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印刷業界の構造|1万3,371事業所の規模別構成と製版・印刷・製本の分業【2026年版】

印刷業界の構造を、事業所の規模・工程別の分業・用途分野ごとの集中度という観点から整理します。印刷・同関連業の事業所は全国に13,371あり、その97.3%は従業者100人未満の中小零細です。一方で、製造品出荷額等の42.3%は従業者100人以上のわずか361事業所が生み出しており、事業所数では分散しながら生産は上位に集中しています。製版・印刷・製本という工程の分業構造とあわせて、印刷業界の組み立て方をみていきます。

従業者規模別の事業所数(全10階級)

印刷・同関連業の事業所を従業者規模で分けた分布。1〜9人が8,160事業所(61.0%)と過半を占め、規模が大きくなるほど事業所数は急速に減る
単位: 事業所10 カテゴリ・合計 13,371
02,5005,0007,50010,0008,1601~9人2,31710~19人1,07520~29人81430~49人64450~99人247100~199人59200~299人32300~499人18500~999人51000人以上
出典: 総務省・経済産業省「経済構造実態調査 製造業事業所調査」(日本印刷産業連合会「印刷産業Annually Report Vol.5」掲載、2024年)
カテゴリ1~9人10~19人20~29人30~49人50~99人100~199人200~299人300~499人500~999人1000人以上
事業所数事業所8,1602,3171,0758146442475932185
シェア61.0%17.3%8.0%6.1%4.8%1.8%0.4%0.2%0.1%0.0%
読み解き

印刷・同関連業の事業所を従業者規模でみると、1〜9人の小規模事業所が8,160(全体の61.0%)と過半を占め、規模が大きくなるほど事業所数は急速に減っていきます。従業者100人未満の事業所を合わせると13,010(97.3%)に達し、印刷業界が地域に密着した中小零細を中心に成り立っていることがわかります。

一方、従業者1000人以上の事業所は全国で5しかありません。事業所数では圧倒的に小規模が多い分散的な構造ですが、出荷額でみると分布は大きく異なります(次の表)。

従業者規模別の製造品出荷額等(全10階級、2023年)

事業所数では小規模が大多数だが、出荷額は一定規模以上の事業所に集まる。事業所(工場・拠点)単位の集計で、企業(連結)単位の規模とは異なる
1~9人
製造品出荷額等
3,760
構成比
7.4%
10~19人
製造品出荷額等
4,538
構成比
8.9%
20~29人
製造品出荷額等
4,501
構成比
8.8%
30~49人
製造品出荷額等
6,339
構成比
12.4%
50~99人
製造品出荷額等
10,274
構成比
20.2%
100~199人
製造品出荷額等
7,552
構成比
14.8%
200~299人
製造品出荷額等
4,758
構成比
9.3%
300~499人
製造品出荷額等
3,169
構成比
6.2%
500~999人
製造品出荷額等
4,032
構成比
7.9%
1000人以上
製造品出荷額等
2,013
構成比
4.0%
読み解き

製造品出荷額等を従業者規模別にみると、事業所数とは対照的な姿が浮かびます。事業所数の61.0%を占める1〜9人の層は、出荷額では7.4%にとどまります。逆に、事業所数では2.7%(361事業所)にすぎない従業者100人以上が、出荷額の42.3%を生み出しています。残る97.3%(13,010事業所)の100人未満が、出荷額の57.7%です。なお、各階級の出荷額は億円未満を四捨五入しているため、10階級の合計(50,936億円)は印刷産業計(5兆934億円)と数億円の差が生じます。

ここで注意したいのは、この集中は事業所(工場・拠点)単位の集計だという点です。出荷額の42.3%を占める「従業者100人以上の361事業所」は、企業単位でみた大手2社のことではありません。この中には大手の主力工場だけでなく、中堅・専業の印刷会社の拠点も含まれます。従業者1000人以上の事業所も全国で5(出荷額2,013億円)にとどまります。各社の連結業績(企業ベース)は別の見方であり、主要印刷会社の財務はそちらで整理します。

印刷業界の工程別の構造(製版・印刷・製本・加工)

製造品出荷額等を工程別の4区分でみた内訳と、元請印刷会社を中心とした重層的な分業構造

印刷・同関連業は、統計上印刷業・製版業・製本業/印刷物加工業・印刷関連サービス業の4区分で構成されます。中心は印刷を担う印刷業で、製造品出荷額等は4兆6,395億円(印刷産業計の約91.1%)を占めます。製版や製本・加工は、印刷業を支える専門の工程です。

なお、四捨五入のため工程別の内訳の合計(50,935億円)は、印刷産業計(5兆934億円)と1億円の差が生じます。

印刷業
印刷の中核工程
事業所数
11,162
従業者数
210,756
製造品出荷額等
46,395
製版業
版下・刷版の作成
事業所数
701
従業者数
16,097
製造品出荷額等
2,811
製本業・印刷物加工業
断裁・折り・綴じ・表面加工
事業所数
1,420
従業者数
16,594
製造品出荷額等
1,618
印刷関連サービス業
デザイン・製版前工程の支援等
事業所数
88
従業者数
1,169
製造品出荷額等
111

