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TOPIC · I-CONSTRUCTION 2.0

i-Construction 2.0 と建設 DX|3 本柱と 5/10/15 年ロードマップ【2026 年版】

i-Construction 2.0 は、国土交通省が令和 6 年 4 月に策定した「建設現場のオートメーション化」推進方針です。2040 年度までに建設現場の省人化 3 割(生産性 1.5 倍)を公式 KPI に掲げ、施工・データ連携・施工管理の 3 本柱でオートメーション化を進めます。ロードマップは短期(5 年)リアルタイムデータ活用 → 中期(10 年)大規模土工の自動施工標準化 → 長期(15 年)大規模現場の自動施工実現と段階的に進める計画。生産年齢人口減少(2040 年度に約 2 割減)と 2024 年問題への対応として、建設業の労働生産性向上を担う中核施策です。

i-Construction 2.0 の 3 本柱

施工・データ連携・施工管理のオートメーション化

柱①:施工のオートメーション化 — ICT 建機と自動施工

目的

建設現場の施工工程を自動化・省人化し、生産性向上と労働時間規制への対応を両立する。i-Construction 2.0 の中核として、ICT 建機(GPS 制御付き油圧ショベル・ブルドーザ・モータグレーダ等)の標準導入、自動施工技術の段階的普及、ロボット施工の実用化が目指されています。

主要技術

(1)3D 設計データに基づく ICT 建機(マシンコントロール・マシンガイダンス)、(2)建設機械の自動運転(無人化施工)、(3)コンクリート打設・吹付の自動化、(4)鉄筋組立ロボット、(5)3D プリンタによる構造物製作、等が代表的技術。建設機械メーカー(コマツ・日立建機・コベルコ・キャタピラージャパン)と建設会社の連携で開発・実装が進んでいます。

現状の進捗

ICT 建機は公共土木工事で標準化が進行(国交省直轄工事では原則 ICT 施工)、民間工事への波及も拡大中。コマツの「スマートコンストラクション」は累計適用現場 14,000 件超(2024 年時点)で、業界標準の地位を確立。自動運転建機は閉鎖環境(採石場・大規模造成)での実証が先行し、公共工事現場での実用化が課題となっています。

柱②:データ連携のオートメーション化 — BIM/CIM 原則化

目的

設計・施工・維持管理の各段階で、3 次元データを共通基盤として活用し、データ手戻り・二重入力の排除と全工程の効率化を実現する。BIM(建築)・CIM(土木)の原則化が政策の中核で、令和 5 年度から国交省直轄工事で原則化が進行しています。

主要技術

(1)BIM/CIM(3D モデルベース設計・施工)、(2)クラウド共有プラットフォーム(Autodesk BIM 360・Trimble Connect 等)、(3)IoT センサーによる現場データ収集、(4)デジタルツイン(現場の 3D リアルタイムモデル)、(5)GIS との連携。これらにより設計・施工・維持管理の全ライフサイクルで一貫したデータ活用が可能になります。

現状の進捗

令和 5 年度に国交省直轄工事の小規模を除く全工事で BIM/CIM 原則化が完了し、令和 6 年度以降は地方自治体・民間工事への波及が進行中。スーパーゼネコン 4 社は社内標準として BIM/CIM 活用を組み込み、設計・積算・施工管理の効率化を進めています。中堅・地場ゼネコンへの普及が次の課題で、業界横断的な標準化と教育投資が必要とされる段階です。

柱③:施工管理のオートメーション化 — 遠隔臨場と AI 検査

目的

施工管理(品質管理・出来形管理・進捗管理)を遠隔・自動化し、現場監督の作業負荷を軽減すると同時に管理品質を向上させる。2024 年問題(時間外労働上限規制)下での現場監督業務の効率化が中核ニーズです。

主要技術

(1)遠隔臨場(ウェアラブルカメラ・タブレットによるオンライン立会・検査)、(2)自動進捗管理(ドローン測量・点群データによる出来高自動算定)、(3)AI 検査(コンクリートのひび割れ・配筋検査の画像解析)、(4)施工管理 SaaS(ANDPAD・Photoruction 等)、(5)作業員の位置・安全管理(GPS・ビーコン)、が代表的技術。

