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人材サービスの規制と政策|派遣法・職業安定法と同一労働同一賃金【2026年版】

人材サービスは、人材派遣を規律する労働者派遣法と、人材紹介・求人メディアを規律する職業安定法の二本柱で規制されています。いずれも事業を行うには厚生労働大臣の許可や届出が必要です。近年は、2015年の派遣法改正による許可制への一本化、2020年に施行された派遣労働者の同一労働同一賃金、2022年の職業安定法改正による求人メディアの届出制など、働く人の保護とマッチングの質を高める方向で制度が整えられてきました。あわせて、リスキリングや人的資本経営を後押しする政策が、人材育成への需要を支えています。主要な規制と政策の内容を整理します。

人材派遣はどのように規律されているか?

労働者派遣法と許可制(2015年改正)

人材派遣は労働者派遣法にもとづいて規律され、事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要です。2015年の改正で、それまで届出制だった特定派遣(自社で常時雇用する労働者だけを派遣する形態)が廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制に一本化されました。これにより、事業者の適格性のチェックが厳格になり、派遣で働く人の保護が強化されました。あわせて、同じ事業所で派遣を受け入れられる期間や、同じ人を同じ部署で受け入れられる期間に制限が設けられ、派遣から直接雇用への移行(雇用の安定)を促す仕組みが整えられています。

同一労働同一賃金(2020年施行)

2020年4月に施行された同一労働同一賃金により、派遣労働者の待遇を派遣先の正社員と不合理な差がないようにすることが求められています。待遇の決め方には2つの方式があります。ひとつは、派遣先の通常の労働者と均等・均衡を図る「派遣先均等・均衡方式」、もうひとつは、派遣会社と労働者代表が結ぶ労使協定にもとづく「労使協定方式」です。労使協定方式では、厚生労働省が示す職種・地域ごとの賃金水準と同等以上を確保することが必要です。派遣先ごとに待遇を比較する手間が少なく、全国共通の基準で賃金を設定できるため、実務ではこの労使協定方式が多く使われており、派遣労働者の賃金の底上げにつながっています。

マージン率の公開

派遣会社には、派遣先から受け取る派遣料金と派遣労働者へ支払う賃金の差である「マージン率」を公開することが義務づけられています。マージンには、社会保険料の事業主負担や、募集・教育・労務管理の費用、派遣会社の利益が含まれます。マージン率を公開することで、派遣で働く人や派遣先が、派遣会社の料金と賃金の関係を確認できるようになり、透明性が確保されています。

人材紹介・求人メディアの規律は?

職業安定法と有料職業紹介の許可制

人材紹介(有料職業紹介)は職業安定法にもとづいて規律され、事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要です。求職者と求人企業を引き合わせ、採用が決まったときに手数料を受け取る成功報酬型のサービスで、求職者の保護のために、取り扱える求人・求職の範囲や、求職者からの手数料徴収などにルールが設けられています。原則として、手数料は求人企業から受け取り、求職者からは徴収しないことが基本です。

紹介手数料の2つの方式(上限制・届出制)

有料職業紹介の手数料の徴収方法には、「上限制手数料」と「届出制手数料」の2つがあり、事業者はいずれかを選びます。上限制は、採用者の賃金の一定割合を上限とする方式です。届出制は、あらかじめ厚生労働大臣に届け出た範囲内で手数料を定める方式で、採用者の想定年収のおよそ30〜35%を成功報酬とするのが一般的な相場です。近年は、自由度の高い届出制を採用する事業者が大半を占めています。

求人メディアの届出制(2022年職安法改正)

2022年10月に施行された職業安定法の改正により、求人情報を掲載する求人メディア(募集情報等提供)にも新たなルールが設けられました。求職者の氏名や経歴などの個人情報を扱う事業者は「特定募集情報等提供事業者」として届出が必要になり、求人情報・求職者情報を正確に表示する的確表示の義務や、個人情報の適正な取り扱いが求められます。複数の求人サイトから情報を集めるまとめサイトも、規律の対象に含まれるようになりました。

主要な規制・政策の一覧

人材サービスに関わる主な法律・制度と政策
労働者派遣法
所管・対象
人材派遣
要点
許可制。2015年改正で特定派遣を廃止し許可制に一本化。派遣可能期間の制限と雇用安定措置
同一労働同一賃金(派遣)
所管・対象
派遣労働者の待遇
要点
2020年4月施行。派遣先均等・均衡方式または労使協定方式で待遇を決定
マージン率の公開
所管・対象
派遣会社
要点
派遣料金と賃金の差(マージン率)の公開を義務化し、透明性を確保
職業安定法(有料職業紹介)
所管・対象
人材紹介
要点
許可制。手数料は上限制または届出制(届出制が大半、想定年収のおよそ30〜35%が相場)
募集情報等提供(職安法2022年改正)
所管・対象
求人メディア等
要点
2022年10月施行。求職者情報を扱う事業者に届出制、求人情報の的確表示を義務化
リスキリング・人的資本の情報開示
所管・対象
政策(横断)
要点
リスキリング支援や上場企業の人的資本開示が、人材育成・採用への投資を後押し
読み解き

人材サービスは、人材派遣(労働者派遣法)と人材紹介・求人メディア(職業安定法)を中心に規律され、近年は待遇改善とマッチングの質の向上を軸に制度が整えられてきました。政策面では、リスキリングや人的資本経営の広がりが、人材育成への需要を後押ししています。

主要論点

同一労働同一賃金は派遣にどう影響したのか?

