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宝飾品業界の構造|製造卸・専門店・輸入・二次流通の併存【2026年版】

宝飾品業界の構造を、製造業の姿・流通とプレイヤーの類型・EC化と二次流通という観点から整理します。製造は約630事業所の中小が中心で、製造卸・専門店チェーン・百貨店・輸入ブランド・二次流通といった多様なプレイヤーが、固定した階層ではなく流動的に併存しています。それぞれの役割と、業界がどう組み立てられているかを順に見ていきます。

宝飾品の製造事業所の内訳(2022年、事業所数)

経済産業省 経済構造実態調査による単年の姿。貴金属・宝石製の宝飾品が対象(非貴金属の装身具は別区分)
項目事業所数構成比シェア
装身具(ジュエリー)製品の製造46373.5%
部分品・附属品の加工10015.9%
その他の貴金属製品の製造6710.6%
製造事業所 計630630100.0%
読み解き

宝飾品の製造は、約630事業所で担われています。内訳をみると、指輪やネックレスなどの装身具(ジュエリー)本体の製造が463事業所と最も多く、石留めや研磨などの部分品・附属品の加工(100事業所)、貴金属製の食器や装飾品を含むその他の貴金属製品(67事業所)が続きます。

従業者は全体で約6,931人、1事業所あたり平均11人ほどで、小規模な事業所が多数集まる構造です。製造は山梨(甲府)や東京などの産地に集積し、職人の手仕事に支えられています。なお、この統計は貴金属・宝石を使った宝飾品が対象で、非貴金属の装身具(一般のアクセサリー)は別の区分として含まれません。また2022年の単年の調査であり、年ごとの推移を示すものではありません。

宝飾品業界のプレイヤー類型と流通

製造から小売・輸入・二次流通まで、性格の異なるプレイヤーが流動的に併存する

宝飾品業界のプレイヤーは、製造卸・専門店チェーン・製造メーカー・百貨店宝飾・輸入ブランド・二次流通といった類型に整理できます。ただしこれらは固定した階層ではなく、役割が重なりながら流動的に併存しています。専門店チェーンは製造から小売まで手がけ、製造卸も自社ブランドを持つことがあり、二次流通が一次流通(新品の製造・小売)に近い品ぞろえを扱うこともあります。業界全体を少数の企業が占める寡占ではなく、性格の異なるプレイヤーがそれぞれの領域で競い合う構造です。

製造卸
特徴・役割
宝飾品を製造し、専門店や百貨店へ卸す。中小の事業者が多く、製造業の裾野を支える
主なプレイヤー
ナガホリ、桑山(非上場)など
専門店チェーン(SPA)
特徴・役割
製造から小売までを手がけ、自社ブランドの専門店を全国展開する
主なプレイヤー
ヨンドシーHD(4℃)、ツツミ、ベリテ
製造メーカー・国内ブランド
特徴・役割
加工技術や独自ブランドを持つ。真珠など特定分野の老舗も含む
主なプレイヤー
クロスフォー、ミキモト・TASAKI(非上場)
百貨店宝飾
特徴・役割
百貨店の宝飾売場や外商を通じて、高価格帯の宝飾を販売する
主なプレイヤー
百貨店各社の宝飾フロア・外商
輸入ブランド
特徴・役割
海外の高級宝飾ブランド。訪日・富裕層の高価格帯需要を担う
主なプレイヤー
カルティエ、ティファニー、ブルガリ(リシュモン・LVMH傘下)
二次流通(リユース)
特徴・役割
中古の宝飾・貴金属を買い取り再販する。相場高騰で存在感が増す
主なプレイヤー
コメ兵ホールディングス、バリュエンスホールディングス

製造業の構造 — 中小事業所の集積

宝飾品の製造は、約630事業所、従業者約6,931人で担われ、1事業所あたり平均11人ほどの小規模な事業所が多数集まる構造です。同じ調査での出荷額は約1,776億円(2022年)で、山梨(甲府)や東京などの産地に集積しています。

宝飾品の製造は、地金(金属の素材)の加工や石留め(宝石を台座に固定する工程)、研磨、デザインといった職人の手仕事に支えられる部分が大きく、大量生産になじみにくい面があります。このため、規模の大きな工場よりも、技術を持つ中小の製造卸や加工業者が分散して存在するのが特徴です。後継者の不在や職人の高齢化が、産地の製造基盤の課題として指摘されています。

