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産業廃棄物の排出量と処理業の市場規模|物量と金額の2つの見方【2026年版】

産業廃棄物の市場規模には、排出される廃棄物の「量(物量)」と、それを処理する産業の「売上(金額)」という別の見方があります。物量では、2023年度(令和5年度)の総排出量が約3.67億トン(36,725万トン、前年比-1.8%)で、近年は約4億トン前後で横ばいに推移しています。金額では、産業廃棄物処理業の事業者売上が約3.46兆円(経済構造実態調査)、業界全体の推定市場規模が約5.3兆円(環境省の検討会提言)と、集計範囲で見方が分かれます。物量と金額は別の指標であり、両者を割って単価を出すような扱いはしません。排出量の推移、処理の内訳、市場規模の3つの見方を順に整理します。

総排出量(2023年度)
36,725万トン
約3.67億トン、前年比-1.8%
出典: 環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」(令和元〜令和5年度実績、各年度報道発表)
再生利用率(2023年度)
54.7%
再生利用量÷排出量。種類別では大きく異なる
出典: 環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」(令和元〜令和5年度実績、各年度報道発表)
最終処分率(2023年度)
2.4%
排出量に占める最終処分の割合
出典: 環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」(令和元〜令和5年度実績、各年度報道発表)
最終処分場の残余年数
19.7
2021年度時点(排出量はFY2023、公表時期にずれ)
出典: 環境省「環境・循環型社会・生物多様性白書(令和6年版)」

産業廃棄物の総排出量の推移(2019-2023年度、万トン)

2019年度の約3.86億トンから新型コロナ禍を挟んで緩やかに減少し、近年は約4億トン前後で横ばい
単位: 万トン
010,00020,00030,00040,00038,5961937,3822037,5922137,4072236,72523
出典: 環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」(令和元〜令和5年度実績、各年度報道発表)
年度20192020202120222023
総排出量万トン38,59637,38237,59237,40736,725
前年比-3.1%+0.6%-0.5%-1.8%
読み解き

産業廃棄物の総排出量は、2019年度の約3.86億トンから2023年度の約3.67億トンへ、緩やかに減少しています。2020年度には新型コロナ禍で前年から約3%減少し、その後は約4億トン前後で横ばいに推移しています。産業活動の規模に連動するため、景気の影響を受けながらも大きな増減はありません。

排出量は廃棄物の「量」を示す指標で、処理業の市場規模(金額)とは別の軸です。量が横ばいでも、再生利用の高度化や処理単価の動きによって、金額側の市場規模は別の動きをすることがあります。

産業廃棄物の処理結果の内訳(2023年度、万トン)

総排出量36,725万トンの最終的な行き先。再生利用・中間処理による減量化・最終処分の3区分(四捨五入のため内訳の合算は総排出量と僅かに異なる)
項目構成比シェア
再生利用20,07954.7%
中間処理による減量化15,77242.9%
最終処分8752.4%
合計(3区分)36,726100.0%
読み解き

産業廃棄物は、最終的に再生利用(54.7%)中間処理による減量化(42.9%)最終処分(2.4%)の3つに振り分けられます。排出量の多くは、いったん焼却・破砕・選別・脱水などの中間処理を経て、再生利用または減量化されます。

最終処分が2.4%にとどまるのは、中間処理による減量化と再生利用が進んでいるためです。最終処分場の確保が難しいなか、最終処分量をいかに減らすかが業界の構造的な課題となっており、種類別の再生利用率の引き上げが鍵になります。

処理業の市場規模の3つの見方(金額、兆円)

集計の対象範囲が異なる3つの見方。序列でも累積でもなく、合算しない
(A) 産業廃棄物処理業の事業者売上
産業廃棄物処理業(882)を主業とする企業の売上
金額
3.46兆円
対象範囲
最も狭い(企業の主業ベース)
出典(年)
総務省 経済構造実態調査(2022年売上)
(B) 業界全体の推定市場規模
収集運搬・中間処理・最終処分を合わせた業界推計
金額
約5.3兆円
対象範囲
業界全体の機能別推計
出典(年)
環境省 振興方策提言(≈2017年推計)
(C) 環境産業の廃棄物処理・資源有効利用分野
リサイクル財・資源有効利用を含む最も広い範囲
金額
約13.3兆円
対象範囲
環境産業の一分野(最も広い)
出典(年)
環境省 環境産業市場規模(2022年)
読み解き

