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STRUCTURAL DETAIL · SALON COUNT & STRUCTURE

美容・エステ業界のサロン数と事業者構造|超分散市場と上場僅少の実態【2026年版】

美容業界は、美容所が全国に27万4,070店、美容師が57万9,768人(令和5年度)にのぼる超分散市場です。1〜数店舗規模の中小・個人サロンが大半を占め、サロンを運営する上場企業はごく僅かにとどまります。経営は技術者の人件費に依存する労働集約・低利益率の構造で、最低賃金の上昇がコストを押し上げています。

美容所数(令和5年度)
274,070
保健所への届出施設ベース、過去最多
出典: 厚生労働省 衛生行政報告例 令和5年度
従業美容師数(令和5年度)
579,768
美容所の従業者、過去最多
出典: 厚生労働省 衛生行政報告例 令和5年度
美容業の事業所数(2021年)
149,460事業所
売上のある経済事業所ベース、衛生行政の届出施設とは集計範囲が異なる
出典: 経済センサス活動調査 令和3年
最低賃金(2025年)
1,121
全国加重平均、人件費=経営コストの目安
出典: 厚生労働省 地域別最低賃金

美容業界の事業者構造

上場運営・大手チェーン・中小個人・フリーランス・卸の5類型

美容業界の事業者は、規模と業態によって上場サロン運営・大手中堅チェーン・中小個人サロン・フリーランス・サロン向け卸に整理できます。美容所27万4,070店の大半は中小・個人サロンで、業界全体を少数の企業が占める構造ではありません。サロンを運営する上場企業はごく僅かで、これとは別にサロンを支える卸の事業者が存在します。

上場サロン運営
特徴
美容室等を運営する数少ない上場企業。労働集約・低利益率で複数年にわたり純損失を計上する例もある
代表・主なプレイヤー
田谷・ヤマノホールディングス
大手・中堅チェーン(非上場)
特徴
複数〜多数の店舗を運営するチェーン。多くが非上場で、規模・業態は多様
代表・主なプレイヤー
非上場の美容室・エステ・ネイル等のチェーン
中小・個人サロン
特徴
美容所の大半を占める1〜数店舗規模の事業者。参入のしやすさが多様性を支える
代表・主なプレイヤー
個人経営の美容室・サロン
フリーランス・面貸し
特徴
業務委託やシェアサロン(面貸し)で独立して施術する美容師。雇用と独立の中間的な就業形態
代表・主なプレイヤー
面貸し・シェアサロンを利用する美容師
サロン向け卸(BtoB)
特徴
サロンへ美容機器・材料・消耗品を卸す事業者。サロン運営とは業態が異なる
代表・主なプレイヤー
ビューティガレージ

サロン数の数え方 — 届出施設と経済事業所

美容サロンの「数」には、集計の範囲が異なる2つの統計があります。厚生労働省の衛生行政報告例は、保健所に届け出られた美容所の施設を数えるもので、令和5年度は全国27万4,070店でした。これには休業中の施設や、1つの事業者が複数持つ施設も含まれます。

一方、総務省・経済産業省の経済センサス(令和3年)は、売上のある経済活動の主体としての事業所を数えるもので、美容業は14万9,460でした。同じ「美容室の数」でも、届出ベースか経済活動ベースかで母集団が異なるため、用途に応じて使い分けるのが適切です。いずれの統計でも、美容所・事業所の数は多く、超分散の市場であることに変わりはありません。

超分散と上場僅少 — 中小・個人が大半

美容業界は、店舗数のうえで中小・個人サロンが大半を占める超分散の市場です。美容師57万9,768人が全国の多数のサロンに分散して働いており、特定の企業がシェアの大半を握る構造ではありません。大手・中堅のチェーンも存在しますが、その多くは非上場です。

サロンを運営する上場企業は、田谷(美容室チェーン)やヤマノホールディングス(美容室に加え和装・宝飾等を併営)などごく僅かにとどまります。近年は、サロンに雇用されず、業務委託や面貸し(シェアサロン)で独立して働くフリーランス美容師も増えており、雇用と独立の中間的な就業形態が広がっています。

