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ファストフードのコスト構造|食材費・人件費の上昇圧力【2026年版】

ファストフードのコストは、大きく食材費と人件費に分かれ、その両方が上昇しています。食材は輸入に頼る割合が高く、円安と国際的な価格高騰で仕入れ値が上がってきました。日本銀行の輸入物価指数では、食料品の価格は2020年から大きく上がり、なかでも小麦などの穀物の上昇が目立ちます。牛肉・鶏肉といった食肉も上がっていますが、上がり方は食材によって差があります。人件費の目安となる最低賃金も、全国平均で2019年度の901円から2025年度には1121円まで引き上げられ、人手不足を背景に上昇が続いています。こうしたコスト上昇が、相次ぐ値上げの背景にあります。なお、各社の原価率や人件費率は開示が限られるため、本ページでは公表されている輸入価格と最低賃金の動きから、食材費と人件費がどれだけ上がり、価格にどう響くのかを整理します。

最低賃金 全国加重平均
1,121
2019年度901円から6年で220円の引き上げ
出典: 厚生労働省「地域別最低賃金」
食料品の輸入物価指数
182.4
2026年4月時点、2020年=100。円ベースで2020年から大きく上昇
出典: 日本銀行「企業物価指数」輸入物価指数
穀物の輸入物価指数
200.5
2026年4月時点、2020年=100。食料用農産物(小麦など)。食材で最も上昇
出典: 日本銀行「企業物価指数」輸入物価指数
食肉の輸入物価指数
156.9
2026年4月時点、2020年=100。畜産品(牛肉・鶏肉)。穀物より緩やかな上昇
出典: 日本銀行「企業物価指数」輸入物価指数

最低賃金 全国加重平均の推移(2019-2025年度、円)

厚生労働省の地域別最低賃金の全国加重平均(時給)。ファストフードの人件費の目安
単位:
03757501,1251,500901199022093021961221,004231,055241,12125
出典: 厚生労働省「地域別最低賃金」(全国加重平均、各年度)
年度2019202020212022202320242025
最低賃金(全国加重平均)9019029309611,0041,0551,121
読み解き

最低賃金の全国加重平均は、2019年度の901円から2025年度には1121円へと、6年間で220円上がりました。とくに近年は1年あたりの引き上げ幅が大きく、人手不足とインフレを背景に、引き上げの流れが続いています。

最低賃金は、都道府県ごとに定められます。2025年度は最も高い東京が1,226円、最も低い県が1,023円で、地域差があります。多くのパート・アルバイトで店舗を運営するファストフードにとって、最低賃金の上昇は人件費に直結し、価格や省人化の判断に影響します。

食料品の輸入物価指数の推移(各年1月、2020年平均=100)

日本銀行の輸入物価指数(円ベース、食料品・飼料用農産物)。各年1月時点の指数。食材の仕入れコストの目安
単位: 指数
05010015020010320103211302214923156241732517926
出典: 日本銀行「企業物価指数」輸入物価指数(円ベース、食料品・飼料用農産物、2020年平均=100、各年1月)
年度2020202120222023202420252026
食料品の輸入物価指数指数103.10103.20130.30149.30155.70172.80178.80
読み解き

日本銀行の輸入物価指数(円ベース、2020年の価格を100)でみると、食料品の仕入れ価格は2020年の約100から、2022年に急上昇し、2026年には182.4(2026年4月時点)まで上がりました。2022年以降の上昇には、国際的な穀物価格の高騰に加え、円安が大きく影響しています。輸入に頼る食材は、海外の価格が同じでも、円安が進めば円建ての仕入れ値が上がるためです。

この指数は、店頭のメニュー価格ではなく、企業が仕入れる段階の輸入価格を示します。仕入れ値の上昇がそのまま吸収できなくなった分が、メニューの値上げにつながってきました(メニュー価格そのものの動きは価格戦略のページで扱います)。

食材の品目別の輸入物価指数(2020年平均=100)

上の食料品(計)を品目で分けた内訳(同じ日本銀行の輸入物価指数、2020年平均=100)。各列は各年1月時点、最新列のみ2026年4月
食料品・飼料用農産物(計)
2020年1月
103.1
2022年1月
130.3
2024年1月
155.7
2026年4月
182.4
畜産品(食肉系)
2020年1月
102.3
2022年1月
109.7
2024年1月
136.8
2026年4月
156.9
食料用農産物(穀物・小麦系)
2020年1月
104.1
2022年1月
146.5
2024年1月
156.3
2026年4月
200.5
加工食品
2020年1月
102.3
2022年1月
117.7
2024年1月
155.2
2026年4月
168.3
読み解き

この表は、§4-aの食料品(計)を品目で分けた内訳で、すべて同じ日本銀行の輸入物価指数(2020年=100)です。品目によって上昇の度合いが異なります。

ファストフードの主原料でみると、小麦などの穀物を含む「食料用農産物」の上昇が最も大きく、2020年の約104から2026年には200.5まで上がりました。バーガーのバンズや麺類に使う小麦の価格高騰が表れています。一方、牛丼・バーガー・チキンの主原料となる「畜産品(食肉系)」は156.9と、穀物より緩やかな上昇です。仕入れコストの上がり方は食材によって差があり、どの食材を多く使うかによって、チェーンごとに受ける影響も変わります。

主要論点

なぜファストフードのコストは上がっているのか?

