保育業界の市場規模・主要企業・動向
日本の保育業界は、保育所等の利用児童が2021年の274万人を境に減少へ転じ、論点が待機児童の解消から定員割れと保育士の処遇へ移っています。
保育業界とは、認可保育所・認定こども園・小規模保育などの地域型保育事業が就学前の子どもを預かり、国と自治体が定める公定価格をもとに運営される産業です。保育所等の利用児童は2026年4月1日に264万6,756人、施設は4万46か所で(2026年は令和8年熊本地震の影響による暫定値)、待機児童は2017年の2万6,081人から2,435人まで減りました(2026年は前年比181人の増加)。利用児童は2021年を境に減り始め、定員充足率は87.7%に下がっています。社会福祉法人・公営・株式会社が混在する運営主体、上場企業による買収、保育士の処遇と人手不足が共通の論点です。本ページでは、日本の保育業界を、受け皿の規模と需要、業界構造、主要プレイヤー、定員割れと処遇改善の4軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
保育業界とは、認可保育所・認定こども園・小規模保育などの地域型保育事業が就学前の子どもを預かり、国と自治体が定める公定価格をもとに運営される産業です。受け皿は4万46か所まで広がりましたが、利用児童は2021年を境に減少へ転じ、論点は待機児童の解消から定員割れと保育士の処遇へ移っています。
- 施設数は増え続け、利用児童は減り始めています。施設は4万46か所、利用定員は301万6,417人(2026年4月1日)で、利用児童は2021年の274万2,071人から264万6,756人へ減り、定員充足率は87.7%です。
- 運営主体は社会福祉法人・公営・株式会社などが混在しています。保育所2万1,755か所のうち社会福祉法人が1万1,162、公営が6,049、営利法人が3,443で(2024年10月1日)、認定こども園は1万1,212園(2025年4月1日)、小規模保育などの地域型保育事業所は7,448か所あります。
- 論点は待機児童の解消から定員割れと保育士の処遇へ移っています。待機児童は2017年の2万6,081人から2025年の2,254人まで減り(2026年は2,435人)、公定価格の人件費は2024年度に10.7%引き上げられましたが、保育士の有効求人倍率は3.10倍(2025年10月)です。
市場動向
保育所等の利用児童は2026年4月1日に264万6,756人で、2021年の274万2,071人をピークに減っています。施設は4万46か所、利用定員は301万6,417人で、定員充足率は87.7%です。待機児童は2,000人台まで減り、受け皿の量より利用児童の減少と定員割れが市場の主題になっています。
- 施設数は2015年の2万8,783か所から2026年の4万46か所へ増え、利用定員も253万1,692人から301万6,417人へ広がりました。利用児童は2021年の274万2,071人をピークに減り、定員充足率は93.8%から87.7%へ下がっています。
- 待機児童は2017年の2万6,081人から2025年の2,254人へ減り、2026年は2,435人と9年ぶりに増えました。待機児童の75.5%は首都圏・近畿圏と指定都市・中核市にあり、3歳未満が96.0%を占めます。
- 出生数は2025年に67万1,270人まで減りましたが、保育所等の利用率は55.7%(2025年)へ上がっています。国の推計(出生中位、2020年基準)では出生数は2040年に71.8万人、2070年に50.0万人と推計上も減り続ける見通しで(2025年の実績はすでに推計を下回っています)、市区町村の計画でも申込者は2029年にかけて約9.5万人減る見込みです。
競争環境
保育の担い手は、市区町村などの公営、社会福祉法人、株式会社などの営利法人、学校法人、NPOなどその他の法人と多様で、保育所では社会福祉法人と公営が多く、営利法人は小規模保育などの地域型保育事業や企業主導型保育で多く活動しています。上場企業による買収、株式会社が広げる事業領域、保育士の確保が競争と論点の中心で、2026年にはSmile HoldingsによるWITHホールディングスの子会社化など、上場企業の再編も進んでいます。
- 保育施設の運営を主な事業とする上場企業は、JPホールディングス、グローバルキッズCOMPANY、さくらさくプラス、Smile Holdings、ポピンズです。JPホールディングスの売上は433.3億円(2026年3月期)、ポピンズは保育・学童の事業で252.8億円(2025年12月期、ベビーシッターなどを含む連結は344.1億円)です。
- 人材・介護・障害福祉と兼営する上場企業では、ライク、テノ.ホールディングス、AIAIグループが保育を手がけています。ライクの子育て支援事業の売上は358.1億円(2026年5月期、人材・介護を含む連結は673.2億円)、テノの保育事業は136.2億円(2025年12月期)です。
