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国土強靭化と公共投資の動向|5か年加速化対策と次期計画【2026年版】

日本の政府投資は2025年度に25.2兆円で前年度比+0.7%、建設投資全体75.6兆円の33%を占めます。1990年代の30兆円台から2012年の16.0兆円ボトムまで縮小したのち、2021-2025年の5か年加速化対策で約15兆円規模が投入され25兆円台に回復しました。令和7年6月策定の国土強靭化年次計画2025は対策の総仕上げ年で、次期計画への接続が中長期論点です。本ページでは防災・減災、インフラ老朽化、デジタル等、農林水産の重点分野の動向と公共投資の見通しを整理します。

2025年度 政府投資
25.2兆円0.7% YoY
出典: 国交省 建設投資見通し
5か年加速化対策
約15兆円
2021-2025累計、防災・減災中心
出典: 内閣官房
ボトム比
+57%
2012年16.0兆円 → 2025年25.2兆円
出典: CREX算出

政府投資の長期推移(1992-2025、GDP統計ベース)

単位: 兆円
0.0010.020.030.040.032.39235.29530.00019.00518.01020.21523.92025.225
出典: 内閣府 国民経済計算 (GDP統計、政府総固定資本形成、地方公共団体含む、1992-2025年度)
年度1992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013201420152016201720182019202020212022202320242025
兆円32.3334.2133.2535.2034.5832.9633.9931.9429.9628.1925.9223.4520.8318.9717.8016.9516.7217.9317.9816.3316.0518.3718.6120.2020.9921.7821.5922.4823.8623.5123.8924.4125.0425.21
前年比
読み解き

政府投資(GDP統計ベース、地方公共団体含む)は1990年代前半の32-35兆円台ピークから2012年の16.0兆円ボトムまで縮小しました。背景には、(1)バブル崩壊後の財政再建路線下での公共事業削減、(2)小泉政権下の三位一体改革と「聖域なき構造改革」、(3)民主党政権の「コンクリートから人へ」政策、の3段階で公共事業が継続的に絞られた経緯があります。

2013年以降は反転拡大に転じ、2025年度は25.2兆円までボトム比 +57% 回復しました。背景には、(1)東日本大震災(2011年)の復興需要、(2)安倍政権下の財政出動と国土強靭化への政策転換、(3)気候変動による災害激甚化への対応、(4)インフラ老朽化対策の本格化(建設後50年超施設の急増)、の4要因が並列。5か年加速化対策(2021-2025)が直近の25兆円台回復を支える政策的後押しとなっています。

公共事業関係費の推移(一般会計、2002-2025)

単位: 兆円
当初予算補正予算
0.002.505.007.5010.09.920203048.0305060708096.3710111213146.5515161718199.3220212223246.0925
出典: 財務省 一般会計予算 (公共事業関係費、当初+補正、2002-2025年度)
年度200220032004200520062007200820092010201120122013201420152016201720182019202020212022202320242025
当初予算兆円8.428.107.827.537.206.956.747.075.774.974.575.295.975.975.975.985.986.916.866.076.066.066.086.09
補正予算兆円1.500.201.100.500.600.400.501.660.602.902.4010.440.581.5811.581.572.462.002.002.202.350
合計(兆円9.928.308.928.037.807.357.248.736.377.876.976.296.416.557.556.987.568.489.328.078.058.268.436.09
前年比-16.4%+7.5%-9.9%-2.9%-5.8%-1.5%+20.7%-27.0%+23.6%-11.4%-9.9%+2.0%+2.2%+15.3%-7.6%+8.4%+12.2%+9.9%-13.4%-0.2%+2.5%+2.1%-27.8%
読み解き

国の一般会計に占める公共事業関係費は、2002年度の8.42兆円(当初予算)から2025年度6.086兆円へと、2010年代に一度4-5兆円台まで縮小したのち、2019年度の補正予算からの拡大で6兆円台に回復しました。当初予算は安倍政権以降ほぼ横ばいで推移し、補正予算が国土強靭化対策や経済対策で上積みされる構造です。

