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葬儀業界の構造|葬儀社・互助会・JA・異業種の役割と事業所の実像【2026年版】

葬儀を担うのは、専門葬儀社、冠婚葬祭互助会、JA、異業種からの参入、ネット仲介の5つの類型です。全国の葬儀業は2021年の経済センサスで8,070事業所あり、半数近くが従業者4人以下の小さな事業者で、売上1兆2,140億円・葬儀取扱133万2,485件を分け合っています。互助会は前払いの掛金、JAは組合員、鉄道や生協は本業の顧客を土台に葬儀へ入り、ネット仲介は遺族と葬儀社をつなぎます。火葬場は大半が市町村などの公営で、料金や日程は葬儀社の外側で決まります。本ページでは類型ごとの役割と規模、事業所の規模分布、売上の中身を整理します。

葬儀の担い手の類型

類型ごとの特徴・代表例・根拠となる数値。事業主体別の割合は全葬連(業界団体)が2017年に示した概数で、年次と算出根拠は資料に明示されていない

葬儀の担い手を事業の成り立ちで分けると、葬儀を本業とする専門葬儀社、前払いの掛金で会員の葬儀を施行する冠婚葬祭互助会、組合員向けに葬祭を行うJA、鉄道・生協・生花などの異業種からの参入、遺族と葬儀社をつなぐネット仲介の5つになります。全葬連の2017年の資料では、互助会約40%・専門業者約30%・農協約15%・その他約15%が目安とされています。公正取引委員会が2017年に公表した、696社の葬儀事業者に行った調査では、資本金5,000万円未満が59.4%、年間の施行件数が100件超500件以下の事業者が50.5%で、地域に根ざした中小の事業者が多数を占める姿が数字でも裏付けられます。火葬場は施行者ではありませんが、葬儀の日程と費用の前提を決めるため、類型の表に加えています。

専門葬儀社
葬儀の施行を本業とする
特徴
会館を持ち、地域の寺院や火葬場と結びついて施行する。中小・個人経営が大半
代表例
燦ホールディングス(公益社)、ティア、各地の葬儀社
根拠となる数値
全葬連の56組合・1,186社(2025年)。葬儀業8,070事業所のうち従業者4人以下3,803(2021年調査)
冠婚葬祭互助会
前払いの掛金で葬儀・婚礼
特徴
毎月の掛金を前払いで積み立て、会員の葬儀を自社の会館で施行。割賦販売法の許可が必要
代表例
ベルコ、日本セレモニー、サン・ライフホールディング、平安レイサービス、各地の互助会
根拠となる数値
許可228社(2026年3月末)、加入契約2,095万口・前受金2兆3,814億円(2025年3月、冠婚葬祭合計)、互助会の事業所359・葬儀12万4,740件(2021年調査、件数は2020年実績)
JA(農協)
組合員向けの葬祭事業
特徴
総合農協が組合員向けに葬祭・葬具を提供。農村部で地域の受け皿
代表例
JA葬祭センター、JAの葬祭事業部門
根拠となる数値
葬祭事業を行う総合農協237組合(令和6事業年度、集計507組合)
異業種からの参入
本業の顧客基盤で葬儀へ
特徴
鉄道・生協・生花・ホテル・流通などが自社の顧客や施設を生かして参入
代表例
鉄道会社系の葬儀社、生協の葬祭事業、生花店系
根拠となる数値
新規参入があったと答えた事業者72.6%、うち他業種から24.1%(2017年公表の調査)
ネット仲介(ポータル)
送客と定額プラン
特徴
比較サイトや定額プランで遺族を集め、提携する葬儀社に送客。施行は葬儀社
代表例
鎌倉新書(いい葬儀)、ユニクエスト(小さなお葬式)
根拠となる数値
鎌倉新書の2026年1月期の売上83.4億円(葬儀以外の墓・相続などを含む全社売上)
火葬場
施行の前提となるインフラ
特徴
墓地埋葬法の許可施設。大半が市町村などの公営で、民営は都市部に少数
代表例
市町村の斎場、東京博善(廣済堂ホールディングス)
根拠となる数値
許可3,511施設(うち公営1,832)、恒常的に使用1,350施設(うち公営1,316)、2024年度

