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電子出版とデジタル代替|紙の出版1兆円と電子出版5,660億円の構造【2026年版】

出版市場では、紙から電子への置き換えが進んでいます。2024年の紙の出版物は1兆56億円で3年連続の前年割れ、一方の電子出版は5,660億円まで伸び、電子コミックがその大半を占めます。紙の書籍・雑誌は出版印刷の主な需要先であり、その縮小は印刷業界に直接影響します。紙と電子の市場規模・電子化を牽引する電子コミック・印刷業への影響を整理します。

紙の出版市場は、どう縮小しているのか

3年連続の前年割れ、かろうじて1兆円台

2024年の紙の出版物の販売金額は1兆56億円で、3年連続の前年割れとなりました。内訳は、書籍が5,937億円、雑誌が4,119億円(ムックやコミックスを含む)です。長期的には、書店の閉店が続くなかで紙の需要は縮小傾向にありますが、既存店の店頭は回復の動きもみられます。

紙と電子を合わせた出版市場

紙と電子を合わせた2024年の出版市場は1兆5,716億円で、このうち電子が約36.0%を占めます。紙の出版物は出版市場の64.0%にあたり、依然として中心ですが、その比率は電子の伸びとともに少しずつ下がっています。紙と電子は別々の市場で、単純に足し引きするものではありませんが、読者の消費が紙から電子へ移っている流れは明確です。

紙と電子の出版市場(2024年、販売金額)

紙の出版物と電子出版の市場規模と主な内訳。出版市場は本・雑誌の販売金額で、印刷業界の生産額(製造品出荷額等)とは別の指標
紙の出版物
市場規模
1兆56億円
主な内訳
書籍5,937億円、雑誌4,119億円(ムック・コミックス等を含む)
電子出版
市場規模
5,660億円
主な内訳
電子コミック5,122億円、電子書籍452億円、電子雑誌86億円
読み解き

紙の出版物(1兆56億円)と電子出版(5,660億円)を合わせた出版市場は1兆5,716億円です。紙は書籍と雑誌が中心で、電子はその大半を電子コミックが占めます。紙が縮小する一方で電子が伸びており、出版市場全体としては横ばい圏ながら、その中身が紙から電子へと入れ替わっているのが特徴です。

電子出版は、何が伸びているのか

電子コミックが電子出版の柱

2024年の電子出版は5,660億円で、その約90.5%にあたる5,122億円が電子コミックです。電子書籍(文字もの)は452億円、電子雑誌は86億円で、電子出版の伸びはほぼコミックがけん引しています。スマートフォンで手軽に読める縦スクロールのコミックなどが普及し、電子コミックはコロナ前の2019年から5年でおよそ倍増しました。

紙と電子の役割の違い

電子は、コミックのように手軽さや検索性が重視されるジャンルで強い一方、紙は、所有する満足感や一覧性、雑誌の特集など、紙ならではの価値が残る領域で底堅さを保っています。電子の成長がそのまま紙の減少を埋め合わせているわけではなく、ジャンルごとに紙と電子の比重が分かれているのが実態です。

デジタル代替は、印刷業にどう影響するのか

出版印刷の需要が縮む

紙の書籍・雑誌は、出版印刷の主な需要先です。紙の出版物が縮小すれば、それを刷る出版印刷の仕事も減ります。とくに、電子化が最も進んだコミックは、かつて出版印刷の大きな部分を占めていただけに、紙から電子への移行は印刷の需要を構造的に押し下げています。

商業印刷・帳票にも広がるデジタル化

デジタル化は、出版印刷だけの話ではありません。チラシ・カタログなどの商業印刷でも、広告や販促がインターネットへ移り、紙の需要が減っています。企業の帳票や事務文書のペーパーレス化も、ビジネスフォーム印刷の需要を押し下げます。紙媒体を前提としてきた印刷業界にとって、デジタル代替は分野を問わず共通の逆風です。

デジタルを取り込む動き

一方で、印刷業界はデジタルを脅威としてだけでなく、機会としても取り込もうとしています。インターネットで小ロット印刷を受注する印刷通販や、必要な分だけ刷るオンデマンド印刷、紙の情報を扱う強みを生かしたデータ・サービス事業など、デジタル時代に合わせた事業への広がりが進んでいます。

主要論点

なぜ電子出版は電子コミック中心に伸びているのか?

2024年の電子出版5,660億円のうち、約90.5%にあたる5,122億円が電子コミックです。電子書籍(文字もの)や電子雑誌に比べ、コミックの電子化が突出して進んでいます。

背景には、コミックがスマートフォンとの相性の良さがあります。1話ずつ手軽に読める、縦スクロールで読みやすい、無料話から課金につなげやすいといった特性が、スマホでの消費に合っています。プラットフォームの拡充や、縦スクロール作品の増加も後押ししました。

一方、文字ものの電子書籍は、紙の読書習慣が根強く、電子化のペースは緩やかです。電子化の進み方はジャンルによって大きく異なり、出版市場全体ではコミックが電子シフトをけん引する構図になっています。

紙の出版はこのまま消えていくのか?

