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保育業界の定員割れと処遇改善|待機児童の次に来た経営課題【2026年版】

保育所等(認可保育所・認定こども園・小規模保育などの地域型保育事業)の定員充足率(利用児童÷利用定員)は2026年4月1日に87.7%と、2015年以降で最も低くなりました。都市部の90.9%に対し過疎地域は72.7%で、待機児童の解消の次に、空きが広がる施設の経営が業界の課題になっています。私立保育所の公定価格(国が定める子ども1人当たりの単価)に対応する収支差率は3.2%(2023年度決算)で、収益の73.3%が人件費です。国は公定価格の人件費を2024年度に10.7%、2025年度に5.3%引き上げ、保育士の所定内給与は2025年に月27.9万円まで上がりましたが、有効求人倍率は3.10倍と人手不足が続いています。本ページでは、定員割れの構図と地域差、経営への影響、処遇改善と賃金、人材の需給を整理します。

定員充足率の推移(2021-2026年、%、都市部・過疎地域)

各年4月1日時点。定員充足率は利用児童÷利用定員(こども家庭庁の公表率)。都市部は首都圏・近畿圏の7都府県と指定都市・中核市(334自治体)、過疎地域は過疎法の全部過疎市町村(713自治体)で、両方に該当する43自治体は過疎地域に含む。2026年は令和8年熊本地震の影響で熊本県分が未確定のまま集計した暫定値
単位: %
都市部過疎地域
0.025.050.075.0100.090.972.7212223242526
出典: こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)
読み解き

全国の定員充足率は2021年の90.9%から2026年の87.7%へ毎年下がりました。都市部は93.0%から90.9%へ下がる一方、過疎地域は81.3%から72.7%へ下がり、こども家庭庁は5年間の低下幅を都市部の2.1ポイントに対して過疎地域は8.6ポイントと説明しています。過疎地域では利用定員20万7,300人に対して利用児童が15万733人で、4人に1人以上の空きがある計算です。

2026年の都市部は利用定員185万4,099人に対して利用児童が168万4,504人で、申込者は174万6,964人です。待機児童1,818人を抱えながら充足率は90.9%にとどまります。年齢や地域の細かな単位で見ると、空きのある園と入れない子どもが同じ都市の中に併存していることを示しています。こども家庭庁は、年度途中の入所に備えて4月時点で空きを設けている保育所もあるため、数値だけで各園の状況は判断できないと注記しています。

このグラフに関連するトピック

定員充足率(2021-2026年、%、全国・都市部・過疎地域)

上のグラフの数値に全国を加えたもの。全国は2015年に93.8%で、利用定員のピークは2023年
2021年
全国(%)
90.9
都市部(%)
93.0
過疎地域(%)
81.3
2022年
全国(%)
89.7
都市部(%)
92.0
過疎地域(%)
79.5
2023年
全国(%)
89.1
都市部(%)
91.6
過疎地域(%)
77.5
2024年
全国(%)
88.8
都市部(%)
91.6
過疎地域(%)
76.2
2025年
全国(%)
88.4
都市部(%)
91.3
過疎地域(%)
74.6
2026年
全国(%)
87.7
都市部(%)
90.9
過疎地域(%)
72.7

なぜ定員割れが広がっているのか

利用定員は2023年まで増え、利用児童は2021年から減った

待機児童を減らすために広げてきた受け皿は、利用定員が2023年4月1日の305万928人まで増え、2026年も301万6,417人あります。一方、利用児童は2021年の274万2,071人をピークに減り、2026年は264万6,756人です。定員が頭打ちになっても利用児童の減少が先に進むため、定員充足率は2015年の93.8%から2026年の87.7%へ下がり、2015年以降で最も低くなりました。施設数は2026年も増えており、1施設当たりの利用児童が減る構図です。

背景にあるのは出生数の減少です。就学前の子どものうち保育所等を利用する割合が上がることで利用児童の減少は緩やかでしたが、2022年からは補いきれなくなりました。市区町村の計画では、保育の申込者は2025年から2029年にかけて約9.5万人減る見込みで、受け皿の量を増やす段階は終わっています。利用児童と出生数の推移は市場規模のページで扱います。

