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アパレル業界の市場規模|長期縮小とコロナ後の回復【2026年版】

日本のアパレル市場の規模は、矢野経済研究所の国内アパレル総小売市場で2024年に8兆5,010億円となり、コロナ前の2019年比で約9割の水準まで回復しました。前年比+1.7%で4年連続のプラス成長です。市場規模は集計範囲によって異なり、経済産業省の商業動態統計(織物・衣服・身の回り品小売業)では事業所ベースで8兆7,500億円です。長期では1990年代をピークに縮小してきた市場が、コロナ禍を経て持ち直す局面にあります。市場規模の長期の推移、統計による違い、回復の中身、EC市場の規模まで順に整理します。

国内アパレル総小売市場(2024年)
8兆5,010億円
前年比+1.7%で4年連続のプラス成長、コロナ前の2019年比で約9割の水準
出典: 矢野経済研究所 国内アパレル市場に関する調査
織物・衣服・身の回り品小売業(2024年)
8兆7,500億円
商業動態統計の事業所ベース、矢野とは集計範囲が異なる別の指標
出典: 経済産業省 商業動態統計(年間補正)
衣類のEC市場(2024年)
2兆7,980億円
靴・かばんなどを含む衣類中心の区分、店舗からECへの移行が継続
出典: 経済産業省 電子商取引に関する市場調査
衣類のEC化率(2024年)
23.38%
2023年の22.88%から上昇
出典: 経済産業省 電子商取引に関する市場調査

織物・衣服・身の回り品小売業の販売額の推移(2008-2024年、億円)

事業所ベースの長期推移。2020年に新型コロナで大きく落ち込み、以降は8兆6,000億円前後で推移
単位: 億円
037,50075,000112,500150,000104,67008102,800106,43010106,860109,420111,870115,000112,71015108,140110,600110,390109,88086,3802086,10087,07085,16087,50024
出典: 経済産業省 商業動態統計(織物・衣服・身の回り品小売業、参考表年報2008-2018と年間補正2019-2024を接合)
20082009201020112012201320142015201620172018201920202021202220232024
販売額億円104,670102,800106,430106,860109,420111,870115,000112,710108,140110,600110,390109,88086,38086,10087,07085,16087,500
前年比-1.8%+3.5%+0.4%+2.4%+2.2%+2.8%-2.0%-4.1%+2.3%-0.2%-0.5%-16.8%+0.9%+1.1%-2.2%+2.7%
読み解き

商業動態統計でみる織物・衣服・身の回り品小売業の販売額は、2008年から2019年にかけては10〜11兆円台で推移しました。2009年にリーマン・ショック後の落ち込みがあったのち持ち直し、2014年前後を山にゆるやかに減少しています。2020年に新型コロナの影響で大きく落ち込み(前年比-16.8%)、以降は8兆6,000億円前後で推移しています。2024年は前年比+2.7%8兆7,500億円で、回復の動きが続いています。

このグラフに矢野経済研究所ではなく商業動態統計を用いているのは、矢野の公表値が直近の数年分が中心であるのに対し、商業動態は長期の推移をたどれる時系列が得られるためです。この系列は事業所ベースで履物・かばんなどの身の回り品を含み、矢野の国内アパレル総小売市場(中古を除く小売金額)とは集計範囲が異なります。なお2020年は調査の母集団改定が重なっており、販売額の水準としての落ち込みは大きく見えますが、同じ基準でならした前年比は-16.8%です。データテーブルの前年比は、この公表値(官報の増減率)を用いています。

国内アパレル市場が1990年代をピークに長期的に縮小してきたことは、矢野経済研究所の調査などで長期のトレンドとして指摘されています。本系列は2008年からで、その縮小局面の大半より後にあたるため、2008年以降は2009年の落ち込みを挟みつつ10〜11兆円台での推移として表れています。

アパレル市場規模の集計範囲の違い(2024年ほか)