専門葬儀社 — 地域に根ざした中小の事業者が大半

葬儀の施行(葬儀を執り行うこと)を本業とし、通夜・葬儀・告別式の運営、祭壇や式場の設営、生花・料理・返礼品の手配、火葬場の予約までを請け負います。全葬連には56の事業協同組合を通じて1,186社が所属し、葬祭ディレクター技能審査などの業界共通の仕組みを担っています。経済センサスの葬儀業8,070事業所は担い手の類型別には分けられていませんが、従業者4人以下が3,803か所、5〜9人が2,009か所と、家族経営に近い規模の事業者が多数を占めます。

上場企業では燦ホールディングス(公益社・きずなホールディングスなど)が267会館(2025年3月末、2026年2月に子会社化したこころネットは含まない)、ティアが直営とフランチャイズで219店(2025年11月)を持ち、買収で会館網を広げています。それでも従業者10〜29人の事業所が1,643か所、30人以上が392か所という分布は、葬儀が地域の寺院や火葬場、慣習と結びついた事業で、全国一律の運営で効率を出しにくいことを示しています。各社の業績は主要企業のページで扱います。

冠婚葬祭互助会 — 前払いの掛金で会員の葬儀を施行

会員が毎月の掛金を前払いで積み立て、将来の葬儀や婚礼の施行に充てる仕組みで、前払いの分割契約を規制する割賦販売法に基づく経済産業省の許可が必要です。2026年3月末で228社が許可を受け、関東76社、中部32社、九州32社など全国に分布します。業界団体の全日本冠婚葬祭互助協会には正会員201社が加盟し、同協会の集計で冠婚葬祭を合わせた加入契約は2,095万口(口は契約の数)、会員から預かった前受金は2兆3,814億円(2025年3月)です。非上場の大手にはベルコ(兵庫)や日本セレモニー(長崎)があり、上場企業ではサン・ライフホールディングが互助会系です。加入契約は2013年3月の2,396万口から減っています。

互助会の規模感を示す数字は資料によって数えているものが違います。経済センサスでは「冠婚葬祭互助会」に分類された事業所は359か所で、葬儀を12万4,740件取り扱いました(2021年調査、件数は2020年実績)が、これは互助会として分類された事業所が自ら施行した分だけです。従業者5人以上の葬儀業事業所を対象に2020年に実施した経済構造実態調査(2019年実績)では、取扱100万9,405件のうち互助会の契約を使った葬儀が22万9,960件(22.8%)あり、互助会の会員の葬儀を葬儀業に分類される会館が施行する形が多いことが分かります。全葬連が2017年に示した「互助会約40%」は事業主体別の施行の目安(概数)で、分類別の統計とは一致しません。前受金を負債として抱えるため財務の構造は専門葬儀社と異なり、会員の高齢化で葬儀の施行が増える一方、婚礼の件数は伸びにくくなっています。前受金の保全や制度の詳細はブライダル業界のページで扱っています。

JA(農協) — 組合員向けの葬祭事業

総合農協は信用・共済・購買・販売に加えて「その他の事業」として葬祭・葬具を手がけており、令和6事業年度には集計507組合のうち237組合が葬祭事業を実施しました。JA葬祭センターなどの名称で会館を持ち、組合員とその家族の葬儀を地域の相場より抑えた価格で施行する形が多く、農村部では地域の受け皿になっています。全葬連の2017年の資料では事業主体別の目安として農協約15%が示されています。

公正取引委員会が2017年に公表した調査でも、他業種から葬儀に新規参入した事業者の本業は、不動産や建設などをまとめた「その他」を除く個別の業種では農業協同組合事業が21.4%と最も多く挙げられました。組合員という固定の顧客基盤を持つ点は互助会の会員制と似ていますが、掛金の前払いではなく共済や貯金との関係で接点を持つ点が異なります。JAの統計には葬祭の施行件数や売上が無いため、本ページでは組合数のみを示しています。