現状の進捗

遠隔臨場は国交省直轄工事で標準化が進み、コロナ禍以降に急速普及。施工管理 SaaS は中堅・地場ゼネコンへの浸透が進み、ANDPAD は累計導入社数 23 万社超(2024 年時点)。一方、AI 検査・自動進捗管理は実証段階のものが多く、現場毎のカスタマイズコストが普及の制約。スーパーゼネコン 4 社が中堅・地場業者を巻き込んだ共通基盤化を進めるかが今後の論点です。

i-Construction 2.0 のロードマップ(3 段階)

短期 5 年 → 中期 10 年 → 長期 15 年

短期 5 年(2024-2028)— リアルタイムデータ活用と現場の常時計測化

目標

建設現場でのリアルタイムデータ収集・分析を標準化し、施工進捗・品質・安全の常時把握を実現する。3D 設計データ・点群データ・IoT センサーデータを統合的に活用する基盤の構築が中核目標です。

KPI

(1)国交省直轄工事での BIM/CIM 原則化の完全定着(既達)、(2)ICT 施工の中堅・地場ゼネコンへの普及拡大、(3)遠隔臨場の全国標準化、(4)施工管理 SaaS の業界横断的データ連携基盤の整備、等が政策的 KPI。スーパーゼネコン 4 社は社内 KPI として「現場の DX 化率」「BIM/CIM 活用案件比率」を中期計画で掲げています。

課題

(1)中堅・地場ゼネコンの DX 投資余力が限られる、(2)BIM/CIM 教育を担える人材が不足、(3)データ標準(IFC・LandXML 等)の業界横断的な統一が未完、(4)現場毎のカスタマイズコストが普及の制約、が主要課題。スーパーゼネコン 4 社が中堅・地場を巻き込む共通基盤化を進めるかが、短期 5 年の成否を左右します。

中期 10 年(2024-2033)— 大規模土工の自動施工標準化

目標

大規模土工(造成・盛土・切土・トンネル等)における自動施工技術を標準化し、無人化施工の実用化と省人化(30% 削減目標)を実現する。建設機械の自動運転と現場全体のデジタルツインを組み合わせた次世代施工形態の構築が中核目標です。

KPI

(1)大規模土工現場での自動運転建機の標準導入、(2)現場全体のデジタルツイン構築、(3)施工進捗の自動算定と原価管理の自動化、等が中期想定 KPI。最終的な公式 KPI は 2040 年度までに省人化 3 割(生産性 1.5 倍)で、中期 10 年地点はその進捗の中間目標として位置付けられます。建設機械メーカー(コマツ・日立建機)と建設会社の共同開発が中核で、コマツ「スマートコンストラクション」やコベルコ建機の自動化技術が先行しています。

課題

(1)公共工事現場での自動運転建機の安全規制対応、(2)労働関係法制(建設業法・労働安全衛生法)と自動施工の整合性、(3)大規模初期投資の負担と中小業者への波及、(4)熟練オペレーターの技能継承と機械学習データへの転換、が主要課題。技術的実現可能性は高い一方、制度・人材面の課題が普及速度を左右します。

長期 15 年(2024-2038)— 大規模現場の自動施工実現

目標

大規模建設現場(造成・橋梁・トンネル・大規模建築等)における自動施工の実現を目指し、業界全体の労働生産性を抜本的に引き上げる。建設業の生産年齢人口減少(2025 年 7,300 万人 → 2040 年 6,000 万人想定)下での省人化対応として、業界の中長期生存戦略の中核となります。

KPI

(1)大規模建設現場の自動施工標準化、(2)省人化 3 割・生産性 1.5 倍を達成(公式 KPI、2040 年度)、(3)建設業就業者数の安定化(人手不足からの脱却)、(4)建設コストの構造的低下、等が長期想定 KPI。実現には DX・AI・ロボティクス・5G/6G 通信の総合的活用が必要で、建設業界単独でなく ICT・製造業・通信業界との横断的連携が前提となります。

