農業機械業界の市場規模・主要企業・動向
日本の農業機械業界は出荷総額4,679億円規模で、クボタ・ヤンマーHD・井関農機の3社が大半を担い、スマート農業と電動化が中長期の成長軸となっています。
農業機械業界とは、耕うん・播種・田植・収穫から乾燥・防除までの農作業を機械化する設備を製造・販売する産業です。2025年の出荷総額は4,679億円で4年ぶりに増加し、クボタ・ヤンマーHD・井関農機の3社が国内の大半を担っています。出荷の約32%が輸出向けで、米国・タイ・中国・ASEANが主要仕向先です。農業就業人口の減少を背景とした構造的縮小と需要の循環性、自動運転を含むスマート農業、みどり戦略のもとでの電動化が共通の論点です。本ページでは、農業機械業界を、出荷統計、主要企業業績、輸出構造、スマート農業、みどり戦略の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
農業機械業界とは、耕うん・播種・田植・収穫から乾燥・防除までの農作業を機械化する設備を製造・販売する産業です。日本市場ではクボタ・ヤンマーHD・井関農機の3社が製造・販売の大半を担い、戦後の機械化普及期から農機専業として成長してきました。主要顧客は農家・農業法人・JA(農業協同組合)で、メーカー系のディーラー網とJA経由の販売が併存する流通体制です。
- 農業機械とは、耕うん・播種・田植・収穫・乾燥・防除といった農作業を機械化する設備群です。代表的な機種はトラクター・コンバイン・田植機で、ほかに防除機・乾燥機・刈払機などがあります。
- 日本市場はクボタ・ヤンマーHD・井関農機の3社が大半を担い、世界市場ではジョンディア(米)とCNH(伊・英)が大型機・自動化技術で先行しています。日本勢は中小型機で強みを発揮し、競合領域が分かれています。
- 主要顧客は農家・農業法人・JAで、JA経由の販売が大きな比重を占めます。需要側では経営体の減少と高齢化が続く一方、担い手への農地集約で1経営体あたりの面積が拡大し、大型・高機能機の買い替え需要を支えています。
市場動向
農業機械市場は出荷総額4,679億円(2025年)の規模で、需要の循環性と構造的な縮小(農業就業人口の減少)が並存する成熟市場です。輸出比率は約32%で米国・タイ・中国・ASEANが主軸となり、政策面ではみどりの食料システム戦略が2030年KPIと農機電動化のロードマップを定め、自動運転やスマート農業への対応が中長期の成長軸となっています。
- 出荷総額は2025年に4,679億円(前年比9.1%増、日農工年次確定値)と4年ぶりに増加し、2024年の底(4,287億円)から回復しました。直近10年は4,287〜5,261億円のレンジで、需要の循環性が強く現れています。
- 輸出向け出荷は1,502億円(2025年)で出荷総額の約32%を占めます。中小型トラクター(米国向け)と水田用機械(ASEAN向け)が柱で、欧州の大型機市場ではジョンディアが優位な構造が続いています。
- 自動運転・スマート農業は遠隔監視下のLv2が制度化され各社が製品を投入、ガイドライン改正でLv3相当への対応も始まりました。みどりの食料システム戦略が2030年KPIと電動化の方向性を示しています。
競争環境
日本市場はクボタ・ヤンマーHD・井関農機の3社が製造・販売の大半を担う構造です。会社別の正確なシェアは公的統計に存在しませんが、上場2社の決算開示と未上場ヤンマーの規模感から、3社が中核と整理されます。海外ではジョンディア(米)とCNH(伊・英)が大型機・自動化技術で先行し、日本勢は中小型機で差別化しています。競争軸は単体の機械販売から、機械とデータサービス、電動化、自動運転への対応へと移りつつあります。
- クボタは国内首位で、FY2025連結売上3兆189億円、海外売上比率は70%超です。農機・建機・水関連の3事業を持ち、中期経営計画2030で次世代農機・スマート農業を中核戦略に据えています。ヤンマーHDは未上場で、農機とエンジン(マリン・産業)の複合事業を持ち、インド・ベトナムなどアジア展開に強みがあります。
- 井関農機はFY2025連結売上1,858億円で、農機専業色が強く国内JA流通との結びつきが強い会社です。中期経営計画「プロジェクトZ」で収益性の改善を進めています。なお、国内4位だった三菱マヒンドラ農機が2026年に解散を発表し、3社への集中が一段と進んでいます。