上場サロン運営の経営実態 — 労働集約・低利益率

サロン運営の経営は、技術者の人件費に依存する労働集約・低利益率の構造です。上場する美容室チェーンの田谷は、FY2019からFY2025までの7期のうち6期で純損失を計上しており、上場専業が利益を出し続けにくい構造の一例となっています(これは個別企業の状況で、業界全体を断定するものではありません)。

これに対し、サロンへ商材を卸すビューティガレージは、サロン運営とは業態が異なり一貫して黒字で成長しています。サロン本体の収益性が厳しい一方で、サロンを支える卸・サービスの事業が成り立っている点は、美容サロン経済の傍証といえます。

人件費の上昇とフリーランス化

労働集約型の美容サロンにとって、人件費の上昇は経営に直結します。最低賃金の全国加重平均は2015年の798円から2025年の1,121円へ上昇し、従業者を多く抱えるサロンほどコスト負担が増しています。

こうしたなか、サロン側は固定的な人件費を抑える方法として、業務委託や面貸しによる働き方を取り入れる動きもあります。美容師にとっても、独立して報酬体系を選べるフリーランスの働き方が広がっており、雇用と独立の境界が流動的になっています。人材の確保・定着と、賃金・働き方の改善が、サロン経営の共通課題です。

最低賃金(全国加重平均)の推移 (2015-2025年、円)

2015年の798円から2025年の1,121円へ上昇、労働集約型の経営コストを押し上げる
単位:
03757501,1251,50079815823168481787418901199022093021961221,004231,055241,12125
出典: 厚生労働省 地域別最低賃金(全国加重平均)
年度20152016201720182019202020212022202320242025
最低賃金(全国加重平均)7988238488749019029309611,0041,0551,121
前年比+3.1%+3.0%+3.1%+3.1%+0.1%+3.1%+3.3%+4.5%+5.1%+6.3%
読み解き

美容サロンの経営は技術者の人件費に依存する労働集約型で、最低賃金の動向が経営コストに直結します。最低賃金の全国加重平均は、2015年の798円から2025年の1,121円へと上昇しました。

美容室の市場規模が客単価の上昇で拡大する一方、人件費も同時に上がっているため、サロンの利益率は構造的に圧迫されやすい状況です。とくに従業者を多く抱えるサロンほど、賃金上昇の影響を受けやすくなります。賃金上昇は美容師の処遇改善にもつながる論点で、働き手側の視点は人材・労働のページで扱います。

このグラフに関連するトピック

主要論点

なぜ美容業界は上場専業が育ちにくいのか?

美容業界は美容所27万4,070店・美容師57万9,768人を抱える巨大な市場ですが、サロンを運営する上場企業はごく僅かです。背景には、経営が技術者の人件費に依存する労働集約・低利益率の構造があります。施術は美容師の手作業に依存するため、店舗を増やすほど人件費も比例して増え、規模の拡大が利益率の改善に直結しにくいのです。

上場する美容室チェーンの田谷が、FY2019からFY2025の7期中6期で純損失を計上しているのは、その一例です(個別企業の状況であり、業界全体を断定するものではありません)。最低賃金の上昇(2015年の798円から2025年の1,121円へ)も、人件費を通じて収益を圧迫しています。

一方、サロンへ商材を卸すビューティガレージのように、サロン運営とは異なる業態では上場企業が成長しています。サロン本体は小規模・分散で個人事業として成り立ちやすく、大規模上場企業の形になりにくいのが、この業界の構造的な特徴です。

美容室の「数」はなぜ統計で異なるのか?

美容サロンの数には、集計の範囲が異なる統計があります。厚生労働省の衛生行政報告例では令和5年度に美容所27万4,070店ですが、経済センサス(令和3年)の美容業の事業所数は14万9,460で、約1.8倍の開きがあります。

この違いは「何を1つと数えるか」によります。衛生行政報告例は保健所に届け出られた施設を数えるため、休業中の施設や、1つの事業者が複数持つ施設も含まれます。経済センサスは売上のある経済活動の主体としての事業所を数えるため、より実際の営業実態に近い数字になります。なお両統計は調査時点も異なり(衛生行政報告例は令和5年度、経済センサスは令和3年)、数字の差には定義の違いに加えて2年の時点差も含まれます。

どちらが正しいというより、用途が異なります。衛生管理や許認可の観点では届出施設の数が、経済規模や事業者数の把握では経済事業所の数が適しています。市場を語るときは、どの統計に基づく数字かを意識することが重要です。

人件費の上昇とフリーランス化はサロン経営をどう変えるか?