課題

(1)長期的な技術進化の不確実性、(2)建設プロジェクトの個別性と自動化の整合性、(3)熟練労働者の役割変化と職能再定義、(4)社会受容性(自動施工現場の安全性確保)、(5)国際競争力(米国 Trimble・欧州ベンチマーク等との差別化)、が主要課題。長期目標は野心的ですが、生産年齢人口減少下での「業界存続のための必須投資」として位置付けられています。

主要論点

なぜ i-Construction 2.0 が必要になったのか?

i-Construction 2.0 は令和 6 年 4 月に策定された比較的新しい政策枠組みで、平成 28 年(2016 年)開始の「i-Construction」から進化した第 2 段階の枠組みです。なぜ第 2 段階が必要になったのか、3 つの構造要因で説明できます。

第 1 に 生産年齢人口減少の加速。日本の生産年齢人口(15-64 歳)は 2025 年 7,300 万人から 2040 年に 6,000 万人へと約 18% 減少する見通しで、建設業就業者数の維持が構造的に困難。建設業就業者の 55 歳以上比率は 35% 超(全産業より 4pt 高い)で、世代交代と人手不足が同時進行する局面にあります。第 2 に 2024 年問題(時間外労働上限規制)への対応。労働時間短縮と業務量維持を両立するには、抜本的な労働生産性向上が不可欠で、第 1 段階の i-Construction(ICT 建機の標準化)だけでは不十分。施工・データ連携・施工管理の 3 本柱を統合的に進める「オートメーション化」が必要となりました。

第 3 に 建設業の国際競争力。米国 Trimble、欧州系建設会社、中国系(中国交通建設・中国鉄道建設)等のグローバル競合が DX 投資を加速するなか、日本の建設業も同水準以上の DX 投資が業界存続の前提条件となります。i-Construction 2.0 は単なる省人化施策ではなく、業界の中長期生存戦略として位置付けられる包括的な政策枠組みと整理できます。

スーパーゼネコン 4 社の DX 投資はどう違うか?

スーパーゼネコン 4 社(鹿島・大成・大林・清水)は、いずれも DX 投資を中期計画の柱に据えていますが、戦略の重点と進捗には差があります。3 つの軸で比較できます。

第 1 に DX 投資の重点分野の違い。鹿島は海外関係会社(米国 Core5)と連携した北米市場での DX 実装を重視、大成は TAISEI VISION 2030 で次世代建設・スマート建設を中核に据え BIM/CIM 統合とロボット施工に注力。大林は Obayashi Sustainability Vision 2050 で ESG・サステナビリティ経営と DX を統合的に推進、清水は技術研究所「シミズ・オープン・アカデミー」を活用した自社開発技術の蓄積に強みがあります。

第 2 に DX 投資余力と財務体力。FY2025 通期確定値の純利益は鹿島 1,258 億円、大林 1,461 億円、大成 1,238 億円、清水 660 億円で、4 社いずれも投資余力は十分。ただし投資配分は各社で異なり、大林の FY2025 ROE 12.6%(中計 2022 目標 10% 以上を超過達成)は資本効率を重視するスタンスを反映しています。第 3 に 建設機械メーカーとの連携深度。i-Construction 2.0 の施工オートメーション化は建設機械メーカー(コマツ・日立建機)との連携が不可欠で、各社の連携深度が競争力を左右します。コマツ「スマートコンストラクション」は業界横断的に普及している一方、各ゼネコンが独自開発する自動施工技術もあり、業界全体の標準化と各社の差別化が並列で進む構造です。

建設機械メーカー(コマツ・日立建機)との連携は?

i-Construction 2.0 の施工オートメーション化は、建設会社単独では実現できず、建設機械メーカーとの連携が不可欠です。主要メーカーの取り組みと連携構造を 3 つの軸で見ます。

第 1 に コマツ「スマートコンストラクション」の業界標準化。コマツは 2015 年から「スマートコンストラクション」を展開し、ICT 建機・3D 測量・施工計画・進捗管理を統合した DX プラットフォームを提供。累計適用現場 14,000 件超(2024 年時点)で、業界標準の地位を確立。スーパーゼネコン 4 社や中堅・地場ゼネコンが幅広く活用し、i-Construction の実装基盤となっています。

