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総合デベロッパーの事業構成|保有(賃貸)と回転(分譲)の収益構造【2026年版】

総合デベロッパーの収益は、オフィスビルなどを長期保有して賃料を得る保有型の事業と、マンションやビルを開発して売却する回転型の事業の組み合わせで成り立ちます。住友不動産は営業利益の約7割を不動産賃貸が占める保有型、三井不動産は賃貸1,816億円と分譲1,435億円が拮抗する構成で、各社の比重の置き方が収益の安定性と成長性の差につながっています。

主要各社の保有型・回転型の主な事業と営業利益

三井不動産
保有型の主な事業(賃貸等)
賃貸1,816億円
回転型の主な事業(分譲等)
分譲1,435億円
連結営業利益
3,978億円
型
中間
三菱地所
保有型の主な事業(賃貸等)
コマーシャル不動産1,357億円
回転型の主な事業(分譲等)
住宅573億円
連結営業利益
3,297億円
型
保有寄り
住友不動産
保有型の主な事業(賃貸等)
不動産賃貸2,102億円
回転型の主な事業(分譲等)
不動産販売762億円
連結営業利益
2,992億円
型
保有型
東急不動産HD
保有型の主な事業(賃貸等)
都市開発752億円
回転型の主な事業(分譲等)
都市開発に含む
連結営業利益
1,669億円
型
中間
野村不動産HD
保有型の主な事業(賃貸等)
都市開発537億円
回転型の主な事業(分譲等)
住宅606億円
連結営業利益
1,382億円
型
回転寄り
ヒューリック(12月期)
保有型の主な事業(賃貸等)
不動産1,981億円
回転型の主な事業(分譲等)
—
連結営業利益
1,868億円
型
保有型
東京建物(12月期)
保有型の主な事業(賃貸等)
ビル671億円
回転型の主な事業(分譲等)
住宅256億円
連結営業利益
958億円
型
中間
読み解き

表の見方を補足します。回転型欄の「都市開発に含む」(東急不動産HD)は、賃貸保有と分譲・開発を一つの都市開発事業として開示しており賃貸と分譲を分けていないこと、「—」(ヒューリック)は分譲の比重が小さく主要事業として抜き出していないことを表します。保有型・回転型は各社の主要な事業を抜き出したもので、連結営業利益には管理・運営・海外などの事業も含みます(保有型と回転型の営業利益の合計は連結と一致しません)。三菱地所は丸の内事業(営業利益975億円)も賃貸保有にあたります。型は各社の事業全体の性格(賃貸保有の厚みや分譲・開発の主力度)にもとづく整理で、表に示した2事業だけで決まるものではありません。なおヒューリックと東京建物は12月期決算のため2025年12月期、ほかの5社は2026年3月期の数値です。

表を保有型から回転型へ並べると、収益構造の違いが見えます。住友不動産は不動産賃貸の営業利益が2,102億円で連結営業利益2,992億円の中心を占め、ヒューリックも不動産事業1,981億円が大半を担う保有型です。三井不動産は賃貸1,816億円と分譲1,435億円が拮抗し、野村不動産HDは住宅606億円が都市開発537億円を上回る回転寄りの構成です。型は各社の数値にもとづく整理で、すべての会社をどちらかに二分するものではありません。

主要論点

保有型と回転型で、収益の安定性と効率はどう違うのか?

保有型は、オフィスビルや商業施設を長期保有して賃料を得るため、景気変動に強い安定した収益を生みます。住友不動産は営業利益の約7割(2,102億円)を不動産賃貸が占め、賃料収入が景気の波に左右されにくいことが、安定した利益の土台になっています。賃貸事業は売上に対する利益率が高くなりやすいのも特徴で、保有型ほど高い収益性を示す傾向があります。

回転型は、マンションや開発物件を分譲・売却して開発利益を得るため、市況が良い局面では高い成長性を示します。資産を保有し続けずに回転させるため、投じた資本に対する効率は高くなります。一方で、利益は物件の引き渡しの時期や市況に左右されやすく、年ごとの変動が大きくなりがちです。

両者の違いは、収益の安定性と資本効率のトレードオフとして表れます。保有型は安定収益と含み益という強みを持つ一方、資産の回転が遅く資本効率は低くなりがちです。回転型は資本効率が高い反面、市況の影響を受けやすくなります。各社はこの比率をどう設計するかで、収益の性格を作り分けています。

各社の事業構成の違いは、何から生まれているのか?

各社の事業構成の違いは、保有する資産の蓄積と、開発・分譲の規模の違いから生まれています。三菱地所は丸の内の大規模なオフィス群を保有し、コマーシャル不動産と丸の内の賃貸事業が利益の中心です。住友不動産は都心の賃貸オフィスを厚く保有し、賃貸の営業利益が連結の大半を占めます。これらは長期にわたる保有資産の蓄積が、保有型の収益構造を支えています。

一方、三井不動産は賃貸と分譲をともに大規模に展開し、マネジメントや施設営業も加えた多角的な構成です。野村不動産HDは住宅分譲を主力とし、東急不動産HDは都市開発に管理運営や不動産流通(東急リバブル)を組み合わせています。回転型寄りの各社は、開発・分譲の規模で収益を伸ばしています。

ヒューリックは東京23区の駅近物件に絞って賃貸保有を厚くし、東京建物はビル(賃貸)と住宅(分譲)を組み合わせる準大手です。各社の構成は、創業以来の保有資産と、どの用途で開発を回すかという戦略の違いを反映しています。

賃貸保有の含み益は、事業構成にどう関わるのか?