異業種からの参入 — 鉄道・生協・生花・ホテルが本業の顧客を生かす

公正取引委員会が2017年に公表した調査では、回答した葬儀事業者の72.6%が自社の地域で新規参入があったと答え、参入者の54.5%は他地域の葬儀事業者、24.1%は他業種からでした。他業種の本業は農業協同組合事業21.4%、生花事業13.2%、生活協同組合事業12.6%、鉄道事業10.1%、レストラン事業7.5%の順です。

鉄道会社は沿線の住民と駅前の施設、生協は組合員、生花店は葬儀用の花の納入先、ホテルは宴会場と料理という、本業で持つ顧客や施設を葬儀に転用します。参入側にとって葬儀は本業の顧客の高齢化に合わせた周辺事業で、専門葬儀社にとっては地域の件数を分け合う競合です。2017年公表の調査のため最新の参入状況は分かりませんが、死亡数が増える中で本業の顧客基盤を葬儀に広げる動きは続いているとみられます。

ネット仲介(ポータル) — 遺族と葬儀社をつなぎ、定額プランを広げる

鎌倉新書の「いい葬儀」やユニクエストの「小さなお葬式」のように、インターネットで葬儀社を比較したり定額のプランを申し込んだりできるサービスです。施行は提携する葬儀社が行い、仲介側は成約に応じた手数料を受け取ります。鎌倉新書の2026年1月期の売上は83.4億円で、葬儀社の売上とは性質が異なります。亡くなってから数日で葬儀社を決める遺族にとって、比較の入口になっています。

葬儀社の側からみると、ポータル経由の送客は件数を確保する経路である一方、手数料は利益の外側で決まる費用です。会員や提携団体から直接紹介を受ける葬儀社と、送客に依存する葬儀社で集客の構造が分かれます。定額プランが低価格を前面に出すことは、家族葬や直葬の広がりと料金トラブルの両方に関わっており、家族葬へのシフトのページで扱います。

火葬場 — 大半が公営、民営は都市部に少数

火葬場は墓地、埋葬等に関する法律の許可を受けた施設で、2024年度に許可を受けた施設は3,511、恒常的に使われているのは1,350です。恒常的に使用する施設のうち市町村などの公営が1,316施設(97.5%)で、宗教法人や公益法人、その他(民営など)はわずかです。許可施設の数は2008年度の5,112から2024年度の3,511へ減っており、集落単位の小さな施設が廃止され、広域の斎場に集約されてきました。

民営の火葬場は都内の6か所を運営する東京博善(廣済堂ホールディングス傘下)など少数で、東京23区のように民営が火葬の多くを担う地域は例外です。火葬場の数と稼働は葬儀の日程を左右し、都市部では順番待ちで葬儀が数日後になることがあります。葬儀社は火葬場を選べても料金や空き状況は決められないため、火葬場の運営主体と料金は、葬儀社の外側にある構造要因です。

従業者規模別の葬儀業事業所(2021年調査、売上と件数は2020年実績)

個人経営を除く民営事業所(個人経営の葬儀社は別集計で、本ページの数には含まない)。従業者500人以上の区分は公表値がなく非表示。各列の合計は葬儀業の計と一致
従業者1〜4人
事業所数
3,803
従業者数(人)
8,476
売上(億円)
3,002
葬儀取扱件数(件)
364,966
従業者5〜9人
事業所数
2,009
従業者数(人)
13,371
売上(億円)
2,533
葬儀取扱件数(件)
292,659
従業者10〜29人
事業所数
1,643
従業者数(人)
25,626
売上(億円)
3,792
葬儀取扱件数(件)
419,021
従業者30〜49人
事業所数
243
従業者数(人)
8,971
売上(億円)
1,127
葬儀取扱件数(件)
119,732
従業者50〜99人
事業所数
114
従業者数(人)
7,617
売上(億円)
775
葬儀取扱件数(件)
72,506
従業者100〜299人
事業所数
31
従業者数(人)
4,966
売上(億円)
418
葬儀取扱件数(件)
30,639
従業者300〜499人
事業所数
4
従業者数(人)
1,482
売上(億円)
211
葬儀取扱件数(件)
8,098
出向・派遣従業者のみ
事業所数
223
従業者数(人)
—
売上(億円)
282
葬儀取扱件数(件)
24,864
葬儀業 計
事業所数
8,070
従業者数(人)
70,509
売上(億円)
1兆2,140
葬儀取扱件数(件)
1,332,485
読み解き

