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ホテル・旅館業界の構造|業態別の稼働率と施設数の推移【2026年版】

日本の宿泊業は、ビジネスホテル・シティホテル・リゾートホテル・旅館・簡易宿所といった業態で構成され、2025年の延べ宿泊者数は6.53億人泊(外国人は過去最高)でした。客室稼働率は業態によって大きく異なり、2025年はビジネスホテルが75.3%と最も高い一方、旅館は38.4%と最も低くなっています。施設数では、旅館業法に基づく旅館・ホテル営業が約5.1万施設で、伝統的な旅館が長期的に減少する一方、簡易宿所が増加しています。業態ごとの稼働率の違い・代表的なプレイヤー・施設数の構造変化を整理します。

業態別の構造と客室稼働率

宿泊旅行統計調査の業態別 客室稼働率(2025年 速報値)と、各業態の特徴・代表的なプレイヤー。全体の稼働率は61.8%

客室稼働率(2025年)は、ビジネスホテル75.3%・シティホテル74.2%が高く、リゾートホテル56.9%、旅館38.4%、簡易宿所29.6%と続きます(全体61.8%)。客室を主体に効率よく回す都市型ホテルは稼働率が高く、料理・接客に人手をかけ部屋数の少ない旅館は構造的に稼働率が低くなります。なお、この稼働率の業態区分(宿泊旅行統計調査)と、後述の施設数の区分(旅館業法)は集計の枠組みが異なります。

ビジネスホテル
客室稼働率
75.3
主な特徴
客室主体で宴会場等を持たず、出張・ビジネス需要が中心。全国チェーンの展開が進み、稼働率が最も高い
代表的なプレイヤー
アパホテル・東横イン・共立メンテナンス(ドーミーイン)など
シティホテル
客室稼働率
74.2
主な特徴
都市部の大型・フルサービス型。宿泊に加え宴会・レストラン・婚礼を備え、外資系ラグジュアリーの進出も進む
代表的なプレイヤー
帝国ホテル・ホテルオークラ・藤田観光(ワシントンホテル)など
リゾートホテル
客室稼働率
56.9
主な特徴
観光地に立地し季節変動が大きい。会員制リゾートや高付加価値型もあり、稼働率は中位
代表的なプレイヤー
リゾートトラスト(エクシブ)・星野リゾートなど
旅館
客室稼働率
38.4
主な特徴
和室・温泉・料理を備える日本固有の業態。小規模な家族経営が多く、稼働率は最も低い。施設数は長期的に減少
代表的なプレイヤー
中小の独立旅館が大半(大手チェーンは少ない)
簡易宿所
客室稼働率
29.6
主な特徴
ゲストハウス・カプセルホテル等の低単価・小規模業態。施設数は増加傾向。住宅宿泊事業(民泊)は別制度
代表的なプレイヤー
独立系・小規模事業者が中心

ビジネスホテル — 高稼働を支える客室特化とチェーン展開

ビジネスホテルは、宴会場やレストランを持たず客室を主体とする業態で、2025年の客室稼働率は75.3%と全業態で最も高い水準です。出張・ビジネス需要を主軸に、近年はインバウンドや国内観光の宿泊も取り込み、都市部を中心に高稼働が続いています。

アパホテル・東横インのような全国チェーンが多店舗展開で規模を追う一方、上場企業では共立メンテナンスが「ドーミーイン」ブランドで温泉大浴場や夕食サービスを備えた中価格帯ホテルを展開しています。標準化したオペレーションと予約・チェックインの省人化により、限られた人員で高い稼働と回転を実現しやすいのが、この業態の収益構造の特徴です。

一方で、好立地への出店競争や人件費・建設費の上昇は、各社の収益性を左右します。客室単価(ADR)と稼働率を掛け合わせた収益指標(RevPAR)を高められるかが、ビジネスホテル各社の競争軸となっています。

シティ・リゾートホテル — フルサービスと高付加価値

シティホテルは、都市部に立地する大型のフルサービス型で、宿泊に加えて宴会・レストラン・婚礼などを備えます。2025年の客室稼働率は74.2%と高く、ビジネス・観光・MICE(国際会議等)の需要を幅広く取り込みます。帝国ホテルやホテルオークラといった老舗に加え、外資系ラグジュアリーブランドの進出が都市部で相次いでいます。

リゾートホテルは観光地に立地し、季節変動が大きいことから稼働率は56.9%と中位です。上場企業では、藤田観光が「ホテル椿山荘東京」やワシントンホテルなどを、リゾートトラストが会員制リゾートホテル「エクシブ」を展開し、星野リゾートのように運営に特化して高付加価値化を進めるプレイヤーもあります。

これらフルサービス・高付加価値型は、客室単価が高くインバウンドの富裕層需要を取り込みやすい反面、人件費や施設の維持・改修に大きなコストがかかります。単価の引き上げと稼働の両立、運営の効率化が収益を左右します。