保育業界の市場規模を見る

過疎地域は5年で8.6ポイント下がった

過疎法の全部過疎市町村(713自治体)を集計した過疎地域の定員充足率は、2021年の81.3%から2026年の72.7%へ下がりました。こども家庭庁の資料は「都市部における定員充足率の推移は5年間で▲2.1%に対して、過疎地域では▲8.6%」と記しており、空きの広がり方が地域で大きく違います。過疎地域の2026年の申込者は15万2,497人で、利用定員20万7,300人に対して待機児童はいません。

人口の少ない自治体では、園を閉じれば通える施設が無くなるため、利用児童が減っても施設を残す判断になりやすい事情があります。公定価格は施設の種類・地域区分・定員規模・子どもの年齢ごとに国が定める1人当たりの単価に加算と減算を加えて決まるため、利用児童が減ると収入も減ります。定員規模の小さい施設ほど1人の減少が収入に占める割合は大きく、過疎地域の施設の経営は利用児童の減少に直接さらされています。

都道府県で20ポイント以上の差、上がったのは4都県

都道府県別の定員充足率(2026年4月1日)は、大阪府の94.9%、神奈川県の94.6%、兵庫県の93.8%が高く、長野県の74.0%、山梨県の74.6%、高知県の75.8%が低く、最高と最低の差は20.9ポイントあります。90%以上は宮城県・埼玉県・東京都・神奈川県・滋賀県・大阪府・兵庫県・福岡県・沖縄県の9都府県、80%未満は長野県(74.0%)・山梨県(74.6%)・高知県(75.8%)・鳥取県(77.3%)・秋田県(79.4%)・岐阜県(79.6%)の6県です。

2022年と比べて充足率が上がったのは埼玉県・千葉県・東京都・愛知県の4都県だけで、残りの43道府県(暫定値の熊本県を含む)は下がりました。東京都は2026年に待機児童1,113人を抱えながら充足率91.1%で、首都圏の需要の強さが数字に表れています。一方、岩手県・山形県・福島県・鳥取県・香川県・高知県・佐賀県・宮崎県・鹿児島県の9県は2022年から5ポイント以上下がっており、人口の少ない地域ほど定員割れが先に進んでいます。

都道府県別の定員充足率 上位5・下位5(2022・2026年、%)

各年4月1日時点、2026年の値で並べ替え。2026年は令和8年熊本地震の影響で熊本県分が未確定のまま集計した暫定値
全国
2022年(%)
89.7
2026年(%)
87.7
大阪府
上位1位
2022年(%)
95.5
2026年(%)
94.9
神奈川県
上位2位
2022年(%)
96.0
2026年(%)
94.6
兵庫県
上位3位
2022年(%)
96.5
2026年(%)
93.8
埼玉県
上位4位
2022年(%)
92.0
2026年(%)
92.9
東京都
上位5位
2022年(%)
90.5
2026年(%)
91.1
長野県
下位1位
2022年(%)
77.7
2026年(%)
74.0
山梨県
下位2位
2022年(%)
78.5
2026年(%)
74.6
高知県
下位3位
2022年(%)
82.4
2026年(%)
75.8
鳥取県
下位4位
2022年(%)
83.5
2026年(%)
77.3
秋田県
下位5位
2022年(%)
84.1
2026年(%)
79.4
読み解き

上位は大阪府・神奈川県・兵庫県・埼玉県・東京都と首都圏と近畿圏の都府県が並び、下位は長野県・山梨県・高知県・鳥取県・秋田県です。上位5都府県のうち2都県は2022年より上がっていますが、下位5県はいずれも2022年より下がりました。充足率の低い県は保育所等の利用定員の規模も小さく、1人当たりの収入で運営する施設にとっては、同じ1人の減少でも経営への影響が重くなります。

定員割れは経営にどう効くのか

私立保育所の収支差率は3.2%、人件費が収益の73.3%

こども家庭庁の経営実態調査(2023年度決算を対象とし、前回は2018年度決算。有効回答14,478か所、うち私立8,790か所)では、私立保育所の公定価格に対応する収支差率は2023年度決算で3.2%でした。2018年度決算の2.3%からは上がりました。同じ調査が参考として示す他分野の値と比べると、介護分野の2.4%は上回り、障害分野の5.6%と中小企業の4.3%は下回ります。収支差率は公定価格に対応する部分の収支で、施設が行う全事業の利益率ではなく、上場企業の営業利益率とも算式が違います。