- 競争軸は「機械とデータサービス」「電動化」「自動運転」への対応に移っています。クボタのKSAS(営農管理サービス)、ヤンマーのスマートアシスト、井関の自動操舵連動など、各社がデータ連動のサービスを強化しています。海外勢との競合領域は大型機を中心に分かれています。
市場規模推移
2016-2025 · 国内出荷額 + 輸出額| 年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 国内出荷額(億円) | 3,160 | 3,101 | 3,068 | 3,177 | 2,731 | 2,928 | 2,834 | 2,923 | 2,707 | 3,176 |
| 輸出額(億円) | 1,664 | 1,773 | 1,904 | 1,926 | 1,786 | 2,332 | 2,159 | 1,797 | 1,580 | 1,502 |
| 合計(億円) | 4,824 | 4,874 | 4,972 | 5,103 | 4,517 | 5,260 | 4,993 | 4,720 | 4,287 | 4,678 |
| 前年比 | — | +1.0% | +2.0% | +2.6% | -11.5% | +16.4% | -5.1% | -5.5% | -9.2% | +9.1% |
2025年の農業機械の出荷総額は4,679億円で、前年比9.1%増と4年ぶりに増加に転じました(日農工 年次確定値)。直近10年(2016〜2025年)のレンジは4,287〜5,261億円で、2021年に5,261億円のピークを記録した後、2022年から2024年に3年連続で前年を下回り、2025年に再び増加しました。
この動きの背景には、農業就業人口の減少と、買い替えサイクルの長期化(実稼働15〜20年)があります。市場全体としては構造的な縮小に、循環的な変動が重なる構図で、ピーク時の水準には届いていません。
2025年の出荷総額4,679億円のうち、国内向けが3,176億円(前年比17.4%増)と大きく回復した一方、輸出向けは1,502億円(同4.9%減)と微減でした。輸出比率は2024年の約37%から2025年は約32%へ低下し、長期では2021年の44.3%のピークから下がる傾向にあります。
主要仕向先は米国・タイ・中国・ASEANで、中小型トラクター(米国向け)と水田用機械(ASEAN向け)が輸出の柱です。欧州の大型機市場ではジョンディアが優位な構造が続いており、日本勢は中小型機で強みを発揮しています。
需要側では、経営体の減少と大規模化が同時に進んでいます。2025年農林業センサス(概数値)によれば、農林業経営体は83.9万経営体(5年前比23.2%減)と急減する一方、1経営体あたりの経営耕地面積は3.7ha(19.4%増)へ拡大しました。
20ha以上の経営体が経営耕地全体の51.0%を占めて初めて5割を超え、法人経営体も7.9%増えています。担い手への農地集約が進むことで、農機の大型・高機能化への需要が構造的に支えられており、台数は減っても1台あたりの単価が上がる方向にあります。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要日本の農業機械業界は、クボタ・ヤンマーHD・井関農機の3社が国内の製造・販売の大半を担う構造です。会社別の正確なシェアは公的統計に存在しませんが、上場2社の決算と未上場ヤンマーの規模感から、この3社が中核と整理されます。
上流では、鉄鋼・電装品・油圧機器・GPS測位システムなどの部材メーカーが供給を支え、3社は主要部品を内製しつつ外部からも調達しています。下流では、メーカー系のディーラー網(クボタ約2,000拠点、ヤンマー約1,500拠点)とJA(農業協同組合)経由の販売が、販売とメンテナンスを担っています。
3社は戦略が分かれています。クボタは農機・建機・水関連の3事業を持ち海外売上比率が70%を超える多角化・グローバル型、井関農機は国内JA流通と結びつきの強い専業型、ヤンマーHDはエンジン事業と複合しアジア展開に強い複合型です。
世界市場では、ジョンディア(米)とCNH(伊・英)が大型機・自動化技術で先行し、日本勢は中小型トラクターや水田用機械で差別化しています。国内では、4位だった三菱マヒンドラ農機が2026年に解散を発表し、3社への集中が一段と進む見通しです。