旅館 — 稼働率が最も低く、施設数は長期減少

旅館は、和室・温泉・料理を備える日本固有の業態で、2025年の客室稼働率は38.4%と全業態で最も低くなっています。1泊2食付きで料理・接客に人手をかけ、客室数が少ない小規模な家族経営が多いことが、構造的に稼働率が低い背景にあります。

施設数も長期的に減少しています。伝統的な旅館(旅館業法の「旅館営業」)の施設数は、1997年度の68,982施設から2017年度の38,622施設へと、20年で大きく減りました(下のグラフ)。事業承継の難しさ、人手不足、設備の老朽化と改修負担が、廃業や転業の要因となっています。

一方で、高単価の食事・温泉・きめ細かな接客は、インバウンドの富裕層や高付加価値旅行の需要と相性がよく、一部の旅館は単価の引き上げや高級化で再評価されています。数の減少が続くなかで、いかに付加価値を高めて生き残るかが、旅館業の課題です。

簡易宿所・民泊 — 施設数は増加、低稼働

簡易宿所は、ゲストハウスやカプセルホテルなどの低単価・小規模な業態で、2025年の客室稼働率は29.6%と低水準です。一方、施設数は増加傾向にあり、旅館業法の簡易宿所営業は1997年度の25,324施設から令和3年度の38,593施設へと増えました。外国人個人旅行の広がりや、空き家・空き店舗の活用がその背景にあります。

これとは別に、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊が広がっています。民泊は旅館業法とは別の制度に基づく別の母集団で、本ページの旅館業法の施設数や宿泊旅行統計調査の稼働率には単純に合算できません。民泊の規模・届出・規制については、別ページで整理しています。

旅館(伝統旅館)の施設数の推移(1997-2017年度、施設)

旅館業法の「旅館営業」の施設数。1997年度68,982施設から2017年度38,622施設へ長期減少。2018年の法改正で「旅館・ホテル営業」に統合され、旅館単独の集計は2017年度が最後
単位: 施設
020,00040,00060,00080,00068,9829764,8310055,5670546,9061040,6611538,62217
出典: 厚生労働省「衛生行政報告例」(旅館営業の施設数、1997-2017年度。2018年の旅館業法改正で旅館・ホテル営業に統合)
年度199719981999200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017
旅館営業の施設数施設68,98267,89166,76664,83163,38861,58359,75458,00355,56754,10752,29550,84648,96646,90646,19644,74443,36341,89940,66139,48938,622
前年比-1.6%-1.7%-2.9%-2.2%-2.8%-3.0%-2.9%-4.2%-2.6%-3.3%-2.8%-3.7%-4.2%-1.5%-3.1%-3.1%-3.4%-3.0%-2.9%-2.2%
読み解き

伝統的な旅館(旅館業法の「旅館営業」)の施設数は、1997年度の68,982施設から2017年度の38,622施設へと、20年で大きく減少しました。小規模な家族経営が多い旅館は、経営者の高齢化と事業承継の難しさ、人手不足、設備の老朽化と改修負担を背景に、廃業や転業が進んできました。

2018年6月の旅館業法改正で、「ホテル営業」と「旅館営業」は「旅館・ホテル営業」へ統合され、旅館単独の施設数の集計は2017年度が最後となりました。統合後の旅館・ホテル営業の施設数は令和3年度末で50,523施設です。一方、同じ期間に簡易宿所は増加しており(令和3年度38,593施設)、宿泊施設の構成は「伝統旅館の減少」と「ホテル・簡易宿所の相対的な拡大」という形で変化してきました。

なお、この施設数は旅館業法に基づく区分(令和3年度=2022年3月末が最新の確定値)で、前述の業態別の客室稼働率(宿泊旅行統計調査、2025年)とは調査・区分・年次が異なります。

主要論点

なぜ業態によって稼働率がこれほど違うのか?

2025年の客室稼働率は、ビジネスホテル75.3%に対し旅館38.4%と、業態によって大きく異なります。背景にあるのは、業態ごとの事業モデルの違いです。

ビジネスホテルやシティホテルは客室を主体に効率よく回す構造で、予約・チェックインの省人化も進み、限られた人員で高い稼働を実現しやすい業態です。一方、旅館は1泊2食付きで料理・接客に人手をかけ、客室数が少ない小規模な家族経営が多いため、構造的に稼働率が低くなります。

つまり、稼働率の差は「人気の差」だけでなく、客室の回し方・人手のかけ方・規模といった事業モデルの違いを反映しています。稼働率の低い旅館は、その分を客室単価や食事・体験の付加価値で補う構造になっています。

伝統的な旅館はなぜ減り続けているのか?

