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TOPIC DETAIL · OVERSEAS EXPANSION

ファストフードの海外展開|主要チェーンの海外戦略と収益【2026年版】

国内市場が成熟するなか、ファストフードの主要チェーンは成長を海外に求めています。すき家のゼンショーHDは牛丼の直営展開と海外の持ち帰り寿司事業の買収を組み合わせ、吉野家は中国を軸にアジアへ、モスバーガーは台湾を中心にアジアへ店舗網を広げています。一方で、日本マクドナルドや日本KFCのように、海外ブランドを国内で展開する会社もあり、「海外に出る」向きは各社で異なります。海外展開は出店を急ぐ局面では先行投資で利益が圧迫されやすく、軌道に乗れば国内より高い採算を生むこともあります。なぜ海外なのか、各社の戦略はどう違うのか、海外展開の収益の実際を、上場各社の資本効率(ROE)も手がかりに整理します。ただし海外店舗数や海外売上比率は各社で開示の粒度が異なり、数値の横断比較には限界があることも踏まえて見ていきます。

なぜ今、ファストフードは海外に出るのか

国内市場の長期的な縮小を見越した先行確保

最大の理由は、国内市場の長期的な縮小です。日本は人口減少と少子高齢化が進み、外食の国内需要は中長期で先細りが見込まれます。物価高で当面は値上げによる単価上昇が市場を支えていますが、各社はその先の構造的な縮小を見越して、いまのうちに海外で足場を築こうとしています。体力のある大手ほど、海外出店を急ぐ傾向があります。

アジアの成長と、北米の高い客単価

行き先は大きくアジアと北米に分かれます。アジアは日本から近く、日本食への親しみが強いうえ、人口増と経済成長で外食需要が拡大しています。吉野家が中国を軸とし、モスバーガーが台湾を中心とするのはこのためです。一方、北米は客単価が高く、ゼンショーが持ち帰り寿司事業を北米で広げるように、高単価の市場として狙われます。

インバウンドとのつながり

訪日外国人の増加も、海外展開を後押しします。日本を訪れて店の味を知った外国人が、帰国後に現地店舗の顧客になりうるためです。国内で訪日客に受け入れられた業態は、海外でも通用する可能性が高いと考えられます。訪日需要の拡大と海外展開は、日本食への関心の高まりという同じ土台でつながっています。

主要チェーンの海外戦略の違い

同じ「海外」でも、各社で進め方や向きは大きく異なる
ゼンショーHD(すき家)— 直営とM&Aの二層構造

ゼンショーHDの海外は、二つの層で構成されます。第1に、すき家(牛丼)を直営でアジアや中南米(中国・東南アジア・ブラジル・メキシコなど)へ広げる層。第2に、北米や英国の持ち帰り寿司事業をM&Aで取り込む層です。スーパー内などで寿司を販売するテイクアウト事業を相次いで買収し、海外の店舗数は国内を上回る規模に達しています。「すき家=直営、寿司テイクアウト=M&A」という二層構造が特徴で、外食最大手として最も積極的に海外を広げる企業のひとつです。

吉野家HD — 中国を軸に、アジアで店舗網を拡大

吉野家HDは、牛丼の吉野家を中国を軸にアジアへ広げてきました。海外店舗数は1,000店規模に達し、中国が過半を占めるほか、インドネシアなど東南アジアでも出店を増やしています。現地の食習慣に合わせたメニューを取り入れながら、アジアの外食需要の拡大を取り込む戦略です。国内の牛丼市場が成熟するなか、海外は数量成長の余地が大きい市場と位置づけられています。

モスバーガー(モスフード)— 台湾を中心に、現地適応で展開

モスフードサービスは、ハンバーガーのモスバーガーを台湾を中心にアジア(タイ・香港・中国・シンガポールなど)へ展開しています。とくに台湾での人気が高く、海外店舗の多くを台湾が占めます。特徴は現地適応で、ライスバーガーのように現地で支持される商品を軸に据え、台湾では「日本発のモス」として広く知られる存在になっています。国内とは異なる商品構成で現地市場に根づいた例です。

