葬儀業界の市場規模・主要企業・動向
日本の葬儀業界は、年間160万人の死亡を背景に件数が増える一方、家族葬が半数近くを占めて1件当たりの費用が下がり、売上は横ばい圏にあります。
葬儀業界とは、通夜・葬儀・告別式の施行と、祭壇・式場・飲食・返礼品の提供を中心に、火葬や法要までを担う産業です。死亡数は2024年に160万5,378人と過去最多となり、葬儀業の売上は6,109億円、取扱件数は50万2,921件(売上上位の事業所の合計)に達しました。件数が増える一方、家族葬など小規模な形式が主流になり、1件当たりの費用は2024年まで下がりました。中小・地域の事業者が大半を占めるなかで、上場企業による集約、担い手の多様化、料金表示をめぐるトラブルが共通の論点です。本ページでは、日本の葬儀業界を、市場規模と死亡数、業界構造、主要プレイヤー、葬儀の形式と費用の4軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
葬儀業界とは、通夜・葬儀・告別式の施行と、祭壇・式場・飲食・返礼品の提供を中心に、火葬や法要までを担う産業です。死亡数が2024年に160万5,378人と過去最多を更新して需要の土台は広がる一方、家族葬が47.0%を占める小規模化で1件当たりの費用が下がり、売上は横ばい圏にあります。
- 死亡数は増えていますが、売上は横ばいが続いています。売上上位の事業所の合計は2024年に6,109億円と6,000億円前後で推移し、全事業所では1兆2,140億円(2021年の経済センサス、2020年実績)の規模です。
- 全国8,070事業所の半数近くが従業者4人以下の小さな事業者です。専門葬儀社に加え、掛金を前払いで積み立てて葬儀や婚礼に充てる冠婚葬祭互助会、JA、鉄道や生協などの異業種、ネット仲介と、担い手は多様です。
- 家族葬が47.0%で主流となり、総額の中央値は96.73万円です。葬儀サービスの相談は2025年度に917件(うち高価格・料金482件)と高止まりし、消費者庁の措置命令も出ています。
市場動向
売上上位の事業所を対象とする調査では、葬儀業の売上は2024年に6,109億円、取扱件数は50万2,921件でした。売上は2015年以降6,000億円前後で推移し、2020年に5,135億円へ落ち込んだ後に回復しています。件数は増える一方で、家族葬など小規模な形式の広がりが1件当たりの費用を押し下げています。
- 売上は2019年の6,001億円から2020年に5,135億円へ減り、2022年5,607億円、2023年5,945億円、2024年6,109億円と戻しました。取扱件数は2015年の41万9,815件から50万2,921件へ増えています。
- 死亡数は2024年に160万5,378人で、75歳以上が8割を占めます。2025年は158万9,533人とわずかに減りました。国の推計では2040年に166万5,021人でピークを迎え、2070年に152万1,416人へ減る見通しです。
- 葬儀費用の平均は2013年の202.9万円から2024年の118.5万円へ下がりました。2026年調査は集計方法が中央値に変わり総額96.73万円で、平均の系列と直接は比べられません。公的統計では、従業者5人以上の事業所が2019年に取り扱った約101万件の6割が100万円未満でした。
競争環境
葬儀の担い手は、専門葬儀社、冠婚葬祭互助会、JA、鉄道・生協・生花などの異業種、ネット仲介と多様で、全国8,070事業所の大半は中小・地域の事業者です。上場企業による集約と会館の展開、低価格プランと価格表示のあり方、互助会の前受金の3軸が競争と論点の中心で、2024年の燦ホールディングスによるきずなホールディングスの子会社化、2026年の平安レイサービスの非公開化と、上場企業の再編も進んでいます。
- 上場の葬儀専業は燦ホールディングスとティアです。燦は公益社などを運営し、2024年に家族葬のファミーユを展開するきずなホールディングスを子会社化して2025年3月期の売上は319.8億円(その後に決算期を8月へ変更)、2026年2月には福島のこころネットも株式交換で完全子会社にしました。ティアは名古屋を地盤に直営とフランチャイズで会館を広げ、2025年9月期の売上は215.6億円です。
- 冠婚葬祭互助会系ではサン・ライフホールディング(神奈川地盤、2026年3月期売上141.5億円)が上場し、湘南地盤の平安レイサービスは2026年5月に株式を非公開化しました。経済産業省の許可を受けた互助会は228社あり、全互協の集計では冠婚葬祭合計で前受金2兆3,814億円・加入契約2,095万口(契約の数、2025年3月)を預かっています。
- 隣接では鎌倉新書(葬儀社への送客ポータル、2026年1月期売上83.4億円)、都内の民営火葬場を運営する東京博善を傘下に持つ廣済堂ホールディングス、葬儀と墓石のニチリョクが上場しています。ベルコ(兵庫)や日本セレモニー(長崎)など非上場の大手互助会も各地に地盤を持ち、上場企業は業界の一部にすぎません。
市場規模推移