- 2025年から2026年にかけて上場企業による買収が続いています。グローバルキッズCOMPANYは2025年7月にアソシエ・アカデミーを子会社にし、Smile HoldingsはWITHホールディングスを2026年5月に完全子会社化、AIAIグループはきららグループを2026年2月に、児童発達支援のハビーを2026年9月1日に子会社化しました。テノ.ホールディングスは鹿児島のこどもファースト・ジャパンを2026年7月に子会社にし、ピジョンハーツの取得を2026年8月に決めました(株式譲渡は2027年1月の予定)。一方で保育所の運営主体は社会福祉法人1万1,162・公営6,049が多く、上場企業の施設は業界の一部にすぎません。
市場規模推移
2015-2026 · 保育所等利用児童数保育所等の利用児童数の推移 (万人、各年4月1日時点)
保育所等の施設は2015年の2万8,783か所から2026年の4万46か所へ毎年増え、利用定員も253万1,692人から301万6,417人へ広がりました。利用児童は237万3,614人から2021年の274万2,071人まで増えた後、2026年は264万6,756人と5年続けて減っています。定員充足率は93.8%から87.7%へ下がり、2015年以降で最も低い水準です。利用定員も2023年の305万928人をピークに減り始めました。
2026年の定員の内訳は、保育所202万5,892人、幼保連携型認定こども園77万4,897人、幼稚園型認定こども園等9万7,065人、地域型保育事業11万8,563人です。こども家庭庁の集計(各年4月1日)による2024年までの施設数では、幼稚園型認定こども園等が2015年の582から1,602へ、小規模保育などの地域型保育事業が2,737から7,516へ増えており、受け皿の拡大は保育所の増設だけでなく、認定こども園と小規模保育が担ってきました。
待機児童は2017年の2万6,081人から2025年の2,254人まで減り、2026年は2,435人と9年ぶりに増えました。待機児童とは、保育の申込者272万9,681人のうち、保育所等や特例保育を利用している人と、特定の園だけを希望する3万7,672人・育児休業中の1万4,664人など計6万1,448人を除いた数です。2026年の待機児童の75.5%は首都圏・近畿圏と指定都市・中核市にあり、東京都が1,113人、3歳未満が96.0%を占めます。待機児童の多い自治体への聞き取りでは、申込者数の想定以上の増加や利用定員の不足、保育人材の確保の難しさが要因に挙げられ、都内の自治体からは2025年9月に始まった保育料の第一子無償化による保育需要の増加が影響したと考えられるとの回答がありました。
出生数は2015年の100万5,721人から2025年の67万1,270人へ減りましたが、保育所等の利用率が37.9%から2025年の55.7%へ上がったため、利用児童は2026年も2015年の237万3,614人を上回っています。市区町村の計画では申込者が2029年にかけて約9.5万人減る見込みです。国の推計(出生中位)では出生数は2040年に71.8万人、2070年に50.0万人と推計上も減り続ける見通しですが、推計は2020年の国勢調査を基準にしており、2025年の実績67.1万人はすでに推計値の77.4万人を下回っています。
保育には毎年の売上統計が無く、集計の範囲が異なる3つの数字で規模をみます。2021年の経済センサスでは、民営の保育所2万6,135事業所の売上が2兆4,748億円(2020年の実績)で、市町村からの委託費や給付、保護者の負担を含みます。公立の保育所と幼保連携型認定こども園は含みません。事業所を単位に数える統計で、調査の時点も違うため、事業所の数は保育所の施設数とは一致しません。
国の保育関係予算は2026年度に2兆5,731億円で、うち市町村が施設に支給する給付の国負担分が1兆8,758億円、企業主導型保育事業が2,411億円です。国費のみで地方の負担や保護者の負担を含まないため、市場規模ではありません。民間推計では、矢野経済研究所が保育園・学童保育・ベビーシッター・私立幼稚園・習い事など9分野の合計を2021年度に4兆6,833億円としています。3つは範囲が違うため、足したり比べたりはしません。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要認可の受け皿は認可保育所・認定こども園・地域型保育事業の3種類です。認可保育所は児童福祉法に基づき市町村が保育の実施義務を負い、私立には市町村が保育の実施を委ねる費用として委託費を支払います。認定こども園は教育と保育を一体で行う施設で、幼保連携型7,470・幼稚園型1,637・保育所型2,017・地方裁量型88の1万1,212園(2025年4月1日)があります。小規模保育や家庭的保育などの地域型保育事業は原則0〜2歳児が対象で、厚生労働省の調査では2024年10月1日に7,448か所です(こども家庭庁の同年4月1日の集計では7,516か所で、調査と時点が違います)。