費用の中心は人件費です。私立保育所の人件費比率は73.3%(2018年度決算は75.1%)で、収益の4分の3近くが職員の給与に回ります。保育士の配置基準は子どもの年齢ごとに職員の数を定めているため、利用児童が少し減っても職員を減らせない局面が多く、定員割れが起きると収入だけが先に減ります。2023年度決算の時点で全国の定員充足率はすでに89.1%(2023年4月1日)まで下がっており、その中で収支差率が3.2%だった構造は、処遇改善による収入の増加と、空きによる収入の減少が同時に起きていたことを映しています。充足率はその後も87.7%まで下がっています。

類型で差が大きく、事業所内保育事業(B型適用)は赤字

小規模保育事業は0〜2歳児を対象とする定員6〜19人の施設で、保育所の分園に近いA型、家庭的保育に近いC型、その中間のB型(保育士の割合が2分の1以上)の3類型があります。事業所内保育事業(B型適用)は、企業などが設ける事業所内保育のうち小規模保育のB型と同じ基準を適用する施設です。私立の10類型のうち、2023年度決算の収支差率が最も高いのは小規模保育事業(C型)の11.3%、次いで家庭的保育事業の8.3%、小規模保育事業(A型)の7.9%で、最も低いのは事業所内保育事業(B型適用)の▲6.7%です。事業所内保育事業(B型適用)は2018年度決算の5.7%から赤字に転じ、人件費比率は82.6%と10類型で最も高くなりました。定員20人以上の事業所内保育事業も0.1%で、企業の敷地内などで運営する小さな施設の採算の厳しさが表れています。

子ども・子育て支援新制度の給付を受ける幼稚園(新制度)の2.2%と認定こども園の2.1%は学校法人会計の数値で、施設整備のために積み立てる基本金を組み入れた後では▲4.7%と▲1.7%の赤字です。会計基準が違うため類型間の単純な比較はできませんが、10類型のうち8類型で収支差率が2018年度決算より下がっており、家庭的保育事業や小規模保育事業の高い収支差率も個人立が多く収支差が運営者の給与に当たる事情を含みます。

2026年度の制度は、小さな施設と過疎地を支える方向

国は2025年度に、人口減少への対応として公定価格の定員区分を細分化しました。2026年度には、過疎地の小規模施設向けの新たな加算(特別地域保育体制確保対応加算)と、3〜5歳児だけを対象にする満3歳以上限定小規模保育事業(2026年4月1日施行)を設けました。小規模保育事業は0〜2歳児を対象としてきたため、子どもが減った地域で3歳以上の子どもを小さな単位で預かる類型が新たに加わったことになります。

同時に、経営情報を報告しない施設への減算(2026年7月から)と、安全計画を策定していない施設への減算も導入されました。公費で運営される事業として、収支と職員の賃金を報告する仕組みが処遇改善と並行して整えられています。定員割れへの対応は、こうした制度の調整と並行して、定員規模の見直し、施設の統合や閉園、空きを使った一時預かりや、保護者の就労を要件としないこども誰でも通園制度への対応として、事業者と自治体の判断に委ねられています。

私立施設の類型別 収支差率と人件費比率(2023年度・2018年度決算、%)