処理業の「市場規模」と呼ばれる金額には、対象範囲の異なる3つの見方があります。(A) 産業廃棄物処理業(中分類88のうち産廃882)を主業とする事業者の売上が約3.46兆円(経済構造実態調査、2022年売上)で、最も狭く厳密な政府一次統計です。なお廃棄物処理業全体(一般廃棄物処理業を含む)の売上は約5.62兆円ですが、一般廃棄物は市町村が所管する別の領域のため、本ページでは産廃の3.46兆円を用います。

(B) 業界全体の推定市場規模は約5.3兆円で、収集運搬・中間処理・最終処分を合わせた環境省の検討会提言による推計です。ただしこの推計は概ね2017年時点のもので、(A)より広い範囲を対象とします。(C) 環境産業の「廃棄物処理・資源有効利用」分野は約13.3兆円で、リサイクル財・資源有効利用まで含む最も広い範囲です。

この3つは対象範囲が異なる別の見方であり、序列をつけたり、合算したりするものではありません。たとえば(B)の約5.3兆円から(A)の約3.46兆円へと「縮小した」と読むのは誤りで、両者は集計の対象も時点も異なります。市場規模を引用するときは、何の範囲の金額かを確認する必要があります。

主要論点

産業廃棄物の排出量はなぜ横ばいなのか?

産業廃棄物の総排出量は、2019年度の約3.86億トンから2023年度の約3.67億トンへ緩やかに減少しましたが、長期的には約4億トン前後で横ばいに推移しています。排出量は産業活動の規模に連動するため、景気や生産水準の影響を受けながらも、大きく増減しにくい構造です。

横ばいの背景には2つの要因があります。第1に、製造業の生産や建設投資といった排出源の活動量が、人口減少や成熟経済のなかで大きく伸びていないことです。第2に、排出事業者による発生抑制(リデュース)や工程内での再使用が進み、同じ生産量でも排出量が増えにくくなっていることです。

排出量が横ばいであることは、処理業にとって「処理する量」がほぼ一定であることを意味します。このため、量の拡大よりも、再生利用の高度化や処理の付加価値化、事業者の集約によって成長を図る構造になっています。

産業廃棄物処理業の市場規模は何兆円と言えるのか?

処理業の市場規模は、集計の対象範囲によって複数の見方があり、ひとつの数字では表せません。(A) 産業廃棄物処理業を主業とする事業者の売上は約3.46兆円(総務省 経済構造実態調査、2022年売上)で、企業の主業を基準にした最も狭く厳密な政府一次統計です。(B) 収集運搬・中間処理・最終処分を合わせた業界全体の推定市場規模は約5.3兆円(環境省の検討会提言、概ね2017年推計)です。(C) リサイクル財まで含む環境産業の廃棄物処理・資源有効利用分野は約13.3兆円(環境省 環境産業市場規模、2022年)です。

これらは序列でも累積でもなく、対象範囲が異なる別の見方です。(A)は主業企業の売上、(B)は機能別に積み上げた業界推計、(C)はリサイクル財を含む最も広い概念で、それぞれ測っているものが違います。狭く正確に見るなら(A)、業界全体の規模感をつかむなら(B)、循環経済のなかでの位置づけを見るなら(C)、という使い分けになります。

市場規模を引用する際は、どの範囲の金額かを必ず確認し、3つを足し合わせたり、年の異なる数字を直接比較したりしないことが重要です。

物量(トン)と金額(円)のどちらで業界を測るべきか?