業界の方向性を左右するのが、スマート農業と電動化です。農機とICT・AIの融合が進み、遠隔監視下の自動運転(Lv2)が制度化され各社が製品を投入、ガイドライン改正でLv3相当への対応も始まっています。クボタのKSASなど、データ連動の営農管理サービスも広がっています。
電動化では、農水省のみどりの食料システム戦略が2030年KPIと道筋を定めています。小型機の電動モデルは普及し始めていますが、大型機はバッテリー容量と稼働時間が課題で、技術開発の段階にあります。担い手の大規模化を背景に、機械の大型・高機能化への需要が下支えしています。
業界の3大論点
日農工の年次確定値によれば、2016年から2025年の出荷総額は4,287〜5,261億円のレンジで推移し、2021年がピーク、2024年が底という循環性が確認できます。2025年は4,679億円(前年比9.1%増)と回復に転じましたが、ピーク時の水準には届いていません。
背景には、農業就業人口の減少(高齢化・離農)と、買い替えサイクルの長期化(実稼働15〜20年)があります。市場全体としては、構造的な縮小トレンドに循環的な変動が重なる構図です。一方で、担い手への農地集約が進み、1経営体あたりの面積は拡大しているため、大型機・高機能機への買い替え需要は底堅く推移しています。
今後を見るうえでは、国内回復のペースが続くか、輸出が為替や海外景気にどう連動するか、スマート農業・電動化の付加価値が単価上昇につながるかの3点が観察軸になります。輸出比率が2021年の44.3%から2025年の約32%へ低下している点も、海外市場の調整と国内回復の組み合わせとして注目されます。
同じ「農業機械メーカー」と括られる3社ですが、収益構造と戦略は大きく異なります。クボタはFY2025連結売上3兆189億円で、農機・建機・水関連の3事業を持ち、海外売上比率は70%を超えます。中期経営計画2030で次世代農機・スマート農業を中核に据え、北米の中小型トラクターでの強みを活かしつつ、インドやASEANでもM&Aや現地生産を進めています。
井関農機は連結1,858億円とクボタの十数分の一の規模で、農機専業色が強く、国内JA流通との結びつきが伝統的に強い会社です。FY2025は黒字回復しましたが、絶対額は小さく、中期経営計画「プロジェクトZ」での収益性改善が課題です。ヤンマーHDは未上場で詳細業績は非開示ですが、グループ全体ではクボタに次ぐ規模と推定され、エンジン事業(マリン・産業)と複合化した収益構造を持ちます。
戦略の違いを整理すると、クボタは多角化とグローバル、井関は専業と国内重点、ヤンマーは複合とアジア重点という棲み分けが見えます。会社別の正確なシェアは公的統計に存在しないため順位の数値化は難しいものの、3社が大半を占める構造は、決算開示と業界俯瞰から確認できます。
農水省の「みどりの食料システム戦略」は2030年に向けた農機の電動化ロードマップを定め、化学肥料・農薬の使用低減、有機農業面積の拡大、農機・施設の脱炭素化をKPIとして進捗を管理しています。直近の実績では一部の項目で進展がある一方、農機の電動化については、大型機のバッテリー容量と稼働時間が技術課題として残ります。
各社の対応では、クボタ・ヤンマー・井関のいずれも電動の小型機やGPS自動操舵の市販化が先行し、大型機の電動化は中期的な開発課題にとどまっています。スマート農業では、遠隔監視下の自動運転Lv2が制度化され、ガイドライン改正でLv3相当への対応も進んでいます。スマート農機の価格は同じ機種の1.5〜2倍で、導入は大規模農家・法人が中心で、初期投資の高さと地域ごとのメンテナンス体制が普及の壁です。
中長期の論点は、政策の補助金と農家の投資意欲がどこで噛み合うか、充電インフラやバッテリー規格といった業界共通基盤の整備がどう進むか、営農管理サービスのメーカー横断のデータ連携が進むかの3点に集約されます。これらが噛み合った時点で、機械販売とサービス収益を組み合わせた構造が業界の主軸となる見通しです。
よくある質問 (FAQ)
日本の農業機械業界の市場規模はどれくらいですか?
日本の農業機械業界の主要メーカーはどこですか?
日本の農業機械の輸出比率はどれくらいですか?
クボタの2025年12月期の業績はどうなっていますか?
日本の農業機械業界の今後の見通しは?
日本の農業機械業界でスマート農業はどこまで進んでいますか?
農業機械の電動化はどこまで進んでいますか?
農業機械業界で最近の業界再編はありますか?
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