工程の分業構造 — 元請を中心とした重層的な外注

印刷物は、製版(版下・刷版の作成)から印刷、そして製本・加工(断裁・折り・綴じ・表面加工)へと進む工程を経て仕上がります。受注した元請の印刷会社がすべての工程を自社で抱えるとは限らず、製版や製本などの工程を専門の事業者へ外注する、重層的な分業構造が歴史的に形づくられてきました。

統計でも、製版業が701事業所、製本業・印刷物加工業が1,420事業所と、印刷業(11,162事業所)とは別に多数の専門事業者が存在します。デジタル化で製版がデータ処理へ移り、工程の一部が印刷会社に取り込まれる動きもありますが、中小印刷業を中心に、工程ごとの外注ネットワークが今も業界の基盤になっています。

事業所規模の集中と分散 — 「数は分散・出荷額は集中」

印刷業界の規模構造は、「事業所数は分散し、出荷額は集中する」という二面性を持ちます。事業所数では97.3%が従業者100人未満(うち61.0%が1〜9人)と、地域に密着した中小零細が大多数です。一方、製造品出荷額等の42.3%は、全体の2.7%にあたる従業者100人以上の361事業所が生み出しています。

この集中度は、事業所(工場・拠点)単位の集計である点に注意が必要です。出荷額上位を占める「従業者100人以上の361事業所」は、企業単位でみた大手2社とは異なります。大手の主力工場に加え、中堅・専業の印刷会社の拠点も含まれ、従業者1000人以上の事業所は全国で5にとどまります。企業の連結業績で規模を比べる見方とは、集計の単位が違います。

製造業全体のなかでみると、印刷・同関連業は事業所数で約6.0%、従業者数で約3.2%を占めるのに対し、製造品出荷額等では約1.4%にとどまります。従業者の比率に対して出荷額の比率が低い、つまり従業者一人あたりの出荷額が製造業の平均より小さい、小規模で労働集約的な事業所が多い産業であることが、ここから読み取れます。

用途分野別の集中度の違い — 領域ごとに構造が異なる

印刷は用途によって、事業者の集中度が大きく異なります。証券・カード印刷は、株券・商品券・ICカードなど偽造防止の技術や設備の要件が高く、参入できる事業者が限られる集中的な領域です。これに対し、チラシ・カタログなどの商業印刷は、地域の中小印刷業が密集して担う分散的な領域です。

パッケージ印刷は、軟包装や紙器に強みを持つ中堅の専業メーカーが存在感を持ち、出版印刷も中堅・専業が担います。このように、印刷業界は全体を一律に「寡占」や「分散」と捉えるのではなく、用途分野ごとに集中度が異なる点をふまえる必要があります。

中堅・専業の収益構造 — なぜ利益率が低いのか

大手2社(大日本印刷・TOPPANホールディングス)が事業多角化で規模と利益を保つ一方、中堅・専業の印刷会社は収益を出しにくい構造にあります。たとえば出版印刷を軸とする共同印刷は、連結売上高が約1,000億円(2025年3月期)に対し、連結営業利益率は約2.3%にとどまります(連結営業利益を連結売上高で割った概算)。

利益率が低い背景には、主力の出版印刷が縮小・低単価の分野であることに加え、情報セキュリティや生活資材などへの多角化が途上にあることがあります。大手2社のように、半導体関連などの印刷以外の高収益事業を大きく抱えていないため、印刷需要の縮小がそのまま収益の重荷になりやすいのです。中堅・専業にとっては、価格競争に陥りやすい印刷の請負から、付加価値型の事業へ転換できるかが収益改善の鍵となります。

主要論点

なぜ印刷業界は中小零細の事業所が大多数なのか?

印刷・同関連業の事業所は13,371あり、その97.3%が従業者100人未満、61.0%が1〜9人の小規模事業所です。背景の一つは、工程ごとの分業構造です。製版・印刷・製本・加工が専門事業者に分かれているため、特定の工程だけを担う小規模な事業者でも事業を成り立たせやすくなっています。

もう一つは、商業印刷の地域密着性です。チラシやパンフレットなど地域の販促物の印刷は、近くの取引先との関係や短納期対応が重視され、全国規模の大手より地域の中小印刷業が担う場面が多くあります。中古の印刷機が流通し、設備投資のハードルが比較的下げやすい点も、小規模事業者の併存を支えてきました。

こうした事情から、印刷業界は少数の大手と多数の中小零細が併存する、分散的な事業所構造になっています。

「事業所数は分散・出荷額は集中」をどう読むべきか?

印刷業界は、事業所数では中小零細に広く分散しながら、製造品出荷額等では一定規模以上に集中する、という二面性を持ちます。事業所数の61.0%を占める1〜9人の層は出荷額では7.4%にとどまり、逆に2.7%(361事業所)の従業者100人以上が出荷額の42.3%を生み出しています。

ここで重要なのは、この集中度が事業所(工場・拠点)単位の集計だという点です。「出荷額の42.3%を占める従業者100人以上の361事業所」は、企業単位でみた大手2社のことではありません。この中には中堅・専業の印刷会社の拠点も含まれ、従業者1000人以上の事業所は全国で5だけです。

各社の連結売上高など企業ベースの規模は、また別の見方です。事業所ベースの製造品出荷額等(5兆934億円)と、企業ベースの連結業績を混同せず、どの単位で語っているかを区別することが、業界構造を正しく読むうえで欠かせません。

中堅・専業の印刷会社はなぜ収益を出しにくいのか?

