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学習塾・予備校業界の構造|分散した市場とプレイヤーの多層性【2026年版】

学習塾・予備校業界の構造を、事業形態の枠組み・プレイヤーの類型・少子化のなかで進む再編という観点から整理します。集団指導・個別指導・映像授業・オンラインという事業形態の広がり、上場大手から学校法人の予備校、非上場の大手、地域の個人塾までの多層的なプレイヤー、そして非公開化やM&Aによる再編まで、学習塾・予備校がどのように成り立っているかを順に見ていきます。

学習塾・予備校業界の構造

事業形態の枠組み・プレイヤー類型・学校法人の予備校・少子化下の再編という観点

学習塾・予備校の構造は、事業形態の枠組み・プレイヤーの類型・学校法人の予備校・少子化下の再編という観点で捉えられます。現在事業を続けるプレイヤーは、財務を開示する上場の学習塾、大学受験で存在感を持つ学校法人の予備校、上場していない非上場の大手、そして事業所数のうえで大多数を占める個人塾・地域塾に整理できます。これに加えて、少子化のなかでの再編により最近になって上場を離れた企業もあり、下表ではこれを別の区分として示しています。上場している主要な学習塾・予備校だけでも10社程度が確認できますが、これは事業者全体のごく一部で、市場の裾野は個人塾まで広く分散しています。

上場の学習塾・予備校
特徴
集団指導・個別指導・映像など事業形態ごとに分かれる主要な上場企業。財務が開示され、全国シェアは小さい
代表的なプレイヤー
ナガセ・明光ネットワークジャパン・リソー教育・早稲田アカデミー・京進など
大学受験の予備校(学校法人)
特徴
大学受験で大きな存在感を持つが、学校法人で上場企業とは開示の仕組みが異なり財務は非公開
代表的なプレイヤー
駿台予備学校・河合塾・代々木ゼミナール
非上場の大手(株式会社)
特徴
株式会社形態の大手だが上場していない。個別指導・中学受験・通信教育などで全国・地域に展開
代表的なプレイヤー
やる気スイッチグループ・トライグループ・SAPIX・浜学園・馬渕教室・Z会など
直近に上場廃止した企業
特徴
少子化下の再編により、完全子会社化や投資ファンドによる買収で非公開化した企業
代表的なプレイヤー
東京個別指導学院・ウィザス
個人塾・地域塾
特徴
事業所数のうえでは業界の大多数を占める。経済センサスでは法人だけで多数を数え、個人経営はこれに含まれない
代表的なプレイヤー
個人経営の学習塾・地域の中小塾法人など

事業形態の分類 — 集団・個別・映像・オンライン

学習塾・予備校の事業形態は、大きく集団指導・個別指導・映像授業・オンラインに分かれます。集団指導は、1人の講師が複数の生徒に同じ授業を行う形態で、受験対策の進学塾や予備校に多くみられます。1人当たりの授業料を抑えやすく、合格実績を競う進学塾の中心的な形態です。個別指導は、講師1人が1〜数人の生徒を教える形態で、生徒のペースや弱点に合わせやすい一方、人件費がかかり授業料は高めになります。

映像授業は、録画した授業を校舎やオンラインで配信する仕組みで、東進ハイスクールや秀英iD予備校のように、質の高い講師の授業を全国に届けられるのが特徴です。オンライン学習は、スタディサプリのように時間や場所を選ばず低価格で受けられる形態で、近年急速に広がっています。

実際には、多くの塾がこれらの形態を組み合わせて提供しています。集団指導の塾が個別指導部門を併設したり、対面指導に映像やデジタル教材を取り入れたりするなど、生徒の学年や目的に応じて使い分けるのが一般的です。事業形態の違いは、料金体系や講師の配置、出店戦略にも影響します。

プレイヤー類型 — 上場大手から個人塾まで

プレイヤーは、規模と開示の仕組みによって多層的に整理できます。第1は上場の学習塾・予備校で、映像のナガセ、個別指導の明光ネットワークジャパンやリソー教育、集団指導の早稲田アカデミー、保育・介護にも事業を広げる京進などが知られます。財務が開示され、複数地域に校舎網を展開しますが、いずれも全国シェアは小さいのが特徴です。

第2は大学受験で存在感を持つ学校法人の予備校、第3は上場していない非上場の大手(やる気スイッチグループ・トライグループ・SAPIX・浜学園・馬渕教室・Z会など)で、個別指導や中学受験、通信教育などで全国・地域に展開します。そして第4が、事業所数のうえで大多数を占める個人塾・地域塾です。1〜数教室を地域で運営する塾が数多く存在し、立地や評判、講師の個性で大手と差別化しています。

