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TOPIC DETAIL · DECARBONIZATION / GX

重工業機械の脱炭素・GXプラント需要|水素・CCUS・廃棄物発電と各社の取り組み【2026年版】

脱炭素・GX(グリーントランスフォーメーション)は、重工業機械の需要を従来の火力プラントから新しい環境・脱炭素プラントへと組み替えつつあります。最も数字に表れているのが廃棄物発電を中心とする環境装置で、日本産業機械工業会の環境装置受注は2025年(暦年)に8,546億円(前年比+25.5%)へ拡大し、ごみ処理装置が約69.4%を占めました。一方、水素・アンモニアの混焼や二酸化炭素の回収・貯留(CCUS)は実証段階が中心で、洋上風力では日本の重工各社は風車本体から退き、基礎・据付・部材などを担います。環境装置受注の動向と、4つの脱炭素テーマごとの日本企業の位置づけ・実用化の段階を整理します。なお環境装置受注は、産業機械受注(2025年7兆3,445億円)とは別に集計される統計です。

環境装置受注(2025年)
8,546億円
前年比+25.5%、2年ぶりに前年を上回る。産業機械受注(7兆3,445億円)とは別の統計
出典: 日本産業機械工業会「環境装置受注状況」(環境装置受注、暦年、受注額ベース)
ごみ処理装置(2025年)
5,927億円
前年比+42.0%、環境装置の約69.4%(都市ごみ処理=廃棄物発電が中心)
出典: 日本産業機械工業会「環境装置受注状況」(環境装置受注、暦年、受注額ベース)
水質汚濁防止装置(2025年)
2,390億円
前年比+3.3%、環境装置で2番目(下水道・産業排水などの処理装置)
出典: 日本産業機械工業会「環境装置受注状況」(環境装置受注、暦年、受注額ベース)
官公需の構成比(2025年)
79.6%
環境装置受注に占める官公需(自治体など)の割合。都市ごみ処理が牽引
出典: 日本産業機械工業会「環境装置受注状況」(環境装置受注、暦年、受注額ベース)

環境装置受注の推移(2021-2025年、億円)

ごみ処理装置・水質汚濁防止装置などの環境装置受注の合計。2023年に増えたあと2024年に落ち込み、2025年に8,546億円へ
単位: 億円
02,5005,0007,50010,0006,421216,116-4.7%227,700+25.9%236,811-11.5%248,546+25.5%25
出典: 日本産業機械工業会「環境装置受注状況」(環境装置受注、暦年、受注額ベース、2021-2025)
20212022202320242025
環境装置受注億円6,4216,1167,7006,8118,546
前年比-4.7%+25.9%-11.5%+25.5%
読み解き

環境装置受注は、2023年に7,700億円へ増えたあと2024年は6,811億円に落ち込み、2025年は前年比+25.5%8,546億円へ伸びて、2年ぶりに前年を上回りました。けん引したのは、都市ごみ処理を中心とするごみ処理装置(前年比+42.0%)です。

環境装置受注は、自治体によるごみ処理施設の更新・新設(官公需)に支えられるため、景気の循環よりも公共投資や政策の動向に左右されます。2025年は官公需が環境装置受注の約79.6%を占めました。なお、この環境装置受注は産業機械受注(7兆3,445億円)とは別個に集計される統計で、合算はできません。

このグラフに関連するトピック

装置別の環境装置受注(2025年、億円)

受注額の大きい順。各装置は百万円未満を切り捨てているため、4装置の合計は環境装置受注の総額(8,546億円)と最大1〜2億円程度ずれる場合があります。ごみ処理装置には都市ごみ処理(廃棄物発電)と産業系廃棄物処理が含まれます
項目受注額(億円)構成比前年比シェア
ごみ処理装置5,92769.4%+42.0%
水質汚濁防止装置2,39028.0%+3.3%
大気汚染防止装置2252.6%-28.7%
騒音振動防止装置30.0%-50.1%
環境装置 合計8,545100.0%
読み解き

環境装置受注は、ごみ処理装置(構成比69.4%)と水質汚濁防止装置(同28.0%)の2つで全体の約97.4%を占めます。ごみ処理装置は都市ごみの焼却・発電が中心で、廃棄物発電として脱炭素の文脈にも位置づけられます。

前年比では、ごみ処理装置が+42.0%と大きく伸びた一方、大気汚染防止装置(-28.7%)は前年を下回りました。環境装置は装置の種類ごとに需要のドライバーが異なり、ごみ処理と水処理がこの統計の規模の中心です。

