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建設業の2024年問題 時間外労働上限規制|規制内容と業界への影響【2026年版】

建設業の「2024年問題」は、2024年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されたことを指します。月45時間・年360時間が原則上限、特別条項付き36協定でも年720時間以内・月100時間未満が上限です。労務費上昇は物価スライドを含む追加請負金の獲得を通じて請負金額へ反映されやすくなる一方、担い手確保とDX連動の省人化が業界の中長期テーマです。令和8年3月適用の公共工事設計労務単価は、全国全職種加重平均値が25,834円となり、平成25年度改定から14年連続の引き上げで初めて25,000円を超えました(金額は加重平均値、伸率は単純平均値で前年度比+4.5%という国土交通省の集計区分に基づきます)。人材確保コストの上昇圧力が継続しています。本ページでは規制内容と影響を整理します。

時間外労働上限規制のframework(建設業)

適用日と背景

2018年(平成30年)に成立した働き方改革関連法(労働基準法等改正)により、建設業には5年間の適用猶予が与えられ、2024年4月1日から本格適用となりました。猶予期間が設けられた理由は、建設現場での天候・地盤条件・他工事との調整等で工期が変動しやすく、急激な労働時間短縮が施工に支障をきたす懸念があったためです。猶予期間中、建設業界は週休2日工事の試行、ICT施工の導入、適正工期の確保等で長時間労働の是正を進めてきました。

上限の数値

労働基準法36条に基づく時間外労働の上限は、(1)原則として 月45時間・年360時間、(2)特別条項付き36協定を締結しても 年720時間以内、(3)休日労働を含めて 月100時間未満、(4)休日労働を含めて 複数月平均80時間以内、(5)月45時間を超える月は 年6か月まで、という5つの制限が同時に課されます。違反した場合は労働基準法違反として罰則対象(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)となります。

特別条項と災害復旧の例外

労基法33条第1項(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働)と139条第1項(建設業の特例)は、いずれも時間外労働の上限規制の例外に関する規定で、適用要件や取扱いに違いがあります。災害時における復旧及び復興の事業については、時間外・休日労働の合計を1か月100時間未満とする上限と、複数月平均80時間以内とする上限が適用されず、能登半島地震等の災害対応の柔軟性が確保されています。

発注者への要請強化

2026年初に厚生労働省・国土交通省が公共発注者(中央府省・地方公共団体)と主要民間団体・建設業者団体に対し「適正工期の設定」「処遇改善(賃金引き上げ・週休2日確保)」等の協力依頼を発出しました。建設業法等改正法(令和6年法律第49号、令和6年6月14日公布)では、契約締結時の労務費・適正工期に関する記載義務など価格転嫁・処遇改善の規定が令和6年12月13日に施行され、残る規定は公布後1年6か月以内に政令で定める日から施行されます。発注者側の責任が段階的に明確化されています。

2024年問題が建設業に及ぼす4つの影響軸

労務費・利益率/発注者・適正工期/担い手・人手不足/災害復旧の例外

影響①:労務費・利益率 — 価格転嫁と物価スライド条項が採算に効く構造

概要

時間外労働上限規制と並行して、労務費・資材費の上昇分を発注者へ転嫁する契約実務(物価スライド条項の適用、追加請負金の交渉)が業界全体で浸透しています。労務費の増加が請負金額へ反映される度合いが高まるほど、受注時の採算を確保しやすくなる構造です。個社別の業績(完成工事総利益率や通期予想の修正)は会社ごとに受注構成や進行中工事の条件が異なるため、本ページでは個社の決算数値を保持せず、スーパーゼネコン各社の財務比較ページで確認します。

採算への波及メカニズム

価格転嫁が採算へ効く経路は3つあります。第1に、物価スライド条項に基づく契約金額の見直しで、資材費・労務費の上昇分を発注者と分担します。第2に、工期の適正化により突貫工事に伴う原価増(応援人員・残業の増加)を抑えます。第3に、採算の見込めない案件を避ける選別受注が広がり、完成工事総利益率の下振れ要因が縮小します。これらが重なることで、労務費上昇局面でも採算を維持・改善しやすくなります。ただし効果の現れ方は会社ごとに差があり、業界一律の増益として断定はできません。

