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アパレルの二次流通とサステナビリティ|リユース市場と供給過剰・廃棄の課題【2026年版】

アパレルでは、古着などの二次流通が拡大する一方、供給過剰と廃棄が課題となっています。衣料・服飾品のリユース市場は2023年に約5,913億円と、リユース市場全体のなかで最も大きい品目です。一方、国内に供給される衣料品の数量の98.5%(2022年)が輸入で、安く大量に生産される構造のもと、手放された衣類の約6割が廃棄されています。二次流通がなぜ拡大するのか、衣類はどこへ行くのか、供給過剰とサステナビリティへの対応までを整理します。

衣料・服飾品のリユース市場(2023年)
5,913億円
リユース市場全体の18.9%を占め、最も大きい品目
出典: 環境省 リユース市場規模調査
手放された衣類の廃棄率(2022年)
64.3%
リユース・リサイクルに回るのはそれぞれ2割弱
出典: 環境省 循環型ファッション マテリアルフロー
衣料品の輸入浸透率(2022年)
98.5%
数量ベースで、輸入が国内供給に占める割合。海外で安く大量に生産する構造
出典: 経済産業省 繊維産業審議会/日本繊維輸入組合

古着・リユースの二次流通はなぜ拡大するのか

フリマアプリと古着販売の広がり

二次流通が拡大する背景には、フリマアプリや古着販売の定着があります。スマートフォンで手軽に個人間の売買ができるようになり、着なくなった服を売る、中古の服を買うという行動が広がりました。新品を買って着潰すのではなく、使わなくなったら次の人に手放す、という消費のスタイルが根づきつつあります。

リユース市場のなかで最大の品目

環境省の調査では、衣料・服飾品のリユース市場は2023年に約5,913億円で、リユース市場全体(約3兆1,227億円)のなかで最も大きい品目です。リユース市場全体は2009年の約1兆1,274億円から大きく拡大しており、衣料・服飾品はその中心を担っています。なお、より新しい年では、業界紙の調査が衣料・服飾品のリユース市場を約6,392億円(2024年)と推計しています。

企業にとって脅威か、取り込む機会か

二次流通の拡大は、新品を販売するアパレル企業にとって、脅威にも機会にもなります。中古品が新品の需要を一部代替する面がある一方、自社ブランドの中古品の買い取りや再販に乗り出し、二次流通を自社の事業に取り込む動きもあります。リユースを前提とした商品設計や、回収の仕組みづくりを進める企業も出てきており、二次流通とどう向き合うかが各社の戦略の論点になっています。

手放された衣類の行き先(2022年、万トン)

使用後に手放された衣類(新たに供給される量とは別)の行き先。約6割が廃棄され、リユース・リサイクルは各2割弱
項目量(万トン)構成比シェア
廃棄4764.3%
リユース(再使用)13.318.1%
リサイクル(再生利用)12.717.4%
手放された衣類(合計)73100.0%
読み解き

環境省のマテリアルフロー(衣類が供給されてから廃棄されるまでの流れの推計)によると、2022年に使用後に手放された衣類のうち、廃棄が約47万トン(64.3%)で最も多く、リユース(再使用)が約13.3万トン(18.1%)、リサイクル(再生利用)が約12.7万トン(17.4%)です。手放された衣類の約6割が、リユースもリサイクルもされずに廃棄されているのが実態で、これが供給過剰の最終的な帰結となっています。

なお、ここで示すのは「手放された衣類」(2022年に約73万トン)の行き先で、同じ年に新たに国内へ供給された衣類(約79.8万トン)とは別の量です。安く大量に供給される一方で、その多くが使われずに、あるいは短い使用で手放され、廃棄へと向かう構造が、供給過剰の課題として指摘されています。

供給過剰とサステナビリティにどう対応するのか

適量生産・再生素材・回収の取り組みと、強まる環境規制
適量生産と在庫の最適化

第1の対応が、過剰な生産を抑える「適量生産」です。安く大量に作れることが供給過剰の一因であるため、需要に合わせて生産量を抑え、売れ残りと値引き・廃棄を減らす取り組みが進んでいます。受注生産や、店頭の販売データを生産に反映する仕組み、在庫の最適化などがその手段です。SPA(製造小売)のように企画から販売までを一貫管理する業態は、需要に合わせた生産で在庫を抑えやすい立場にあります。

再生素材の利用と回収・リサイクルの仕組み

第2が、再生素材の利用と、回収・リサイクルの仕組みづくりです。ペットボトルや古着を原料とする再生繊維の採用や、店頭での古着回収、回収した衣類を新たな製品やエネルギーに変える取り組みが各社で広がっています。ただし、衣類は複数の素材が混ざることが多く、再び衣類に戻す「水平リサイクル」は技術的に難しいため、回収した衣類の多くは別の用途への利用や燃料化にとどまるのが現状です。

EUを中心に強まる環境規制と、日本企業への影響

第3が、強まる環境規制への対応です。EUでは、2024年7月に発効した「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」で繊維製品が優先的な対象品目とされ、製品の耐久性やリサイクルしやすさなどの要件づくりが進んでいます。売れ残り品の廃棄を制限する措置(大企業向けに2026年から)や、製品の環境情報をデジタルで開示する「デジタル製品パスポート」の導入(繊維向けの詳細は2027年ごろの予定)も控えています。EUへの輸出や、グローバルに展開する日本のアパレル企業にとっては、こうした規制への対応がコストと事業の両面で重みを増しており、供給構造そのものの見直しが求められています。

主要論点

二次流通の拡大は業界にとって脅威か、機会か?