脱炭素・GXの4つの技術テーマと日本企業の位置づけ

実用化の段階はテーマごとに異なります。商用として確立している領域と、実証・計画の段階にある領域を区別して見ることが重要です
水素・アンモニア混焼/専焼
主な内容
既存の火力発電の燃料を水素・アンモニアに転換
実用化の段階
大型機は実証段階、中小型機で一部商用
主な担い手(日本企業)
三菱重工・IHI・川崎重工
CO2回収・貯留(CCUS)
主な内容
プラント排ガスからCO2を回収し利用・貯留
実用化の段階
回収は商用実績あり、貯留含む全体は計画・実証
主な担い手(日本企業)
三菱重工(回収)ほか
廃棄物発電・バイオマス
主な内容
ごみ焼却の熱で発電する環境装置
実用化の段階
商用(確立した事業)
主な担い手(日本企業)
カナデビア・タクマ
洋上風力(関連設備)
主な内容
風車の基礎・据付・送電・部材
実用化の段階
風車本体は欧米勢、日本勢は基礎・据付・部材
主な担い手(日本企業)
鉄鋼・建設・電線各社

既存火力の燃料転換 — 水素・アンモニア混焼

石炭・天然ガスの火力発電の燃料を、燃やしてもCO2を出さない水素やアンモニアに置き換える混焼・専焼は、既存の発電設備を活かしながらCO2を減らす技術として、重工系メーカーが開発を進めています。ただし、大規模火力(数十万kW級)での高い混焼率や専焼は、いずれもまだ実証や開発の段階にあり、確立した商用技術とはいえません。

IHIは、発電事業者のJERAの碧南火力発電所4号機(100万kW)で、アンモニアを熱量比20%混焼する実証を2024年に達成しました(実証試験は2024年6月に終了)。大型機でのアンモニア専焼は、GEベルノバと組んで2030年の実用化を目指す開発段階です。なお「2020年代後半の商用運用、その後の混焼率引き上げ」というロードマップは、設備メーカーではなく発電事業者のJERAが示している計画です。

三菱重工業は、高砂(兵庫県)の実証設備で大型ガスタービンの水素30%混焼を2023年に実証し、米国でも50%混焼の実証を進めています。中小型機の水素専焼は商用化を目標に掲げる段階です。川崎重工業は中小型の分散電源向けで先行し、1.8MW級の水素専焼コージェネレーション(2023年販売開始)や、8MW級で水素を30%混焼できるガスエンジン(2025年販売開始)を商用として販売しています。一方で、大型火力での高混焼・専焼の本格的な商用運用は、各社とも今後の課題です。

CO2をどう扱うか — 回収・貯留(CCUS)

排ガスから二酸化炭素を回収し、利用または地下に貯留するCCUSは、火力発電や化学・セメントなどのプラントの脱炭素に欠かせない技術です。日本の重工系では、CO2の回収技術で商用実績を持つ企業と、実証・開発の段階にある企業が分かれます。

三菱重工業は、関西電力と共同開発したCO2回収技術(KM CDR Process)で、世界18の商用プラントに採用される実績を持ちます(2024年9月時点、同社公表)。米国のPetra Nova(石炭火力、大規模な燃焼後回収プラント)や、イタリアのRavenna(天然ガス火力、欧州初のフルスケール商用稼働と同社が公表)が代表例です。国内では千代田化工建設とライセンス協業を結び、設計・建設の体制を強化しています。

一方、川崎重工業(固体吸収材を使う移動層方式)やIHI(吸収液による回収)は、いずれも1日あたり数十トン規模のパイロット・実証の段階にあり、現時点で商用プラントの採用実績は確認されていません。CO2を地下に貯留する部分まで含めた一連のCCSは、貯留地点の確保や事業制度の整備が前提となるため、全体としては計画・実証の段階にあります。

数字に表れる現実的な柱 — 廃棄物発電・バイオマス

4つのテーマのうち、受注額として最も明確に表れているのが、ごみ焼却の熱で発電する廃棄物発電を中心とする環境装置です。前述のとおり、ごみ処理装置の受注は2025年に5,927億円(前年比+42.0%)と大きく伸び、環境装置全体の約69.4%を占めました。都市ごみの処理と発電を兼ねる施設の更新・新設が、自治体(官公需)を中心に進んでいます。