こども家庭庁 経営実態調査。公定価格に対応する収支で、私立の施設・事業所のみ。幼稚園(新制度)と認定こども園は学校法人会計(基本金組入前)で算式が異なるため、類型間の単純な比較はしない。▲は赤字
保育所
社会福祉法人会計の算式。収益から費用を引いた額の収益に対する割合
収支差率(2023年度、%)
3.2
収支差率(2018年度、%)
2.3
人件費比率(2023年度、%)
73.3
人件費比率(2018年度、%)
75.1
幼稚園(新制度)
学校法人会計(基本金組入前)。組入後は2023年度▲4.7%、2018年度3.8%
収支差率(2023年度、%)
2.2
収支差率(2018年度、%)
9.8
人件費比率(2023年度、%)
69.1
人件費比率(2018年度、%)
63.8
認定こども園
学校法人会計(基本金組入前)。組入後は2023年度▲1.7%、2018年度2.0%
収支差率(2023年度、%)
2.1
収支差率(2018年度、%)
4.2
人件費比率(2023年度、%)
71.8
人件費比率(2018年度、%)
69.5
家庭的保育事業
個人立が多く、収支差が個人の給与に当たるため高く出る
収支差率(2023年度、%)
8.3
収支差率(2018年度、%)
15.9
人件費比率(2023年度、%)
61.0
人件費比率(2018年度、%)
53.4
小規模保育事業(A型)
収支差率(2023年度、%)
7.9
収支差率(2018年度、%)
10.3
人件費比率(2023年度、%)
66.5
人件費比率(2018年度、%)
64.8
小規模保育事業(B型)
収支差率(2023年度、%)
7.4
収支差率(2018年度、%)
9.7
人件費比率(2023年度、%)
67.5
人件費比率(2018年度、%)
64.6
小規模保育事業(C型)
収支差率(2023年度、%)
11.3
収支差率(2018年度、%)
18.2
人件費比率(2023年度、%)
65.8
人件費比率(2018年度、%)
62.5
事業所内保育事業(A型適用)
収支差率(2023年度、%)
6.1
収支差率(2018年度、%)
8.1
人件費比率(2023年度、%)
71.3
人件費比率(2018年度、%)
67.3
事業所内保育事業(B型適用)
収支差率(2023年度、%)
▲6.7
収支差率(2018年度、%)
5.7
人件費比率(2023年度、%)
82.6
人件費比率(2018年度、%)
77.3
事業所内保育事業(20人以上)
収支差率(2023年度、%)
0.1
収支差率(2018年度、%)
0.1
人件費比率(2023年度、%)
77.7
人件費比率(2018年度、%)
76.0
読み解き

収支差率は保育所の3.2%から小規模保育事業(C型)の11.3%、事業所内保育事業(B型適用)の▲6.7%まで幅があります。人件費比率は家庭的保育事業の61.0%から事業所内保育事業(B型適用)の82.6%までで、保育所は73.3%です。2018年度決算と比べると人件費比率は10類型のうち9類型で上がっており、処遇改善で人件費が増えた分を収入の増加で吸収できた類型と、できなかった類型に分かれています。

処遇改善で保育士の給料は上がったのか

公定価格の人件費は2024年度に10.7%、累計で約39%

公定価格上の人件費の改定率は、2014年度の+2.0%以降、引き下げの年度を挟みながら積み上げられ、2023年度に+5.2%、2024年度に+10.7%と2014年度以降で最も大きな引き上げになりました。2025年度も+5.3%で、こども家庭庁は2013年度以降の改善を予算上の単純合計で約39%、保育士の給与の改善額を月額約13.4万円と説明しています(2023年度時点では約23%・約7.5万円)。2020年度は▲0.3%、2022年度は当初予算で▲0.9%の引き下げの後に補正予算で+2.1%と、人事院勧告に連動して下がる年度もありました。

改定率は公定価格の単価に織り込む人件費の伸びで、保育士一人ひとりの給与がその率で上がったことを意味しません。2025年度には、公定価格に上乗せして職員の賃金改善に充てる処遇改善等加算が一本化され、改定分を賃金に届かせるための仕組みの見直しも進んでいます。累計の約39%は、人件費の改定率のほかに処遇改善等加算による改善を含む予算上の改善率を年度ごとに足し上げた値で、年度別の改定率を足した数とは一致せず、2012年度と比べた実際の改善率とも異なります。

所定内給与は月24.6万円から27.9万円へ

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、保育士(企業規模10人以上、男女計)の所定内給与は2020年の月24.6万円から2024年の27.0万円、2025年の27.9万円へ毎年上がりました。年間賞与(前年1年間)は2020年の74.7万円から2022年の71.2万円まで下がった後、2025年は84.8万円です。幼稚園教員・保育教諭の所定内給与は2025年に28.6万円(2020年は25.1万円)で、保育士をわずかに上回ります。保育士の平均年齢は37.6歳から40.3歳、勤続年数は7.7年から9.1年へ延びており、賃金の上昇には経験を積んだ職員が増えたことも含まれています。