これら4つは現在も事業を続けるプレイヤーの区分です。このほかに、少子化のなかでの再編により上場を離れた企業(東京個別指導学院・ウィザス)もあり、これらは後段の「少子化下の再編」で扱います。

業界全体としては、開業の障壁が比較的低いこともあり多数の事業者が競う構造で、特定企業による寡占ではありません。ただし領域ごとに集中度は異なり、難関中学受験では実績を持つ事業者に、大学受験では学校法人の大手予備校に、それぞれ生徒が集まる傾向があります。規模で校舎網を広げる上場大手と、専門性や個性で価値を出す中小・個人塾が、それぞれの強みで併存しているのが実態です。

学校法人の予備校 — 上場企業との違い

大学受験では、駿台予備学校・河合塾・代々木ゼミナールのいわゆる三大予備校が大きな存在感を持ちます。これらはいずれも学校法人が運営しており、株式会社である上場企業とは開示の仕組みが異なります。学校法人は営利を目的とせず、財務情報も上場企業のようには公開されないため、売上や利益で規模を比べることが難しいプレイヤーです。

そのため、三大予備校の位置づけは、財務ではなく合格実績や校舎の展開、模試の規模などをもとに把握されます。河合塾は全国規模の模試と校舎網で知られ、駿台は難関大学受験での実績、代々木ゼミナールは校舎を再編しながら大学受験指導を続けています。少子化や現役志向の高まりを背景に、予備校業界も校舎の統廃合や事業の見直しを進めてきました。

学習塾・予備校業界を全体としてみるとき、株式会社の上場企業と学校法人の予備校が並存している点は、業界の特徴の一つです。財務が公開される上場企業の動向は把握しやすい一方、業界の実像を捉えるには、開示の仕組みが異なる学校法人の予備校や、統計に表れにくい個人塾まで含めて見る必要があります。

少子化下の再編 — M&A・完全子会社化・非公開化

分散した業界のなかでも、近年は規模の拡大や事業の立て直しを目的とした再編が目立っています。背景には少子化と二極化があります。通塾対象人口が縮小するなか、単独で生き残る難しさが増しており、M&Aによる校舎網の取り込み、親会社による完全子会社化、投資ファンドによる買収と非公開化といった動きが起きています。

上場企業でも具体例が続きました。個別指導の東京個別指導学院は、ベネッセホールディングスによる完全子会社化により2026年1月に上場廃止となりました。通信制高校も手がけるウィザスは、投資ファンドによる買収で非公開化し、2025年9月に上場廃止となっています。いずれも、少子化のなかで規模や事業の幅を確保し、上場維持のコストを抑えながら経営の自由度を高める狙いがあるとみられます。

これらは、分散した業界でなぜ非公開化や再編が進むのかを示す構造的なパターンといえます。多数のプレイヤーが競う一方で、母数となる子供の数が減り続けるため、規模を持つ企業グループの傘下に入ったり、上場をやめて中長期の立て直しに集中したりする選択が取られやすくなっています。企業の組み合わせは、こうした再編によって今後も変化し続けると考えられます。

主要論点

なぜ学習塾・予備校業界はこれほど分散しているのか?

学習塾・予備校業界は、法人だけで全国に約18,850事業所があり、個人経営の塾も多数併存する分散した業界です。上場大手でも全国シェアは小さく、特定の企業が市場を寡占する構造にはなっていません。

背景には、この事業の特性があります。学習塾は大きな設備投資がなくても少人数から開業でき、開業の障壁が比較的低いため、地域に根ざした個人塾が数多く生まれます。また、塾選びでは合格実績や評判、講師との相性、通いやすさが重視され、立地や地域での信頼が大きな意味を持ちます。全国チェーンの規模だけでは差がつきにくく、地域密着の中小塾や個人塾が独自の価値を保ちやすいのです。

さらに、大学受験では学校法人の予備校、中学受験では専門の進学塾というように、領域ごとに強いプレイヤーが分かれていることも分散を支えています。こうした要因が重なり、上場大手から個人塾までが多層的に併存する構造が続いています。

分散した業界でなぜ再編・非公開化が進むのか?

多数のプレイヤーが競う分散した業界でありながら、近年はM&Aや非公開化による再編が目立っています。最大の要因は少子化です。通塾対象となる小・中学生が減り続けるなか、生徒を集められる塾と集められない塾の二極化が進み、単独で生き残る難しさが増しています。

こうしたなかで、規模の拡大や事業の立て直しを狙った動きが起きています。具体例として、個別指導の東京個別指導学院はベネッセホールディングスの完全子会社化により2026年1月に、通信制高校も手がけるウィザスは投資ファンドによる買収により2025年9月に、それぞれ上場廃止となりました。

これらは、規模を持つ企業グループの傘下に入って校舎網や経営資源を共有したり、上場をやめて短期の業績変動に左右されずに中長期の立て直しに集中したりする選択です。分散した業界のなかでも、規模や事業の幅を確保しようとする動きは今後も続くとみられます。

学校法人の予備校と上場企業は何が違うのか?