お金は、国と自治体が施設に支払う給付や委託費(公定価格)が中心で、財源はこども家庭庁の資料でおおむね保護者が払う保育料と公費が2対8とされ、保育料は2019年10月から3〜5歳児が無償です。公立保育所の運営費は2004年度から国の予算を離れて自治体の一般財源になっています。認可の外側には、国の助成を受ける企業主導型保育事業(助成決定4,290施設、2026年3月末)と、届出制の認可外保育施設(2万68か所、2025年3月末)があり、企業主導型を認可外に含めるかは資料で扱いが違うため、両者の数は足しません。幼稚園8,225園(2025年5月1日)は学校で本ページの対象外ですが、2025年に認定こども園へ移行した740園のうち223園は幼稚園からの移行でした。
保育所2万1,755か所の運営主体は、社会福祉法人1万1,162・公営6,049・営利法人3,443・その他の法人955(2024年10月1日)です。地域型保育事業所7,448か所では営利法人3,508が社会福祉法人1,293より多く、株式会社は、保育所に加えて小規模保育・企業主導型・認可外でも事業を広げてきました。
上場企業は、保育施設の運営が主のJPホールディングス・グローバルキッズCOMPANY・さくらさくプラス・Smile Holdings・ポピンズと、人材・介護・障害福祉を兼営するライク・テノ.ホールディングス・AIAIグループです。ライクの子育て支援サービス事業は415施設(認可保育園176・学童121・受託118、2026年5月期)の規模で、児童1万2,202人を預かります。2025〜2026年にはアソシエ・アカデミー・きららグループ・WITHホールディングス・こどもファースト・ジャパン・ハビーの買収とピジョンハーツの買収の決定が続き、公定価格で収入の上限が決まる事業では、施設数の拡大と買収が成長の手段になっています。
公定価格上の人件費は2024年度に10.7%と2014年度以降で最も大きく引き上げられ、2025年度にも5.3%引き上げられ、2013年度以降の改善は予算上の単純合計で約39%です。保育士の所定内給与は2025年に月27.9万円(2020年は24.6万円)で、こども家庭庁は全産業平均を下回ると説明しています。有効求人倍率は2025年10月に3.10倍(全職種1.20倍)、保育士の登録者約191万人に対し、保育所や地域型保育などの社会福祉施設で保育士として働く人は約68万人で、資格を持ちながら保育の仕事に就いていない人が約123万人います。
保育所等の常勤換算の従事者48万2,573人のうち保育士は35万3,943人(2024年10月1日)で、2023年度は常勤で2万8,825人を採用し2万2,895人が退職しました。私立保育所の公定価格に対応する収支差率は3.2%(収益から費用を引いた額の収益に対する割合、2023年度決算、人件費比率73.3%)で、事業所内保育事業(B型適用)は▲6.7%です。2026年度は過疎地の小規模施設向けの加算と、経営情報を報告しない施設への減算が導入されました。
業界の3大論点
待機児童が減った今、保育の受け皿はなぜ定員割れに向かうのか?
保育の受け皿は2026年4月1日に4万46か所・利用定員301万6,417人まで広がりましたが、利用児童は2021年の274万2,071人をピークに5年続けて減り、定員充足率は2015年の93.8%から87.7%へ下がりました。首都圏・近畿圏や指定都市・中核市などの都市部の90.9%に対し、過疎地域(過疎法の全部過疎市町村)は72.7%と地域差が大きくなっています。年度途中の入所に備えて4月時点で空きを設けている保育所もあるため、数字だけで各園の状況は判断できませんが、空きが広がる方向にあることは全国の値に表れています。
背景には需要の頭打ちがあります。出生数は2025年に67万1,270人まで減り、保育所等の利用率は55.7%まで上がりました。利用率の上昇が出生数の減少を補ってきましたが、市区町村の計画では申込者が2029年にかけて約9.5万人減る見込みです。公定価格に対応する私立保育所の収支差率(収益から費用を引いた額の収益に対する割合)は3.2%(2023年度決算)で、人件費が収益の73.3%を占める構造では、定員割れによる収入の減少がそのまま経営に響きます。
国は2026年度に、過疎地の小規模施設向けの加算と、3〜5歳児だけを預かる小規模保育事業を新たに設けました。利用定員は2023年の305万928人をピークに減り始めており、定員規模の見直し、施設の統合や閉園の判断、空きを使った一時預かりや「こども誰でも通園制度」への対応が、事業者と自治体の経営課題になっています。
社会福祉法人・公営・株式会社が混在する保育で、上場企業の買収はどこまで進むのか?
