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STAT DETAIL · REIT & ASSET MANAGEMENT

不動産証券化市場の規模とリート運用|国内リート31.3兆円の用途別構成【2025年版】

国内のリート市場は取得価格ベースで31.3兆円(2025年9月末)に達します。総合デベロッパーは、保有するオフィスビルや物流施設をリートや私募ファンドに組み入れ、スポンサー兼運用者として運用報酬を得る「証券化・運用」の事業を持ちます。保有による安定収益とは別に、資産をオフバランス化しながら手数料収益を稼ぐ収益モデルです。

国内リート市場
31.3兆円
J-REIT + 私募リートの取得価格ベース(2025年9月末)
J-REIT時価総額
16.9兆円
上場58銘柄の市場評価(2025年10月末)。取得価格とは別の指標
J-REIT平均分配金利回り
4.59%
上場J-REITの平均(2025年10月末)
不動産私募ファンド
44.9兆円
グローバルファンド含む広義(2025年6月末)。国内リート31.3兆とは対象範囲が異なる

国内リート市場の用途別取得価格

単位: 兆円(J-REIT + 私募リート、取得価格ベース、2025年9月末)
単位: 兆円6 カテゴリ・合計 31.2
0.003.757.5011.315.011.4オフィス6.30物流施設5.30賃貸住宅4.60商業施設2.80ホテル0.80その他
出典: ARES(不動産証券化協会)マンスリーレポート2025年11月
カテゴリオフィス物流施設賃貸住宅商業施設ホテルその他
取得価格兆円11.406.305.304.602.800.80
シェア36.5%20.2%17.0%14.7%9.0%2.6%
読み解き

このグラフは、国内のリート(J-REIT + 私募リート)が保有する不動産を、用途別の取得価格でみたものです。最も多いのはオフィスの約11.4兆円で、市場全体の3分の1超を占めます。次いで物流施設・賃貸住宅が続き、eコマースの拡大による物流需要と、景気変動に強い賃貸住宅の安定需要を背景に、オフィス以外の用途が市場で存在感を高めています。なお用途別の数値は四捨五入しているため、内訳の合計は約31.2兆円と表示されますが、市場全体では31.3兆円です。

ここで示した国内リート31.3兆円は不動産の取得価格(買った時の価格)を積み上げたもので、上場J-REITの時価総額16.9兆円(株式市場での評価額)とは異なる指標です。また、より広い不動産私募ファンドの44.9兆円は、海外の投資家向けのグローバルファンドも含む広い範囲で、私募リート7.5兆円を内側に含みます。同じ「リート・ファンド市場」でも対象範囲が異なるため、数値を比べる際は範囲の違いに注意が必要です。

国内リート市場の内訳(上場J-REIT・私募リート)

取得価格ベース、2025年9月末
上場J-REIT
資産規模
23.9兆円
銘柄数
58銘柄
私募リート
資産規模
7.5兆円
銘柄数
61銘柄
合計
資産規模
31.3兆円
銘柄数
119銘柄
読み解き

国内のリート市場は、証券取引所に上場し誰でも売買できる上場J-REIT(23.9兆円・58銘柄)と、上場せず機関投資家など限られた投資家が保有する私募リート(7.5兆円・61銘柄)に分かれます。上場J-REITは市場で価格がつき流動性が高い一方、私募リートは価格変動が小さく長期保有に向くため、年金基金などの安定運用に使われます。総合デベロッパーは両方のスポンサー(リートに物件を供給し、グループの運用会社を通じて運用も担う立場)となり、用途や投資家層に応じて使い分けています。

上場J-REITの主要指標

2025年10月末
時価総額
数値
16.9兆円
運用資産残高
数値
23.9兆円
保有物件数
数値
4,896件
東証REIT指数
数値
1,962.44
平均分配金利回り
数値
4.59%
平均NAV倍率
数値
0.93
読み解き

上場J-REITの平均分配金利回りは4.59%です。分配金とは投資家が受け取る配当にあたるもので、利回りはその分配金が投資額に対して何%かを表します。預金や国債と比べた相対的な高さが投資家を引きつける一方、金利の上昇局面では魅力が相対的に下がります。平均NAV倍率は0.93倍で、これは投資口価格(リートが市場で取引される価格)が、1口あたりの純資産(リートが保有する不動産の価値)を下回る1倍割れの状態を表します。リートが市場で割安か割高かを測る代表的な指標で、1倍割れは市場が保有資産の価値より低く評価していることを意味します。

主要論点

総合デベロッパーにとって、証券化はどんな収益モデルなのか?

総合デベロッパーは、自社で開発・保有した不動産をリートや私募ファンドに売却して組み入れることで、保有のリスクと資金の固定を切り離しながら、開発に投じた資金を回収します。これがオフバランス化(自社のバランスシートから資産を外すこと)です。回収した資金は次の開発に回せるため、保有を続けるよりも資本効率が高まります。

さらに、グループの資産運用会社がリートの運用を受託することで、運用資産の規模に応じた運用報酬という安定した手数料収益を得ます。賃料収入のように物件を保有し続ける必要がなく、市況に左右されにくい収益源です。保有(賃料)、回転(分譲)に続く第三の柱として、各社が育てています。

この証券化・運用の事業は、保有を厚くする保有型のデベロッパーにとっては保有資産の一部を市場へ循環させる手段に、開発を回す回転型にとっては開発資金の回収先になります。事業構成のどこに軸足を置くかにかかわらず、証券化市場は総合デベロッパーの収益を支える共通の基盤になっています。

なぜ用途がオフィスから物流・賃貸住宅へ広がっているのか?