紙の出版物は3年連続の前年割れで、長期的に縮小しています。ただし、2024年も1兆56億円と、かろうじて1兆円台を保っており、すぐに消えるわけではありません。

紙には、所有する満足感や一覧性、雑誌の特集やデザインなど、電子では代えにくい価値が残っています。書店の閉店が続く一方で、既存店の店頭には回復の動きもみられ、紙ならではの強みがある領域では底堅さも残っています。

見通しとしては、紙が一定の規模を保ちつつ、電子が伸びていく「紙と電子の併存」が続くとみられます。印刷業界にとっては、縮小する紙の出版印刷をどう効率化し、付加価値を高めるかが課題となります。

出版市場の数字を、印刷市場と混同してよいのか?

注意したいのは、ここでの出版市場(紙+電子で1兆5,716億円)は、本や雑誌の販売金額だという点です。印刷業界の規模を示す製造品出荷額等(事業所が出荷した印刷物の生産額)とは、まったく別の指標です。

出版市場は、出版社が本・雑誌を売って得る金額で、出版印刷は印刷会社が出版社から請け負う印刷の生産額です。出版市場は印刷業界の需要先の一部を映す指標であり、両者を足し合わせたり、規模を直接比べたりはできません。

また、電子出版は紙を刷らないため、電子の伸びは印刷の需要にはつながりません。印刷業界への影響をみるときは、出版市場全体の増減ではなく、紙の出版物の動きに着目する必要があります。

中期見通し

近未来1-2年

紙の出版物は、緩やかな縮小が続くとみられます。電子出版は電子コミックを中心に伸びる一方、その成長が紙の減少をそのまま補うわけではありません。出版印刷の需要は引き続き縮む見通しで、印刷各社は出版印刷の効率化や、他分野への展開を進めます。

中期3-5年

中期では、電子出版の比率がさらに高まり、出版市場の中身の「紙から電子への入れ替わり」が進むとみられます。紙は、電子に代えにくい価値のある領域で一定の規模を保ちつつ、全体としては縮小傾向が続きます。印刷業界では、出版印刷の構造的な縮小を前提とした事業の組み替えが課題となります。

長期

長期では、紙と電子が併存しながら、電子の比重が高まっていく構図が続くとみられます。印刷業界にとって、出版印刷は縮小分野という位置づけが定着し、商業印刷のデジタル化やパッケージ・非印刷分野への展開とあわせて、紙媒体への依存をどう減らすかが問われ続けます。

よくある質問

紙の出版と電子出版の市場規模はどのくらいですか?
2024年の出版市場は、紙の出版物が1兆56億円、電子出版が5,660億円で、合わせて1兆5,716億円です(出版科学研究所、販売金額ベース)。電子が全体の約36.0%を占めます。紙は3年連続の前年割れ、電子は全ジャンルでプラスで、市場の中身が紙から電子へ移っています。
電子出版で何が一番伸びていますか?
電子コミックです。2024年の電子出版5,660億円のうち、約90.5%にあたる5,122億円を電子コミックが占めます。電子書籍(文字もの)は452億円、電子雑誌は86億円です。電子コミックはスマートフォンとの相性がよく、コロナ前の2019年から5年でおよそ倍増しました。
紙の本はなくなってしまうのですか?
すぐになくなるわけではありません。紙の出版物は長期的に縮小していますが、2024年も1兆56億円とかろうじて1兆円台を保っています。所有感や一覧性、雑誌の特集など電子では代えにくい価値がある領域では底堅さが残り、今後は紙と電子が併存しながら電子の比重が高まる構図が続くとみられます。
デジタル代替は印刷業界にどう影響しますか?
紙の書籍・雑誌は出版印刷の主な需要先のため、その縮小は出版印刷の仕事を直接減らします。さらに、商業印刷では広告・販促のオンライン移行、ビジネスフォームでは帳票のペーパーレス化が需要を押し下げており、デジタル代替は分野を問わず印刷業界共通の逆風です。一方で、印刷通販やオンデマンド印刷など、デジタルを取り込む動きも進んでいます。
出版市場と印刷市場は同じですか?
いいえ、別の指標です。出版市場(紙+電子で1兆5,716億円)は本・雑誌の販売金額で、印刷業界の規模を示す製造品出荷額等(印刷物の生産額)とは異なります。出版市場は印刷業界の需要先の一部を映すもので、両者を足し合わせたり直接比べたりはできません。電子出版は紙を刷らないため、電子の伸びは印刷の需要にはつながりません。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    全国出版協会・出版科学研究所『季刊 出版指標』2025年冬号(2024年出版市場)
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