印刷業界の市場規模・主要企業・動向
日本の印刷業界は、製造品出荷額が1991年のピークから縮小して5兆円規模となり、出版・商業印刷の縮小とパッケージ・事業多角化が進む構造転換期にあります。
印刷業界とは、出版・商業印刷から証券・カード印刷、パッケージ印刷までを手がけ、製版・印刷・製本・加工の工程で印刷物を生産する産業です。製造品出荷額等は1991年のピークから縮小し、2023年は5兆934億円となりました。大日本印刷とTOPPANホールディングスの大手2社と、1万3,371事業所の多くを占める中小零細が併存しています。出版・商業印刷の縮小とパッケージ印刷の底堅さによる分野の二極化、大手2社の脱・印刷依存の多角化、電子出版などのデジタル代替が業界共通の論点です。本ページでは、日本の印刷業界を、市場規模、分野別内訳、業界構造、事業多角化、デジタル代替の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
印刷業界とは、出版・商業印刷、証券・カード印刷、パッケージ印刷などを、製版・印刷・製本・加工の工程で生産する産業です。業界の中心的な指標である製造品出荷額等(印刷物の出荷額)は1991年のピークから長期的に縮小しており、紙媒体の需要減少を背景に、分野の二極化と事業多角化が同時に進む構造転換期を迎えています。
- 製造品出荷額等は長期的な縮小が続いています。2004年の7兆2,127億円から2023年には5兆934億円へ減少し、紙の出版・商業印刷の需要縮小がその中心にあります。
- 大手2社と多数の中小零細が併存する構造です。大日本印刷とTOPPANホールディングスが事業多角化で規模を保つ一方、1万3,371事業所の97.3%は従業者100人未満の中小零細が占めています。
- 分野の二極化と事業多角化が進んでいます。出版・商業印刷が縮小する一方でパッケージ印刷は底堅く、大手2社は印刷で培った技術をエレクトロニクスや生活産業へ展開しています。
市場動向
印刷市場は紙媒体の需要縮小を背景に、製造品出荷額等が長期的に減少しています。2023年の製造品出荷額等は5兆934億円となりました。分野別では出版・商業印刷の縮小とパッケージ印刷の底堅さによる二極化が進んでいます。
- 製造品出荷額等は2004年の7兆2,127億円から2023年に5兆934億円へ縮小しています。およそ20年で約3割が減少し、長期的な縮小傾向が続いています。
- 分野別では二極化が進んでいます。矢野経済研究所の一般印刷市場は2019年度に3兆4,391億円で出版・商業印刷が減少する一方、パッケージ印刷市場は2024年度に1兆5,204億円と底堅く推移しています。
- 業界規模は見る統計によって変わります。業界の中心的な指標である製造品出荷額等は5兆934億円ですが、企業全体の売上を捉える法人企業統計では2024年度に8兆8,730億円となり、事業所ベースか企業ベースかという集計範囲の違いで差が生じます。
競争環境
日本の印刷業界では、大手2社(大日本印刷・TOPPANホールディングス)、中堅上場の印刷会社、多数の中小零細印刷事業者、川上の機械・インキ・用紙メーカーなど多様なプレイヤーが活動しています。大手2社が事業多角化で連結規模を保つ一方、1万3,371事業所の大半は中小零細で、印刷中核セグメントの規模、分野別の集中度の差、脱・印刷依存の多角化が主要な論点となっています。
- 大日本印刷とTOPPANホールディングスの2社が業界の中核を担っています。連結売上高はDNPが1兆4,576億円、TOPPANが1兆7,180億円ですが、印刷中核のセグメントはスマートコミュニケーション7,156億円・情報コミュニケーション9,294億円で、多角化により連結と印刷の規模が分かれています。
- 中堅上場の印刷会社と多数の中小零細が市場を構成しています。共同印刷・図書印刷・光村印刷などの中堅が上場する一方、1万3,371事業所の97.3%は従業者100人未満で、地域の商業印刷を中心に多数の中小が活動しています。
- 分野によって事業者の集中度が異なります。証券・カード印刷は限られた事業者に集中する一方、商業印刷は地域の中小が密集し、パッケージ印刷は中堅の専業が強みを持つなど、領域ごとに構造が異なります。