労働集約型の美容サロンにとって、人件費は最大のコスト要因の一つです。最低賃金の全国加重平均は2015年の798円から2025年の1,121円へと上昇を続けており、従業者を雇用するサロンの経営を圧迫しています。

これに対応する動きの一つが、業務委託や面貸し(シェアサロン)の活用です。サロンは固定的な人件費を抑えられ、美容師は報酬体系や働き方を自分で選べるため、双方にメリットがあります。一方で、技術やサービスの品質をどう保つか、人材をどう確保・定着させるかという課題も生じます。

雇用と独立の中間的な就業形態が広がるなかで、サロンは賃金・働き方の改善と、多様な就業形態への対応を迫られています。人材の確保がサロン経営の持続性を左右する論点となっており、働き手側の視点は人材・労働のページで詳しく扱います。

中期見通し

近未来1-2年

超分散の構造は当面続く見通しです。中小・個人サロンが大半を占める状況は変わらず、最低賃金の上昇が経営コストを押し上げます。固定人件費を抑える業務委託・面貸しの活用が、引き続き広がるとみられます。

中期3-5年

人件費上昇と人材確保が経営の中心課題となります。賃金の改善や働き方の柔軟化で人材をつなぎとめられるサロンと、対応が難しいサロンとの間で、店舗の新陳代謝が進む可能性があります。チェーンによる小規模サロンの取り込みも論点です。

長期5-10年

人口減少と人手不足のなかで、労働集約型の構造をどう持続させるかが長期の論点です。技術者の確保が一段と重要になり、フリーランスを含む多様な就業形態と、サロンの事業モデルの組み合わせが、業界の姿を左右します。

よくある質問

美容室は全国に何店ありますか?
厚生労働省「衛生行政報告例」(令和5年度)によると、美容所は全国に27万4,070店あり、従業美容師は57万9,768人です。いずれも過去最多の水準です。なお経済センサス(令和3年)では、売上のある美容業の事業所数は14万9,460で、届出施設を数える衛生行政報告例とは集計の範囲が異なります。
なぜ美容所の数が統計によって違うのですか?
衛生行政報告例(27万4,070店)は保健所に届け出られた施設を数えるため、休業中の施設や1事業者が複数持つ施設も含みます。経済センサス(14万9,460)は売上のある経済活動の主体を数えるため、より営業実態に近い数字です。どちらが正しいというより、用途によって使い分けます。
美容サロンに上場企業はありますか?
サロンを運営する上場企業はごく僅かで、美容室チェーンの田谷、美容室や和装などを併営するヤマノホールディングスなどにとどまります。サロン運営とは別に、サロンへ美容機器や材料を卸すビューティガレージも上場しています。業界全体では非上場の中小・個人サロンが大半を占めます。
美容室の経営は儲かりますか?
美容サロンの経営は、技術者の人件費に依存する労働集約・低利益率の構造です。上場する美容室チェーンの田谷はFY2019からFY2025の7期中6期で純損失を計上しており、上場専業が利益を出し続けにくい一例となっています(個別企業の状況です)。最低賃金の上昇も人件費を通じて収益を圧迫しています。
美容師の働き方はどう変わっていますか?
近年は、サロンに雇用される働き方に加え、業務委託や面貸し(シェアサロン)で独立して働くフリーランス美容師が増えています。最低賃金の上昇(2015年の798円から2025年の1,121円へ)を背景に、サロンが固定人件費を抑える狙いもあり、雇用と独立の中間的な就業形態が広がっています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    厚生労働省「衛生行政報告例」令和5年度
  2. 2.
    総務省・経済産業省「経済センサス‐活動調査」令和3年
  3. 3.
    厚生労働省「地域別最低賃金」(全国加重平均)
  4. 4.
    EDINET (上場各社 有価証券報告書)
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