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建設業の維持修繕 リニューアル市場|新設と維持修繕の比率推移と背景【2026年版】

日本の建設投資に占める維持修繕すなわちリニューアル市場のシェアは、2001年の21%から2023年の32%まで+11pt拡大しました。金額ベースでも2023年は28.8兆円規模で、新設61.1兆円との比率は約1対2となっています。背景には高度経済成長期インフラの老朽化、人口減と新設需要の頭打ち、市区町村の技術系職員不足という3つの構造要因があり、業界の中長期方向感を左右する変化です。本ページでは公共・民間・建築・土木の4領域別に動向を整理します。

2023年 維持修繕
28.8兆円
出典: 日建連ハンドブック
維持修繕シェア
32%
2001年21% から +11pt
出典: 日建連chart5-1
公共の維持修繕比率
35.4%
民間30.9% より高い
出典: 日建連chart5-1

建設投資の推移:新設vs維持修繕(2001-2023)

単位: 兆円
新設維持修繕
0.0025.050.075.0100.066.60102030453.4050607080947.0101112131456.4151617181975.620212289.923
出典: 国土交通省 建設投資見通し (新設 + 維持修繕、2001-2023年度)
年度20012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020202120222023
新設兆円52.6049.5044.3043.5040.6040.1039.2038.603334.6032.7032.8037.4039.6040.604040.804355.8052.8054.2057.2061.10
維持修繕兆円1413.5013.2012.7012.8013.201313.2012.5012.4013.8014.3014.9015.3015.8015.5016.4016.8022.9022.8024.2025.3028.80
合計(兆円66.606357.5056.2053.4053.3052.2051.8045.504746.5047.1052.3054.9056.4055.5057.2059.8078.7075.6078.4082.5089.90
前年比-5.4%-8.7%-2.3%-5.0%-0.2%-2.1%-0.8%-12.2%+3.3%-1.1%+1.3%+11.0%+5.0%+2.7%-1.6%+3.1%+4.5%+31.6%-3.9%+3.7%+5.2%+9.0%
読み解き

新設投資は2001年の52.6兆円から2010年代前半の32-37兆円台まで縮小し、その後再開発・物流倉庫・工場建設の拡大と2019年からの民間建築補修計上拡大で2022年に57.2兆円まで戻りました。一方、維持修繕は2001年14.0兆円から2023年28.8兆円へと約2.1倍に拡大し、シェアは21% → 32% へ +11pt上昇しました。新設が景気・政策に左右されて変動するのに対し、維持修繕は構造要因(インフラ老朽化)に支えられて単調増加で推移している点が特徴です。

2023年は新設61.1兆円・維持修繕28.8兆円・合計90.0兆円規模で、過去22年で初めて維持修繕がシェア30% を超えました。背景には、高度経済成長期に集中整備されたインフラの老朽化(建設後50年以上経過する道路橋・トンネル・河川管理施設の割合が加速度的に増加)、新設住宅着工戸数の長期減少(1996年163万戸 → 2023年82万戸)、市区町村の4分の1で技術系職員未配置というメンテナンス人材不足、の3つが並列して効いています。なお2018→2019で総額が大きく跳ねるのは、2019年から民間建築補修が新規にカテゴリとして計上されたため。

維持修繕の4領域別動向

公共土木・公共建築・民間建築・民間住宅

公共土木 — 5か年加速化対策の中核、シェア35% 超

概要

公共土木の維持修繕は、道路・橋梁・トンネル・河川管理施設・上下水道・港湾等のインフラ更新が中心で、政府投資25.2兆円(2025年度)の重要な柱です。2023年の公共全体の維持修繕比率は35.4% で民間(30.9%)より高く、土木に絞るとさらに比率が上がる構造。発注者は国(国土交通省)と地方自治体で、入札中心の発注プロセスです。

動向

国土強靭化5か年加速化対策(2021-2025、約15兆円規模)でインフラ老朽化対策が重点分野に位置付けられ、政府投資の中核を占めています。建設後50年以上経過する道路橋は2023年で約39%、2033年に約63% に達する見通しで、予防保全型のインフラメンテナンスへの転換が進行中。令和7年6月策定の国土強靭化年次計画2025でも維持修繕は重点分野として継続されています。

背景・要因

高度経済成長期(1950-1970年代)に集中整備された土木インフラが一斉に更新時期を迎えていることが最大の構造要因。市区町村の4分の1で技術系職員が配置されておらず、メンテナンスの担い手不足も深刻です。スーパーゼネコン4社や中堅ゼネコンは公共土木のリニューアル工事を中期戦略の柱に据えており、技術力と採算管理が勝敗を分ける構造となっています。

公共建築 — 学校・庁舎・病院の長寿命化

概要

公共建築の維持修繕は、学校・庁舎・病院・公営住宅等の老朽化対応が中心で、文部科学省・国土交通省・各自治体が発注主体。2023年の公共建築維持修繕は土木より規模は小さいものの、学校統廃合・庁舎更新・病院再編に伴う大型改修案件が継続的に発生しています。