2025年度の当初6.09兆円は政府投資25.2兆円(GDPベース)の1/4規模で、両者の差は地方公共団体の単独事業や独立行政法人の投資、その他特別会計などが含まれることに由来します。一般歳出全体に占める割合は約5.3% で、社会保障費の拡大と国債費の増加で公共事業の構成比は長期的に低下傾向です。

このグラフに関連するトピック

国土強靭化5か年加速化対策の重点4分野

防災・減災/インフラ老朽化/デジタル等/農林水産・国土保全

防災・減災 — 河川・砂防・治山・港湾

概要

防災・減災は5か年加速化対策の最大の重点分野で、累計事業費の中核を占めます。河川改修・ダム整備・砂防堰堤・治山施設・港湾防災施設等のハード対策と、ハザードマップ整備・避難計画策定等のソフト対策の双方を組み合わせた包括的な国土保全が中核施策です。

動向

気候変動による豪雨・台風の激甚化を背景に、河川改修・ダム整備の優先度が上昇。令和6年能登半島地震、令和元年東日本台風、令和2年球磨川氾濫等の災害を踏まえ、流域治水(河川管理者・流域自治体・住民の連携)を新たな政策枠組みとして導入。気象庁・国土交通省・内閣府の防災情報統合とデータ連携も進行中です。

背景・要因

(1)気候変動による災害激甚化(豪雨・台風・線状降水帯)、(2)首都直下地震・南海トラフ地震への備え、(3)人口減少下でも防災投資は社会的合意が得やすく予算優先度が高い、の3要因。中長期では、防災・減災投資は構造的に拡大方向で、政府投資の中核を担う分野として位置付けられます。

インフラ老朽化対策 — 道路・橋梁・トンネル・上下水道

概要

インフラ老朽化対策は、高度経済成長期(1950-1970年代)に集中整備された土木インフラの一斉更新期到来を背景とした重点分野。道路・橋梁・トンネル・上下水道・港湾等のインフラ更新と長寿命化が中核施策で、5か年加速化対策の中で防災・減災に次ぐ規模です。

動向

建設後50年以上経過する道路橋は2023年で約39%、2033年に約63% に達する見通し。予防保全型のインフラメンテナンスへの転換が政策方針として明確化(i-Construction 2.0でも中核課題)され、長寿命化計画(道路・橋梁・トンネル・上下水道・公営住宅等)の策定と実行が全自治体で進行中。市区町村の4分の1で技術系職員未配置という人材不足が課題で、ゼネコン・中堅建設業者への包括委託の拡大が進んでいます。

背景・要因

(1)高度経済成長期インフラの物理的耐用年数の到来、(2)財政制約下での「壊して建て替える」より「長寿命化改修」の経済合理性、(3)地方自治体のメンテナンス人材不足、の3要因。維持修繕(リニューアル)市場の拡大(シェア2001年21% → 2023年32%)と表裏一体の構造変化です。

デジタル等 — 通信・データ連携基盤・リダンダンシー

概要

デジタル等は5か年加速化対策で新設された重点分野で、通信ネットワークの強靭化・データ連携基盤の整備・リダンダンシー(冗長性)確保が中核施策。災害時の通信途絶リスク低減と、平時のデジタル活用による行政効率化を両立する政策枠組みです。

動向

(1)海底ケーブル・光ファイバー網の冗長化、(2)データセンターの分散立地・耐災害性強化、(3)5G/6Gネットワークの全国整備、(4)GIS・防災情報のクラウド統合、(5)i-Construction 2.0連動の建設現場データ連携基盤、等が並行進行中。デジタル庁・総務省・国土交通省の連携で進められています。

背景・要因

(1)災害時の通信途絶が広域被害を拡大させた経験(東日本大震災・能登半島地震)、(2)DX進展でデジタル基盤の社会的重要性が拡大、(3)国家安全保障の観点での通信インフラ強靭化、の3要因。中長期では、伝統的なハード重視の公共投資から、ソフト・データ・通信を含む包括的な「インフラの広義化」が進む方向感です。

農林水産・国土保全 — 農業基盤・林道・漁港

概要

農林水産・国土保全は、農業用水路・農地・林道・漁港・治山等の整備を通じた国土保全と食料安全保障の両立を担う分野。農林水産省・国土交通省・林野庁・水産庁の連携で進められ、5か年加速化対策の重点分野の一つです。