この領域は、カナデビア(旧 日立造船)やタクマなどの環境装置の専業メーカーが、確立した商用事業として手がけています。ごみ焼却プラントは、廃棄物を処理するという社会的な需要に支えられ、景気の循環よりも自治体の更新計画や政策に左右される安定した需要です。脱炭素の文脈では、廃棄物発電は化石燃料に頼らない発電として位置づけられ、バイオマス発電と合わせて再生可能エネルギーの一部を担います。

機械需要としての洋上風力 — 日本勢の位置づけ

洋上風力発電は脱炭素の柱の一つですが、風車本体(ナセル・タービン)の製造で、日本の重工各社はすでに事業から退いています。三菱重工業はデンマークのヴェスタスとの折半合弁(MHIヴェスタス)を2020年に解消し、保有株をヴェスタスに譲渡して同社の一株主となりました。日立製作所も2019年に風車の生産から撤退しており、風車本体はヴェスタス・シーメンスガメサ・GEなどの欧州・米国勢がほぼ占めています。

日本企業が実際に担うのは、風車を支える周辺の機械・設備です。基礎構造物(モノパイル)ではJFEエンジニアリングが2024年に量産拠点を稼働させ、日本製鉄が厚鋼板を供給します。設置工事では清水建設や五洋建設などが自己昇降式の作業船(SEP船)を保有し、送電では住友電工や古河電工が海底ケーブルを手がけます。重工系メーカーにとって洋上風力は、風車本体ではなく、基礎・据付・部材・保守といった補助的な領域での関わりが中心です。

足元では、洋上風力に強い逆風が吹いています。総合商社の三菱商事(重工系メーカーの三菱重工業とは別の企業)は、国の公募第1ラウンドで落札した秋田・千葉沖の3海域(計約1.7GW)から、資材価格や金利の上昇で採算が悪化したとして2025年に撤退を表明しました。国は対象海域の再公募や制度の見直しを進めており、洋上風力関連の機械需要の見通しは流動的です。

主要論点

脱炭素は重工業機械にとって機会か、それとも逆風か?

脱炭素は、重工業機械にとって機会と逆風の両面を持ちます。逆風となるのは、石炭火力など従来の化石燃料プラントで、新設の需要が中長期的に縮小する可能性があります。発電プラントは業界最大の機種であるボイラ・原動機の中心であり、影響は小さくありません。

一方で、脱炭素は新たな需要も生んでいます。廃棄物発電を中心とする環境装置は、2025年に環境装置受注8,546億円(前年比+25.5%)へ拡大し、すでに数字に表れた需要となっています。水素・アンモニアの混焼設備やCO2の回収設備は、まだ実証段階が中心ですが、既存の火力発電設備を活かしながら燃料や排出を変える技術として、重工系メーカーが強みを持つ領域です。

重工業機械にとって脱炭素は、従来プラントの縮小と環境・脱炭素プラントの拡大が同時に進む構造転換です。一括りに機会とも逆風とも言えず、テーマごとの実用化の段階と、各社が燃料転換や環境装置の需要をどこまで取り込めるかが、評価の分かれ目になります。

水素・アンモニア・CCUSの実用化はどこまで進んでいるのか?

水素・アンモニアの混焼やCCUSは、脱炭素の有力な技術として注目されますが、実用化の段階を冷静に見ることが必要です。大規模火力での水素・アンモニアの高混焼や専焼は、IHIによるアンモニア20%混焼の実証(JERA碧南火力、2024年)や、三菱重工業による水素30%混焼の実証(高砂)など、いずれもまだ実証・開発の段階にあります。商用として販売されているのは、川崎重工業の中小型機(水素専焼コージェネ、水素混焼ガスエンジン)など一部にとどまります。

CCUSでは、三菱重工業のCO2回収技術が世界18の商用プラントに採用される実績を持つ一方、川崎重工業やIHIの回収技術は実証段階で、CO2を地下に貯留する部分まで含めた全体は計画・実証の段階にあります。

これらの技術は、目標年や混焼率などの計画が先行して語られがちですが、「目標・計画」と「商用化された実績」を区別して見ることが重要です。重工系メーカーにとっては、実証から商用への移行をどれだけ早く進められるかが、新たな需要を取り込めるかどうかを左右します。

脱炭素のなかで、いま収益になっているのはどの領域か?