印刷業界では、大手2社が事業多角化で利益を確保する一方、中堅・専業の印刷会社は収益を出しにくい構造にあります。出版印刷を軸とする共同印刷の連結営業利益率が約2.3%程度にとどまるように、印刷を主力とする企業は利益率が低めです。

理由は、主力の出版印刷や商業印刷が縮小・低単価の分野であることに加え、大手2社のような印刷以外の高収益事業を大きく持たないことにあります。半導体関連などへ多角化した大手が非印刷事業で利益を稼ぐのに対し、中堅・専業は印刷需要の縮小をそのまま受けやすいのです。

そのため、中堅・専業にとっては、価格競争に陥りやすい印刷の請負から、企画・データ活用・周辺サービスを含む付加価値型の事業へどう転換するかが、収益改善と生き残りの分かれ目となります。

中期見通し

近未来1-2年

近未来は、事業所数の緩やかな減少が続くとみられます。紙媒体の需要縮小と経営者の高齢化・後継者不在を背景に、中小印刷業の廃業や、規模を持つ印刷会社への事業譲渡・統合が進む見通しです。工程別では、製版のデジタル化により、独立した製版事業者の役割が印刷会社へ取り込まれる動きが続きます。

中期3-5年

中期では、規模の二極化が進むとみられます。一定規模以上の事業所が出荷額の多くを担う構造のもとで、設備投資やデジタル対応の余力がある事業者と、対応が難しい小規模事業者との差が広がります。用途分野別では、縮小する商業・出版印刷で再編が進み、底堅いパッケージ印刷に強みを持つ専業が相対的に存在感を高める可能性があります。

長期

長期では、需要縮小と事業承継の課題のなかで、印刷業界の事業所数はさらに減り、業界の集約が進む見通しです。全日本印刷工業組合連合会が呼びかけてきた業態変革——印刷の請負から、企画・デザイン・データ活用までを担う事業への転換——を進められるかが、中小印刷業の存続を左右します。地域に密着した分散的な構造が、どこまで維持されるかが焦点となります。

よくある質問

日本の印刷業界の事業所数・規模構造はどうなっていますか?
印刷・同関連業の事業所数は全国で13,371、従業者数は244,616人です(経済構造実態調査、2024年)。事業所の97.3%が従業者100人未満、61.0%が1〜9人の小規模事業所で、地域に密着した中小零細が大多数を占めます。一方で、製造品出荷額等の42.3%は、全体の2.7%にあたる従業者100人以上の361事業所が生み出しています。
なぜ印刷業界は中小零細の事業所が多いのですか?
製版・印刷・製本・加工という工程ごとの分業構造があり、特定の工程だけを担う小規模事業者でも成り立ちやすいことが一因です。また、チラシなど地域の商業印刷は近隣の取引先との関係や短納期対応が重視され、地域の中小印刷業が担う場面が多くあります。中古の印刷機が流通し設備投資のハードルが下げやすい点も、小規模事業者の併存を支えてきました。
印刷にはどんな工程がありますか?
印刷物は、製版(版下・刷版の作成)、印刷、製本・加工(断裁・折り・綴じ・表面加工)という工程を経て仕上がります。元請の印刷会社がすべてを自社で行うとは限らず、製版や製本などを専門の事業者へ外注する重層的な分業構造があります。製造品出荷額等でみると、印刷業が4兆6,395億円(印刷産業計の約91.1%)と中心を占めます。
「上位2.7%の事業所が出荷額の42.3%」とは、大手2社のことですか?
いいえ。これは事業所(工場・拠点)単位の集計で、企業(連結)単位の大手2社とは異なります。出荷額の42.3%を占める「従業者100人以上の361事業所」には、大手の主力工場だけでなく中堅・専業の印刷会社の拠点も含まれます。従業者1000人以上の事業所は全国で5だけです。各社の連結売上高など企業ベースの規模は、これとは別の見方になります。
中堅・専業の印刷会社はなぜ利益率が低いのですか?
主力の出版印刷や商業印刷が縮小・低単価の分野であることに加え、大手2社のような印刷以外の高収益事業を大きく持たないためです。たとえば出版印刷を軸とする共同印刷は、連結売上高約1,000億円に対し連結営業利益率が約2.3%程度です。価格競争に陥りやすい印刷の請負から付加価値型の事業へ転換できるかが、収益改善の鍵となります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    総務省・経済産業省 経済構造実態調査 製造業事業所調査
  2. 2.
    日本印刷産業連合会「印刷産業Annually Report Vol.5」(2026年4月)
  3. 3.
    EDINET(金融庁)共同印刷 有価証券報告書
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