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TOPIC · USED MARKET

中古農機・トラクター輸出の動向

日本の中古農機市場は、国内離農の進展に伴い活発化しています。特にトラクターの中古輸出は新たな成長領域として注目されており、日本農業機械工業会が「中古トラクター国別輸出実績」を毎年公表(直近 6 年分が整備)しています。日本製農機は信頼性と耐久性の高さから、ASEAN・中東・アフリカ等の発展途上国市場で高い需要があり、新車の 30-50% 程度の価格帯で流通しています。本ページでは中古市場の規模感、海外輸出の動向、主要プレイヤー(買取業者・輸出商社)、新車市場との関係、中古流通の社会的意義を整理します。離農増加と海外需要の拡大が並行する構造のなかで、中古農機は新たなビジネスモデル創出の機会となっています。

中古トラクター 国別輸出推移

TOP 7 国 + その他、年間累計
単位:
ベトナムポーランドブルガリアリトアニアオランダフランスタイその他
020,00040,00060,00080,00046,1932051,4772160,8592251,6792355,2172450,02825
ベトナムポーランドブルガリアリトアニアオランダフランスタイその他合計
202016,4163,5392,1413,0112,3171,56970016,50046,193
202117,7743,7482,6763,3782,3111,6141,47618,50051,477
202225,0094,1263,0013,3272,2741,7352,88718,50060,859
202314,4985,0763,7543,2982,9892,3041,76018,00051,679
202420,1164,1553,5672,8912,9382,0251,52518,00055,217
202517,2604,0583,3052,2702,5511,9841,10017,50050,028

主要論点

論点 1:離農増加と中古農機市場の活性化
コンペティティブ
日本の農業経営体は減少傾向が続いており、離農時に発生する中古農機の流通量が拡大しています。クボタ・ヤンマー・井関の主要 3 社製は耐久性が高く、20-40 年前のモデルも現役で取引される事例があります。国内中古市場の正確な規模は公的統計に存在しませんが、買取業者・オークション市場・JA 系流通を通じて活発な取引が行われています。中古農機は新車の 30-50% 程度の価格帯で流通することが多く、中小規模農家・新規就農者にとって機械化投資の入り口となっています。新車市場の補完として中古市場が機能することで、業界全体の需要層が多層化し、新車・中古の両方を視野に入れたビジネスモデルが形成されています。
論点 2:中古トラクター国別輸出の構造
ポジティブ
日本農業機械工業会は「中古トラクター国別輸出実績」を毎年公表しており、直近 6 年分(2020-2025 年)が整備されています。日本製中古トラクターは ASEAN(タイ・ベトナム・インドネシア)、中東(UAE・トルコ)、アフリカ(ケニア・タンザニア等)、欧州(東欧諸国)など多様な国・地域で需要があり、信頼性・耐久性・操作性の高さが評価されています。財務省貿易統計によれば 2024 年のトラクター輸出は 1,930 億円で、うち中型機(75kW 超 130kW 以下)は前年比 +10.8% と大型化傾向が見られます。中古市場は新車輸出と異なり、買取業者(リンク社「農機具王」等)が個別農家から仕入れた機械を商社経由で海外に輸出するルートが中心です。
論点 3:プレイヤー構造と新たなビジネスモデル
中長期
中古農機流通の主要プレイヤーは、買取業者(リンク社「農機具王」、農機具王)、農機販売店(メーカー系ディーラー)、JA 系流通、専門商社、オークション運営会社などです。リンク社は 4 年前から海外輸出を本格化させ、M&A で獲得したワールドブリッジ経由で 30 社と取引、年間売上 3 億円規模で成長中とされます(公開情報ベース)。新車市場の縮小を補う成長領域として、各メーカーも中古市場への関与を強めており、認定中古プログラム(一定の整備基準を満たした中古機の保証販売)も普及しつつあります。中古農機シェアリング・レンタル、中古機向けスマート農業アップグレード(後付け GPS 自動操舵キット)など、中古市場発の新しいビジネスモデルも登場しています。海外向けには、日本製のクオリティを担保しつつ価格競争力のある製品を供給できるルートとして、業界全体の輸出構造に組み込まれつつあります。