2000-2024 · 葬儀業売上高売上上位の事業所を対象とする経済産業省の調査では、葬儀業の売上は2024年に6,109億円、取扱件数は50万2,921件でした。売上は2015年の6,065億円から6,000億円前後で推移し、2020年に5,135億円まで落ち込んだ後、2024年には2017年の6,112億円に並ぶ水準まで戻りました。取扱件数は2015年の41万9,815件から50万件台へ増えており、調査対象の事業所が一部変わった年(2002年、2011年など)がある点を踏まえても、件数の増加に売上が追いついていない構図がみえます。
全事業所を対象とする2021年の経済センサスでは、葬儀業の売上は1兆2,140億円、葬儀取扱件数は133万2,485件(いずれも2020年の実績)です。飲食や返礼品を含む民間推計では2024年に1兆8,300億円(矢野経済研究所)とされ、どの範囲を集計するかで市場の大きさは異なります。
葬儀の需要の土台である死亡数は、2000年の96万1,653人から2024年に160万5,378人へ増え、過去最多を更新しました。2024年の死亡数のうち75歳以上が128万5,059人と8割を占め、高齢化が件数の増加を支えています。2025年は158万9,533人と、わずかに減りました。
国立社会保障・人口問題研究所の推計(出生中位・死亡中位)では、死亡数は2040年の166万5,021人まで増えた後に減少へ転じ、2070年には152万1,416人となる見通しです。推計は2020年の国勢調査を基準にしているため、各年の実績値とは一致しません。件数が増えても、公正取引委員会が2017年に公表した調査で1件当たりの売上が減っていると答えた事業者が79.0%に上るように、死亡数の増加がそのまま売上の拡大には結びついていません。
鎌倉新書の全国調査では、葬儀の形式は家族葬が47.0%(2026年)で最も多く、2022年の55.7%、2024年の50.0%からは下がったものの主流の位置は変わりません。一般葬は30.2%で、通夜を行わない一日葬が6.9%から11.9%へ増え、通夜も告別式も行わず火葬だけを行う直葬・火葬式も10.8%と1割前後で推移しています。
費用は2024年まで下がってきました。同調査の葬儀費用の総額は平均で2013年の202.9万円から2024年に118.5万円となりました。2026年の調査は集計を中央値に変え、総額は96.73万円(基本料金72.02万円、飲食費11.67万円、返礼品費13.03万円、いずれも各項目の中央値)で、2024年の調査を中央値で集計し直した94.21万円とはほぼ横ばいです。平均の系列と中央値の系列は直接つながりません。公的統計でも、従業者5人以上の事業所が2019年に取り扱った約101万件のうち、6割が100万円未満の費用帯に入っています。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要葬儀業界は、逝去から通夜・葬儀・告別式、火葬、法要までの流れに沿って成り立っています。葬儀社が遺族から施行を請け負い、祭壇や式場、生花、料理、返礼品を自社と納入業者で用意し、火葬は多くが市町村などの公営施設で行われます。売上の中心は祭壇・式場の設備で、従業者5人以上の事業所の2019年の葬儀請負売上1兆1,383億円のうち5,682億円を占め、生花・返礼品・飲食がそれぞれ1,200億円から1,400億円規模で続きます。
2021年の経済センサスでは葬儀業の事業所は8,070か所(売上1兆2,140億円は2020年実績)で、従業者4人以下が半数近くを占めます。葬儀は地域の寺院や火葬場、慣習と結びつくため、地域ごとに中小の葬儀社が担う構造が長く続いてきました。
担い手は、専門葬儀社、冠婚葬祭互助会、JA、異業種、ネット仲介の5つに分けられます。全日本葬祭業協同組合連合会に属する専門葬儀社が1,186社、経済産業省の許可を受けた互助会が228社、葬祭事業を行うJAが237組合あり、鉄道や生協、生花など異業種からの参入も続いています。
上場企業では燦ホールディングスとティアが葬儀専業、サン・ライフホールディングが互助会系で、燦は2024年にきずなホールディングスを子会社化しました。競争の軸は、会館の立地と数、家族葬向けの小規模ホール、ネット仲介からの送客に移っており、鎌倉新書などのポータルが遺族と葬儀社をつなぐ役割を広げています。
葬儀業に開業の許可制度はありませんが、互助会は割賦販売法に基づく経済産業省の許可と前受金の保全が義務づけられ、料金表示には景品表示法が適用されます。消費者庁は2024年と2026年に、低価格を強調した葬儀の表示を有利誤認として措置命令の対象にしました。
火葬場は墓地、埋葬等に関する法律のもとで2024年度に3,511施設が許可を受け、恒常的に使われているのは1,350施設です。うち1,316施設が市町村などの公営で、民営は東京博善(廣済堂ホールディングス傘下)など少数にとどまります。都市部では火葬の順番待ちが葬儀の日程を左右し、鎌倉新書の2024年調査では関東の冬季に逝去から火葬まで8日以上かかった例が18.1%ありました。
業界の3大論点
死亡数が増え続けるのに、葬儀業の売上はなぜ伸びないのか?
