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TOPIC · MIDORI STRATEGY

みどりの食料システム戦略と農機の電動化(農水省)

農林水産省「みどりの食料システム戦略」は 2021 年に策定され、2050 年カーボンニュートラルに向けた農業の中長期方針を示す国の指針です。2030 年に向けた KPI(化学肥料・農薬の使用低減、有機農業面積拡大、農機・施設の脱炭素化など)と、農機の電動化ロードマップが規定されています。最新版の説明資料は 2026 年 4 月公表で、KPI の進捗状況も毎年更新されています。本ページでは戦略の全体像、農機関連の KPI、各メーカーの電動化対応、課題(バッテリー容量・稼働時間・充電インフラ)、補助金の枠組みを整理します。日本の農業機械業界が中長期的に向かう方向性を理解するうえで、本戦略は最も体系的な政策資料です。

主要論点

論点 1:戦略の位置づけと 2030 年 KPI 進捗
ポジティブ
みどりの食料システム戦略は 2021 年 5 月に農水省が策定した中長期戦略で、2050 年カーボンニュートラルを見据えた農業のあり方を示す国の指針です。本戦略は 2030 年と 2050 年の二段階で KPI を設定しており、化学肥料・農薬の使用低減、有機農業面積の拡大、農機・施設の脱炭素化などが主要な柱です。最新の KPI 実績版(2024 年実績、2025 年 12 月時点)では、項目別に進捗が公表されています。 農機関連 KPI の進捗実績は次のとおりです:(1)電動草刈機の普及率は 2021 年 16.1% → 2024 年 27.7%(2030 年目標 50%)、(2)自動操舵システムの普及率は 2021 年 4.7% → 2024 年 9.8%(2030 年目標 50%)、(3)化石燃料を使用しない園芸施設の割合は 2023 年 10.6% → 2024 年 11.6%(2030 年目標 50%)。電動草刈機は順調、自動操舵は伸びているが目標の半分程度、園芸施設はやや遅れ気味、という構図です。
論点 2:農機の電動化ロードマップと各社対応
コンペティティブ
みどり戦略では農機の電動化を 2030 年 KPI の一つとして位置付けています。各メーカーの対応は、クボタ・ヤンマー・井関いずれも電動小型機(耕運機・草刈機)や GPS 自動操舵機の市販化が先行しており、ニッチな小型機分野では電動モデルの普及が始まっています。一方、大型トラクターやコンバインの電動化は、バッテリー容量と稼働時間が技術的な制約となっており、現時点では商用化に至っていません。クボタは 2024 年の CES で電動・自律走行コンセプト機「New Agri Concept」を発表、ヤンマーは 2025 年 3 月に電動パワートレイン専門ユニットを拡大するなど、各社とも 2030 年に向けた技術開発を加速しています。
論点 3:補助金・施策活用と業界共通インフラの課題
中長期
みどり戦略の実装を支える施策として、農水省は「みどりの食料システム法」に基づく補助事業の優先採択枠を設けており、認定事業者は予算配分で優遇されます。最新版の「みどり戦略施策活用ガイドブック」(令和 8 年 1 月版、2026 年 1 月公表)には、活用可能な補助事業や認定取得のメリットが整理されています。一方で、農機の電動化普及には業界共通のインフラ整備(充電インフラ・バッテリー規格の標準化)が必要で、メーカー単独の取り組みでは限界があります。J-クレジット制度を活用した GHG 削減のクレジット化、輸出パッケージ「MIDORI∞INFINITY」を通じた GHG 削減技術の海外展開なども本戦略の枠組みに含まれており、産業政策と環境政策が一体化した包括的アプローチとなっています。

主な動きのタイムライン

  1. 2021-05
    みどりの食料システム戦略 策定(農水省)
    制度
  2. 2021-05
    戦略本体・参考資料 公表
    制度
  3. 2022-04
    みどりの食料システム法 施行
    制度
  4. 2024-12
    2030 年 KPI 実績値(2024 年版)公表
    制度
  5. 2026-01
    みどり戦略施策活用ガイドブック 令和 8 年 1 月版 公表
    制度
  6. 2026-04
    戦略実現に向けて(令和 8 年 4 月版)公表
    制度
  7. 2030
    2030 年 KPI 達成目標
    制度
  8. 2050
    2050 年カーボンニュートラル達成目標
    制度