市場規模推移
2004-2023 · 製造品出荷額等日本の印刷業界は、1991年をピークに製造品出荷額等が長期的に縮小しています。2004年の7兆2,127億円から2023年には5兆934億円へと減少し、およそ20年で約3割が失われました。出版印刷や商業印刷を中心とした紙媒体の需要縮小が、その背景にあります。
業界規模は統計によって捉え方が異なります。財務省の法人企業統計でみた印刷業の売上高は2024年度に8兆8,730億円で、製造品出荷額等の5兆934億円より大きくなります。これは集計範囲が異なるためで、企業ベースで事業全体を含むか、事業所の製造品出荷に限るかの違いによるものです。
分野別にみると、出版印刷・商業印刷が縮小する一方で、パッケージ印刷が底堅く推移しています。矢野経済研究所の一般印刷市場は2019年度に3兆4,391億円で、出版印刷と最大分野の商業印刷が減少しました。一方、食品や日用品の包装需要を背景に、パッケージ印刷市場は2024年度に1兆5,204億円と前年度を上回っています。
需要側ではデジタル代替が進んでいます。2024年の紙の出版市場は1兆56億円で3年連続の減少となり、電子出版市場は5,660億円へ拡大しました。インターネットで小ロット印刷を受注する印刷通販も2021年に1,237億円規模となり、紙媒体の縮小を一部補っています。
印刷物の生産を支える川上の資機材も縮小しています。経済産業省の生産動態統計によると、2025年の印刷インキ・印刷機械・印刷用紙の生産量はいずれも減少し、印刷需要の縮小を供給側からも裏づけています。印刷インキでは、軟包装に使われるグラビアインキが最大の品種となっており、パッケージ需要の底堅さと整合しています。
近年は用紙やインキの価格上昇も経営環境に影響しています。原材料価格の上昇分を印刷料金へ転嫁できるかが、中小印刷業を中心に課題となっています。直近の出荷額が下げ止まってみえる局面でも、数量の縮小と価格の上昇という名目と実質の動きを切り分けて捉える必要があります。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要日本の印刷業界は、製版・印刷・製本・加工という工程と、出版印刷・商業印刷・証券関連カード印刷・ビジネスフォーム印刷・パッケージ印刷という用途で構成されています。元請の印刷会社が受注し、製版や製本などの工程を専門の事業者へ外注する重層的な分業構造が、歴史的に形づくられてきました。
事業者の規模差は大きく、1万3,371の事業所のうち97.3%が従業者100人未満の中小零細です。少数の大手と多数の中小が併存し、大手2社が事業多角化で連結規模を保つ一方、地域に密着した中小印刷業が商業印刷を中心に幅広く分布しています。
印刷業界では、大日本印刷とTOPPANホールディングスの大手2社が中核を担い、共同印刷・図書印刷・光村印刷などの中堅が続きます。大手2社は連結売上高で1兆円を超えますが、印刷中核のセグメントはスマートコミュニケーション7,156億円・情報コミュニケーション9,294億円で、多角化により連結と印刷の規模が分かれています。
事業者の集中度は分野によって異なります。証券・カード印刷は限られた事業者に集中する一方、商業印刷は地域の中小が密集し、パッケージ印刷は中堅の専業メーカーが強みを持っています。業界全体を一律にとらえるのではなく、領域ごとの構造の違いをふまえる必要があります。
印刷業界では、紙媒体の需要縮小を背景に、印刷以外の事業への多角化が構造変化の中心となっています。大手2社は、印刷で培った微細加工やコーティングの技術を、半導体関連部材などのエレクトロニクスや、パッケージ・電池外装材などの生活産業へ広げてきました。
川上には、印刷機械・インキ・用紙のメーカーが連なります。小森コーポレーションなどの印刷機械、DIC・サカタインクスなどのインキ、製紙各社の印刷用紙が印刷物の生産を支えていますが、印刷需要の縮小とともに、これらの川上産業でも生産量の減少と再編が進んでいます。
業界の3大論点
縮小する印刷市場で各社はどう生き残るのか?