それでも、こども家庭庁は保育士の平均賃金が全産業平均を下回ると説明しています。2024年度の+10.7%は2024年12月に適用され、2025年6月分の給与に反映されうる時期ですが、どこまで反映されたかはこの統計だけでは分かりません。2025年度の+5.3%は2025年12月の適用で、2025年の賃金統計には影響していません。2025年度分まで含めた改定の効果が賃金統計に表れるのは2026年以降で、改定率と賃金の上昇率を同じ年で比べることはできません。

改定分はどこまで賃金に届くか

公定価格で収入が決まる事業では、事業者が独自に賃金を上積みする余地は小さく、改定分が職員の賃金にどれだけ届くかが処遇改善の成否を分けます。私立保育所は人件費が収益の73.3%を占めるため、人件費の改定はそのまま収入の増加になりますが、定員割れで利用児童が減れば1人当たり単価の増加分は人数の減少で打ち消されます。2024年度に+10.7%の改定があっても、定員充足率が87.7%の施設と72.7%の施設では、職員に配分できる原資が違います。

2025年度の処遇改善等加算の一本化と、2026年度に導入された経営情報を報告しない施設への減算は、改定分を賃金に届かせるための仕組みです。報告される経営情報を通じて、公定価格の収入が施設ごとにどう配分されたかが確認できるようになります。改定の累計約39%に対して保育士の賃金が全産業平均を下回り続ける構図が続くかどうかは、2026年以降の賃金統計で確認することになります。

公定価格上の人件費の改定率と改善の累計(2013-2025年度)

こども家庭庁の資料。年度別の改定率は公定価格上の人件費の改定率で、保育士に支払われた賃金の上昇率ではない。累計は改定率のほかに処遇改善等加算による改善を含む各年度の予算上の改善率を単純に足し上げた値のため、年度別の改定率の列を足しても一致しない。月額は予算上の保育士の給与改善額。年度別の記載の無い年度は「—」。▲は引き下げ
2013年度
年度別の改定率(%)
—
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約3
月額の改善額(万円、予算上)
約0.9
2014年度
年度別の改定率(%)
+2.0
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約5
月額の改善額(万円、予算上)
約1.5
2015年度
年度別の改定率(%)
+1.9
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約7
月額の改善額(万円、予算上)
約2.1
2016年度
年度別の改定率(%)
+1.3
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約8
月額の改善額(万円、予算上)
約2.6
2017年度
年度別の改定率(%)
+1.1
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約11
月額の改善額(万円、予算上)
約3.5
2018年度
年度別の改定率(%)
+0.8
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約12
月額の改善額(万円、予算上)
約3.8
2019年度
年度別の改定率(%)
+1.0
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約14
月額の改善額(万円、予算上)
約4.5
2020年度
年度別の改定率(%)
▲0.3
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約14
月額の改善額(万円、予算上)
約4.4
2021年度
年度別の改定率(%)
—
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約17
月額の改善額(万円、予算上)
約5.3
2022年度
当初予算で引き下げ、補正予算で引き上げ
年度別の改定率(%)
▲0.9(当初) / +2.1(補正)
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約18
月額の改善額(万円、予算上)
約5.7
2023年度
年度別の改定率(%)
+5.2
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約23
月額の改善額(万円、予算上)
約7.5
2024年度
2014年度以降で最大の改定率
年度別の改定率(%)
+10.7
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約34
月額の改善額(万円、予算上)
約11.3
2025年度
年度別の改定率(%)
+5.3
改善の累計(%、予算上の単純合計)
約39
月額の改善額(万円、予算上)
約13.4

保育士の所定内給与の推移(2020-2025年、千円)

各年6月分の所定内給与(基本給と手当、超過労働分を除く)。一般労働者(短時間労働者を除く)、企業規模10人以上、男女計。公定価格の改定率とは別の統計
単位: 千円
075150225300246202502126122264232702427925
出典: 厚生労働省 賃金構造基本統計調査(令和2〜7年、職種別)
読み解き

保育士の所定内給与は2020年の245.8千円から2025年の279.2千円へ毎年上がりました。年間賞与は2022年の712.1千円を底に2025年は847.9千円です。2024年12月に適用された+10.7%の改定が2025年6月分の給与にどこまで反映されたかは、この統計だけでは分かりません。