旅館業法の「旅館営業」の施設数は、1997年度の68,982施設から2017年度の38,622施設へと、20年で大きく減りました。最大の要因は、小規模な家族経営の事業承継の難しさです。経営者の高齢化が進む一方で後継者が見つからず、廃業に至る旅館が少なくありません。

これに、人手不足、設備の老朽化と多額の改修負担、団体旅行の減少といった需要構造の変化が重なります。料理・接客に人手をかける旅館は、人件費の上昇の影響も受けやすい業態です。

ただし、減少は質の低下を意味するわけではありません。高単価の食事・温泉・きめ細かな接客は、インバウンドの富裕層や高付加価値旅行の需要と相性がよく、単価の引き上げや高級化で生き残りを図る旅館もあります。数を追うのではなく、付加価値を高める方向への転換が進んでいます。

宿泊業の供給は需要の回復に追いついているか?

2025年の延べ宿泊者数は6.53億人泊で、外国人延べ宿泊者数(17,787万人泊)は過去最高でした。需要の回復、とくにインバウンドの拡大に対し、供給側の宿泊業は人手不足という制約を抱えています。

客室があっても、清掃・接客・調理を担う人手が足りず、稼働を十分に上げられない施設もあります。客室稼働率が全業態で前年から上昇している(全体で前年差+2.2ポイント)ことは、需要に対して供給に余裕がなくなりつつある一面も示しています。

施設数の面でも、伝統旅館の減少は続いており、新規のホテル開発が都市部に偏る傾向があります。需要の回復に供給が追いつくには、省人化・DXによる生産性の向上と、人材の確保・定着が欠かせません。地域による稼働率の差(都市部は高く、地方の一部は低い)も、供給と需要のミスマッチを映しています。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、インバウンドの拡大を背景に都市型ホテルの高稼働が続くとみられます。一方で人手不足が稼働の上限を抑える要因となり、客室単価の引き上げ(値上げ)で収益を確保する動きが強まります。地域や業態による稼働率の差は、当面続く見通しです。

中期3-5年

中期では、省人化・DXによる生産性向上と高付加価値化が業界の焦点です。予約・チェックイン・清掃の効率化で人手不足に対応しつつ、富裕層・インバウンド向けの単価引き上げを進められるかが問われます。伝統旅館では、事業承継や運営受託・ブランド傘下入りによる再生の動きも続きます。

長期

長期では、人口減少と人手不足が宿泊業の供給を制約する基調が続きます。数を追う拡大から、単価・質・稼働の効率を高める方向へと、業界の比重が移ると考えられます。伝統旅館の文化的価値をどう維持・継承するか、地方の宿泊施設をどう支えるかも、長期の課題となります。

よくある質問

ホテル・旅館の客室稼働率はどのくらいですか?
観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年 速報値)によると、客室稼働率は全体で61.8%です。業態別では、ビジネスホテルが75.3%、シティホテルが74.2%と高く、リゾートホテルが56.9%、旅館が38.4%、簡易宿所が29.6%です。都道府県別では大阪府(78.8%)が最も高く、長野県(39.9%)が最も低くなっています。
なぜ旅館の稼働率は低いのですか?
旅館は和室・温泉・料理を備え、1泊2食付きで料理・接客に人手をかける業態で、客室数の少ない小規模な家族経営が多いため、客室を主体に効率よく回すビジネスホテルなどと比べて構造的に稼働率が低くなります。2025年の旅館の稼働率は38.4%で、ビジネスホテル(75.3%)との差が大きくなっています。稼働率の低さは、客室単価や食事・体験の付加価値で補う構造です。
宿泊施設の数はどのくらいですか?
厚生労働省「衛生行政報告例」(令和3年度=2022年3月末)によると、旅館業法に基づく旅館・ホテル営業は50,523施設、簡易宿所営業は38,593施設です。伝統的な旅館(旅館営業)の施設数は1997年度の68,982施設から2017年度の38,622施設へ長期的に減少しています(2018年の法改正で旅館・ホテル営業に統合)。
旅館の数はなぜ減っているのですか?
小規模な家族経営が多い旅館では、経営者の高齢化と事業承継の難しさ、人手不足、設備の老朽化と改修負担が重なり、廃業や転業が進んでいます。一方で、高単価の食事・温泉・接客はインバウンドの富裕層や高付加価値旅行の需要と相性がよく、単価の引き上げや高級化で生き残りを図る旅館もあります。
宿泊業の構造のデータの出典は何ですか?
客室稼働率と延べ宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年 速報値)、施設数は厚生労働省「衛生行政報告例」(令和3年度)が出典です。稼働率は宿泊旅行統計調査の業態区分、施設数は旅館業法の区分で集計されており、調査の対象・区分・年次が異なるため、両者を直接対応させたり合算したりはできません。民泊(住宅宿泊事業)は別の制度に基づく別の母集団です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年 速報値)
  2. 2.
    厚生労働省「衛生行政報告例」(令和3年度、生活衛生・旅館業)
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