流通とプレイヤーの類型 — 製造卸から小売・輸入まで

流通では、製造卸が作った宝飾品が、専門店チェーン百貨店で消費者に売られます。専門店チェーンは、「4℃」のヨンドシーホールディングスのように製造から小売までを一貫して手がける製造小売(SPA)で、自社ブランドの店舗を全国に展開します。百貨店は、宝飾売場や外商(富裕層への個別・訪問営業)を通じて高価格帯の宝飾を扱います。

高価格帯では、輸入ブランドの存在が大きくなっています。カルティエやティファニー、ブルガリといった海外ブランドが、リシュモンやLVMHといったラグジュアリーグループの一員として高級宝飾を展開し、訪日・富裕層の需要を担います。国内でも、ミキモトやTASAKIといった非上場のブランドが高級宝飾を手がけています。中価格帯から日常使いの宝飾は、専門店チェーンや製造卸が幅広く供給しています。

EC化の遅さと二次流通の広がり

宝飾品は、EC化が他の小売に比べて緩やかな分野です。高単価で、現物を見て確かめたいという需要が強く、品質や真贋の信頼性が重視されるため、店頭での販売が中心になりやすいのが理由です。各社はオンラインと店舗を組み合わせた販売を進めていますが、衣料品や日用品ほどにはEC比率が高まっていません。

一方で、二次流通(リユース)が存在感を増しています。コメ兵ホールディングスやバリュエンスホールディングスといった企業が、中古の宝飾・貴金属を買い取り再販する経路を広げています。背景には、金・プラチナ相場の高騰で手元の貴金属・宝飾の資産価値が高まっていることがあります。ただし、これらの二次流通各社はブランド品全般を扱い、宝飾はその一部です。一次流通の製造・小売と、二次流通が並び立つ構造が、宝飾品業界の特徴となっています。

主要論点

なぜ製造卸・専門店・百貨店・輸入・二次流通が併存するのか?

宝飾品業界では、製造卸・専門店チェーン・百貨店・輸入ブランド・二次流通といった性格の異なるプレイヤーが併存しています。背景には、宝飾品が幅広い価格帯と用途を持つ商品であることがあります。日常使いの中価格帯から、ブライダル、資産性を重視した高価格帯まで需要が多様で、それぞれに適した売り方が異なります。

高価格帯では、ブランドの世界観や信頼性が重視されるため、輸入ブランドや百貨店、非上場の国内ブランドが強みを持ちます。中価格帯から日常使いでは、製造から小売までを効率的に手がける専門店チェーンや、製造卸が供給を担います。中古の領域では、相場高騰を追い風に二次流通が広がっています。

これらは固定した階層ではなく、役割が重なりながら流動的に併存しています。専門店チェーンが製造も手がけ、製造卸が自社ブランドを持つように、境界はあいまいです。業界全体を少数の企業が占める寡占ではなく、多様なプレイヤーがそれぞれの領域で競い合っているのが実態です。

宝飾品の製造業はどんな構造になっているのか?

宝飾品の製造は、中小の事業所が多数集まる構造です。経済産業省の調査では、貴金属・宝石製品の製造事業所は全国に約630、従業者は約6,931人で、1事業所あたり平均11人ほどと小規模です。山梨(甲府)や東京などの産地に集積しています。

この構造の背景には、宝飾品の製造が職人の手仕事に支えられる部分が大きいことがあります。地金の加工、石留め、研磨、デザインといった工程は熟練を要し、大量生産になじみにくいため、技術を持つ中小の製造卸や加工業者が分散して存在します。装身具本体の製造(463事業所)が中心で、部分品の加工やその他の貴金属製品がこれを支えます。

課題として指摘されるのが、後継者の不在や職人の高齢化です。産地の製造基盤を担う中小事業者の事業承継が難しくなれば、国内の製造能力や技術の継承に影響します。相場高騰で原価が上がるなか、中小の製造卸が収益と技術の維持をどう両立するかが論点です。

宝飾品のEC化が緩やかで、二次流通が広がるのはなぜか?