保育士と幼稚園教員・保育教諭の給与(2020-2025年)

賃金構造基本統計調査(各年6月分、年間賞与は前年1年間)。一般労働者、企業規模10人以上、男女計。年収は算出しない
2020年
保育士 所定内給与(千円)
245.8
保育士 年間賞与(千円)
747.4
幼稚園教員・保育教諭 所定内給与(千円)
251.2
保育士 平均年齢(歳)
37.6
2021年
保育士 所定内給与(千円)
250.3
保育士 年間賞与(千円)
744.0
幼稚園教員・保育教諭 所定内給与(千円)
251.5
保育士 平均年齢(歳)
38.1
2022年
保育士 所定内給与(千円)
260.8
保育士 年間賞与(千円)
712.1
幼稚園教員・保育教諭 所定内給与(千円)
262.7
保育士 平均年齢(歳)
38.8
2023年
保育士 所定内給与(千円)
264.4
保育士 年間賞与(千円)
712.2
幼稚園教員・保育教諭 所定内給与(千円)
267.2
保育士 平均年齢(歳)
38.0
2024年
保育士 所定内給与(千円)
270.3
保育士 年間賞与(千円)
741.7
幼稚園教員・保育教諭 所定内給与(千円)
271.9
保育士 平均年齢(歳)
39.5
2025年
保育士 所定内給与(千円)
279.2
保育士 年間賞与(千円)
847.9
幼稚園教員・保育教諭 所定内給与(千円)
285.9
保育士 平均年齢(歳)
40.3

人手不足はなぜ続くのか

有効求人倍率は3.10倍、全職種の2倍以上

保育士の有効求人倍率(求職者1人当たりの求人数)は2025年10月に3.10倍で、全職種の1.20倍の2倍を超えています。2024年4月は2.42倍(全職種1.18倍)でした。いずれも単月の値で季節による変動があるため、月の違う2つの値を単純に比べたり、年度平均と並べたりはできません。

定員充足率が87.7%まで下がる一方で求人倍率が3倍を超える組み合わせは、保育の人手不足が子どもの数ではなく職員の確保の側にあることを示しています。配置基準の見直しで子ども1人当たりの職員を増やす方向が続いており、利用児童が減っても必要な職員の数は同じ割合では減りません。

登録者191万人に対し、社会福祉施設で働く保育士は68万人

保育士の登録者は2015年の132.2万人から2024年の190.5万人へ毎年増えました。一方、保育所や地域型保育事業などの社会福祉施設で保育士として働く人は50.2万人から2023年の69.9万人まで増えた後、2024年は67.5万人と減りました。こども家庭庁は、登録者約191万人に対して従事者は約68万人で、資格を持ちながら社会福祉施設で働いていない人が約123万人いると説明しています。

約68万人は児童養護施設などを含む社会福祉施設全体の人数で、保育所等に限って常勤換算した従事者は48万2,573人(2024年10月1日)、そのうち保育士は35万3,943人です。2023年度には保育所等で常勤の保育士など2万8,825人を採用し(うち2023年度に学校を卒業した人が1万277人)、2万2,895人が退職しました。採用が退職を上回っていても、毎年2万人を超える退職を同じ規模の採用で埋め続ける構造で、賃金のほかに勤務時間や業務の負担が定着を左右します。

定員割れと人手不足は同時に起きる

こども家庭庁が2026年に待機児童を解消できなかった自治体に聞き取りをしたところ、主な要因として申込者数の想定以上の増加や計画していた利用定員の不足と並んで、保育人材の確保の難しさが挙げられました。全国では空きが広がり、都市部の一部では職員が足りずに受け入れを増やせない状態が同じ年に起きています。

2026年度の見直しでは、3歳児の年齢別配置基準に関する経過措置(基準を満たさない施設を当面認める扱い)の終期を2027年度末と定めました。配置基準を手厚くする方向が続く中で、職員の確保ができない施設は定員を下げるか経過措置に頼ることになります。定員割れで収入が減る施設と、職員が足りずに受け入れを絞る施設は別々の課題ではなく、公定価格の人件費がどこまで賃金に届くかという同じ論点に行き着きます。

保育士の登録者と社会福祉施設の従事者(2015-2024年、千人)