古着などの二次流通の拡大は、アパレル企業にとって脅威と機会の両面を持ちます。脅威の面では、中古品が新品の需要を一部代替し、とくに低価格帯では新品の販売に影響しうることがあります。リユース市場は衣料・服飾品で約5,913億円(2023年)と無視できない規模に育っています。

一方、機会としては、二次流通を自社の事業に取り込む道があります。自社ブランドの中古品を買い取って再販する、リユースを前提とした商品を設計する、回収の仕組みを整えるといった取り組みは、新たな顧客接点や収益源になりえます。サステナビリティへの関心の高まりは、長く使える商品やリユースのしやすさを、ブランドの価値として打ち出す機会にもなります。

どちらに振れるかは、各社が二次流通をコスト・脅威とみるか、循環型のビジネスへの入り口とみるかという姿勢によって分かれます。新品の販売と二次流通をどう両立させるかが、今後の論点です。

供給過剰と廃棄をどう減らすのか?

供給過剰と廃棄は、アパレルのサステナビリティの中核的な課題です。環境省の推計では、手放された衣類の約64.3%が廃棄されており、安く大量に供給される構造が、売れ残りと廃棄を生んでいます。これを減らすには、供給と需要のずれを小さくすることが欠かせません。

対応の柱は、適量生産・再生素材・回収リサイクルの3つです。需要に合わせて生産量を抑える適量生産は、売れ残りそのものを減らす最も直接的な手段です。再生素材の利用や、店頭回収・リサイクルの仕組みは、手放された衣類を廃棄から循環へと向かわせます。ただし、衣類は素材が混ざることが多く、再び衣類に戻す水平リサイクルは難しいという技術的な制約があります。

供給過剰の解消は、特定の取り組みだけでは難しく、企画・生産・販売・回収のすべての段階で需要に見合った量を扱う発想が求められます。海外生産に依存する供給構造のなかで、どこまで適量生産へ移れるかが、廃棄削減の鍵になります。

環境規制は日本のアパレルにどう影響するのか?

EUを中心に、繊維製品の環境規制が強まっています。EUでは2024年7月に発効したエコデザイン規則(ESPR)で繊維が優先品目とされ、製品の耐久性やリサイクルのしやすさといった要件づくりが進んでいます。あわせて、売れ残り品の廃棄を制限する措置(大企業向けに2026年から)や、製品の環境情報を開示するデジタル製品パスポートの導入が予定されています。

これらは直接にはEU市場向けの規制ですが、EUへ輸出する、あるいはグローバルに展開する日本企業にとっては対応が避けられません。製品ごとの素材やリサイクル性の情報を整える負担や、売れ残りの扱いの見直しが、コストと事業の両面で重みを増します。EU市場で売るための要件が、結果として供給構造全体の見直しを促す形です。

国内でも、サステナビリティへの関心の高まりを背景に、適量生産や回収・リサイクルの取り組みが広がっています。環境規制は、コスト負担という側面と同時に、循環型への移行を進める企業にとっては競争上の差別化の機会にもなりえます。規制の動向を踏まえて供給構造をどう設計し直すかが、各社の長期の論点です。

よくある質問

アパレルのリユース(古着)市場の規模はどれくらいですか?
環境省の調査では、衣料・服飾品のリユース市場は2023年に約5,913億円で、リユース市場全体(約3兆1,227億円)のなかで最も大きい品目です。フリマアプリや古着販売の広がりを背景に拡大しており、より新しい年では業界紙が約6,392億円(2024年)と推計しています。
手放された衣類はどうなっているのですか?
環境省のマテリアルフローによると、2022年に使用後に手放された衣類のうち、廃棄が約64.3%で最も多く、リユース(再使用)が約18.1%、リサイクル(再生利用)が約17.4%です。手放された衣類の約6割が、リユースもリサイクルもされずに廃棄されているのが実態で、供給過剰と廃棄が業界の課題となっています。
なぜアパレルで供給過剰が起きるのですか?
国内に供給される衣料品の数量の98.5%(2022年)が輸入で、人件費の安い海外で安く大量に生産する体制が定着しているためです。安く大量に作れることが、需要を超える生産につながりやすく、売れ残りや値引き、廃棄を生んでいます。需要に合わせて生産量を抑える適量生産が、供給過剰を減らす対応の柱となっています。
アパレル企業はサステナビリティにどう対応していますか?
適量生産による売れ残りの削減、ペットボトルや古着を原料とする再生素材の利用、店頭での古着回収やリサイクルの仕組みづくりなどが進んでいます。ただし、衣類は複数の素材が混ざることが多く、再び衣類に戻す水平リサイクルは技術的に難しいため、回収した衣類の多くは別の用途への利用や燃料化にとどまります。古着など二次流通を自社の事業に取り込む動きもあります。
EUの繊維の環境規制とは何ですか?
EUでは2024年7月に発効した「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」で繊維製品が優先的な対象品目とされ、製品の耐久性やリサイクルのしやすさなどの要件づくりが進んでいます。大企業向けに2026年から売れ残り品の廃棄を制限する措置や、製品の環境情報を開示するデジタル製品パスポートの導入(繊維向けの詳細は2027年ごろの予定)が控えています。EUへ輸出する、あるいはグローバルに展開する日本企業には対応が求められます。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    環境省 リユース市場規模調査(令和6年度)
  2. 2.
    環境省 サステナブルファッション(循環型ファッション マテリアルフロー)
  3. 3.
    経済産業省 繊維産業審議会資料/日本繊維輸入組合
  4. 4.
    EUのエコデザイン規則(ESPR、持続可能な製品のための規則)
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