保育所2万1,755か所の運営主体は、社会福祉法人1万1,162・公営6,049・営利法人3,443(2024年10月1日)で、営利法人が最も多いのは小規模保育などの地域型保育事業所(7,448か所のうち3,508)です。認定こども園1万1,212園では社会福祉法人5,668・学校法人3,545に対し営利法人は182園で、類型ごとに担い手が違います。株式会社は、保育所に加えて小規模保育・企業主導型・認可外でも事業を広げてきました。
上場企業の規模をみると、JPホールディングスの売上433.3億円(2026年3月期)、ライクの子育て支援事業358.1億円(2026年5月期)、ポピンズの連結344.1億円(2025年12月期)などで、2021年の経済センサスで民営の保育所2万6,135事業所(事業所単位の集計で施設数とは一致しません)の売上が2兆4,748億円であることと並べれば、上場8社の施設は業界の一部です。公定価格で1人当たりの収入が決まる事業では、成長の手段は施設数の拡大か買収に向かいます。2025〜2026年には、グローバルキッズCOMPANYによるアソシエ・アカデミー、AIAIグループによるきららグループとハビー(2026年9月1日に取得完了)、Smile HoldingsによるWITHホールディングス、テノ.ホールディングスによるこどもファースト・ジャパンの子会社化が続き、テノ.ホールディングスはピジョンハーツの取得も決めました。
買収による増収は保育の需要の伸びではなく、連結の範囲が広がった結果です。利用児童が減るなかで、社会福祉法人の事業承継や、定員割れで経営が難しくなった施設の引き受け手として株式会社がどこまで受け皿になるかが、次の論点になります。
公定価格の人件費を2024年度に10.7%引き上げても、保育士の人手不足はなぜ続くのか?
公定価格の人件費の改定率は2024年度に10.7%と、2014年度以降の各年度の改定率で最も大きく、2025年度も5.3%で、2013年度以降の改善は予算上の単純合計で約39%です。保育士の所定内給与は2020年の月24.6万円から2025年に27.9万円へ毎年上がりましたが、こども家庭庁は保育士の平均賃金が全産業平均を下回ると説明しています。2024年度分は2024年12月、2025年度分は2025年12月に適用されたため、2025年の賃金統計には改定が反映しきれていません。
人手不足の構造は数字に表れています。保育士の有効求人倍率は2025年10月に3.10倍で、全職種の1.20倍を上回ります。保育士の登録者は約191万人いる一方、保育所や地域型保育などの社会福祉施設で保育士として働く人は約68万人で、資格を持ちながら保育の仕事に就いていない人が約123万人います。2023年度は保育所等で常勤の保育士など2万8,825人を採用し、2万2,895人が退職しました。
私立保育所は人件費が収益の73.3%を占め、収支差率は3.2%(2023年度決算)です。公定価格で収入が決まる事業では、事業者が独自に賃金を上積みする余地が小さく、改定分がどれだけ賃金に届くかが問われます。2025年度の処遇改善等加算の一本化と、2026年度に導入された経営情報を報告しない施設への減算は、改定分を賃金に届かせるための仕組みです。
よくある質問 (FAQ)
保育業界の市場規模はどれくらいですか?
保育所等の施設数と利用児童数はどのくらいですか?
待機児童は今どのくらいいて、なぜ2026年に増えたのですか?
保育園を運営する大手企業はどこですか?
認可保育所・認定こども園・小規模保育・認可外保育施設は何が違いますか?
保育園は誰が運営していますか? 株式会社も参入できますか?
保育士の給料は上がっていますか?
出生数が減るなかで、保育業界は今後どうなりますか?
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