葬儀業8,070事業所のうち、従業者4人以下が3,803か所で47.1%を占め、5〜9人の2,009か所を合わせると72.0%になります。4人以下の事業所の葬儀取扱は36万4,966件、売上は3,002億円で、小さな事業所が件数でも大きな割合を担っています。10〜29人の事業所は1,643か所で、売上3,792億円・取扱41万9,021件と、規模区分の合計では最も多くの葬儀を手がけています(1事業所当たりの件数は規模が大きいほど多くなります)。出向・派遣従業者のみの事業所223か所は、法人の本部などが別の事業所から人を回している形です。

事業所の数では小規模が大半を占め、売上では次の表のとおり中規模の会館型が中心という2つの顔が、葬儀業の構造の特徴です。

売上階級別の葬儀業事業所(2021年調査、売上と件数は2020年実績)

個人経営を除く民営事業所。10億円以上の2区分は売上と件数が秘匿
売上5000万円未満
事業所数
2,572
従業者数(人)
9,542
売上(億円)
616
葬儀取扱件数(件)
187,901
売上5000万円〜1億円未満
事業所数
1,838
従業者数(人)
10,316
売上(億円)
1,343
葬儀取扱件数(件)
223,651
売上1〜5億円未満
事業所数
3,313
従業者数(人)
35,405
売上(億円)
6,919
葬儀取扱件数(件)
682,194
売上5〜10億円未満
事業所数
274
従業者数(人)
9,279
売上(億円)
1,832
葬儀取扱件数(件)
160,483
売上10〜100億円未満
事業所数
72
従業者数(人)
5,482
売上(億円)
—
葬儀取扱件数(件)
—
売上100億円以上
事業所数
1
従業者数(人)
485
売上(億円)
—
葬儀取扱件数(件)
—
読み解き

売上階級では1億円から5億円未満の3,313事業所が最も多く、売上6,919億円は葬儀業全体の57.0%、取扱68万2,194件は全体の51.2%にあたります。5,000万円未満の事業所は2,572か所と数は多いものの売上は616億円で、100億円以上は1事業所だけです。

業務種類別の売上(2019年、従業者5人以上の葬儀業事業所、億円)

従業者5人以上の5,291事業所の集計(経済センサスとは調査の方法と年が異なり、事業所数は一致しない)。葬儀請負の内訳は祭壇・式場設備、生花、返礼品、飲食、式場使用などに分かれ、億円への四捨五入で内訳の和と計が1億円ずれる
葬儀請負 計
以下の内訳の合計
売上(億円)
1兆1,383
祭壇・式場設備
売上(億円)
5,682
生花
売上(億円)
1,412
返礼品
売上(億円)
1,403
飲食
売上(億円)
1,220
式場使用
売上(億円)
823
その他(葬儀請負内)
売上(億円)
844
葬儀請負以外のサービス
法要・墓石など
売上(億円)
228
読み解き

従業者5人以上の葬儀業事業所の売上1兆1,611億円(2019年)のうち、葬儀の請負が1兆1,383億円を占めます。内訳では祭壇・式場設備が5,682億円と最も大きく、葬儀請負の49.9%にあたります。生花1,412億円、返礼品1,403億円、飲食1,220億円が続き、式場の使用料は823億円です。

生花・返礼品・飲食は参列者の人数に比例して増える費目で、家族葬や直葬のように参列者を限る形式が広がるほど縮みます。祭壇や式場設備の売上は参列者の数に左右されにくい一方、小規模ホールへの投資と稼働率に収益が依存します。葬儀社の売上の中身がこのように分かれていることが、形式の小規模化が1件当たりの売上を下げる仕組みの背景です。形式ごとの費用は家族葬へのシフトのページで扱います。

主要論点

中小零細が大半の構造は、上場企業や互助会への集約で変わるのか?