労務単価の上昇

政府公表の 公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)は全国全職種加重平均値が25,834円となり、平成25年度改定から14年連続の引き上げで初めて25,000円を超えました。なお国土交通省の公表どおり、金額(25,834円)は加重平均値、伸率(前年度比+4.5%)は単純平均値で算出された別系列です。労務単価の構造的な上昇が、人手不足の深刻度を反映しています。

背景・要因

(1)労働時間規制下での労務単価上昇(公共工事設計労務単価14年連続上昇)を前提とした発注者交渉力の強化、(2)国交省・厚労省の適正工期確保の要請と建設業法等改正法(令和6年法律第49号、価格転嫁・適正工期の記載義務が令和6年12月13日施行)による発注者側の責任明確化、(3)資材費(鉄鋼・セメント)の高止まりによる物価スライド対応の常態化、の3要因。中長期では、労務費の継続的上昇が業界全体の交渉力を底上げし、採算重視の受注スタンスが定着する構造が見込まれます。

影響②:発注者・適正工期 — 公共・民間双方への要請強化

概要

2024年問題対応として、発注者側(公共・民間)への要請が継続的に強化されています。2026年初に厚生労働省・国土交通省が公共発注者・主要民間団体・建設業者団体に「適正工期の設定」「処遇改善」を要請する協力依頼を発出しました。建設業法等改正法(令和6年法律第49号、令和6年6月14日公布)では、契約締結時の労務費・適正工期記載などの規定が令和6年12月13日に施行されました。

動向

公共発注者(中央府省・地方公共団体)は、適正工期確保のため工期算定の標準化・週休2日工事の本格導入を進行中。民間発注者(不動産ディベロッパー・事業会社)への要請は、業界団体(日建連・建設業協会)を経由した間接的アプローチが中心で、発注時の工期・労務費を明示する慣行の浸透が進んでいます。

背景・要因

(1)発注者側の合意なしには労働時間規制を遵守できない構造(建設は受注産業のため)、(2)国交省・厚労省の継続的な協力依頼と建設業法改正による法的枠組みの整備、(3)価格転嫁を前提とした建設業者側の交渉力強化、の3要因。発注者責任の明確化は、業界全体の交渉余地の拡大と採算改善の構造的な追い風として機能しています。

影響③:担い手・人手不足 — 55歳以上比率と若年層採用

概要

建設業の担い手確保は、時間外労働上限規制と並ぶ業界の中長期テーマです。建設業就業者の55歳以上比率は全産業平均より高く(建設業36.6%・全産業31.9%、令和5年=2023年、総務省労働力調査)、若年層(29歳以下)比率は11.6%に留まります。労働時間規制下での担い手確保が業界共通の戦略課題となっています。

動向

業界団体・主要建設会社は、(1)週休2日工事の本格導入で休日確保、(2)賃金引き上げ(厚生労働省 民間主要企業春季賃上げ妥結状況の第1表で、建設業の賃上げ率は2024年5.94%・2025年5.96% と、全産業平均の2024年5.33%・2025年5.52% を上回る水準)、(3)外国人材の活用(特定技能制度の建設分野での活用拡大)、(4)女性技術者の登用、(5)高校・専門学校との連携による若年層採用、の5つの施策を並行推進しています。

背景・要因

(1)バブル崩壊後の長期不況期に建設業界の採用減が継続し若手不足が構造化、(2)労働時間・休日条件で他産業との競争力が劣後していた、(3)DXによる生産性向上が進めば省人化で人手不足を補完できる可能性、の3要因。i-Construction 2.0(令和6年4月策定)連動のDX投資は、担い手不足下での労働生産性向上を担う中核施策として位置付けられています。

影響④:災害復旧の例外 — 労基法33条・139条の運用

概要

労働基準法33条第1項(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働)と139条第1項(建設業の特例)は、いずれも時間外労働の上限規制の例外に関する規定です。災害時における復旧及び復興の事業については、時間外・休日労働の合計を1か月100時間未満とする上限と、複数月平均80時間以内とする上限が適用されません。