脱炭素の4つのテーマのうち、すでに受注として収益になっているのは、廃棄物発電を中心とする環境装置です。環境装置受注は2025年に8,546億円で、ごみ処理装置が約69.4%を占めます。自治体によるごみ処理施設の更新・新設に支えられ、景気の循環よりも公共投資の動向に左右される安定した需要です。

この領域は、カナデビアやタクマなどの環境装置の専業メーカーが、確立した事業として手がけています。一方、水素・アンモニアやCCUSは将来の需要として期待される段階で、現時点の受注の規模は環境装置に及びません。

脱炭素を需要として評価するときは、実証段階の技術への期待と、すでに受注になっている環境装置を分けて見ることが実態の把握に役立ちます。重工系メーカーや環境装置の専業メーカーにとって、廃棄物発電・環境装置は脱炭素の現実的な収益源であり、将来の水素・アンモニア・CCUSは技術開発と実証を進める段階にあります。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、廃棄物発電を中心とする環境装置が脱炭素の現実的な需要を支えます。自治体のごみ処理施設の更新需要は公共投資に連動するため、景気変動の影響を受けにくい需要です。水素・アンモニアの混焼やCCUSは、各社の実証が進む段階で、商用化に向けた燃焼試験や実証設備の稼働が中心となります。

中期3-5年

中期では、水素・アンモニアの混焼・専焼や、CO2回収の商用化がどこまで進むかが焦点です。大型機での高混焼・専焼が実証から商用へ移行すれば、ボイラ・原動機の需要を脱炭素対応へ置き換える形で支える可能性があります。一方、洋上風力は資材高や制度の見直しで先行きが不透明であり、日本勢が担う基礎・据付・部材の需要も、案件の進捗に左右されます。

長期

長期では、世界のエネルギー転換が重工業機械の需要構造を変えていきます。従来の火力発電向けの設備が減る一方、水素・アンモニア・CCUSなどの脱炭素プラント、廃棄物発電やバイオマスなどの環境装置が需要の柱に育つかが問われます。重工系メーカーにとっては、燃料転換と環境・脱炭素プラントの技術をどこまで実装できるかが、長期の競争力を左右します。

よくある質問

脱炭素は重工業機械にどう影響しますか?
機会と逆風の両面があります。石炭火力など従来の化石燃料プラントは新設需要が縮小する可能性がある一方、廃棄物発電を中心とする環境装置(2025年の環境装置受注8,546億円、前年比+25.5%)や、水素・アンモニアの混焼設備、CO2の回収・貯留などの新たな需要が生まれています。従来プラントの縮小と環境・脱炭素プラントの拡大が同時に進む構造転換です。
環境装置受注は産業機械受注に含まれますか?
含まれません。環境装置受注は、日本産業機械工業会が「環境装置受注状況」として産業機械受注とは別に集計している統計です。産業機械受注(2025年7兆3,445億円)の12機種に環境装置は含まれず、環境装置受注(2025年8,546億円)は独立した統計です。両者を足し合わせることはできません。
廃棄物発電はどのくらいの規模ですか?
廃棄物発電を中心とするごみ処理装置の受注は、2025年に5,927億円(前年比+42.0%)で、環境装置受注全体の約69.4%を占めます。都市ごみの焼却と発電を兼ねる施設の更新・新設が中心で、自治体(官公需)の需要に支えられています。カナデビアやタクマなどの環境装置の専業メーカーが手がけています。
水素やアンモニアの混焼発電は実用化されていますか?
大規模な火力発電での高い混焼率や専焼は、まだ実証・開発の段階が中心です。IHIが発電事業者JERAの碧南火力でアンモニア20%混焼を実証(2024年)、三菱重工業が水素30%混焼を実証(高砂)するなど、各社が技術開発を進めています。商用として販売されているのは、川崎重工業の中小型機(水素専焼コージェネ、水素混焼ガスエンジン)など一部です。
日本の重工メーカーは洋上風力の風車を作っていますか?
風車本体(ナセル・タービン)の製造からは、日本の重工各社はすでに撤退しています。三菱重工業はヴェスタスとの合弁を2020年に解消し、日立製作所も2019年に風車生産から撤退しました。風車本体はヴェスタス・シーメンスガメサ・GEなどの欧米勢が占めています。日本企業は、基礎構造物・据付(SEP船)・海底ケーブル・保守などの周辺領域を担っています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本産業機械工業会「環境装置受注状況」
  2. 2.
    三菱重工業(CO2回収・KM CDR Process/高砂水素パーク)
  3. 3.
    IHI(アンモニア混焼/専焼)
  4. 4.
    川崎重工業(水素混焼・専焼)
  5. 5.
    三菱重工業/日立製作所(洋上風力 風車事業)
  6. 6.
    三菱商事ほか(洋上風力 公募第1ラウンド、報道)
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