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アパレル業界の構造|製造卸・SPA・小売の業態と海外生産への依存【2026年版】

アパレル業界の構造を、業態の類型・プレイヤーの広がり・供給のつながりという観点から整理します。企画・生産を担う製造卸、企画から販売までを一貫して手がけるSPA、百貨店やECなどの小売という3つの類型と、その境界が流動的になっている動き、ファーストリテイリングなどSPA上位への集中、そして衣料品の数量の98.5%(2022年)を輸入に頼る供給構造まで、アパレルがどう組み立てられているかを順に見ていきます。

アパレルの業態類型と主要プレイヤー

プレイヤー類型・業態の境界・供給構造・資本のつながりの観点

アパレルの構造は、プレイヤーの類型・業態の境界・供給のつながり・資本の関係という観点で捉えられます。プレイヤーは事業範囲によって、企画・生産を担う製造卸、企画から販売までを一貫するSPA、消費者に売る小売に整理でき、シューズ・用具も手がけるスポーツアパレルが隣接領域として広がります。上場する主要なアパレル企業だけでも18社程度が確認できますが、ベイクルーズやストライプインターナショナルなど有力な非上場プレイヤーも多く、市場の裾野は広く分散しています。

製造卸 (アパレルメーカー・商社)
特徴・役割
企画・生産を担い百貨店や専門店に卸す層。近年は直販・SPA化を進める。商社が海外生産と国内販売をつなぐ
代表的なプレイヤー
オンワードHD・ワールド・TSI HD・三陽商会・ワコールHD、伊藤忠商事(繊維)
SPA (製造小売)
特徴・役割
企画から生産・販売までを一貫して管理する業態。在庫や値引きを抑えて利益率を高めやすく、上位への集中が進む
代表的なプレイヤー
ファーストリテイリング・良品計画・しまむら・アンドエスティHD・パルグループ
小売 (EC・セレクト・百貨店・量販)
特徴・役割
消費者に販売する層。ECやセレクトショップから百貨店・量販まで多様な形態がある
代表的なプレイヤー
ZOZO・ユナイテッドアローズ・青山商事、三越伊勢丹・高島屋などの百貨店(別業界)
スポーツアパレル (隣接領域)
特徴・役割
衣料に加えシューズ・用具も手がけるため、衣料中心のプレイヤーとは切り分けて捉える隣接領域
代表的なプレイヤー
アシックス・ゴールドウイン・デサント

業態の分類 — 製造卸・SPA・小売の3類型と境界の流動化

アパレルのプレイヤーは、企画から販売までのどの段階を担うかによって、大きく3つの類型に整理できます。第1の製造卸(アパレルメーカー)は、商品を企画・生産して百貨店や専門店に卸す業態です。第2のSPA(製造小売)は、企画・生産から店舗・ECでの販売までを一貫して手がけます。第3の小売は、百貨店・量販店・EC・セレクトショップなど、仕入れた商品や自社企画品を消費者に販売する業態です。

ただし、この3類型は固定された階層ではなく、境界が流動的です。百貨店向けの卸を起点としてきた製造卸が、自社の店舗やECで直接販売する直販やSPA化を進める一方、小売やECも自社で企画する商品(プライベートブランド)を増やしています。総合商社の繊維部門も、原料調達やOEM・ODM(他社ブランドの製品を受託して企画・生産する仕組み)で生産を担い、ブランド事業に踏み込む例があります。

そのため、ある企業を一つの類型に固定して捉えるより、企画・生産・販売のどの段階を自社で担っているかでその時々のポジションを見るのが実態に近い捉え方です。どの段階を内製化し、どこを外部に任せるかという選択が、各社の収益構造と業態を形づくっています。

SPAへの上位集中 — ファーストリテイリングの突出

SPAは、店頭の売れ行きを企画や生産に素早く反映でき、在庫や値引きを抑えて利益率を高めやすい業態です。この強みを背景に成長し、なかでもファーストリテイリングは別格の規模を持ちます。ユニクロ・GUを国内外で展開し、売上の海外比率が高いことが、国内市場の縮小のなかでの成長を支えています。

これに、無印良品を展開する良品計画、低価格で日常着を扱うしまむら、マルチブランドのアンドエスティHDやパルグループなどが続きます。各社は、商品の企画から店舗・ECでの販売までを自社で管理することで、需要に合わせた生産と在庫の最適化を進めています。

もっとも、これはSPAという業態のなかでの上位集中であって、業界全体を少数の企業が占めているわけではありません。製造卸や小売、非上場のブランドまで含めれば多数のプレイヤーが競っています。ファーストリテイリングの規模が突出している一方で、テイストや価格帯、世代ごとに多様なブランドが併存しているのがアパレルの実態です。