日本マクドナルドHD — 海外に出る側ではなく、海外ブランドを国内展開する側

注意したいのが日本マクドナルドHDです。ここまでの3社が日本生まれのブランドを海外へ持ち出すのに対し、日本マクドナルドHDはその反対で、アメリカ生まれのブランドを日本国内で展開する会社です。同社は米国のマクドナルド本部とライセンス契約(海外ブランドの国内運営権)を結び、日本でマクドナルドを運営する立場にあります。したがってこの一覧では、海外へ出ていく主体としてではなく、進出の向きが逆である例として位置づけられます。海外展開を論じる際は、この構造の違いを踏まえる必要があります。

日本KFCHD(ケンタッキー)— 米ブランドの国内展開、ファンド傘下で非上場化

日本KFCホールディングスも、日本マクドナルドと同じくアメリカ生まれのブランド(ケンタッキーフライドチキン)を国内で展開する会社です。1970年に米KFC本部と三菱商事の折半出資で設立された経緯があり、海外へ出ていく主体ではありません。さらに2024年には、米投資ファンドのカーライル・グループによる買収(約1,300億円)で上場廃止となり、50年以上続いた三菱商事との資本関係が解消されました。日本のファストフード大手が海外ファンドの傘下に入った例として注目されます。

海外展開は儲かるのか — 先行投資の力学

局面によって収益性は変わる

海外展開の収益性は、展開の局面によって変わります。出店を急拡大する先行投資の局面では、店舗の立ち上げ費用や人材育成、ブランド浸透のコストが先にかかり、利益が一時的に圧迫されます。事業が軌道に乗れば、国内を上回る採算を生むこともあります。

各社の資本効率を示すROE(自己資本利益率)でみると、海外をM&Aで積極的に広げるゼンショーHDは17.3%と高水準で、日本マクドナルドHDは12.7%です。一方、海外出店を進める吉野家HDは6.1%モスフードは6.0%と相対的に低めです。ROEは、株主が出した資本でどれだけ効率よく利益を上げたかを示す指標で、高いほど稼ぐ力が強いことを意味します。

ただし、ここでのROEは各社の全社連結ベースの資本効率指標であり、海外事業単体の収益性を示すものではありません。ROEの高低は国内事業や事業構成の違いも大きく反映するため、海外展開の巧拙とそのまま結びつけることはできません。

横断比較には限界がある

各社の海外事業を同じ物差しで比べるのは簡単ではありません。海外店舗数や海外売上比率、フランチャイズの比率は、各社で開示の粒度が異なり、横断的な比較は限定的です。本ページでは、開示の粗い数値を無理に並べるよりも、直営かM&Aか、どの地域を主戦場とするか、そもそも海外へ出ていく側か海外ブランドを国内展開する側か、という進め方と向きの違いで各社を捉えています。数値の比較よりも、戦略の違いで読むのが実態に近いといえます。

主要論点

なぜファストフード大手は海外に出るのか?

国内市場が長期的に縮小するという見通しが、海外展開の最大の動機です。人口減少と少子高齢化で、国内の外食需要は中長期で先細りが避けられません。国内に出店し続けても成長の余地が限られるため、体力のある大手ほど、需要が伸びる海外に成長を求めます。

行き先としてアジアが選ばれやすいのは、日本から近く、日本食への親しみが強く、人口増と経済成長で外食需要が拡大しているためです。吉野家が中国を軸とし、モスバーガーが台湾を中心とするのもこのためです。訪日客が増え、海外で日本食の認知が広がっていることも追い風になっています。

つまり海外展開は、当面の利益というより、国内の構造的縮小を見越した中長期の成長確保という性格が強い投資だといえます。

各社で海外戦略はどう違うのか?