動向

(1)農業基盤整備(用水路・排水機場・農地)の老朽化対策、(2)林道整備による森林管理の効率化(みどりの食料システム戦略との連携)、(3)漁港の防災機能強化(津波対策・耐震岸壁整備)、(4)治山施設整備による土砂災害防止、が並列で進行。地域の農林水産業の維持と災害対応の両面を担います。

背景・要因

(1)食料自給率の維持(カロリーベース38% 前後)と農業基盤の老朽化、(2)地方の人口減少下での農林水産業の担い手確保、(3)気候変動による農林水産業のリスク(豪雨・干ばつ・海水温上昇)、の3要因。地方経済における建設業の重要性とも結びつき、地場の中小建設業者への発注機会となる分野です。

主要論点

5か年加速化対策(2021-2025)はどう機能してきたか?

5か年加速化対策は2021年度から2025年度の5か年で約15兆円規模の事業費を予定した国土強靭化の中核政策です。対策の機能を3つの軸で評価できます。

第1に 政府投資の25兆円台回復。対策開始前の2020年度の政府投資23.9兆円から2025年度25.2兆円へと +1.3兆円拡大し、ボトム(2012年16.0兆円)比 +57% 回復しました。建設投資全体に占める政府投資シェアも33% で安定しており、政策的後押しが定量的に確認できる状況です。第2に 重点4分野での進捗。防災・減災(河川・砂防・治山)、インフラ老朽化対策、デジタル等、農林水産・国土保全の4分野で計画的に予算が配分され、各分野のKPI進捗は内閣官房の年次計画で公開・モニタリングされています。

第3に 建設業界への構造的後押し。政府投資25兆円台の維持は、地方の中小建設業者の経営を底支えし、許可業者数が平成30年度以降に微増へ転じた一因として作用。スーパーゼネコン4社の土木部門も、5か年加速化対策関連の大型公共工事(ダム・トンネル・河川改修)を継続的に受注し、採算改善(大成FY2026 Q3土木総利益率21.9%)に寄与しています。中長期では、対策の継続性が建設業界の構造的安定性を担う構図と整理できます。

次期計画(2026年度〜)はどうなる見通しか?

5か年加速化対策(2021-2025)は2025年度が総仕上げ年で、次期計画(2026年度以降想定)への接続が中長期の最大論点です。次期計画の方向性を3つの軸で整理できます。

第1に 継続性の高さ。令和7年6月策定の国土強靭化年次計画2025では、防災・減災/インフラ老朽化/デジタル等/農林水産・国土保全の重点4分野が継続される方針が示されています。気候変動による災害激甚化、インフラ老朽化の継続、首都直下・南海トラフ地震リスクは構造要因として継続するため、次期計画でも同程度以上の規模が見込まれる構図です。第2に 政府投資25兆円台維持の蓋然性。財政制約下でも防災・減災・老朽化対策は社会的合意が得やすく、政府投資25兆円台の維持は政治的・財政的に支持されやすい。一方、財務省側の歳出規律重視の姿勢から、増額路線への転換は限定的と見られます。

第3に 新たな重点分野の可能性。次期計画では、(1)気候変動適応策(流域治水・グリーンインフラ)、(2)半導体・データセンター等の国家戦略インフラ、(3)デジタル基盤の強靭化(5G/6G・データセンター分散化)、(4)人口減少地域でのコンパクトシティ・インフラ集約、等が新たな重点候補として議論される可能性。建設業界にとっては、伝統的なハードインフラ + デジタルインフラ + 気候変動対応の三軸が中長期の収益構造を形成する見通しです。

公共投資は中長期で25兆円台を維持できるか?