2020年に施行された派遣労働者の同一労働同一賃金は、派遣で働く人の待遇改善を大きく前進させました。派遣会社は、派遣先の正社員との均衡・均等を図る「派遣先均等・均衡方式」か、労使協定にもとづく「労使協定方式」のいずれかで待遇を決める必要があります。実務では、厚生労働省が示す職種・地域ごとの賃金水準を基準にできる労使協定方式が多く使われています。

この規制は、派遣労働者の賃金の底上げにつながりました。人手不足による賃上げ圧力とあわせて、派遣料金の上昇を通じて派遣市場の金額面での拡大を支えています。

一方で、派遣会社にとっては、待遇改善のコストを派遣料金に転嫁できるかが収益の鍵となります。料金への転嫁と業務効率化の両立が、派遣事業者の課題となっています。

2015年の派遣法改正は業界の構造をどう変えたのか?

2015年の労働者派遣法改正は、業界の構造に大きな影響を与えました。それまで届出制だった特定派遣が廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制に一本化されたことで、事業者には許可の取得と更新が求められるようになりました。要件を満たせない小規模事業者の一部が撤退し、事業者の適格性のチェックが厳格になりました。

あわせて、派遣を受け入れられる期間に制限が設けられ、派遣から直接雇用への移行を促す仕組みが整えられました。技術者派遣の分野で、技術者を無期雇用(正社員)として抱えるモデルが広がった背景にも、こうした雇用の安定を重視する制度の流れがあります。

許可制への一本化は、統計の捕捉も変えました。すべての派遣が報告の対象となったため、改正直後の派遣事業の売上高の集計は、報告対象の拡大を含んでおり、純粋な事業成長だけを示すものではない点に注意が必要です。

リスキリングや人的資本の政策は人材サービスにどう関わるのか?

近年の政策は、人材の「育成」と「活用」を後押しする方向にあります。政府が進めるリスキリング(学び直し)支援は、デジタル化や産業構造の変化に対応するための社員のスキル更新を促し、企業向け研修サービスへの需要を高めています。

あわせて、上場企業には人的資本の情報開示が求められるようになりました。人材への投資の状況を投資家に開示することで、人材を費用ではなく投資すべき資本ととらえる人的資本経営の考え方が広がっています。

これらの政策は、採用(人材派遣・人材紹介・求人メディア)だけでなく、育成(研修・リスキリング)まで含めて、人材サービス全体への需要を支えています。人手不足が続くなかで、規制による待遇改善と、政策による人材投資の促進が、業界の事業環境を形づくっています。

よくある質問

人材派遣と人材紹介は、それぞれどの法律で規制されていますか?
人材派遣は労働者派遣法、人材紹介(有料職業紹介)は職業安定法で規律されています。いずれも事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要です。求人メディア(募集情報等提供)も、2022年の職業安定法改正により、求職者情報を扱う事業者には届出が求められるようになりました。
派遣の「同一労働同一賃金」とは何ですか?
2020年4月に施行された制度で、派遣労働者の待遇を派遣先の正社員と不合理な差がないようにすることを求めるものです。待遇の決め方には、派遣先の労働者と均等・均衡を図る「派遣先均等・均衡方式」と、労使協定にもとづく「労使協定方式」の2つがあります。派遣労働者の賃金の底上げにつながっています。
2015年の派遣法改正で何が変わったのですか?
それまで届出制だった特定派遣が廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制に一本化されました。あわせて、派遣を受け入れられる期間に制限が設けられ、派遣から直接雇用への移行を促す仕組みが整えられました。事業者の適格性のチェックが厳格になっています。
人材紹介の手数料に決まりはありますか?
有料職業紹介の手数料の徴収方法には、賃金の一定割合を上限とする「上限制手数料」と、厚生労働大臣に届け出た範囲内で定める「届出制手数料」の2つがあり、事業者はいずれかを選びます。近年は自由度の高い届出制が大半で、採用者の想定年収のおよそ30〜35%を成功報酬とするのが一般的な相場です。原則として手数料は求人企業が負担します。
マージン率の公開とは何ですか?
派遣会社が、派遣先から受け取る派遣料金と派遣労働者へ支払う賃金の差である「マージン率」を公開することを義務づけた制度です。マージンには社会保険料の事業主負担や募集・教育・管理の費用、派遣会社の利益が含まれます。公開により、派遣で働く人や派遣先が料金と賃金の関係を確認できます。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    厚生労働省「労働者派遣法」関係資料(許可制・派遣期間・2015年改正)
  2. 2.
    厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金」
  3. 3.
    厚生労働省「職業安定法」関係資料(有料職業紹介・募集情報等提供)
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