葬儀業8,070事業所の47.1%が従業者4人以下で、全葬連は中小零細が90%以上と説明しています。上場企業の燦ホールディングス(267会館)とティア(219店)は買収で会館網を広げ、互助会も許可業者228社、全互協の集計で加入契約2,095万口の基盤を持ちますが、事業所の数でみれば業界の一部にとどまります。

集約を進める要因は、小規模な事業者の後継者難と、家族葬向けの小規模ホールを多数持つ運営に資本力が要ることです。一方で集約を妨げる要因もあります。葬儀は地域の寺院や火葬場、慣習と結びつき、売上の中心である中規模の会館型事業者(1億円から5億円未満が3,313か所)は地域での信頼で件数を得ているため、全国チェーンの看板がそのまま競争力になるとは限りません。

今後は、事業承継の受け皿として上場企業や互助会、JAが小規模事業者を取り込む動きが続く一方、地域ごとに有力な葬儀社が残る構造は当面変わらないとみられます。集約の度合いは、会館の固定費を件数で支えられる地域かどうかで分かれる見通しです。

互助会の前払いモデルは、加入者の減少の中で持続するのか?

冠婚葬祭互助会は会員の前払いの掛金で将来の施行を約束する仕組みで、前受金は2兆3,814億円(2025年3月、冠婚葬祭合計)に達します。加入契約は2013年3月の2,396万口から2,095万口へ減っており、新規の加入が解約と施行による減少を下回る局面にあります。

会員の高齢化は、当面は葬儀の施行件数を押し上げます。従業者5人以上の葬儀業事業所でも取扱件数の22.8%が互助会の契約を使った葬儀で、互助会の会員が施行の確かな源泉になっています。一方で、婚礼の需要は縮み、若い世代が掛金を前払いする動機は弱まっています。前受金を負債として抱える財務構造は、加入が減り施行が増える局面では資金の流出が続くことを意味します。

互助会側は介護やホテル、終活サービスで会員との接点を広げ、前払い以外の収益を模索しています。前受金の保全は割賦販売法で義務づけられ、許可業者228社の経営は経済産業省の監督下にあります。加入者の減少が続く中で、互助会が「会員の葬儀を施行する専門葬儀社」へ軸足を移すのか、前払いモデルを若い世代向けに作り直すのかが、この類型の中長期の論点です。

火葬場が公営中心であることは、葬儀業にとって何を意味するのか?

恒常的に使われる火葬場1,350施設の97.5%は市町村などの公営で、火葬は自治体が住民に提供する公共サービスとして運営されてきました。許可施設の数は2008年度の5,112から3,511へ減り、広域の斎場に集約されています。葬儀社は火葬場を所有せず、料金も空き状況も決められないため、火葬は葬儀の外側にある前提条件です。

死亡数が2040年ごろまで増える中で、都市部では火葬の順番待ちが葬儀の日程を数日単位で遅らせ、安置の費用や遺族の負担につながっています。公営の火葬場は自治体の財政と住民の合意で炉を増やすため、需要の増加に合わせた増設は簡単ではありません。民営の東京博善が都内の火葬の多くを担う東京23区は例外的な構造で、2026年には運営会社の売却検討が報じられ(会社は「決定した事実はない」とコメント)、運営主体と料金のあり方が議論になっています。

葬儀社にとっては、火葬場の受け入れ能力が件数の上限と日程を決める以上、安置施設や日程調整の提案力が差別化の要素になります。火葬場の集約と都市部の混雑は、葬儀業の構造を外側から変える要因として、死亡数のピークに向けて重みを増す見通しです。

中期見通し

近未来1-2年

2026年6月に実施された経済センサス活動調査(2025年実績)の結果が2027年以降に公表されれば、2021年の8,070事業所からの増減と規模分布の変化が分かります。上場企業の買収(燦ホールディングスは2026年2月にこころネットを子会社化)と互助会の加入契約の減少は続く見通しで、担い手の類型の中で小規模事業者から会館型事業者への件数の移動が進むかが注目点です。