産業廃棄物処理・リサイクル業界は、物量(排出量・処理量、トン)金額(処理業の売上・市場規模、円)の2つの軸で測られますが、両者は性質が異なります。物量は、社会全体でどれだけの廃棄物が発生し、どう処理されているかという環境・社会インフラとしての規模を示します。2023年度の排出量約3.67億トン、再生利用率54.7%といった指標がこれにあたります。

一方、金額は、その処理を担う産業としての経済規模を示します。事業者売上(A)約3.46兆円や業界推計(B)約5.3兆円がこれにあたります。物量が横ばいでも、処理の高度化(再資源化・選別の精緻化)や処理単価の動きによって、金額側は別の動きをすることがあります。

両者は別の指標であり、排出量を市場規模で割って単価を出すような扱いはしません(物量と金額の単位・対象が異なるため)。業界の社会的役割を見るなら物量、企業活動としての規模や成長を見るなら金額、というように目的に応じて使い分けるのが適切です。

中期見通し

近未来1-2年

排出量は当面、約4億トン前後の横ばいで推移するとみられます。産業活動の規模に連動するため、急な増減は見込みにくい一方、再生利用率の引き上げと最終処分量の削減が継続的なテーマとなります。金額面では、処理の高度化やトレーサビリティ対応のコストが、処理単価や市場規模に影響します。

中期3-5年

中期では、循環経済への政策的な後押し(第五次循環型社会形成推進基本計画・再資源化事業等高度化法)を背景に、再生材の需要拡大と処理の付加価値化が金額側の成長を支える見通しです。物量が横ばいでも、再資源化の比率と単価が上がれば、金額ベースの市場規模は拡大の余地があります。

長期

長期では、人口減少と成熟経済のなかで排出量(物量)の大きな伸びは見込みにくく、業界の成長は再生利用の高度化・処理の高付加価値化・事業者の集約によって図られます。市場規模の数字を読む際は、物量と金額の区別、金額3つの見方の区別を踏まえることが前提となります。

よくある質問

産業廃棄物の排出量はどれくらいですか?
2023年度(令和5年度)の産業廃棄物の総排出量は約3.67億トン(36,725万トン、前年比-1.8%)です(環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」)。近年は約4億トン前後で横ばいに推移しています。このうち54.7%が再生利用され、最終処分は2.4%にとどまります。
産業廃棄物処理業の市場規模は何兆円ですか?
集計の対象範囲によって複数の見方があります。産業廃棄物処理業を主業とする事業者の売上は約3.46兆円(総務省 経済構造実態調査、2022年売上)、業界全体の推定市場規模は約5.3兆円(環境省の検討会提言、概ね2017年推計)、リサイクル財まで含む環境産業の廃棄物分野は約13.3兆円(2022年)です。これらは対象範囲が異なる別の見方で、合算したり序列をつけたりするものではありません。
物量(トン)と金額(円)はどう違いますか?
物量は排出される廃棄物の「量」(2023年度 約3.67億トン)で、社会全体の廃棄物発生と処理の規模を示します。金額は、その処理を担う産業の「売上・市場規模」(事業者売上 約3.46兆円など)で、産業としての経済規模を示します。両者は別の指標であり、排出量を市場規模で割って単価を出すような扱いはしません。
データは何年のものですか?
排出量の最新の確定値は2023年度(令和5年度)で、環境省が各年度の実績を報道発表しています(公表には約2年のラグがあります)。金額側の事業者売上は経済構造実態調査の2022年売上、業界推計は環境省の検討会提言(概ね2017年)によります。最終処分場の残余年数(約19.7年)は環境白書の2021年度時点の値です。
再生利用率はどう計算されていますか?
産業廃棄物全体の再生利用率54.7%(2023年度)は、再生利用量を排出量で割った全国統計の値です。種類別では、がれき類のように再生利用率が高いものから、汚泥のように低いものまで大きく異なります。なお、個別企業が公表する「リサイクル率」は自社の処理量を基準とすることが多く、分母が異なるため、全国統計と単純には比較できません。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」(令和元〜令和5年度実績)
  2. 2.
    総務省・経済産業省「2023年経済構造実態調査(産業横断調査)」
  3. 3.
    環境省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」
  4. 4.
    環境省「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」
  5. 5.
    環境省「環境・循環型社会・生物多様性白書(令和6年版)」
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