製造卸の転換と供給構造 — 直販化と海外生産

製造卸は、百貨店向けの卸を起点としてきましたが、百貨店チャネルの長期的な縮小を背景に、直販やSPA化への転換を進めてきました。オンワードHD・ワールド・三陽商会・TSI HDなどは、不採算ブランドの整理や自社EC・直営店の強化に取り組んでいます。卸の場合は百貨店が在庫リスクの一部を負っていたのに対し、直販ではそのリスクが自社に移るため、在庫管理や需要予測の精度が経営を左右します。

供給の側からみると、アパレルは海外生産への依存が大きいのが構造的な特徴です。国内に供給される衣料品は、数量の98.5%(2022年)が輸入によるもので、人件費の安い海外で大量に生産する体制が定着しています。国内のアパレル縫製・製造は長期的に縮小してきました。

この海外生産を支えているのが、伊藤忠商事の繊維カンパニーなどの総合商社です。商社は、原料の調達からOEM・ODMによる生産の手配、国内ブランドへの供給までを担い、海外の生産地と国内の販売をつなぐ役割を果たしています。安く大量に生産できる一方、需要を超える供給や売れ残りへの対応が課題となっています。

小売プレイヤーと資本のつながり

小売の層は形態が多様です。ECでは、ZOZOがファッション通販のZOZOTOWNを運営し、多くのブランドが出店するモールとして存在感を持ちます。ZOZOはソフトバンクグループの傘下にあり、グループのインターネット事業との連携が特徴です。セレクトショップでは、ユナイテッドアローズが独自の品ぞろえで展開し、紳士服の青山商事はスーツ需要の縮小を背景に業態転換を進めています。

百貨店や量販店も、アパレルの主要な販売の場です。ただし三越伊勢丹や高島屋などの百貨店、イオンなどの量販店は、本体としては百貨店・小売業として捉えられる隣接領域です。アパレル各社にとっては、これらの店頭とECをどう組み合わせるかが販売戦略の論点になります。

資本面では、グループ再編やホールディングス化の動きがみられます。マルチブランドのSPAであるアンドエスティHDは、2025年9月に旧アダストリアから商号を変更して持株会社体制へ移行しました。ブランドごとに事業会社を分ける持株会社化は、多ブランドを束ねて機動的に運営する狙いがあり、製造卸・SPAの各社で組織の組み替えが続いています。

主要論点

なぜSPAが成長し、製造卸はSPA化を迫られるのか?

SPA(製造小売)は、企画から生産・販売までを一貫して管理する業態です。店頭の売れ行きを企画や生産に素早く反映できるため、在庫や値引きを抑えて利益率を高めやすいという強みがあります。ファーストリテイリングや良品計画、しまむらなどがこのモデルで成長してきました。

一方、百貨店向けの卸を起点としてきた製造卸は、百貨店チャネルの長期的な縮小という逆風に直面しています。卸のモデルでは、店頭でどう売れているかの情報が得にくく、需要への対応が遅れがちです。そのため、オンワードHDやワールド、三陽商会などは、自社の店舗やECで直接販売する直販・SPA化を進めてきました。

ただし、転換には課題もあります。卸では百貨店が在庫リスクの一部を負っていたのに対し、直販ではそのリスクが自社に移ります。自社で店舗網やECを持ち、在庫を抱える負担が増えるため、需要予測の精度やブランドの選択と集中が、転換の成否を分けることになります。

アパレルの海外生産への依存は業界構造に何をもたらすか?

アパレルは、国内に供給される衣料品の数量の98.5%(2022年)が輸入で、人件費の安い海外で大量に生産する体制が定着しています。これにより、低価格で多様な商品を供給できる一方、いくつかの構造的な課題も生んでいます。

第1に、供給過剰と売れ残りです。安く大量に作れることが、需要を超える生産につながりやすく、売れ残りや値引き、廃棄の問題を生みます。第2に、生産から店頭までのリードタイムの長さで、海外生産はトレンドの変化への対応が遅れやすく、為替や物流の影響も受けます。近年は、生産地を中国から東南アジアへ分散する動きや、短納期の一部を国内に戻す動きもみられます。

この海外生産を支えているのが、総合商社の繊維部門です。伊藤忠商事などが原料調達からOEM・ODMによる生産手配までを担い、海外の生産地と国内ブランドをつないでいます。海外生産への依存は、コスト競争力の源泉であると同時に、供給網の安定やサステナビリティへの対応という課題と表裏一体になっています。

業態の境界が流動化するなか、各社はどこを担うのか?