学習塾・予備校業界には、株式会社の上場企業と、学校法人が運営する予備校という、開示の仕組みが異なるプレイヤーが並存しています。ナガセや明光ネットワークジャパンなどの上場企業は、売上や利益などの財務情報を定期的に公開しており、規模や業績を数字で比べることができます。

一方、大学受験の三大予備校である駿台・河合塾・代々木ゼミナールは、いずれも学校法人が運営しています。学校法人は営利を主目的とせず、上場企業のように財務情報を公開しないため、売上や利益で規模を比較することが難しいプレイヤーです。

そのため、学校法人の予備校の位置づけは、財務ではなく合格実績や模試の規模、校舎の展開などをもとに把握します。業界の実像を捉えるには、財務が見える上場企業だけでなく、開示の仕組みが異なる学校法人の予備校や、統計に表れにくい個人塾まで含めて見る必要があります。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、M&Aや非公開化による再編が続くとみられます。少子化で生徒の母数が減るなか、規模の拡大や事業の立て直しを狙って、上場企業が親会社の完全子会社になったり、投資ファンドの傘下で非公開化したりする動きが想定されます。集団・個別・映像を組み合わせた事業形態の多様化も、各社で進む見通しです。

中期3-5年

中期では、少子化を背景に、多角化とデジタル化が構造変化の軸となります。京進のように保育・介護など隣接事業へ広げる動きや、オンライン学習・映像授業を取り込む動きが進む見通しです。地域や領域ごとに強みを持つ中小・個人塾と、規模を持つ大手の併存という基本構造は維持されつつ、再編で企業の組み合わせは変化していくと考えられます。

長期

長期では、通塾対象人口の縮小が業界構造に影響します。生徒を集められる塾と退出する塾の新陳代謝が進み、デジタルや多角化への対応力を持つ事業者と、地域での信頼や専門性で価値を出す事業者が残っていくとみられます。分散した構造のなかで個人塾の比重がどう変化するかが、長期の業界の姿を左右します。

よくある質問

学習塾・予備校業界にはどんなプレイヤーがいますか?
映像や個別指導などで全国に展開する上場の学習塾・予備校、大学受験で存在感を持つ学校法人の予備校(駿台・河合塾・代々木ゼミナール)、上場していない非上場の大手(やる気スイッチグループ・トライグループ・SAPIXなど)、そして事業所数のうえで大多数を占める個人塾・地域塾、という多層構造です。上場している主要な学習塾・予備校だけでも10社程度が確認できますが、これは事業者全体のごく一部です。
学習塾の事業形態にはどんな種類がありますか?
大きく集団指導・個別指導・映像授業・オンラインに分かれます。集団指導は1人の講師が複数の生徒に教える形態で進学塾や予備校に多く、個別指導は講師1人が1〜数人を教える形態です。映像授業は録画した授業を配信する仕組み、オンラインは時間や場所を選ばず受けられる形態です。多くの塾はこれらを組み合わせて提供しています。
学習塾業界は特定の企業が独占しているのですか?
いいえ。法人だけで全国に約18,850事業所があり、個人経営の塾も多数併存するため、上場大手でも全国シェアは小さく、特定の企業が市場を寡占する構造にはなっていません。開業の障壁が比較的低く地域密着が重視されるため、分散した構造が続いています。ただし、難関中学受験や大学受験予備校など特定の領域では、実績を持つ事業者への集中もみられます。
なぜ学習塾の上場企業が非公開化しているのですか?
少子化で生徒の母数が減るなか、規模の拡大や事業の立て直しを目的とした再編が進んでいるためです。個別指導の東京個別指導学院はベネッセホールディングスの完全子会社化により2026年1月に、ウィザスは投資ファンドによる買収により2025年9月に、それぞれ上場廃止となりました。規模を持つグループの傘下に入ったり、上場をやめて中長期の立て直しに集中したりする動きとみられます。
大学受験の予備校が業界統計に表れにくいのはなぜですか?
駿台・河合塾・代々木ゼミナールの三大予備校は、いずれも学校法人が運営しており、株式会社の上場企業とは開示の仕組みが異なるためです。学校法人は営利を主目的とせず財務情報を上場企業のようには公開しないため、売上や利益で規模を比べることが難しく、合格実績や模試の規模、校舎の展開などをもとに位置づけが把握されます。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    各社 有価証券報告書(上場学習塾・予備校各社、EDINET)
  2. 2.
    総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(学習塾、小分類823)
  3. 3.
    公益社団法人 全国学習塾協会
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