各年10月1日。従事者は社会福祉施設等調査の保育士の人数(常勤換算でない人数、児童養護施設などを含む)。登録者と従事者の差は原典の集計で、端数処理により内訳の和と一致しない年がある
2015年
登録者(千人)
1,322
社会福祉施設の従事者(千人)
502
従事していない人(千人)
820
2016年
登録者(千人)
1,395
社会福祉施設の従事者(千人)
554
従事していない人(千人)
841
2017年
登録者(千人)
1,471
社会福祉施設の従事者(千人)
576
従事していない人(千人)
895
2018年
登録者(千人)
1,541
社会福祉施設の従事者(千人)
596
従事していない人(千人)
945
2019年
登録者(千人)
1,607
社会福祉施設の従事者(千人)
634
従事していない人(千人)
973
2020年
登録者(千人)
1,673
社会福祉施設の従事者(千人)
650
従事していない人(千人)
1,022
2021年
登録者(千人)
1,731
社会福祉施設の従事者(千人)
667
従事していない人(千人)
1,065
2022年
登録者(千人)
1,787
社会福祉施設の従事者(千人)
692
従事していない人(千人)
1,096
2023年
登録者(千人)
1,850
社会福祉施設の従事者(千人)
699
従事していない人(千人)
1,151
2024年
登録者(千人)
1,905
社会福祉施設の従事者(千人)
675
従事していない人(千人)
1,230
読み解き

登録者が毎年増える一方で従事者は2023年を境に減り、従事していない人は820千人から1,230千人へ増えました。登録者には出産や転職で現場を離れた人、資格を取っても保育の仕事に就かなかった人が含まれ、この層が戻るかどうかが人材確保の鍵になっています。

主要論点

定員割れはどこまで進み、施設の統合や閉園はいつ本格化するのか?

定員充足率は2015年の93.8%から2026年の87.7%へ下がり、過疎地域では72.7%です。市区町村の計画では保育の申込者が2025年から2029年にかけて約9.5万人減る見込みで、利用定員が2023年の305万928人をピークに減り始めたとはいえ、空きはさらに広がる方向にあります。施設数は2026年も増えており、1施設当たりの利用児童が減る構図は変わっていません。

閉園や統合がどの時点で本格化するかは、定員割れがどの規模の施設で起きるかに左右されます。国は2025年度に定員区分を細分化し、2026年度に過疎地の小規模施設向けの加算と満3歳以上限定小規模保育事業を設けて、小さな施設を維持しやすくしました。一方で、人件費が収益の73.3%を占める構造では、利用児童の減少に合わせて職員を減らすことは配置基準の制約で難しく、収支差率3.2%の余地はすぐに失われます。

都市部では2026年も待機児童1,818人を抱え、充足率は90.9%です。空きのある園と入れない子どもが同じ地域に併存する中で、自治体が施設の配置をどう見直すか、事業者が空きを一時預かりやこども誰でも通園制度の受け皿に転用できるかが、統合や閉園の時期を決めます。

公定価格の引き上げは、保育士の賃金にどこまで届くのか?

公定価格上の人件費は2024年度に+10.7%、2025年度に+5.3%引き上げられ、2013年度以降の改善は予算上の単純合計で約39%です。保育士の所定内給与は2020年の月24.6万円から2025年の27.9万円へ上がりましたが、こども家庭庁は全産業平均を下回ると説明しています。2024年度分は2024年12月に適用され2025年6月分の給与に反映されうる時期ですが、2025年度分は2025年12月の適用で、2025年度分まで含めた改定の効果が賃金統計に表れるのは2026年以降です。

改定分が賃金に届くかどうかは、施設の収支に左右されます。私立保育所の収支差率は3.2%で、定員割れで利用児童が減った施設では、1人当たり単価の引き上げ分が人数の減少で打ち消されます。2025年度の処遇改善等加算の一本化と、2026年度の経営情報を報告しない施設への減算は、加算を職員の賃金に反映させるための仕組みで、報告された経営情報から施設ごとの配分が見えるようになります。

一方で、人事院勧告に連動する改定率は2020年度の▲0.3%や2022年度当初の▲0.9%のように下がる年度もあり、引き上げが続く保証はありません。賃金の上昇が全産業平均に追いつくかは、2026年の賃金構造基本統計調査で改定後の水準が確認できてから判断することになります。

資格を持ちながら働いていない約123万人は保育の現場に戻るのか、配置基準の改善と両立できるのか?

