の半導体製造装置メーカーの工場拡大が進行中。自動車関連ではトヨタ・デンソー・アイシン系のEV関連工場、電池工場(パナソニック・トヨタ・本田技研)の新設が続いています。これらは地域・業種の集中型大型案件で、全体床面積を押し戻すほどの規模感ではないものの、単価が高くスーパーゼネコン・準ゼネコンの収益貢献は大きい構造です。

背景・要因

長期縮小の主因は、(1)バブル後の製造業海外移転(中国・東南アジア)、(2)国内生産能力の構造的縮小、(3)老朽化工場の建替よりも統廃合・縮小、の3点。直近の支え要因は、(4)米中対立を背景とする半導体サプライチェーンの国内回帰、(5)政府の半導体支援策(4兆円規模)、(6)EVシフトに伴う電池・モーター工場の国内立地、(7)円安と人件費コスト見直しによる国内製造の合理性、の4点。中長期で工場用途は半導体・EV関連で局所的に底堅く推移するものの、ピーク水準への回帰は見込みにくい構図です。

事務所・店舗 — 都心再開発と用途変更で再構築

概要

事務所・店舗用途は、都心再開発(虎ノ門・八重洲・渋谷・大手町・品川)の大型案件で着工が継続する一方、ハイブリッドワーク定着でオフィス需要構造が変化。既存オフィスの用途変更(ホテル・住宅)も並行して進行しています。

動向

2024年以降の都心オフィス完成ラッシュ(虎ノ門ヒルズ・八重洲再開発・渋谷再開発・麻布台ヒルズ等)で大型案件が竣工。一方、空室率は緩やかに改善基調で、ハイグレードオフィスへの需要集中が顕著。商業・ホテル・MICE施設の併設が増え、複合用途の再開発が主流となっています。

背景・要因

(1)ハイブリッドワークでオフィス需要が構造的に変化、(2)都心再開発の継続的進行、(3)インバウンド需要回復によるホテル建設、(4)既存ビルの用途変更(オフィス → ホテル・住宅)、の4要因。中長期では事務所単独より複合用途の再開発が主流となる見通しです。

その他 — 学校・病院・公営住宅・宿舎

概要

その他の非住宅用途には、学校・病院・公営住宅・宿舎・福祉施設等が含まれ、公共発注の比重が高い構造。2024年も継続的な着工が見られ、公共投資の維持と老朽化施設の更新が需要源です。

動向

文部科学省の「学校施設の長寿命化計画」(平成29年策定)に基づき、改築から長寿命化改修への転換が進行。病院は医療法改正と地域医療構想に基づく再編で、統合・新設・建替が並行進行中。公営住宅は地方自治体の財政制約で新設が限定的な一方、長寿命化改修・建替が進んでいます。

背景・要因

(1)公共施設の高度経済成長期老朽化(1970-1980年代整備分の更新期)、(2)地方自治体の財政制約と長寿命化改修への転換、(3)病院再編・地域医療構想の進展、(4)福祉施設・介護施設の高齢化対応、の4要因。中長期で公共発注の安定的な需要源として機能する見通しです。

主要論点

なぜ新設住宅着工は長期で縮小しているのか?

新設住宅着工戸数は2002年の114.6万戸から2024年の81.6万戸へと22年で約29% 縮小しました(日建連chart5-2ベース、2002年以前は別ソース)。減少要因は4つに整理できます。

第1に 人口減少と世帯数の頭打ち。生産年齢人口(15-64歳)は1995年ピークから2024年へと長期で減少傾向にあり、住宅取得者層(30-49歳)は人口の中でも特に減少が進み、新設住宅需要の構造的縮小につながっています。世帯数は単身世帯増加で総数は維持されているものの、家族世帯(持家取得層)は構造的に縮小しています。第2に 住宅ストックの飽和。総務省 住宅・土地統計調査ベースで空き家率は長期的に上昇傾向にあり、既存住宅ストックの活用が新設需要を抑制する要因として作用しています。

第3に 建築コスト上昇。2020年以降の資材費・労務費の急上昇で、注文住宅・分譲マンションの単価が大幅に上昇し、住宅取得層の購入余力を圧迫。住宅ローン金利の上昇懸念も加わり、取得意欲が抑制されています。第4に ライフスタイル多様化。共働き世帯の都心志向(職住近接)、単身世帯の賃貸選好、若年層の住宅取得意欲低下等で、持家志向そのものが弱まっています。中長期では70-85万戸の水準が定着する可能性が高く、新設住宅市場は構造的縮小フェーズに入った状態と整理できます。

物量と金額の乖離はなぜ起きているのか?

建築着工床面積(物量)は長期で縮小しています。住宅 + 非住宅の合計は2002年17,103万m² → 2024年10,445万m² へ -39%。一方、建設投資(金額)は2014年47.5兆円 → 2025年75.6兆円へ +59% 拡大しました。物量と金額の方向感が真逆という乖離が直近10年の構造的特徴で、要因は3点に整理できます。

第1に 資材費・労務費の急上昇。2020年以降のセメント・鉄鋼・木材などの資材価格上昇、2024年問題(時間外労働上限規制)に伴う労務費上昇が、単位m² あたりの建設コストを押し上げました。同じ床面積でも建設投資額は数十%増になる構造です。第2に 大型・高単価案件の比重拡大。物流倉庫・データセンター・半導体工場・再開発のオフィス・ホテルなど、単位m² あたりのコストが高い案件が増加。例えばデータセンターは一般オフィスの数倍の建設単価で、床面積が増えなくても投資総額を押し上げます。

第3に 既存建物のリニューアル拡大。新設の床面積は減っても、既存建物の維持修繕・改修工事が拡大しており、これらは床面積カウント外で投資額のみを押し上げます(2023年の維持修繕は28.8兆円規模)。建設業界は「物量を稼ぐ業界」から「単価と複雑性で稼ぐ業界」へと質的に変化しており、業界全体の戦略軸(少量・高単価・複雑案件への対応力)も同方向にシフトしています。

住宅・非住宅の動向は建設業界にどう影響するか?