死亡数は2000年の96万人から2024年に160万5,378人へ増え、国の推計では2040年の166万5,021人まで増え続けます。需要がこれほど増えた産業は多くありませんが、売上上位の事業所を対象とする経済産業省の調査では、葬儀業の売上は2015年以降6,000億円前後で横ばいです。同じ調査で取扱件数は41万9,815件から50万2,921件へ増えており、件数が増えても1件当たりの売上が下がることで打ち消されています。
背景にあるのは葬儀の小規模化です。鎌倉新書の調査では家族葬が47.0%で最も多く、一日葬が11.9%、直葬・火葬式が10.8%と、参列者を限る形式が7割近くを占めます。費用の総額は平均で2013年の202.9万円から2024年に118.5万円へ下がりました(2026年調査は中央値で96.73万円、集計方法が異なります)。公正取引委員会が2017年に公表した調査でも、1件当たりの売上が減っていると答えた事業者が79.0%、参列者が減っていると答えた事業者が86.8%に上ります。高齢で亡くなる人が増えるほど故人の交友関係は狭まり、喪主も高齢になるため、規模を抑える選択が広がります。
この構図は当面続く見通しです。2040年までは死亡数の増加が件数を支えますが、形式の小規模化が止まらなければ売上は伸びにくく、2040年以降は件数そのものが減ります。事業者にとっては、件数を確保する会館網と、1件当たりの単価に頼らない収益をどう組み合わせるかが課題になります。
中小・地域の葬儀社が大半の業界で、上場企業や異業種による集約はどこまで進むのか?
2021年の経済センサスでは、葬儀業の8,070事業所のうち従業者4人以下が3,803事業所と半数近くを占め、9人以下まで広げると7割を超えます。公正取引委員会が2017年に公表した調査でも資本金5,000万円未満の事業者が59.4%で、全日本葬祭業協同組合連合会は中小零細が9割以上と説明しています。地域に根ざした葬儀社が業界の土台です。
一方で、上場企業による集約が進んでいます。燦ホールディングスは2024年に家族葬のファミーユを展開するきずなホールディングスを株式公開買い付けで子会社化し、2025年3月期の売上は319.8億円と前の期の224.4億円から増えました。平安レイサービスは2026年に株式を非公開化して上場企業の枠を離れました。会館を持ち、家族葬向けの小規模ホールを多く構えることが集約の軸になっています。ただし、決算期の異なる燦(2025年3月期)とティア(2025年9月期)の連結売上を合わせても約535億円で、2024年の売上上位の事業所の合計6,109億円と比べても集約の度合いはまだ限られています。公正取引委員会が2017年に公表した調査では72.6%の事業者が自社の地域で新規参入があったと答え、その24.1%は農協・生花・生協・鉄道などの異業種からの参入でした。
ただし、業界には冠婚葬祭互助会という別の資金構造があります。経済産業省の許可を受けた228社があり、全互協の集計では冠婚葬祭合計で前受金2兆3,814億円、2,095万口(契約の数、2025年3月)の加入契約を預かって、会員の葬儀を自社の会館で施行します。加入契約は2013年の2,396万口から減っていますが、前受金で会館投資をまかなう仕組みは専門葬儀社と異なり、集約の進み方も一様ではありません。
葬儀の料金トラブルはなぜ減らず、事業者は何を問われているのか?
国民生活センターに寄せられる葬儀サービスの相談は、2019年度の632件から2022年度に951件、2024年度に978件と増え、2025年度も917件と高止まりしています。内容別(1件の相談に複数の内容を計上)では「高価格・料金」が482件と最も多く、相談全体に占める割合は2019年度の33.2%から2025年度に52.6%へ上がりました。説明不足が346件、見積もりが194件と続きます。
背景には、契約の進め方と広告表示の両面があります。鎌倉新書の2026年調査では、葬儀の事前準備をしていなかった人が63.8%、1社のみの見積もりか見積もりなしで契約した人が87.1%でした。亡くなってから数日のうちに決める葬儀では、比較や交渉の時間がほとんどありません。広告の側では、消費者庁が2024年5月に那覇直葬センターの「直葬プラン70,000円」の表示を、2026年9月には小さな森の家を展開する金宝堂のテレビコマーシャル「家族葬10.45万円〜」を、実際より安く見せる有利誤認として景品表示法に基づく措置命令の対象にしました。低価格を前面に出すプランと総額の差が、相談の増加につながっています。
事業者に問われているのは、総額が分かる料金表示と、追加費用の事前説明です。小規模な形式が広がるほど基本料金は下がり、飲食や返礼品、火葬場の使用料など外側の費用の説明が重要になります。
よくある質問 (FAQ)
葬儀業界の市場規模はどれくらいですか?
日本の死亡数は今後どうなりますか?
葬儀社は全国に何社ありますか?
葬儀の大手企業はどこですか?
冠婚葬祭互助会とは何ですか?
家族葬はどのくらい増えていますか?
葬儀費用の相場はいくらですか?
葬儀の料金トラブルはなぜ起きるのですか?
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