動向

能登半島地震(2024年1月発生)の復旧工事では、この例外規定が活用され、緊急対応における労働時間規制の柔軟性が確保されました。一方、災害時における復旧及び復興の事業でも、時間外労働を年720時間以内とする上限と、1か月45時間を超える回数を年6回までとする上限は維持されており、無制限ではない点に注意が必要です。

背景・要因

(1)日本特有の自然災害リスクと災害復旧の社会的重要性、(2)労働者保護と災害対応の両立を図る政策的判断、(3)建設業者の専門性が災害復旧で不可欠であること、の3要因。災害多発地域(能登・東北・熊本等)の建設業者は、平時の労働時間規制への対応と災害時の柔軟運用の両方に対応する体制構築が求められます。

主要論点

2024年問題は建設会社の採算にどう作用するのか?

時間外労働上限規制は、労働時間短縮による施工能力の制約と労務費上昇という二つの採算圧力を建設会社にもたらします。一方で、この圧力を価格へ転嫁する契約実務が同時に広がっており、採算への作用は単純なマイナスではありません。作用の経路は3つに整理できます。

第1に 価格転嫁の浸透。労務費・資材費の上昇分を発注者へ転嫁する物価スライド条項の適用や追加請負金の交渉が常態化し、上昇分が請負金額へ反映されやすくなっています。第2に 発注者責任の明確化。2026年初の厚生労働省・国土交通省による適正工期確保の要請と、建設業法等改正法(令和6年法律第49号、価格転嫁・適正工期の記載義務が令和6年12月13日施行)で発注者側の責任が明確になり、価格・工期の交渉余地が広がりました。

第3に 採算重視の選別受注。労務費が上がる局面では、採算の見込めない案件を避け、価格転嫁の効く案件へ受注を絞る動きが強まります。これらが重なると、労務費上昇局面でも完成工事総利益率を維持・改善しやすくなります。ただし各社の実際の業績は受注構成や進行中工事の採算で差が出るため、本ページでは個社の決算数値を保持せず、スーパーゼネコン各社の財務比較ページで確認してください。

担い手確保と労働時間規制は両立可能か?

建設業の担い手確保は、時間外労働上限規制と並ぶ中長期テーマです。建設業就業者の55歳以上比率は全産業平均より高く(建設業36.6%・全産業31.9%、令和5年=2023年、総務省労働力調査)、若年層(29歳以下)比率は11.6%に留まります。労働時間規制下での担い手確保は両立可能か、3つの軸で見る必要があります。

第1に 賃金引き上げと労働環境改善。建設業の賃上げ率は2024年5.94%・2025年5.96% で全産業平均(2024年5.33%・2025年5.52%)を上回り、週休2日工事の本格導入で休日条件が改善。労働時間規制が「業界全体の労働環境を底上げする圧力」として機能し、若年層への訴求力を高める方向で作用しています。第2に 外国人材の活用拡大。特定技能制度の建設分野での活用拡大と技能実習制度の見直しにより、外国人材の比重が中長期で拡大する見通しです。

第3に DX連動の省人化。i-Construction 2.0(令和6年4月策定)の3本柱(施工・データ連携・施工管理のオートメーション化)が業界全体の労働生産性を引き上げ、人手不足を構造的に補完する役割を担います。中長期では、賃金引き上げ・外国人材・DXの3軸が並列で進むことで、労働時間規制下でも担い手確保が継続的に可能となる見通し。ただし地方の中小業者ではDX投資余力が限られるため、業界内での階層格差が拡大する可能性があります。

発注者側(公共・民間)の対応はどう変わるのか?

時間外労働上限規制への対応は、建設業者の努力だけでは完結せず、発注者側(公共・民間)の協力が不可欠です。発注者側の対応変化を3つの軸で見ます。

第1に 公共発注者の制度改革。中央府省・地方公共団体は、(1)適正工期算定基準の標準化、(2)週休2日工事の本格導入、(3)労務費・物価スライド条項の契約への明示、(4)入札価格と工期の整合性チェック強化、を進行中。2026年初の厚労省・国交省による適正工期確保の要請と建設業法等改正法(令和6年法律第49号、価格転嫁・適正工期の記載義務が令和6年12月13日施行)が制度的後押しとなっています。第2に 民間発注者への波及。不動産ディベロッパー・事業会社(製造業・物流・データセンター運営)等の民間発注者は、業界団体(日建連・建設業協会)を経由した間接的要請に応じる形で、適正工期と物価スライドへの対応を進めています。