主な動きのタイムライン

  1. 2004 以前
    日農工「中古トラクター国別輸出実績」統計の継続的整備
    業界団体
  2. 2010 年代
    国内離農加速で中古発生量が拡大
    業界
  3. 2020 年代前半
    買取業者の海外輸出本格化(リンク社等)
    業界
  4. 2022
    日本農機輸出額が過去最高 3,501 億円達成(新車 + 中古合算)
    業界
  5. 2024
    中型トラクター(75kW 超 130kW 以下)輸出 +10.8%(大型化傾向)
    業界

関連要素・技術

認定中古プログラム部分実装
メーカー系ディーラーが一定の整備基準を満たした中古機を保証付きで販売。新車並みのアフターサービスを中古に拡張。
主要プレイヤー
クボタ
ヤンマー
井関農機
中古機向け GPS 自動操舵キット商用化
既存の中古トラクターに後付けで GPS 自動操舵を追加するアップグレード製品。スマート農業を中古機にも拡張。
主要プレイヤー
トプコン
Trimble
クボタ(自社製品)
オンライン中古オークション部分実装
中古農機の取引をオンラインで効率化するプラットフォーム。地域分散していた市場をデジタル化。
主要プレイヤー
農機具王
リンク社
専門オークション業者
中古機シェアリング研究段階
中古機を共同利用する仕組み。小規模農家・新規就農者向けに機械化のハードルを下げる。
主要プレイヤー
JA
農業ベンチャー

主要プレイヤー

日本農業機械工業会
業界団体
業界団体
中古トラクター国別輸出実績を毎年公表。日本の中古農機輸出の継続的な記録を提供する一次情報源。
リンク社(農機具王)
中古流通
中古買取大手
中古農機の買取・販売・海外輸出を展開。M&A で獲得したワールドブリッジ経由で 30 社と取引、年間売上 3 億円規模で成長中。
メーカー系ディーラー
流通
メーカー直系流通
クボタ約 2,000 拠点・ヤンマー約 1,500 拠点が新車販売と並行して下取り・中古販売を提供。認定中古プログラムを展開。
JA(農業協同組合)
流通
JA 系流通
組合員農家への新車販売と並行して、下取り中古機の地域内流通を担当。井関農機との結びつきが特に強い。
海外バイヤー(ASEAN・中東・アフリカ)
需要側(海外)
輸出先
日本製中古トラクターを買い付ける海外バイヤー。タイ・ベトナム・UAE・ケニア等が主要市場。商社経由の取引が中心。

中期見通し

【近未来 1-2 年】国内離農の進展で中古発生量は引き続き拡大する見通し。海外向け輸出も日本製の信頼性を背景に堅調推移し、特に ASEAN・中東向けで需要が伸びる。買取業者の海外展開も加速し、業界全体としての中古輸出フレームワークが整備される段階。新車市場の縮小を補完する形で、中古市場が業界の成長エンジンの一つとなる。

【中長期 3-5 年】2028-2030 年は団塊世代の大量離農が想定され、中古発生量がピークを迎える可能性。これに対応するため、メーカー系ディーラーの認定中古プログラム拡大、オンライン中古オークションの普及、中古機向けスマート農業アップグレード市場の形成が進む見通し。海外向けには、新興国の機械化進展に伴い日本製中古機の需要が継続的に伸び、輸出インフラ(物流・整備拠点・現地販売網)の整備が新たな投資テーマとなる。

【関連業界への波及】中古農機市場の拡大は、農機メーカーだけでなく、物流(海上コンテナ輸送)、商社(中東・アフリカ向け輸出取引)、保険(中古機保証)、ファイナンス(中古機向け融資)にも波及。M&A や事業提携により、買取業者がメーカー系列に組み込まれる、または商社が中古買取業に参入するなど、業界横断的な再編も進む可能性がある。中古機を活用した農業 DX(既存機の IoT 化)も新たなビジネスチャンスとして浮上している。

データ出典
出典: 日本農業機械工業会 中古トラクター国別輸出実績(直近 6 年分整備)/ 財務省貿易統計(HS コード 8432-8436)/ 各社 IR・プレスリリース / 業界紙報道(公開情報ベース)
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