中期3-5年

死亡数の増加で件数は増えますが、小規模事業者の後継者難と家族葬向け小規模ホールへの投資負担から、事業承継による集約が進むとみられます。互助会は会員の高齢化で施行が増える一方、加入の減少が続けば前払いモデルの見直しを迫られます。異業種とネット仲介は、本業の顧客基盤と定額プランで件数を取り込み、専門葬儀社との競合が地域ごとに強まります。

長期5-10年

2040年ごろの死亡数のピークに向けて、火葬場の受け入れ能力と公営中心の運営が葬儀の日程と費用の制約として重みを増します。類型の境界は薄れ、互助会が専門葬儀社に近づき、専門葬儀社が会員制や生前契約で互助会に近づく動きが進む可能性があります。地域に根ざした中小の事業者が大半を占める構造は残りつつ、会館と会員を持つ事業者への集約がゆっくり進む見通しです。

よくある質問

葬儀社は全国に何社ありますか?
2021年の経済センサスでは、個人経営を除く葬儀業の事業所は8,070か所で、従業者7万509人が働いています。従業者4人以下の事業所が3,803か所(47.1%)と半数近くを占めます。業界団体の全葬連には1,186社が所属し、冠婚葬祭互助会の事業所は別に359か所あります。
専門葬儀社と冠婚葬祭互助会は何が違いますか?
専門葬儀社は依頼を受けてから葬儀を施行し、費用はそのつど支払われます。冠婚葬祭互助会は会員が毎月の掛金を前払いで積み立て、将来の葬儀や婚礼に充てる仕組みで、割賦販売法に基づく経済産業省の許可が必要です。許可を受けた互助会は228社(2026年3月末)、加入契約は2,095万口、前受金は2兆3,814億円(2025年3月、冠婚葬祭合計)です。互助会の会員が葬儀社の会館で施行する例もあり、両者の境界は重なっています。
JA(農協)も葬儀をしているのですか?
はい。総合農協は「その他の事業」として葬祭・葬具を手がけ、令和6事業年度には集計507組合のうち237組合が葬祭事業を実施しました。JA葬祭センターなどの会館で組合員とその家族の葬儀を施行し、農村部では地域の受け皿になっています。全葬連の2017年の資料では事業主体別の目安として農協約15%が示されています。
葬儀業界は中小企業が多いのですか?
事業所の数では小規模事業者が大半を占めます。2021年の経済センサスでは葬儀業8,070事業所のうち従業者4人以下が47.1%、9人以下が72.0%を占め、全葬連は中小零細が90%以上と説明しています。一方、売上では1億円から5億円未満の3,313事業所が全体の57.0%を占め、会館を持つ中規模の葬儀社が中心です。上場企業の燦ホールディングス(267会館)やティア(219店)は、事業所の数でみれば業界の一部です。
火葬場は誰が運営しているのですか?
大半が市町村などの公営です。2024年度に恒常的に使われている火葬場1,350施設のうち1,316施設(97.5%)が公営で、民営は都内の東京博善(廣済堂ホールディングス傘下)など少数です。許可施設は2008年度の5,112から2024年度の3,511へ減り、広域の斎場に集約されています。火葬の料金と日程は葬儀社の外側で決まるため、都市部では順番待ちが葬儀の日程を左右します。

参考資料 / 一次ソース

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    総務省・経済産業省 令和3年経済センサス‐活動調査(冠婚葬祭業)
  2. 2.
    総務省・経済産業省 経済構造実態調査(葬儀業)
  3. 3.
    全日本葬祭業協同組合連合会 全葬連の概要 / 消費者委員会 資料「葬儀業界の現状」(2017年4月)
  4. 4.
    経済産業省 前払式特定取引業者(冠婚葬祭互助会)許可事業者一覧(2026年3月末)
  5. 5.
    全日本冠婚葬祭互助協会 互助会とは・組織概要
  6. 6.
    農林水産省 令和6事業年度 総合農協統計表
  7. 7.
    公正取引委員会 葬儀の取引に関する実態調査報告書(2017年3月)
  8. 8.
    厚生労働省 衛生行政報告例(墓地・火葬場・納骨堂数)
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