第3に 発注者責任の法的明確化。建設業法等改正法(令和6年法律第49号、令和6年6月14日公布)で、契約締結時の労務費・適正工期記載などの規定が令和6年12月13日に施行され、発注者側の責任が明確化されました(残る規定は公布後1年6か月以内に政令で定める日から施行)。中長期では、発注者・受注者の双方が「適正工期 + 物価スライド + 労務費明示」を前提とした契約慣行を定着させ、業界全体の交渉力と利益率が構造的に改善する方向感。一方、公共予算の制約で公共工事では工期延長・コスト増が財政負担となるため、適正工期と財政持続性のバランスが中長期論点となります。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は価格転嫁の契約実務の定着と建設業法等改正法(令和6年12月13日施行分)の運用浸透、および公布後1年6か月以内に政令で定める日からの残る規定の施行により、業界全体で価格・工期の交渉余地が広がる見込みです。各社の通期業績は受注構成や進行中工事の条件で差が出るため、スーパーゼネコン各社の財務比較ページで確認できます。担い手確保では賃金引き上げと週休2日工事の本格導入が続き、外国人材活用とDX連動の省人化が並行して進みます。

中長期3-5年

2028-2030年は人口減と就業者高齢化の本格的影響期で、建設業就業者の55歳以上比率がさらに上昇する見込み。担い手確保のため、賃金引き上げ・外国人材活用・DXによる省人化の3軸がさらに重要性を増します。i-Construction 2.0のロードマップ(5年・10年・15年)が段階的に進み、施工・データ連携・施工管理のオートメーション化が業界全体に浸透。労働時間規制下でも生産性向上で対応可能な構造が整う見通しです。

関連業界への波及

2024年問題対応の波及は、建設機械(自動化建機・ICT建機)、建設資材(プレキャスト化で省人化)、外国人材派遣・技能実習、DXツール(BIM/CIM・施工管理SaaS)、人材教育(高校・専門学校との連携)まで広範に及びます。発注者側でも、不動産ディベロッパーの工期・コスト管理、PPP/PFI事業の入札制度設計に影響が及び、産業横断的な構造変化として位置付けられる中長期テーマです。

よくある質問

建設業の「2024年問題」とは何ですか?
建設業の「2024年問題」は、2024年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されたことを指します。月45時間・年360時間が原則上限、特別条項付き36協定でも年720時間以内・月100時間未満(休日労働含む)に制限されます。2018年(平成30年)成立の働き方改革関連法による建設業への5年間の適用猶予が終わり、2024年4月から本格適用となりました。
時間外労働の上限はどれくらいですか?
労働基準法36条に基づき、(1)原則は月45時間・年360時間、(2)特別条項付き36協定でも年720時間以内、(3)休日労働を含めて月100時間未満、(4)休日労働を含めて複数月平均80時間以内、(5)月45時間を超える月は年6か月まで、という5つの制限が同時に課されます。違反は労働基準法違反として罰則対象(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)です。
災害復旧の例外規定はありますか?
労基法33条第1項と139条第1項により、災害時における復旧及び復興の事業については、時間外・休日労働の合計を1か月100時間未満とする上限と、複数月平均80時間以内とする上限が適用されない例外があります。能登半島地震の復旧工事でも活用されました。ただし、時間外労働を年720時間以内とする上限と、1か月45時間を超える回数を年6回までとする上限は維持されており、無制限ではない点に注意が必要です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    厚生労働省 時間外労働の上限規制
  2. 2.
    厚生労働省 働き方改革関連法
  3. 3.
    国土交通省 建設業法等改正法
  4. 4.
    厚生労働省・国土交通省 適正工期確保の要請
  5. 5.
    国土交通省「i-Construction 2.0」
  6. 6.
    鹿島・大成・大林・清水4社決算短信
  7. 7.
    総務省 労働力調査
  8. 8.
    厚生労働省 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況
  9. 9.
    国土交通省 公共工事設計労務単価
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