第 2 に 日立建機・コベルコ建機の差別化戦略。日立建機は「ConSite」(建機の遠隔監視・予防保全システム)を強みとし、リース事業(日立建機日本)と連動した中堅・地場業者への DX 普及で存在感を発揮。コベルコ建機は油圧ショベルの自動運転技術と省エネ性能で差別化を進めています。第 3 に 建設会社の独自開発技術との競合・補完。スーパーゼネコン各社は自社開発の自動施工技術(コンクリート打設ロボット・鉄筋組立ロボット等)も保有し、建設機械メーカーの汎用技術と社内独自技術を組み合わせて競争力を構築しています。

中長期では、(1)コマツ・日立建機・コベルコの 3 社競争を軸に、(2)建設機械メーカーの DX プラットフォームが業界横断的なデファクトスタンダードとなり、(3)スーパーゼネコン各社は社内独自技術を差別化軸として保持する、という二層構造が定着する見通し。i-Construction 2.0 のロードマップ進展に伴い、業界全体の DX 競争力底上げと各社差別化が並列で進む構図と整理できます。

中期見通し

近未来 1-2 年

2026-2027 年は短期ロードマップ(5 年目標)の中間地点で、リアルタイムデータ活用と現場の常時計測化が業界横断的に標準化される時期。BIM/CIM 原則化の地方自治体・民間工事への波及が進行し、施工管理 SaaS(ANDPAD・Photoruction 等)の中堅・地場ゼネコンへの普及がさらに拡大。スーパーゼネコン 4 社の DX 投資は中期計画に沿って継続され、社内 DX 人材の育成と中堅・地場との共通基盤化が並行して進む見通しです。

中長期 3-5 年

2028-2030 年は中期ロードマップ(10 年目標)の前半に位置し、大規模土工での自動施工技術の標準化が本格化する時期。建設機械メーカーの自動運転建機が公共工事現場で実用化し、2040 年度の公式 KPI(省人化 3 割・生産性 1.5 倍)達成に向けた進捗が業界の主要モニタリング指標となります。スーパーゼネコン 4 社の競争軸は「大型案件獲得力 + 海外受注比率引き上げ + DX による省人化」の三軸に集約され、DX 投資余力の差が中長期の業績格差を決定する構造になる見通しです。

関連業界への波及

i-Construction 2.0 の進展は、建設機械(コマツ・日立建機・コベルコ)、建設資材(プレキャスト化)、ICT・SaaS(BIM/CIM ツール・施工管理 SaaS)、通信(5G/6G の建設現場活用)、教育(BIM/CIM 教育機関)、人材派遣(建設 DX 人材)まで広範に波及します。建設機械メーカーは農業機械・建設機械の DX 連動でクボタ・コマツ・井関等のクロス業界連携も視野に入る局面で、産業横断的な構造変化として位置付けられる中長期テーマです。

よくある質問

i-Construction 2.0 とは何ですか?
i-Construction 2.0 は、国土交通省が令和 6 年 4 月に策定した「建設現場のオートメーション化」推進方針です。施工のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化の 3 本柱で構成され、生産年齢人口減少下での省人化と労働生産性向上が中核目的。平成 28 年開始の i-Construction を発展させた第 2 段階の枠組みです。
ロードマップの 3 段階とは?
短期(5 年、〜2029)はリアルタイムデータ活用と現場の常時計測化、中期(10 年、〜2034)は大規模土工の自動施工標準化、長期(15 年、〜2039)は大規模現場の自動施工実現の 3 段階で進めます。公式 KPI は 2040 年度までに省人化 3 割(生産性 1.5 倍)です。
BIM/CIM 原則化はいつから始まりましたか?
BIM(建築)・CIM(土木)の原則化は、令和 5 年度(2023 年度)に国土交通省直轄工事の小規模を除く全工事で完了しました。令和 6 年度以降は地方自治体・民間工事への波及が進行中で、設計・施工・維持管理の全ライフサイクルで 3 次元データを共通基盤として活用する仕組みが業界横断的に整備されています。
データ出典
出典: 国土交通省 i-Construction 2.0(令和 6 年 4 月策定)/ 国土交通省 BIM/CIM 原則化(令和 5 年度)/ コマツ「スマートコンストラクション」公開資料 / 鹿島・大成・大林・清水 4 社 中期経営計画・統合報告書
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