みどりの食料システム戦略と農機の電動化|2030年KPIと各社の対応動向【2026年版】
農林水産省「みどりの食料システム戦略」は2021年に策定され、2050年カーボンニュートラルに向けた農業の中長期方針を示す国の指針です。2030年に向けたKPIとして、化学肥料・農薬の使用低減、有機農業面積拡大、農機・施設の脱炭素化等が示され、農機の電動化ロードマップが規定されています。本ページでは農機関連KPIの2024年実績、各メーカーの電動化対応、バッテリー容量・稼働時間・充電インフラ等の課題、補助金の枠組みまで整理します。
2030年KPIと進捗状況(農機関連)
2024年実績版(2025年12月公表)。出所: 農水省 みどりの食料システム戦略KPI実績値一覧自動操舵システムの普及率
期限 2030年化石燃料を使用しない園芸施設の割合
期限 2030年化学農薬使用量(リスク換算)の低減
期限 2030年(2050年目標50% 低減)化学肥料使用量の低減
期限 2030年(2050年目標30% 低減)耕地面積に占める有機農業の割合
期限 2030年(2050年目標100万ha・25%)最新KPI実績では、化学農薬使用量(2024年 約19.9% 減)と化学肥料使用量(2023年 約25% 減)が2030年目標(それぞれ10% / 20% 低減)を先行達成、電動草刈機普及率(2024年27.7%)と有機農業面積(2023年3.45万ha)も順調に進捗しています。一方、自動操舵システム(2024年9.8%)と化石燃料を使用しない園芸施設(2023年11.6%、2024年は2026/3把握予定)は目標50% に対してまだ約2割の進捗にとどまり、農機の電動化全体としては大型機のバッテリー容量・稼働時間が技術課題として残ります。
主要論点
みどり戦略の2030年KPIはどこまで進んでいるか?
ポジティブみどりの食料システム戦略は2021年5月に農水省が策定した中長期戦略で、2050年カーボンニュートラルを見据えた農業のあり方を示す国の指針です。本戦略は2030年と2050年の二段階でKPIを設定しており、化学肥料・農薬の使用低減、有機農業面積の拡大、農機・施設の脱炭素化などが主要な柱です。
農機関連KPIの進捗実績は次のとおりです:(1)電動草刈機の普及率は2021年16.1% → 2024年27.7%(2030年目標50%)、(2)自動操舵システムの普及率は2021年4.7% → 2024年9.8%(2030年目標50%)、(3)化石燃料を使用しない園芸施設の割合は2021年10.6% → 2023年11.6%(2024年実績は2026/3把握予定、2030年目標50%)。電動草刈機は順調、自動操舵は伸びているが目標の半分程度、園芸施設はやや遅れ気味、という構図です。
農機の電動化はどこまで進み、各社はどう動いているか?
コンペティティブみどり戦略では農機の電動化を2030年KPIの一つとして位置付けています。各メーカーの対応は、クボタ・ヤンマー・井関いずれも電動小型機(耕運機・草刈機)やGPS自動操舵機の市販化が先行しており、ニッチな小型機分野では電動モデルの普及が始まっています。
一方、大型トラクターやコンバインの電動化は、バッテリー容量と稼働時間が技術的な制約となっており、現時点では商用化に至っていません。クボタは2024年のCESで電動・自律走行コンセプト機「New Agri Concept」を発表、ヤンマーは2025年3月に電動パワートレイン専門ユニットを拡大するなど、各社とも2030年に向けた技術開発を加速しています。
補助金・業界共通インフラはどこまで整っているか?
中長期実装を支える施策として、「みどりの食料システム法」に基づく補助事業の優先採択枠が設けられており、認定事業者は予算配分で優遇されます。施策活用ガイドブックには、活用可能な補助事業や認定取得のメリットが整理されています。
一方で、農機の電動化普及には業界共通のインフラ整備(充電インフラ・バッテリー規格の標準化)が必要で、メーカー単独の取り組みでは限界があります。J-クレジット制度を活用したGHG削減のクレジット化、輸出パッケージ「MIDORI∞INFINITY」を通じたGHG削減技術の海外展開なども本戦略の枠組みに含まれており、産業政策と環境政策が一体化した包括的アプローチとなっています。
電動化・関連技術の現状
電動草刈機(普及率KPI)
商用化みどり戦略KPI:2021年16.1% → 2023年23.7% → 2024年27.7%。2030年目標50%。小型機分野で電動モデルの普及が進行中。
自動操舵システム(普及率KPI)
部分実装みどり戦略KPI:2021年4.7% → 2023年7.8% → 2024年9.8%。2030年目標50%。GPSベースの自動操舵が大規模農家を中心に拡大。
電動・自律走行トラクター(コンセプト)
研究段階クボタが2024年CESで発表した「New Agri Concept」など、電動 + 自律走行を組み合わせた次世代機の研究段階。
水素燃料電池農機
研究段階長時間稼働とゼロエミッションを両立できる選択肢として研究中。商用化は2030年代以降の見通し。
バイオ燃料対応エンジン
部分実装既存ディーゼルエンジンをバイオ燃料対応に改修する経路。電動化と並行する移行期の選択肢。
政策の主な動き(2021-2050)
- 2021-05みどりの食料システム戦略 策定(農水省)制度
- 2021-05戦略本体・参考資料 公表制度
- 2022-04みどりの食料システム法 施行制度
- 2024-122030年KPI実績値(2024年版)公表制度
- 2026-01みどり戦略施策活用ガイドブック 令和8年1月版 公表制度
- 2026-04戦略実現に向けて(令和8年4月版)公表制度
- 20302030年KPI達成目標制度
- 20502050年カーボンニュートラル達成目標制度
中期見通し
2026-2027年は小型機の電動化が普及期入りし、補助金枠組みを活用した導入が進む見通し。中型機(30-60馬力)の電動化試作機が各社から発表される段階で、商用化は2027-2028年頃が現実的なライン。みどり戦略の2030年KPI進捗は年次でキャッチアップ可能で、有機農業面積・化学農薬使用量等の指標を追うことで業界の方向感が把握できます。
2028-2030年は大型機の電動化技術が試験段階から実装段階に入る転換点。バッテリー容量の向上(リチウムイオンの密度改善、固体電池の商用化)と充電インフラの整備が普及の鍵。J-クレジット制度の活用によるカーボンクレジット販売が新たな収益源として一定の規模に育つ可能性。
電動化は農機メーカーだけでなく、エンジン専業メーカー(クボタ・ヤンマーは自社製造)、油圧機器(カヤバ・ナブテスコ)、電装品(デンソー・村田)、バッテリー(パナソニック・トヨタ系)にも影響します。建機分野(クボタ ミニショベル)でも同様のロードマップが進んでおり、農機・建機・産業用エンジンを横断した電動化プラットフォームの構築が業界共通の論点となる見通しです。
よくある質問
みどりの食料システム戦略とは何ですか?
農機関連のKPIはどの程度進捗していますか?
農機の電動化はどこまで進んでいますか?
参考資料 / 一次ソース
- 1.農林水産省「みどりの食料システム戦略」
- 2.農林水産省 みどり戦略KPI実績値一覧
- 3.農林水産省 施策活用ガイドブック
- 4.各社中期経営計画・プレスリリース