印刷業界の製造品出荷額等は、1991年のピークから2023年の5兆934億円まで長期的に縮小してきました。紙の出版や商業印刷の需要が減るなかで、印刷だけに依存する事業モデルでは成長を描きにくくなっています。各社は、底堅いパッケージ印刷への注力、デジタルサービスの付加、事業領域の組み替えなど、それぞれの方向で対応を進めています。
大手2社は、印刷で培った技術を別の事業へ広げています。大日本印刷は半導体関連や電池外装材、TOPPANホールディングスは半導体パッケージ基板など、エレクトロニクスや生活産業へ多角化し、連結売上高を保っています。印刷中核のセグメントが縮小しても、非印刷領域が全体を支える構造へと移ってきました。
中小印刷業では、業態の転換が課題となっています。全日本印刷工業組合連合会は、印刷の請負にとどまらず、企画・デザインからデータ活用までを一括して担う業態変革を長く呼びかけてきました。地域の商業印刷を中心とする中小は、価格競争から付加価値型のサービスへ移れるかが、生き残りの分かれ目となる見通しです。
パッケージ印刷はなぜ底堅いのか?
出版・商業印刷が縮小するなかで、パッケージ印刷は数少ない底堅い領域となっています。矢野経済研究所によると、パッケージ印刷市場は2024年度に1兆5,204億円で前年度を上回りました。食品や日用品、医薬品、化粧品などの包装は景気変動の影響を受けにくく、印刷物そのものが商品の一部として必要とされるためです。
支えているのは、生活必需品とEC(電子商取引)の需要です。食品の軟包装や紙器、通販で送られる商品の外装など、モノが動く限り包装の需要は残ります。印刷インキでも、軟包装に使われるグラビアインキが最大の品種となっており、パッケージ需要の底堅さと整合しています。
各社もパッケージを成長領域と位置づけています。大手2社や中堅の専業メーカーが、軟包装や紙器の分野で環境配慮型の素材や機能性の高い包装に注力しています。脱プラスチックや紙化の流れも、紙器・紙系パッケージには追い風となる面があり、印刷業界のなかで投資が向かいやすい分野となっています。
デジタル代替に印刷業はどう向き合うのか?
紙媒体の需要は、電子化によって構造的に縮小しています。2024年の紙の出版市場は1兆56億円で3年連続の減少となる一方、電子出版市場は5,660億円へ拡大しました。電子書籍やニュースのオンライン化、企業のペーパーレス化が、出版印刷や商業印刷の需要を押し下げています。
印刷業界は、デジタルを脅威としてだけでなく事業の機会としても取り込もうとしています。インターネットで小ロット印刷を受注する印刷通販は2021年に1,237億円規模となり、デジタル化の浸透とともに成長を続けています。オフセット印刷に対して、必要な分だけ印刷するオンデマンド印刷やインクジェットの高速機も普及し、小ロットや個別対応の印刷を支えています。
制作の現場でも、デジタル技術の活用が進んでいます。生成AIを使った組版や校正の支援、デザインの効率化など、業務の自動化に取り組む動きがあります。紙の印刷物を作るだけでなく、データの加工や情報のサービス化まで含めて事業を広げられるかが、デジタル時代の印刷業の方向を左右します。
よくある質問 (FAQ)
日本の印刷業界の市場規模はどれくらいですか?
なぜ統計によって印刷業界の規模が違うのですか?
印刷業界の主要企業はどこですか?
大日本印刷やTOPPANは印刷以外に何をしていますか?
印刷会社の規模構造はどうなっていますか?
パッケージ印刷は成長していますか?
電子化で紙の印刷はどうなっていますか?
印刷通販やデジタル印刷とは何ですか?
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