国内のリート市場は、もともと都心のオフィスビルを中心に育ちました。現在もオフィスが約11.4兆円と最大の用途ですが、近年は物流施設と賃貸住宅が存在感を高めています。

物流施設が伸びているのは、eコマース(ネット通販)の拡大で大型の物流倉庫の需要が高まったためです。賃貸住宅は、景気変動に左右されにくい安定した賃料収入が見込めるため、安定運用を求める投資家に好まれます。ホテルは観光需要の回復を背景に組み入れが進むなど、用途の多様化が市場全体の裾野を広げています。

用途の広がりは、総合デベロッパーの事業セグメントと連動しています。各社がオフィス・商業・物流・賃貸住宅へ開発を多角化するのに合わせて、証券化市場に組み入れられる資産の用途も多様になります。リート市場の用途構成は、デベロッパーがどの分野で開発を進めているかを映しています。

NAV倍率1倍割れは、市場に何を示しているのか?

上場J-REITの平均NAV倍率は0.93倍で、投資口価格が1口あたりの純資産を下回る1倍割れの状態です。NAV倍率は、リートの市場価格が保有不動産の価値に対して割安か割高かを測る指標で、1倍を下回ると市場が保有資産の価値より低く評価していることを意味します。

背景には金利上昇への警戒があります。リートは借入を使って不動産を保有するため、金利が上がると利払い負担が増え、分配金の原資が圧迫されるとの見方が株価を抑えます。平均分配金利回り4.59%という相対的な高さも、裏を返せば価格が抑えられている結果です。

一方、上場せず価格変動の小さい私募リート(7.5兆円)や私募ファンド(44.9兆円)は拡大を続けています。市場価格に日々さらされない私募の安定性が、長期運用の資金を引きつけているためで、上場リートの軟調とは対照的な動きです。証券化市場の中でも、上場と私募で異なる力学が働いています。

中期見通し

近未来1-2年

総合デベロッパーは、市況をみながら保有資産をリートや私募ファンドへ組み入れる時期を選びます。上場リートの価格が金利動向で揺れる局面では、価格変動の小さい私募リートや私募ファンドが資金の受け皿になりやすく、各社は上場と私募を使い分けながら、資産の組み入れと運用報酬の積み上げを進めます。

中期3-5年

物流施設・賃貸住宅・ホテルへの用途の多様化が続き、市場の裾野が広がる見通しです。安定性を求める資金が私募リートや私募ファンドへ向かい、私募市場の拡大が続く可能性があります。総合デベロッパーは、大型再開発で生んだ賃貸資産を証券化市場へ循環させ、開発と運用の好循環を回す戦略を強めます。

長期5-10年

国内市場が成熟する中で、運用報酬を稼ぐアセットマネジメント事業の比重が各社で高まる方向です。保有(賃料)・回転(分譲)に運用(手数料)を加えた多層的な収益構造が、総合デベロッパーの長期の収益基盤を支えます。証券化市場は、不動産を保有から運用へと循環させる装置として、業界の収益モデルに組み込まれていきます。

よくある質問

リート(不動産投資信託)とは何ですか?
リートは、多くの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設などの賃貸不動産を保有し、その賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。証券取引所に上場し誰でも売買できるJ-REITと、上場せず機関投資家向けに運用される私募リートがあります。国内のリート市場は取得価格ベースで約31.3兆円(2025年9月末)の規模です。
国内のリート市場はどのくらいの規模ですか?
国内のリート市場は取得価格ベースで約31.3兆円(2025年9月末)で、上場J-REITが23.9兆円(58銘柄)、私募リートが7.5兆円(61銘柄)です。さらに広い不動産私募ファンドの市場は44.9兆円規模(2025年6月末)で、こちらは海外投資家向けのグローバルファンドも含む広い範囲を指します。
J-REITと私募リートの違いは何ですか?
J-REITは証券取引所に上場し、株式のように誰でも市場で売買できるリートで、価格が日々変動し流動性が高いのが特徴です。私募リートは上場せず、年金基金などの機関投資家が長期保有するリートで、市場価格にさらされないため価格変動が小さく安定運用に向きます。規模は上場J-REITが23.9兆円、私募リートが7.5兆円です。
総合デベロッパーはリートとどう関わっていますか?
総合デベロッパーは、自社で開発・保有した不動産をリートや私募ファンドに組み入れる(オフバランス化する)ことで開発資金を回収し、同時にグループの資産運用会社がリートの運用を受託して運用報酬を得ます。保有による賃料収入とは別に、資産をオフバランス化しながら手数料収益を稼ぐ収益モデルで、各社が証券化・運用の事業を育てています。
リート市場のデータの出典は何ですか?
用途別の取得価格と上場J-REITの主要指標は不動産証券化協会(ARES)のマンスリーレポート(2025年11月)、不動産私募ファンドの市場規模はARESと三井住友トラスト基礎研究所による不動産私募ファンド実態調査(2025年7月)が出典です。金額は取得価格ベースや時価総額など、指標ごとに集計の基準が異なります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    不動産証券化協会(ARES) マンスリーレポート2025年11月
  2. 2.
    ARES / 三井住友トラスト基礎研究所 不動産私募ファンド実態調査2025年7月
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