矢野・商業動態・供給量は対象とする範囲が異なる別の指標。単純な合算・換算はできない
矢野 国内アパレル総小売市場
規模
8兆5,010億円
母集団・定義
小売金額ベース、紳士・婦人・子供服が中心、中古は除外
出典
矢野経済研究所
商業動態 織物・衣服・身の回り品小売業
規模
8兆7,500億円
母集団・定義
事業所ベースの小売販売額、履物・かばんなどの身の回り品を含む
出典
経済産業省
供給量ベース(参考)
規模
国内供給 約35億点(2024年)
母集団・定義
数量ベース、うち輸入が98.5%(2022年)。金額系とは別系統
出典
日本繊維輸入組合/経済産業省 繊維産業審議会
読み解き

アパレルの「市場規模」には、対象とする範囲の異なる複数の指標があります。中心となるのは矢野経済研究所の国内アパレル総小売市場(8兆5,010億円、2024年)で、紳士・婦人・子供服を中心とした小売金額です。一方、経済産業省の商業動態統計でみる織物・衣服・身の回り品小売業(8兆7,500億円、2024年)は、履物やかばんなどの身の回り品を含む事業所ベースの販売額で、母集団が異なります。

これらは金額ベースの指標ですが、供給の側からみると数量ベースの系統もあります。国内に供給される衣料品は約35億点(2024年、日本繊維輸入組合)と推計され、その98.5%(2022年)が輸入によるものです。これらは金額系とは別の系統で、単純に合算したり相互に換算したりはできません。市場規模を引用するときは、何を集計した数字かを確認する必要があります。なお、衣類のEC市場(2兆7,980億円)は総小売市場のなかのチャネル別の内訳にあたります。

主要論点

2024年の回復は本格的な回復か、縮小からの戻りか?

矢野経済研究所の調査では、国内アパレル総小売市場は2024年に8兆5,010億円となり、前年比+1.7%で4年連続のプラス成長でした。新型コロナで落ち込んだ2020年から持ち直し、コロナ前の2019年比で約9割(約93%)の水準まで戻っています。

ただし、これは長期の縮小局面からの戻りという側面が大きいといえます。国内アパレル市場は1990年代をピークに縮小してきたとされ、人口減少も重なって、市場全体の基調は緩やかな縮小です。2024年の回復は、コロナ禍で大きく落ち込んだ水準からの回復であって、長期的な拡大に転じたわけではありません。

回復を支えたのは、百貨店・専門店などのリアル店舗の堅調さです。日本百貨店協会によると、百貨店の衣料品売上は2024年に前年比6.2%増となり、訪日外国人によるインバウンド需要が下支えとなりました。ECも安定した需要が続いています。コロナ前の水準近くまで戻ったあと、人口が減るなかで需要をどう生み出すかが、本格的な回復かどうかの分かれ目となります。

市場規模が統計によって異なるのをどう読むか?

アパレルの市場規模としてよく使われる数字には、矢野経済研究所の国内アパレル総小売市場(8兆5,010億円)と、経済産業省の商業動態統計の織物・衣服・身の回り品小売業(8兆7,500億円)があります。前者は中古を除く小売金額、後者は履物・かばんなどを含む事業所ベースの販売額で、集計範囲が異なるため値が異なります。

さらに、衣類のEC市場(2兆7,980億円、2024年)は、これら総小売市場のなかのチャネル別の内訳にあたります。靴・かばんなどを含む衣類中心の区分で集計されており、総小売市場と並べて足し合わせる数字ではありません。供給の側からみる数量ベースの指標(輸入浸透率など)も、金額系とは別の系統です。

市場規模を引用するときは、何を集計した数字かを確認することが欠かせません。小売金額か事業所ベースか、中古を含むか、ECなどチャネル別の内訳ではないか、金額か数量か、といった点を区別すれば、統計ごとの違いは整理できます。

縮小した国内市場で成長をどう確保するか?

