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デジタル印刷と印刷通販|オンデマンド印刷と印刷通販1,237億円の市場【2026年版】

デジタル印刷と印刷通販は、印刷業界がデジタル化を取り込む動きの中心です。インターネットで注文する印刷通販の市場は、2021年に1,237億円となり、2013年の543億円からおよそ2.3倍に成長しました。版を使わず必要な分だけ刷るオンデマンド印刷も普及し、小ロット・短納期の需要に応えています。縮小する印刷市場のなかで成長するこれらの分野を整理します。

印刷通販市場は、どう伸びているのか

2013年から約2.3倍に成長

インターネットで価格を確認して注文する印刷通販の市場は、一貫して成長してきました。矢野経済研究所によると、2013年の543億円から2021年には1,237億円へと、およそ2.3倍に拡大しています。2022年は1,340億円の見込みです。縮小が続く一般印刷市場のなかで、数少ない成長分野となっています。

DX浸透が成長を後押し

成長の背景には、注文のデジタル化(DX)の浸透があります。これまで地域の印刷会社へ電話やファクスで頼んでいた名刺・チラシ・冊子などの印刷を、ウェブサイト上で仕様と価格を確認して発注できるようになりました。全国から注文を集めて大きな印刷機で効率的にまとめ刷りすることで、低価格と短納期を実現しています。なお、この市場規模は2022年の調査が最新で、年を追うごとに伸びてきた経緯を示すものです。

国内印刷通販市場の推移(2013-2022年)

インターネットで価格を確認して注文するオープン型印刷通販の市場規模(事業者売上高ベース、暦年)。2022年は見込み。製造品出荷額等とは別の集計
2013年
市場規模
543億円
2014年
市場規模
599億円
2015年
市場規模
659億円
2016年
市場規模
751億円
2017年
市場規模
910億円
2018年
市場規模
1,040億円
2019年
市場規模
1,176億円
2020年
市場規模
1,209億円
2021年
市場規模
1,237億円
2022年(見込)
市場規模
1,340億円
読み解き

印刷通販市場は、2013年の543億円から2021年の1,237億円まで、毎年着実に拡大してきました。コロナ禍の2020年前後も底堅く推移しており、注文のデジタル化が定着したことがうかがえます。ただし、これは事業者の売上高ベースで集計した印刷通販という一分野の規模で、印刷業界全体の生産額(製造品出荷額等)とは別の指標です。

デジタル印刷(オンデマンド印刷)とは何か

版を使わずに刷る印刷

デジタル印刷とは、版を作らずにデータから直接刷る印刷の総称で、トナーを使う方式(オンデマンド印刷)やインクジェットの高速機がこれにあたります。従来のオフセット印刷は、刷版という版を作ってから大量に刷る方式で、版の準備に手間とコストがかかる分、大量印刷では1枚あたりの単価が下がります。

小ロット・短納期・可変印刷に強い

デジタル印刷は版が不要なため、小ロット・短納期の印刷や、1部ごとに宛名や内容を変える可変印刷(ダイレクトメールや個別の通知物など)に向いています。少部数なら、版を作るオフセットよりも速く安く刷れます。一方、何万部もの大量印刷では、いまもオフセットのほうが効率的です。両者は対立するものではなく、部数や用途によって使い分けられています。

デジタル化は、印刷業の縮小を補えるのか

成長分野だが市場全体は縮小

印刷通販やオンデマンド印刷は成長していますが、これらが印刷市場全体の縮小を補えているわけではありません。印刷通販(2021年1,237億円)は、一般印刷市場の一部にすぎず、その成長を上回るペースで、出版印刷や商業印刷の紙需要が縮小しているためです。市場全体としては、縮小基調のなかで成長分野が相対的に存在感を高めている、という構図です。

価格競争という側面

印刷通販は、低価格を武器に全国から注文を集める仕組みでもあります。これは利用者には利点ですが、地域の中小印刷業にとっては価格競争の激化という側面もあります。デジタル化への対応は、単に通販やオンデマンドを導入するだけでなく、価格競争に陥らないための企画力やサービスの付加価値が問われます。

データ・サービスへの広がり

デジタル印刷の普及は、印刷を「刷る」仕事から「データを扱う」仕事へと広げる契機にもなっています。可変印刷を生かしたダイレクトメールの最適化や、データを活用した販促支援など、印刷の前後の工程を取り込むサービス化が、デジタル時代の印刷業の方向の一つとなっています。

主要論点

なぜ印刷通販は成長を続けているのか?

印刷通販市場は、2013年の543億円から2021年の1,237億円まで、およそ2.3倍に拡大しました。最大の理由は、注文のデジタル化(DX)の浸透です。名刺・チラシ・冊子などの印刷を、ウェブ上で仕様と価格を確認してその場で発注できる手軽さが、利用者に支持されています。

仕組みの面では、全国から注文を集約し、大きな印刷機でまとめて刷ることで、低価格と短納期を両立しています。少部数でも手ごろな価格で頼めるため、これまで印刷を発注しにくかった小規模事業者や個人の需要も取り込んでいます。

コロナ禍の前後も底堅く推移しており、注文のデジタル化が一過性でなく定着したことがうかがえます。縮小が続く印刷市場のなかで、印刷通販は数少ない成長分野となっています。

オンデマンド印刷はオフセット印刷を置き換えるのか?