宝飾品は、衣料品や日用品に比べてEC化が緩やかな分野です。理由は、高単価であること、現物を見て質感や輝きを確かめたいという需要が強いこと、そして品質や真贋の信頼性が重視されることです。高価な買い物だけに、店頭で相談しながら選びたいという心理も働きます。このため、各社はオンラインを強化しつつも、販売の中心は店頭に置いています。

一方で、二次流通(リユース)は存在感を増しています。コメ兵ホールディングスやバリュエンスホールディングスが、中古の宝飾・貴金属の買取・再販を広げています。背景にあるのが、金・プラチナ相場の高騰です。相場が上がると手元の貴金属・宝飾の資産価値が高まり、売却の動きが活発になります。中古でも価値が落ちにくいブランド宝飾は、二次流通の在庫を支えます。

ただし、二次流通各社はブランド品全般を扱い、宝飾は事業の一部です。EC化の遅い一次流通(製造・小売)と、相場高騰で広がる二次流通が並び立つのが、宝飾品の流通の特徴です。デジタル化と中古市場の広がりに、業界がどう対応するかが今後の課題となります。

中期見通し

近未来1-2年

相場高騰やインバウンドのなか、輸入ブランドの存在感と二次流通の広がりが続くとみられます。専門店チェーンは単価上昇を販売価格にどう反映するかが課題で、製造卸は原価上昇のなかでの収益確保が問われます。中古の買取・再販を担う二次流通は、相場を追い風に経路を広げる見通しです。

中期3-5年

製造基盤の事業承継とEC・オンライン対応が構造変化の軸となります。中小の製造卸や加工業者の後継者不在が進めば、産地の集約や技術継承の課題が顕在化します。一方、店舗とオンラインを組み合わせた販売や、二次流通との連携など、流通の形も変わっていく可能性があります。

長期5-10年

少子化による婚姻件数の減少や人口減少が、宝飾品の需要に構造的な逆風となるなか、プレイヤー類型の再編が論点になります。中小製造業の集約、輸入ブランドと国内プレイヤーの棲み分け、二次流通の拡大が、業界の構造をどう変えるか。職人の手仕事に支えられた産地の製造基盤を、どう次代に引き継ぐかが長期の課題です。

よくある質問

宝飾品業界にはどんなプレイヤーがいますか?
製造卸、専門店チェーン(SPA)、製造メーカー・国内ブランド、百貨店宝飾、輸入ブランド、二次流通(リユース)といった類型のプレイヤーが併存しています。「4℃」のヨンドシーHDのような上場専門店、ミキモトなどの非上場ブランド、カルティエなどの輸入ブランド、コメ兵HDのような二次流通まで、性格の異なるプレイヤーがそれぞれの領域を担います。固定した階層ではなく流動的に併存し、業界全体を少数の企業が占める寡占ではありません。
宝飾品の製造はどこで、どんな規模で行われていますか?
経済産業省の経済構造実態調査(2022年)によると、貴金属・宝石製品の製造事業所は全国に約630、従業者は約6,931人で、1事業所あたり平均11人ほどと小規模です。山梨(甲府)や東京などの産地に集積し、職人の手仕事に支えられています。これは2022年の単年の調査で、非貴金属の装身具は別の区分です。
宝飾品のEC化はなぜ進みにくいのですか?
宝飾品は高単価で、現物を見て質感や輝きを確かめたいという需要が強く、品質や真贋の信頼性が重視されるためです。高価な買い物だけに店頭で相談しながら選びたい心理も働き、販売の中心は店頭にあります。各社はオンラインと店舗を組み合わせた販売を進めていますが、衣料品や日用品ほどEC比率は高まっていません。
宝飾品の二次流通(リユース)はなぜ広がっているのですか?
金・プラチナ相場の高騰で、手元の貴金属・宝飾の資産価値が高まり、売却の動きが活発になっているためです。コメ兵ホールディングスやバリュエンスホールディングスといった企業が、中古の宝飾・貴金属の買取・再販を広げています。ただし、これらの企業はブランド品全般を扱い、宝飾は事業の一部です。
宝飾品業界は少数の大企業による寡占ですか?
いいえ。宝飾品を主力とする上場企業はいずれも中小規模で、製造卸・専門店・製造メーカー・百貨店・輸入ブランド・二次流通といった多様なプレイヤーが流動的に併存しています。高価格帯は非上場の国内ブランドや海外ブランドが担い、製造は中小事業所が多数集まる構造です。業界全体を少数の企業が占める寡占ではありません。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    経済産業省2022年経済構造実態調査(製造業事業所調査)
  2. 2.
    各社 有価証券報告書・IR / 財務省 普通貿易統計
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