国内アパレル市場は1990年代をピークに長期的に縮小し、人口減少も重なって、国内だけでの大きな成長は見込みにくくなっています。2024年はコロナ前の2019年比で約9割まで回復しましたが、これは縮小局面からの戻りの側面が大きく、各社は新たな成長の柱を探しています。

成長の方向性は分かれています。海外展開を成長の軸とする道、企画から販売までを一貫管理するSPAのモデルで効率を高める道、ECや自社アプリで顧客と直接つながる道、古着など二次流通に参入する道などがあります。いずれも、国内の店舗販売に依存する構造から脱することを目指す動きです。

一方で、国内市場のなかで存在感を保つ戦略もあります。低価格で日常着の需要を取り込む道、特定の世代やテイストに特化する道などです。縮小する市場でどの領域に資源を集中するかが各社の成長を左右します。

中期見通し

近未来1-2年

矢野経済研究所は、国内アパレル総小売市場が2030年頃まで2024年比で微増の水準で推移すると見込んでいます。百貨店・専門店などのリアル店舗の堅調さやインバウンド需要、ECの安定した需要が市場を下支えします。物価上昇の局面では、価格改定による単価の上昇が金額面を支える面もあります。

中期3-5年

中期では、ECと二次流通へのシフトが市場の構造を変えていきます。衣類のEC化率は2024年に23.38%へ上昇し、古着などのリユース市場も拡大しています。各社は店舗とECを連携させるOMOや、二次流通への参入を進めており、店舗中心の流通構造の見直しが続きます。

長期5-10年

長期では、人口減少と高齢化が国内のアパレル需要の基調を決めます。国内市場は縮小基調が続く見通しで、海外展開や、適量生産・再生素材の利用といったサステナビリティへの対応が、成長と存続を左右する軸となります。供給過剰や廃棄への対応、EUを中心とした環境規制への対応も、長期の課題として残ります。

よくある質問

日本のアパレル市場規模はどれくらいですか?
矢野経済研究所の調査では、国内アパレル総小売市場は2024年に8兆5,010億円で、コロナ前の2019年比で約9割の水準まで回復し、4年連続のプラス成長となりました。これは紳士・婦人・子供服を中心とした小売金額で、中古品は含みません。市場は1990年代をピークに長期的に縮小したのち、近年は回復局面に入っています。
アパレル市場の規模が統計によって異なるのはなぜですか?
集計範囲が異なるためです。矢野経済研究所の総小売市場が8兆5,010億円(2024年)で衣料品中心・中古を除くのに対し、経済産業省の商業動態統計でみる織物・衣服・身の回り品小売業は8兆7,500億円(2024年)で、履物やかばんなどの身の回り品を含む事業所ベースの販売額です。対象とする範囲が違うため、それぞれを別の指標として扱い、単純に合算したり比較したりはできません。
コロナ前と比べてどこまで回復しましたか?
矢野経済研究所の国内アパレル総小売市場は、2024年にコロナ前の2019年比で約9割(約93%)の水準まで回復しました。商業動態統計の織物・衣服・身の回り品小売業でみると、2020年に前年比-16.8%と大きく落ち込み、その後は8兆6,000億円前後で推移しています。百貨店の衣料品売上も2024年に前年比6.2%増と回復しました。
衣類のEC市場規模やEC化率はどれくらいですか?
経済産業省の調査では、衣類・服装雑貨等のBtoC EC市場は2024年に2兆7,980億円で、EC化率は2023年の22.88%から23.38%へ上昇しました。この区分は靴・かばんなども含む衣類中心のもので、店舗からECへの移行が続いています。EC市場は総小売市場のなかのチャネル別の内訳にあたります。
アパレル市場は今後拡大しますか?
矢野経済研究所は、国内アパレル総小売市場が2030年頃まで2024年比で微増の水準で推移すると見込んでいます。一方、長期では人口減少を背景に国内市場は縮小基調が続く見通しで、大きな拡大は見込みにくい状況です。海外展開やEC・二次流通へのシフト、サステナビリティへの対応が、今後の成長を左右する論点となっています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    矢野経済研究所 国内アパレル市場に関する調査
  2. 2.
    経済産業省 商業動態統計(織物・衣服・身の回り品小売業)
  3. 3.
    経済産業省 電子商取引に関する市場調査(令和6年度)
  4. 4.
    経済産業省 繊維産業審議会資料/日本繊維輸入組合
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