保育士の登録者は約191万人で毎年増えていますが、社会福祉施設で働く保育士は約68万人で、2024年は前年から減りました。資格を持ちながら働いていない人が約123万人いる一方、有効求人倍率は3.10倍(2025年10月)で、人材の供給源は現場の外に大きく残っています。2023年度は保育所等で常勤の保育士など2万8,825人を採用し2万2,895人が退職しており、採用と同じ規模の退職が続く限り、現場の職員数は大きく増えません。

配置基準の改善は、職員の確保と同時には進みにくい課題です。3歳児の年齢別配置基準に関する経過措置は2027年度末までと定められ、職員を確保できない施設は定員を下げるか経過措置に頼ることになります。利用児童が減っても、配置基準を手厚くするほど必要な職員の数は減らず、定員割れの施設でも人手不足は続きます。

働いていない約123万人が戻るかどうかは、賃金のほかに勤務時間や業務の負担、短時間勤務の受け皿に左右されます。定員充足率が87.7%まで下がり、受け皿の量より職員の確保が制約になる局面では、空きのある施設が職員の働き方を見直す余地を持つかどうかが、人手不足の出口を決めます。

よくある質問

保育所の定員充足率とは何で、今はどのくらいですか?
定員充足率は、保育所等(認可保育所・認定こども園・小規模保育などの地域型保育事業)の利用児童数を利用定員で割った割合で、こども家庭庁が毎年4月1日時点で公表しています。2026年4月1日は全国で87.7%(利用定員301万6,417人に対し利用児童264万6,756人)で、2015年の93.8%から下がり、2015年以降で最も低い水準です。年度途中の入所に備えて4月時点で空きを設けている保育所もあるため、数値だけで各園の状況は判断できません。
保育園の定員割れが広がっているのはどの地域ですか?
2026年4月1日の定員充足率は、首都圏・近畿圏や指定都市・中核市を含む都市部で90.9%、過疎法の全部過疎市町村を集計した過疎地域で72.7%です。都道府県別では大阪府の94.9%、神奈川県の94.6%が高く、長野県の74.0%、山梨県の74.6%、高知県の75.8%が低くなっています。2022年から上がったのは埼玉県・千葉県・東京都・愛知県の4都県だけです。
保育所の利益率はどのくらいですか?
こども家庭庁の経営実態調査では、私立保育所の公定価格に対応する収支差率(収益から費用を引いた額の収益に対する割合)は2023年度決算で3.2%(2018年度決算は2.3%)で、人件費が収益の73.3%を占めます。類型別では小規模保育事業(C型)の11.3%が高く、事業所内保育事業(B型適用)は▲6.7%の赤字でした。公定価格に対応する部分の収支で、上場企業の営業利益率とは算式が違います。
処遇改善で保育士の給料は上がりましたか?
公定価格上の人件費は2024年度に+10.7%、2025年度に+5.3%引き上げられ、2013年度以降の改善は予算上の単純合計で約39%です。保育士の所定内給与(企業規模10人以上、男女計)は2020年の月24.6万円から2025年の27.9万円へ毎年上がりました。ただし改定率は給料そのものの上昇率ではなく、2024年度分は2024年12月、2025年度分は2025年12月に適用されたため、2025年の賃金統計には2025年度分が含まれていません。こども家庭庁は保育士の平均賃金が全産業平均を下回ると説明しています。
保育士の有効求人倍率と人手不足の実態はどうなっていますか?
保育士の有効求人倍率は2025年10月の単月で3.10倍(全職種1.20倍)です。保育士の登録者は約191万人いますが、保育所などの社会福祉施設で保育士として働く人は約68万人で、資格を持ちながら働いていない人が約123万人います。保育所等では2023年度に常勤の保育士など2万8,825人を採用し、2万2,895人が退職しました。定員充足率が下がる一方で求人倍率は全職種の2倍を超えており、人手不足は子どもの数ではなく職員の確保の側にあります。

参考資料 / 一次ソース

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