オンデマンド印刷(デジタル印刷)とオフセット印刷は、どちらかが一方的に置き換わる関係ではなく、部数や用途による使い分けが進んでいます。

オンデマンド印刷は版が不要なため、小ロット・短納期や、1部ごとに内容を変える可変印刷に向いています。少部数なら、版を作るオフセットより速く安く刷れます。一方、何万部もの大量印刷では、版を作っても1枚あたりが安くなるオフセットのほうが効率的です。

紙媒体の需要が小ロット化・多品種化するなかで、オンデマンド印刷の出番は増えていますが、大量印刷の領域ではオフセットが残ります。両者を備え、案件に応じて使い分けられるかが、印刷会社の対応力となります。

デジタル化は中小印刷業にとって追い風か逆風か?

デジタル化は、印刷業界にとって両面があります。追い風の面は、印刷通販やオンデマンド印刷という成長分野が生まれ、小ロット・短納期の新しい需要を取り込めることです。

逆風の面は、価格競争の激化です。印刷通販は低価格を武器に全国から注文を集めるため、地域で価格を競ってきた中小印刷業には、価格面での圧力が強まります。単純な印刷の請負では、通販の低価格と競うのが難しくなります。

そのため、中小印刷業にとっての論点は、デジタル化そのものより、価格競争に陥らない付加価値をどう作るかにあります。企画・デザイン・データ活用・短納期対応など、価格以外の強みを持てるかが、デジタル時代の生き残りを左右します。

中期見通し

近未来1-2年

印刷通販やオンデマンド印刷は、紙媒体の小ロット化・多品種化を背景に、引き続き需要を取り込むとみられます。注文のデジタル化はさらに浸透し、ウェブ発注やデータ入稿の利便性をめぐる競争が続きます。一方で、低価格競争の側面も強まり、価格以外の付加価値づくりが各社の課題となります。

中期3-5年

中期では、可変印刷やデータ活用を生かしたサービス化が進むとみられます。単に印刷物を刷るだけでなく、ダイレクトメールの最適化や販促支援など、印刷の前後の工程を取り込む動きが広がります。オンデマンド印刷の品質・速度の向上で、オフセットとの使い分けの境目も変化していきます。

長期

長期では、印刷の仕事が「刷る」ことから「データを扱い、必要なものを必要なだけ届ける」ことへと比重を移していくとみられます。印刷通販・オンデマンド印刷は、その入り口となる分野です。ただし、印刷市場全体の縮小という基調は変わらず、成長分野をどう取り込み、価格競争を避けて付加価値を高められるかが問われ続けます。

よくある質問

印刷通販の市場規模はどのくらいですか?
矢野経済研究所によると、国内の印刷通販市場は2021年に1,237億円で、2013年の543億円からおよそ2.3倍に成長しました(2022年は1,340億円の見込み、2022年の調査が最新)。価格を確認してインターネットで注文するオープン型の印刷通販を、事業者の売上高ベースで集計したものです。
デジタル印刷とオフセット印刷は何が違いますか?
オフセット印刷は刷版という版を作ってから刷る方式で、大量印刷では1枚あたりの単価が下がります。デジタル印刷(オンデマンド印刷・インクジェット)は版を作らずデータから直接刷る方式で、小ロット・短納期や、1部ごとに内容を変える可変印刷に向いています。少部数ならデジタル、大量印刷ならオフセットというように、部数や用途で使い分けられています。
オンデマンド印刷とは何ですか?
オンデマンド印刷とは、版を作らずに、必要なときに必要な部数だけデータから直接刷る印刷です。版が不要なため、少部数の印刷を速く安く仕上げられ、宛名やデザインを1部ごとに変える可変印刷もできます。名刺・チラシ・冊子の小ロット印刷や、ダイレクトメールなどに使われています。
印刷通販の成長で印刷市場全体は伸びていますか?
いいえ。印刷通販(2021年1,237億円)は一般印刷市場の一部で、その成長を上回るペースで出版印刷・商業印刷の紙需要が縮小しているため、印刷市場全体は縮小基調です。市場全体が縮むなかで、デジタル化に対応した印刷通販やオンデマンド印刷が、相対的に存在感を高めているという位置づけです。
印刷通販は中小印刷会社にとって脅威ですか?
両面あります。小ロット・短納期の新しい需要を取り込める追い風である一方、低価格を武器に全国から注文を集める仕組みのため、地域で価格を競ってきた中小印刷業には価格競争の圧力が強まります。単純な印刷の請負では通販の低価格と競いにくいため、企画・デザイン・データ活用など価格以外の付加価値をどう作るかが課題となります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    矢野経済研究所 国内印刷通販市場
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