食材費と人件費が、ともに上昇しているためです。食材費は輸入依存が中心の要因で、日本銀行の輸入物価指数では食料品が2020年の約100から2026年に182.4まで上がりました。国際的な穀物価格の高騰に加え、円安が円建ての仕入れ値を押し上げています。

人件費は、最低賃金の引き上げが要因です。全国加重平均は2019年度の901円から2025年度に1121円へと6年で220円上がりました。多くのパート・アルバイトで運営するファストフードにとって、最低賃金の上昇は人件費に直結します。

つまりコスト上昇は、輸入食材の価格高騰(食材費)と最低賃金の継続的引き上げ(人件費)という、外部環境の構造的な変化によるものです。一時的な要因ではないため、各チェーンは価格や運営の見直しを迫られています。

食材によってコストの上がり方は違うのか?

食材によって、輸入価格の上がり方には差があります。日本銀行の輸入物価指数を品目別にみると、小麦などの穀物を含む「食料用農産物」が2026年に200.5と最も大きく上昇し、牛肉・鶏肉などの「畜産品」は156.9とやや緩やかです。

この差は、チェーンごとの影響の違いにつながります。バンズや麺に小麦を多く使う業態は穀物価格の高騰の影響を受けやすく、牛丼やチキンを主力とする業態は食肉価格の動きに左右されます。同じ「食材費の上昇」でも、主力メニューによって効きどころが異なります。

ただし、輸入価格はあくまで仕入れ段階の目安です。各チェーンは、調達先の分散や長期契約、メニュー構成の工夫などで影響を和らげようとしており、輸入価格の上昇がそのまま各社のコストに直結するわけではありません。

コスト上昇を価格転嫁と効率化のどちらで吸収するのか?

価格転嫁(値上げ)と効率化(省人化など)の組み合わせで吸収するのが基本です。コスト上昇分をすべて値上げで賄えば客離れのおそれがあり、すべてを効率化で吸収するにも限界があるため、両方を使い分けます。

価格転嫁は、相次ぐ値上げとして表れています。一方、人件費の上昇に対しては、モバイルオーダーやセルフレジ、調理の自動化といった省人化でオペレーションあたりの人手を減らす動きが広がっています。最低賃金が上がり続けるなか、同じ店舗をより少ない人数で回す工夫が、人件費の抑制につながります。

もっとも、各社の原価率や人件費率といった比率は開示が限られ、コスト構造の全体像を数字で横並びに比べるのは困難です。本ページでは、公表されている輸入価格と最低賃金の動きから、各チェーンが直面する上昇圧力を読み解いています。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、食材費・人件費の上昇圧力が続くとみられます。最低賃金の引き上げの流れは続く見通しで、輸入食材も円安が続けば高止まりしやすい状況です。各チェーンは、価格改定と省人化を組み合わせてコストを吸収する対応を迫られます。

中期3-5年

中期では、省人化と調達の見直しが本格化するとみられます。セルフレジ・モバイルオーダー・調理自動化への投資で人件費の上昇を抑え、調達先の分散や国産食材の活用で輸入価格の変動リスクを和らげる動きが広がる可能性があります。コスト構造そのものを変える取り組みが、収益力の差につながります。

長期

長期では、コスト上昇が定着すれば、ファストフードの「安さ」の前提が変わる可能性があります。食材費・人件費の構造的な上昇を前提に、値ごろ感と収益性を両立させる店舗運営やメニュー設計が、各チェーンの競争力を左右していくと考えられます。

よくある質問

ファストフードのコストは何が中心ですか?
大きく食材費(原材料費)と人件費に分かれ、この2つを合わせて「FLコスト」(Food=食材、Labor=人件費)と呼びます。外食の収益を左右する中心的なコストで、近年はこの両方が上昇し、値上げの背景になっています。
なぜ食材費が上がっているのですか?
ファストフードは牛肉・鶏肉・小麦などを多く輸入に頼るため、国際的な価格高騰と円安の影響を受けやすいためです。日本銀行の輸入物価指数(2020年=100)では、食料品が2026年に182.4まで上がり、なかでも小麦などの穀物(食料用農産物)が200.5と最も大きく上昇しています。
最低賃金はどのくらい上がっていますか?
全国加重平均で、2019年度の901円から2025年度には1121円へと、6年で220円上がりました(厚生労働省)。最低賃金は都道府県ごとに定められ、2025年度は最高が東京の1,226円です。多くのパート・アルバイトで運営するファストフードでは、人件費に直結します。
原価率や人件費率は公表されていますか?
各社の原価率・人件費率といった比率は開示が限られ、横並びで比較するのは困難です。そのため本ページでは、比率を推計するのではなく、公表されている輸入価格(日本銀行)と最低賃金(厚生労働省)の動きから、コストの上昇圧力を読み解いています。
コスト上昇にどう対応しているのですか?
価格転嫁(値上げ)と効率化(省人化)の組み合わせで対応しています。値上げだけでは客離れのおそれがあるため、モバイルオーダー・セルフレジ・調理自動化などで、同じ店舗をより少ない人数で運営する省人化を進め、人件費の上昇を抑える動きが広がっています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    厚生労働省「地域別最低賃金」(全国加重平均、各年度)
  2. 2.
    日本銀行「企業物価指数」輸入物価指数(円ベース、2020年平均=100)
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