関連要素・技術

電動草刈機(普及率 KPI)商用化
みどり戦略 KPI:2021 年 16.1% → 2023 年 23.7% → 2024 年 27.7%。2030 年目標 50%。小型機分野で電動モデルの普及が進行中。
主要プレイヤー
クボタ
ヤンマー
井関農機
やまびこ
自動操舵システム(普及率 KPI)部分実装
みどり戦略 KPI:2021 年 4.7% → 2023 年 7.8% → 2024 年 9.8%。2030 年目標 50%。GPS ベースの自動操舵が大規模農家を中心に拡大。
主要プレイヤー
クボタ
ヤンマー
井関農機
電動・自律走行トラクター(コンセプト)研究段階
クボタが 2024 年 CES で発表した「New Agri Concept」など、電動 + 自律走行を組み合わせた次世代機の研究段階。
主要プレイヤー
クボタ
ヤンマー
水素燃料電池農機研究段階
長時間稼働とゼロエミッションを両立できる選択肢として研究中。商用化は 2030 年代以降の見通し。
主要プレイヤー
クボタ
産官学コンソーシアム
バイオ燃料対応エンジン部分実装
既存ディーゼルエンジンをバイオ燃料対応に改修する経路。電動化と並行する移行期の選択肢。
主要プレイヤー
クボタ
ヤンマー
可変施肥・可変防除部分実装
電動化と直接関係ないが、化学肥料・農薬の使用低減 KPI の実装手段。GPS + センサー + AI で精密農業を実現。
主要プレイヤー
クボタ
ヤンマー
井関農機
NEC
オプティム

主要プレイヤー

農林水産省
制度
政策主体
みどりの食料システム戦略の策定・運用、KPI 設定・進捗管理、補助金枠組み運営。みどり戦略施策活用ガイドブックを毎年更新。
クボタ
国内 3 強
農機国内首位
中計 2030 で次世代農機・スマート農業を中核戦略。電動・自律走行コンセプト機を 2024 年 CES で発表。J-クレジット創出の取り組みも先行。
ヤンマー HD
国内 3 強
農機国内 2 番手(推定)
2025 年 3 月に電動パワートレイン専門ユニットを拡大、2030 年カーボンニュートラル目標に向けた開発を加速。SaaS スマートアシストでも電動化対応。
井関農機
国内 3 強
農機国内 3 番手
プロジェクト Z でスマート農業対応を推進。可変施肥連動の機械開発が先行領域。
部品メーカー(油圧・電装・電池)
上流
上流
農機の電動化には油圧機器・電装品・バッテリーの供給が不可欠。デンソー・村田・カヤバなどが連携先。

中期見通し

【近未来 1-2 年】2026-2027 年は小型機の電動化が普及期入りし、補助金枠組みを活用した導入が進む見通し。中型機(30-60 馬力)の電動化試作機が各社から発表される段階で、商用化は 2027-2028 年頃が現実的なライン。みどり戦略の 2030 年 KPI 進捗状況は毎年公表されるため、年次でのキャッチアップが推奨される。

【中長期 3-5 年】2028-2030 年は大型機の電動化技術が試験段階から実装段階に入る転換点。バッテリー容量の向上(リチウムイオンの密度改善、固体電池の商用化)と充電インフラの整備が普及の鍵。J-クレジット制度の活用によるカーボンクレジット販売が新たな収益源として一定の規模に育つ可能性。みどり戦略 2030 年 KPI の達成度合いが業界の方向性を左右する重要な指標となる。

【関連業界への波及】電動化は農機メーカーだけでなく、エンジン専業メーカー(クボタ・ヤンマーは自社製造)、油圧機器(カヤバ・ナブテスコ)、電装品(デンソー・村田)、バッテリー(パナソニック・トヨタ系)にも影響する。建機分野(クボタ ミニショベル)でも同様のロードマップが進んでおり、農機・建機・産業用エンジンを横断した電動化プラットフォームの構築が業界共通の論点となる見通し。

データ出典
出典: 農林水産省「みどりの食料システム戦略」(2021 年策定、2026/4 版説明資料が最新)/ 同 KPI 実績版(2024 年実績、2025/12 公表)/ 同 施策活用ガイドブック(2026/1 版)/ 各社中期経営計画・プレスリリース
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