政府投資25.2兆円(2025年度)の中長期見通しを評価する上では、(1)構造的拡大要因、(2)財政制約要因、(3)相対比率の変化、の3軸が重要です。

第1に 構造的拡大要因。気候変動による災害激甚化(豪雨・台風・線状降水帯)、インフラ老朽化の継続(建設後50年超施設は2033年に約63%)、首都直下・南海トラフ地震リスクへの備えは、いずれも長期的・不可逆的な要因で、政府投資の維持を正当化する構造的根拠となります。これらは政治的・財政的合意が得やすく、政府投資25兆円台の継続は中長期で支持されやすい構図です。第2に 財政制約要因。日本の政府債務残高はGDP比250% 超で、社会保障費の増大(高齢化)と防衛費の増額(GDP比2% 目標)が進むなか、公共事業関係費の拡大余地は限定的。財務省側の歳出規律重視の姿勢から、政府投資の大幅増額は政治的に困難と見られます。

第3に 相対比率の変化。建設投資全体(2025年度75.6兆円)に占める政府投資シェアは33% で、民間投資67% との比率は中長期で民間優位に動く可能性が高い。民間投資はデータセンター・物流倉庫・半導体工場・再開発等で構造的に拡大する一方、政府投資は25兆円台で安定推移するため、相対的に民間優位が強まる構図。スーパーゼネコン4社の戦略も、海外受注比率引き上げと民間大型案件獲得に重点が置かれており、業界全体の方向感と整合的です。中長期で政府投資25兆円台維持は十分に蓋然性が高い一方、民間優位の構造変化は加速する見通しと整理できます。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年度は次期国土強靭化計画への接続期で、政府投資25兆円台の維持が政治的・財政的に焦点となる時期。重点4分野(防災・減災/インフラ老朽化/デジタル等/農林水産・国土保全)の予算配分は前期計画を踏襲しつつ、気候変動適応策・デジタル基盤強靭化等の新規分野が追加される見通し。スーパーゼネコン4社と中堅・地場ゼネコンは公共土木工事の受注機会を中長期で確保できる構造です。

中長期3-5年

2028-2030年は次期計画(想定2026-2030)の総仕上げ期に向けて、インフラ老朽化対策の本格化と維持修繕(リニューアル)市場との接続が進む時期。建設後50年超施設の急増(2033年に約63%)が政府投資の継続的拡大要因として作用し、市区町村のメンテナンス人材不足を補うゼネコン・中堅業者への包括委託拡大が業界共通テーマとなります。i-Construction 2.0連動のDX投資が公共工事の生産性向上を担い、労働時間規制下での施工体制構築の中核となる見通しです。

関連業界への波及

政府投資25兆円台の維持は、建設機械(土木向け)、建設資材(鉄筋・セメント・補修材)、設備工事、地場の中小建設業者、地方銀行・信用金庫(建設業向け融資)まで広範に波及。地方経済における建設業の雇用・税収面での重要性は中長期で継続し、地場の中小業者の事業承継M&A、公共施設運営のPPP/PFI、インフラ運営事業(コンセッション)まで関連業界の成長機会も拡大する見通しです。

よくある質問

日本の政府投資(公共投資)の規模はどれくらいですか?
2025年度の政府投資は25.2兆円(前年度比 +0.7%)で、建設投資全体(75.6兆円)の33% を占めます。1990年代の30兆円台ピークから2012年の16.0兆円ボトムまで縮小したのち、5か年加速化対策(2021-2025、約15兆円規模)で25兆円台に回復しました。
5か年加速化対策とは何ですか?
5か年加速化対策は、内閣官房が策定した国土強靭化の中核政策で、2021年度から2025年度の5か年で約15兆円規模の事業費を予定。重点4分野は防災・減災(河川・砂防)、インフラ老朽化対策(道路・橋梁・上下水道)、デジタル等(通信・データ連携)、農林水産・国土保全。令和7年6月に国土強靭化年次計画2025が策定され、対策の総仕上げと次期計画への接続が進行中です。
次期計画(2026年度以降)はどうなりますか?
令和7年6月策定の国土強靭化年次計画2025では、防災・減災/インフラ老朽化/デジタル等/農林水産・国土保全の重点4分野継続が示唆されています。政府投資25兆円台の維持は政治的・財政的に支持されやすく、構造的拡大要因(気候変動・インフラ老朽化・地震リスク)が継続するため、中長期での維持が蓋然性高く見込まれます。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    内閣官房 国土強靭化年次計画2025
  2. 2.
    国土交通省 建設投資見通し
  3. 3.
    e-Stat付表1-6
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