賃貸保有を厚くする保有型のデベロッパーは、保有する不動産の時価と帳簿価額の差である含み益を蓄えやすくなります。取得時から地価や賃料が上昇すると、時価が帳簿価額を上回って含み益が生まれ、これが財務的な強みとして評価されます。保有型ほど資産規模が大きく、含み益も大きくなる傾向があります。

含み益は、売却して初めて利益として実現します。保有を続ける限りは帳簿上の利益には表れませんが、いざという時に資産を売却して利益を確定できる余力として、財務の安定性を支えます。回転型のデベロッパーも、開発した物件を保有資産に組み入れることで、徐々に含み益を蓄えていきます。

含み益や有利子負債、金利の上昇が各社の財務に与える影響は、財務体質の論点として別のページで詳しく扱います。事業構成の面では、保有型が含み益という安定の源泉を持ち、回転型が資本効率を重視する、という性格の違いとして理解できます。

中期見通し

近未来1-2年

オフィス賃料の上昇が続く局面では、保有型の賃貸収益が各社の利益を下支えします。一方、分譲の利益は物件の引き渡しの時期に左右されるため、回転型寄りの各社は年ごとの変動が出やすくなります。各社は保有と回転のバランスを取りながら、賃料上昇の追い風を取り込む構えです。

中期3-5年

大型再開発の竣工が進むと、保有する賃貸資産が積み上がり、保有型の収益基盤が厚くなります。同時に、開発した物件を不動産投資市場へ売却して資金を回収する回転も活発になり、保有と回転の循環が各社の成長を支える見通しです。事業構成をどう設計するかが、各社の収益性を分けます。

長期5-10年

国内市場が成熟する中で、海外事業やアセットマネジメントの比重を高める動きが各社で続きます。保有による安定収益を土台に、開発・分譲の回転と運用受託の手数料を組み合わせる構成が、長期の収益を支える方向です。保有と回転に運用を加えた多層的な収益構造が、各社の競争力を左右します。

よくある質問

総合デベロッパーの「保有型」と「回転型」とは何ですか?
保有型は、オフィスビルや商業施設を長期保有して賃料を得る収益モデルで、景気変動に強い安定収益と含み益を蓄えます。住友不動産は営業利益の約7割(2,102億円)を不動産賃貸が占める保有型の代表です。回転型は、マンションや開発物件を分譲・売却して開発利益を得るモデルで、資本効率が高い一方、市況の影響を受けやすくなります。野村不動産HDは分譲・開発の比重が高い構成で、三井不動産は賃貸と分譲が拮抗する中間的な構成です。
各社の事業構成はどう違いますか?
住友不動産・ヒューリックは賃貸保有を厚くする保有型、野村不動産HDは分譲・開発を回す回転寄りで、三菱地所は丸の内の賃貸保有を軸に住宅・海外へ多角化しています。三井不動産は賃貸1,816億円と分譲1,435億円が拮抗する中間的な構成です。各社は保有と回転の比率を変えることで、収益の安定性と成長性のバランスを取っています。
保有型と回転型では、どちらが収益性が高いですか?
賃貸保有の事業は売上に対する利益率が高くなりやすく、保有型ほど高い収益性を示す傾向があります。住友不動産のように賃貸が営業利益の大半を占める会社は、安定した高い利益率が特徴です。回転型は資本効率(投じた資本に対する利益)が高い一方、市況や物件の引き渡し時期によって利益が変動しやすくなります。安定性と効率のどちらを重視するかで、各社の事業構成が分かれます。
表の「連結営業利益」と保有型・回転型の合計が一致しないのはなぜですか?
表の保有型・回転型は各社の主要な事業を抜き出したもので、連結営業利益には管理・運営・海外・流通などの事業も含まれるため、保有型と回転型の合計は連結営業利益と一致しません。また三菱地所の丸の内事業(営業利益975億円)も賃貸保有にあたり、東急不動産HD・野村不動産HDの都市開発は賃貸保有と分譲・開発を含むなど、賃貸と分譲を明確に分けない会社もあります。
事業構成のデータの出典は何ですか?
各社の2026年3月期(3月期5社)および2025年12月期(ヒューリック・東京建物)の決算短信および有価証券報告書の報告セグメント情報が出典です。営業利益はセグメント別の公表値で、保有型・回転型の分類は各社の事業内容にもとづく整理です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    各社2026年3月期 決算短信 (三井不動産・三菱地所・住友不動産・野村不動産HD・東急不動産HD)
  2. 2.
    各社2025年12月期 決算 (ヒューリック・東京建物)
  3. 3.
    EDINET (金融庁) 上場総合デベ7社 連結財務
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