動向

文部科学省の「学校施設の長寿命化計画」(平成29年策定)で、改築から長寿命化改修への転換が政策方針として明確化されました。長寿命化改修は新築費用の約60% で施設の物理的耐用年数を20年以上延長できるとされ、財政制約下での合理的選択として全国で進行中。庁舎更新では、デジタル化・脱炭素・防災機能強化を組み合わせた複合的な改修が増えています。

背景・要因

公共施設の多くは1970-1980年代に集中整備されたため、2020-2030年代に一斉に更新期を迎える「インフラ老朽化問題」の建築版です。財政制約と人口減を背景に、新築から長寿命化への転換が政策的に推進されており、ゼネコン各社は学校・庁舎・病院の長寿命化改修を新たな受注領域として位置付けています。

民間建築 — オフィス改修・用途変更、シェア30.9%

概要

民間建築の維持修繕(改装・改修)は2019年から建設投資見通しに「民間建築補修」として計上され、2025年度は13.1兆円(民間投資の26%)に達しました。オフィスビルの改修、商業施設のリニューアル、用途変更(オフィス → ホテル・住宅)、テナント入替に伴う内装工事が中心です。

動向

2023年の民間維持修繕比率は30.9% で、民間建築補修は対前年で +2.5%(2025年度見通し)と継続的に拡大。オフィス需要構造の変化(ハイブリッドワーク定着・空室率上昇)を背景に、既存オフィスのリニューアル・用途変更案件が増加。再開発エリア(虎ノ門・八重洲・渋谷・大手町)でも、新築だけでなく既存建物の解体・建替や大規模改修が並行して進行しています。

背景・要因

(1)SDGs・脱炭素を背景としたグリーンビルディングへの改修需要、(2)人手不足下での建設コスト上昇による「壊して建て替えるより改修するほうが合理的」という経済合理性、(3)テナント獲得競争でのオフィスグレード維持・更新ニーズ、の3要因が重なっています。スーパーゼネコン4社もリニューアル工事を中期戦略の柱に据え、新設競争から既存建物改修への重心移動を進めています。

民間住宅 — リフォーム市場・既存ストック活用

概要

民間住宅の維持修繕は、リフォーム工事(増改築・水回り・内装更新等)が中心で、住宅メーカー・工務店・リフォーム専業事業者が主要プレイヤー。新設住宅着工戸数は1996年の163万戸から2023年の82万戸へと半減した一方、リフォーム市場は安定的に推移し、既存ストック活用の重要性が増しています。

動向

国交省の住宅市場動向調査によると、リフォーム実施率は持家世帯で年1割前後で推移し、市場規模は約7兆円で安定。空き家対策の進展(2014年空家対策特別措置法施行)と中古住宅流通市場の活性化(既存住宅状況調査制度2018年導入)で、中古購入 + リフォームの組み合わせが浸透。子育て世帯の住宅取得・高齢者向けバリアフリー改修・省エネ改修補助金の活用も拡大しています。

背景・要因

(1)人口減と世帯減で新設市場が構造的に縮小、(2)2030年に空き家率が30% に達するとの試算もあり、既存住宅ストックの活用が政策的に推進、(3)共働き世帯・高齢化で住宅性能更新ニーズが多様化、の3要因。新設住宅着工の長期減少を補完する形で、リフォーム市場が住宅関連投資の安定軸となる構造が定着しつつあります。

主要論点

なぜ維持修繕シェアは21% から32% まで拡大したのか?

維持修繕シェアは2001年の21% から2023年の32% まで +11pt拡大し、金額ベースでも14.0兆円から28.8兆円へと約2.1倍に成長しました。背景には3つの並列する構造要因があります。

第1に インフラ老朽化の構造的進行。高度経済成長期(1950-1970年代)に集中整備された土木インフラが一斉に更新時期を迎え、建設後50年以上経過する道路橋は2023年で約39%、2033年に約63% に達する見通し。これは政策的選択ではなく、物理的な経年劣化に基づく必然的な需要です。第2に 新設需要の頭打ち。新設住宅着工戸数は1996年163万戸から2023年82万戸へ半減、人口減・世帯減・都市集約で新設市場が構造的に縮小しました。

第3に 政策的後押し。i-Construction 2.0(令和6年4月策定)は「予防保全型のインフラメンテナンスへの本格転換」を中核課題に位置付け、国土強靭化5か年加速化対策(2021-2025)でも老朽化対策が重点分野。市区町村の4分の1で技術系職員が未配置という人材不足も、ゼネコン・中堅建設業者へのメンテナンス委託需要を押し上げる要因として作用しています。

公共と民間で維持修繕比率に差があるのはなぜか?