物量縮小と金額拡大の乖離、住宅 / 非住宅 双方の床面積縮小は、建設業界の各プレイヤーにそれぞれ異なる影響を及ぼします。3つの軸で整理できます。

第1に スーパーゼネコン4社への影響。大型非住宅案件(データセンター・物流倉庫・半導体工場・再開発)の獲得力がスーパー4社の競争力の中核。床面積ベースで非住宅全体は縮小しているものの、単価が高い大型案件の獲得は収益貢献に直結。鹿島の米国Core5(流通倉庫開発)、大成のTAISEI VISION 2030(次世代建設)、大林の北米子会社(産業施設)、清水の都心再開発が、各社の収益軸として機能しています。

第2に 住宅メーカーへの影響。住宅市場縮小で住宅メーカー(積水ハウス・大和ハウス・住友林業・パナソニック ホームズ等)は単価上昇を受け入れる富裕層・高仕様志向の顧客にターゲットを絞り、収益性確保を重視する戦略にシフト。建売戸建大手(飯田グループHD・オープンハウス)は地方拠点拡大とコスト管理で対応し、長谷工はマンション建築の国内首位として分譲市場を支える役割を継続。第3に 地場ゼネコン・専門工事業者への影響。住宅着工減少と非住宅床面積縮小は地場ゼネコン・地元工務店の経営を圧迫する要因となるが、リフォーム市場の拡大と地方公共投資の維持が下支え。中長期では人口減・新設縮小に対応した中古住宅流通・リフォーム・既存改修への業務シフトが業界全体の方向感となります。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は住宅着工が80万戸前後で推移する見込みで、構造的縮小フェーズが継続。非住宅着工床面積は緩やかな縮小トレンドが続く一方、単価の高い物流倉庫・データセンター・半導体工場の比重拡大で、建設投資(金額)は75兆円台を維持する見通し。スーパーゼネコン4社の業績は大型非住宅案件の竣工サイクルに連動し、FY2026通期は揃って増益基調が確実視されます。住宅メーカーは単価上昇に対応した高仕様志向の顧客にシフトし、収益性確保を重視するスタンスが続きます。

中長期3-5年

2028-2030年は住宅着工がさらに縮小して70万戸台に定着する可能性が高い一方、非住宅は半導体・電池・データセンターの国内立地が床面積を一定程度下支え。住宅市場では中古住宅流通・リフォーム市場が新設縮小を補完する構造が定着し、業界全体は「新設からストック市場へ」のシフトを加速します。スーパーゼネコン4社の競争軸は、大型非住宅案件の獲得力 + 海外受注比率引き上げ + DXによる省人化、の3軸に集約される見通し。

関連業界への波及

物量縮小と金額拡大の乖離は、住宅メーカー・建売住宅大手・地場工務店・物流不動産(GLP・プロロジス・三井不動産・三菱地所)・データセンター運営(AWS・Microsoft Azure・GCP)・半導体製造装置(東京エレクトロン・ディスコ)・電池メーカー(パナソニック・GSユアサ)・リフォーム専業(LIXIL・TOTO・住友林業ホームテック)まで広範に波及します。「少量・高単価・複雑案件」への業界全体のシフトは、産業横断的な需要構造変化として中長期テーマとなる見通しです。

よくある質問

日本の新設住宅着工戸数はどれくらいですか?
2024年の新設住宅着工は81.6万戸(前年比 +2.0%)です。日建連chart5-2ベースで2002年(114.6万戸)から22年で約29% 縮小しました。利用関係別では持家22.3万戸 / 貸家35.7万戸 / 分譲22.9万戸 / 給与住宅6,606戸の構成で、貸家が最大の比重を占めます。
なぜ新設住宅着工は長期で減少しているのですか?
減少要因は4つあります。(1)人口減少と住宅取得者層(30-49歳)の縮小、(2)住宅ストックの飽和(空き家率の長期上昇)、(3)建築コスト上昇(資材費・労務費)と住宅ローン金利上昇懸念、(4)ライフスタイル多様化(共働きの都心志向・単身賃貸選好)、の4要因が並列して効いています。
建築着工床面積と建設投資金額が乖離しているのはなぜですか?
建築着工床面積は2002年17,103万m² → 2024年10,445万m² へ -39% 縮小した一方、建設投資金額は2014年47.5兆円 → 2025年75.6兆円へ +59% 拡大しています。乖離要因は、(1)資材費・労務費の急上昇、(2)データセンター・物流倉庫など単価の高い大型案件の比重拡大、(3)既存建物の維持修繕・改修投資の拡大(2023年28.8兆円規模)、の3点です。建設業界は「物量から単価へ」と質的にシフトしています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本建設業連合会 建設業ハンドブックchart5-2
  2. 2.
    国土交通省 建設投資見通し
  3. 3.
    総務省 住宅・土地統計調査
  4. 4.
    経済産業省 半導体関連支援策
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