進め方と向きの両面で、各社は大きく異なります。進め方では、ゼンショーHDが牛丼の直営展開と持ち帰り寿司事業のM&Aを組み合わせる二層構造をとるのに対し、吉野家やモスバーガーは自社業態の出店を軸にアジアへ広げています。地域も、吉野家は中国、モスバーガーは台湾と、主戦場が分かれます。

さらに重要なのが向きの違いです。すき家・吉野家・モスバーガーが日本生まれのブランドを海外へ持ち出すのに対し、日本マクドナルドと日本KFCは反対に、アメリカ生まれのブランドを日本国内で展開する会社です。海外展開を論じるときは、この2つのグループを混同しないことが大切です。

このように、自社の強みをどの市場でどう広げるか、あるいはそもそも海外へ出ていく側なのかどうかで、各社の海外との関わり方は大きく違います。

海外展開は本当に儲かるのか?

儲かるかどうかは、展開の局面によって変わります。出店を急拡大する先行投資の局面では、立ち上げ費用やブランド浸透のコストが先行し、利益が一時的に圧迫されます。事業が軌道に乗れば、国内を上回る採算を生むこともあります。

各社の資本効率(ROE)をみると、海外をM&Aで広げるゼンショーHD(17.3%)や日本マクドナルドHD(12.7%)が高く、海外出店を進める吉野家HD(6.1%)やモスフード(6.0%)は相対的に低めです。ただし、これは全社連結の資本効率であり、海外単体の収益性ではありません。ROEの違いは国内事業や事業構成の差も反映するため、海外展開の成否とは切り分けて読む必要があります。

海外事業の規模感や採算は、各社の開示の粒度が異なり、横断的に数値で比べるのは限定的です。先行投資をどれだけ回収できるか、撤退も含めてどう運営するかが、海外展開の成否を分けます。

よくある質問

どのファストフードチェーンが海外展開に積極的ですか?
すき家のゼンショーHD、吉野家HD、モスバーガーのモスフードなどが海外展開に積極的です。ゼンショーは牛丼の直営と持ち帰り寿司事業のM&Aを組み合わせ、吉野家は中国を軸にアジアへ、モスバーガーは台湾を中心にアジアへ広げています。一方、日本マクドナルドや日本KFCは海外ブランドを国内で展開する会社で、海外へ出ていく向きとは逆になります。
なぜ日本のファストフードは海外に進出するのですか?
国内市場が人口減少で長期的に縮小すると見込まれ、出店余地が限られていくためです。人口が増え経済が成長するアジアや、客単価の高い北米に成長を求めています。訪日客の増加で海外に日本食の認知が広がっていることも追い風です。
すき家を展開するゼンショーの海外展開はどうなっていますか?
ゼンショーHDは二層で海外を広げています。第1にすき家(牛丼)を直営でアジアや中南米へ展開し、第2に北米・英国の持ち帰り寿司事業をM&Aで取り込んでいます。海外の店舗数は国内を上回る規模に達しており、外食最大手として最も積極的に海外を広げる企業のひとつです。
日本マクドナルドや日本KFCは海外展開しているのですか?
この2社は、海外へ出ていくのではなく、アメリカ生まれのブランド(マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン)を日本国内で展開する会社です。海外本部とのライセンス契約に基づいて国内を運営する立場で、海外展開を論じる文脈では「進出の向きが逆」の例になります。なお日本KFCは2024年に米投資ファンドのカーライルによる買収で上場廃止となりました。
各社の海外店舗数や海外売上を比較できますか?
横断的な比較は限定的です。海外店舗数や海外売上比率、フランチャイズの比率は、各社で開示の粒度が異なり、同じ物差しで並べるのが難しいのが実情です。本ページでは、店舗数の比較よりも、直営かM&Aか、どの地域を主戦場とするか、海外へ出る側か海外ブランドを国内展開する側か、という戦略と向きの違いに焦点を当てています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    各社 有価証券報告書(外食上場各社、連結通期FY2025)
  2. 2.
    各社IR開示・適時開示・報道(海外展開の地域・形態)
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