2023年の維持修繕比率は公共35.4% / 民間30.9% で、公共のほうが約4.5pt高い構造です。差を生む理由は3点に整理できます。

第1に インフラ性質の違い。公共投資の中核である土木インフラ(道路・橋梁・トンネル・河川・上下水道・港湾)は、建設後50-60年で更新が必要な物理的耐用年数の制約を持つ一方、民間建築は耐用年数の幅が広く、新設・改修の判断に経済合理性が働きやすい。土木の老朽化更新は「待ったなし」の必然性が高い領域です。第2に 発注者の財政制約。地方自治体は財政制約下で新築投資を絞り、長寿命化改修(新築費用の60% 程度)への転換を政策方針として推進してきました。文部科学省の「学校施設の長寿命化計画」(平成29年策定)が代表例です。

第3に 5か年加速化対策の重点分野化。2021-2025年度の国土強靭化5か年加速化対策(約15兆円規模)でインフラ老朽化対策が重点分野に位置付けられ、政府投資の維持修繕比率を構造的に押し上げました。次期計画(2026-)でも継続が見込まれており、公共の維持修繕優位は中長期で続く構造です。

リニューアルへのシフトはスーパーゼネコンの収益にどう効くか?

維持修繕シェアの拡大は、スーパーゼネコン4社にとって「新設競争」から「ストック市場での既存改修」への重心移動を促す構造変化です。各社の対応を整理すると3つの軸が見えます。

第1に リニューアル工事の重点取り組み。大林組は中期戦略でリニューアル工事を明示し、鹿島・大成・清水も同様に中期計画でリニューアル受注の拡大を方針として掲げています。FY2026 Q3で4社揃って増益基調にあるのは、新設大型案件の竣工に加え、既存建物のリニューアル受注獲得が利益貢献し始めた結果と解釈できます。第2に 採算管理の重要性。リニューアル工事は新築よりも既存条件への対応コストが大きく、施工難易度・期間・原価の見積精度が利益率を左右します。4社の完成工事総利益率の改善(大成は土木 +3.4pt / 建築 +6.5pt)は、採算重視の受注スタンスとリニューアル領域での技術力蓄積が結実した結果です。

第3に DX・i-Construction連動。リニューアル工事では既存建物の3D計測・BIM活用・デジタル設計が新築以上に効率化に直結し、i-Construction 2.0(令和6年4月策定)連動のDX投資が省人化と利益率改善を両立する軸となります。中長期では、スーパーゼネコン4社の競争優位は「大型新設案件の獲得力 + リニューアル領域での採算管理力 + DX投資余力」の三軸に集約される見通しです。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は維持修繕シェアが33-34% へ一段と上昇する見込み。建設後50年以上経過する施設の急増が継続し、特に公共土木(道路橋・トンネル・上下水道)でのリニューアル工事が拡大。スーパーゼネコン4社の中期計画でもリニューアル受注は重点分野として明示されており、採算管理の改善と相まって利益率向上を後押しする見通しです。

中長期3-5年

2028-2030年は維持修繕シェアが35% を超え、新設との比率が2:1に近づく可能性が高い。次期国土強靭化計画(2026-2030想定)でも老朽化対策が重点分野として継続される見込みで、政府投資の維持修繕比率はさらに上昇。民間でもグリーンビルディング改修・脱炭素対応のリノベーションが拡大し、業界全体が「ストック市場の質的拡大」へとシフトする構造になります。

関連業界への波及

維持修繕市場の拡大は、建設機械(小型・改修向け)、建設資材(補修材・耐震補強材)、設備工事(電気・空調・配管の更新)、不動産(既存建物の用途変更・バリューアップ)、PPP/PFI(公共施設運営)まで広範に波及します。市区町村のメンテナンス人材不足は、ゼネコン・中堅建設業者への包括委託(複数施設の維持管理一括契約)の拡大を促し、契約形態の多様化が業界共通テーマとなる見通しです。

よくある質問

維持修繕(リニューアル)市場の規模はどれくらいですか?
2023年の維持修繕は28.8兆円規模で、建設投資全体(90.0兆円)の32% を占めます。シェアは2001年の21% から22年で +11pt拡大し、金額ベースでも14.0兆円から約2.1倍に成長しました。
維持修繕シェアはなぜ拡大しているのですか?
背景には、(1)高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化(建設後50年以上経過する施設割合の加速度的増加)、(2)人口減少による新設需要の頭打ち、(3)市区町村のメンテナンス人材不足、の3つの構造要因があります。i-Construction 2.0(令和6年4月策定)も予防保全型メンテナンスへの転換を中核課題に位置付けています。
公共と民間で維持修繕比率はどう違いますか?
2023年の維持修繕比率は公共35.4% / 民間30.9% で、公共のほうが約4.5pt高い構造です。公共は土木インフラの物理的耐用年数の制約と地方自治体の財政制約による長寿命化転換、5か年加速化対策の重点分野化が比率を押し上げています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本建設業連合会 建設業ハンドブックchart5-1
  2. 2.
    国土交通省 建設投資見通し
  3. 3.
    内閣官房 国土強靭化年次計画2025
  4. 4.
    文部科学省 学校施設の長寿命化計画
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