アパレルでは、製造卸・SPA・小売という業態の境界が流動的になっています。製造卸が直販・SPA化で販売まで踏み込み、小売やECが自社企画品を増やし、商社がブランド事業に関わるなど、企画から販売までのどの段階を自社で担うかは各社で異なり、変化し続けています。

このなかで各社が問われるのは、製造から販売までのどこに資源を集中するかです。ファーストリテイリングのように企画・生産・販売を一貫して自社で持つ垂直統合で規模を追う道、特定のテイストや世代に特化する道、ECや二次流通に軸足を置く道など、選択は分かれます。どの段階を自社で持つかが、収益構造とリスクの取り方を大きく左右します。

背景には、国内市場の縮小と消費者の購買行動の変化があります。店頭とECをまたいで買う消費者が増えるなか、企画・生産・販売・顧客データをどう一体で扱うかが競争の焦点になっており、業態の枠にとらわれない再編が続く見通しです。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、製造卸の直販・SPA化とブランドの選択と集中が続くとみられます。アンドエスティHDのような持株会社化や、不採算ブランドの整理、自社EC・直営店の強化を通じて、卸中心の構造からの転換が進みます。出店面では、店舗とECを連携させ相互に送客するOMOへの取り組みが広がります。

中期3-5年

中期では、海外生産の見直しと供給網の再編が構造変化の軸となります。生産地の分散や、トレンド対応の速い一部商品の国内回帰、需要に合わせた適量生産への取り組みが想定されます。あわせて、企画・生産・販売・顧客データを一体で扱う体制づくりが、業態の枠を越えて進む見通しです。

長期

長期では、サステナビリティへの対応が供給構造そのものに影響します。供給過剰や廃棄への対応、再生素材の利用、回収・リサイクルの仕組みづくりに加え、EUを中心とした環境規制が、海外生産に依存してきた製造卸や商社の役割を変えていく可能性があります。国内市場の縮小のなかで、各社がどの業態に軸足を置くかが長期の構造を左右します。

よくある質問

アパレルの業態にはどんな種類がありますか?
大きく、企画・生産を担って百貨店や専門店に卸す製造卸、企画から生産・販売までを一貫して手がけるSPA(製造小売)、百貨店・量販・EC・セレクトショップなどの小売の3つの類型に整理できます。これに、衣料に加えてシューズや用具も手がけるスポーツアパレルが隣接領域として広がります。ただし各類型の境界は流動的で、製造卸が直販・SPA化を進めるなど、業態は固定されていません。
SPA(製造小売)とは何ですか?
SPAとは、商品の企画から生産・販売までを一貫して手がける業態のことです。店頭の売れ行きを企画や生産に素早く反映でき、在庫や値引きを抑えて利益率を高めやすいという特徴があります。ファーストリテイリング(ユニクロ・GU)や良品計画(無印良品)、しまむらなどが代表的で、百貨店向けの卸を起点としてきた製造卸も、直販やSPA化を進めています。
製造卸とSPAは何が違いますか?
製造卸(アパレルメーカー)は、商品を企画・生産して百貨店や専門店に卸す業態で、販売は小売に委ねます。SPAは、企画・生産に加えて自社の店舗やECでの販売まで一貫して手がけます。製造卸は卸先が在庫リスクの一部を負う一方、SPAは販売まで自社で担うため在庫リスクを自社で抱えますが、店頭の情報を企画に直接生かせる利点があります。近年は製造卸がSPA化を進め、両者の境界は流動的になっています。
なぜアパレルは海外生産が多いのですか?
人件費の安い海外で大量に生産することで、低価格で多様な商品を供給できるためです。国内に供給される衣料品は、数量の98.5%(2022年)が輸入によるもので、国内の縫製・製造は長期的に縮小してきました。総合商社の繊維部門などが、原料調達から海外での生産手配、国内ブランドへの供給までをつないでいます。一方で、供給過剰や売れ残り、サステナビリティへの対応が課題となっています。
アパレル業界の主要なプレイヤーはどこですか?
業態によって主要なプレイヤーが分かれます。SPAではファーストリテイリングが突出した規模を持ち、良品計画・しまむら・アンドエスティHD・パルグループが続きます。製造卸ではオンワードHD・ワールド・TSI HD・三陽商会・ワコールHD、小売ではECのZOZO、セレクトショップのユナイテッドアローズなどが活動しています。スポーツアパレルのアシックス・ゴールドウインなどは、用具も含む隣接領域です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    各社 有価証券報告書・IR (アパレル上場各社)
  2. 2.
    経済産業省 繊維産業審議会資料/日本繊維輸入組合
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