旅行・宿泊業界の市場規模・主要企業・動向
日本の旅行・宿泊業界は、訪日インバウンドが過去最高を更新して旅行・観光消費額が37.6兆円まで回復し、需要が数量より単価・質へ移る局面にあります。
旅行・宿泊業界とは、旅行会社やオンライン旅行予約 (OTA) が旅行商品を販売する旅行業と、ホテル・旅館・民泊が宿泊を提供する宿泊業の二層からなる産業です。2025年の旅行・観光消費額は37.6兆円で過去最高となり、訪日外客数も4,268万人 (前年比+15.8%) と初めて4,200万人を超えました。一方、延べ宿泊者数は6.53億人泊で日本人分が減少し、需要は数量より単価・質へと比重を移しています。旅行・観光消費額37.6兆円・主要旅行業者取扱額3.68兆円・延べ宿泊者数6.53億人泊という対象の異なる複数の統計を区別して捉えること、OTAを軸とした集客の再編、オーバーツーリズムと人手不足への対応が共通の論点です。本ページでは、日本の旅行・宿泊業界を、市場規模、インバウンドと国内旅行、旅行業のプレイヤー、宿泊業のプレイヤー、OTA・流通の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
旅行・宿泊業界とは、旅行会社やOTA (オンライン旅行予約) が旅行商品を販売する旅行業と、ホテル・旅館・民泊が宿泊を提供する宿泊業の二層からなる産業です。コロナ禍からの回復が進み、2025年は訪日インバウンドが過去最高を更新する一方、国内需要は数量より単価・質へと比重を移しています。
- 旅行・観光消費額は2025年に37.6兆円と過去最高に達しました。日本人の国内旅行26兆7,845億円と訪日外国人旅行9兆4,559億円で構成され、コロナ禍前の2019年を上回る規模まで戻っています。
- インバウンドが回復を牽引する一方、国内は質的に変化しています。訪日外客数4,268万人・訪日消費9兆4,559億円がともに過去最高となる半面、延べ宿泊者数は日本人分が減り、単価・質を重視する動きが強まっています。
- OTAを軸とした集客の再編と供給制約が業界共通の課題です。宿泊予約はOTA経由が中心となり、急回復の裏でオーバーツーリズムと人手不足が宿泊業の稼働を制約しています。
市場動向
旅行・宿泊市場は、需要側の旅行・観光消費額が2025年に37.6兆円と過去最高に達し、供給側では主要旅行業者の旅行取扱額3.68兆円、延べ宿泊者数6.53億人泊という対象の異なる統計が併存します。回復は訪日インバウンドが牽引し、国内は単価上昇が下支えしています。
- 旅行・観光消費額は2025年に37.6兆円となり過去最高水準です。日本人の国内旅行が26兆7,845億円 (前年比+6.5%)、訪日外国人旅行が9兆4,559億円で、需要側の業界規模を示しています。
- 主要旅行業者の旅行取扱額は2024年度に3.68兆円で、旅行会社が販売した旅行の規模を表します。部門別では国内旅行2兆1,652億円、海外旅行1兆2,959億円、外国人旅行2,156億円という構成です。
- 延べ宿泊者数は2025年に6.53億人泊で、宿泊業の数量を示します。日本人分は前年比3.8%減の4億7,561万人泊、外国人分は8.2%増の1億7,787万人泊で過去最高となっています。
競争環境
旅行・宿泊業界では、総合旅行会社・オンライン専業・ホテルチェーン・旅館・OTA・民泊など多様なプレイヤーが活動しています。旅行業の業態転換、宿泊業の稼働率・客室単価、OTAの手数料負担と直販の3軸が共通の論点となり、旅行業と宿泊業で構造が大きく異なります。
- 旅行業では総合旅行会社とオンライン専業が並立しています。最大手のJTB (非上場、取扱額約1兆3,121億円) に、H.I.S.・KNT-CT・日本旅行・阪急交通社などの総合旅行会社が続き、エアトリ・オープンドアといったオンライン専業が競合しています。
- 宿泊業はホテルと旅館で構造が異なります。共立メンテナンス (ドーミーイン)、藤田観光 (椿山荘・ワシントンホテル)、リゾートトラスト (会員制リゾート) などの上場企業に加え、星野リゾートやアパグループ (いずれも非上場)、外資ラグジュアリーが多様に並立しています。
- 集客はOTAが中核で、国内とグローバルが競合しています。楽天トラベル・じゃらん・一休/Yahoo!トラベルなどの国内OTAと、Booking.com・Expedia・Agoda・AirbnbなどのグローバルOTAが競い、宿泊事業者は手数料と直販のバランスを迫られています。
市場規模推移
2016-2025 · 日本人国内旅行消費額 / 訪日外客数日本人国内旅行消費額の推移 (2016-2025年、兆円)
| 年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本人国内旅行消費額(兆円) | 20.95 | 21.11 | 20.48 | 21.93 | 9.97 | 9.18 | 17.16 | 21.91 | 25.15 | 26.78 |
| 前年比 | — | +0.8% | -3.0% | +7.1% | -54.5% | -8.0% | +87.0% | +27.7% | +14.8% | +6.5% |
訪日外客数の推移 (2003-2025年、万人)
| 年度 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 訪日外客数(万人) | 521 | 614 | 673 | 733 | 835 | 835 | 679 | 861 | 622 | 836 | 1,036 | 1,341 | 1,974 | 2,404 | 2,869 | 3,119 | 3,188 | 412 | 25 | 383 | 2,507 | 3,687 | 4,268 |
| 前年比 | — | +17.9% | +9.6% | +8.9% | +13.9% | +0.0% | -18.7% | +26.8% | -27.8% | +34.4% | +23.9% | +29.4% | +47.2% | +21.8% | +19.3% | +8.7% | +2.2% | -87.1% | -93.9% | +1432.0% | +554.6% | +47.1% | +15.8% |
日本の旅行・観光消費額は、2025年に37.6兆円となり過去最高水準に達しました。内訳は日本人の国内旅行が26兆7,845億円、訪日外国人旅行が9兆4,559億円です。日本人の国内旅行消費額は、コロナ禍前の2019年の21兆9,312億円から2020年に9兆9,741億円へ半減した後、段階的に回復し、2025年に過去最高の26兆7,845億円へ達しました。
この業界では、対象や単位が異なる複数の統計を区別して捉える必要があります。需要側の旅行・観光消費額37.6兆円に対し、旅行会社が販売した主要旅行業者の旅行取扱額は3.68兆円 (2024年度) で、宿泊業の規模は宿泊数で測る延べ宿泊者数6.53億人泊です。取扱額が消費額を大きく下回るのは、旅行者が旅行会社を通さずに直接予約・手配した分が含まれないためです。それぞれ消費額・販売額・宿泊数という異なる対象を測っており、単純に合算したり比較したりはできません。
インバウンドの回復が業界全体を牽引しています。訪日外客数は、ビジット・ジャパン政策が始まった2003年の521万人から段階的に増え、2013年に初めて1,000万人を超え、2019年に3,188万人へ達しました。コロナ禍の2020年に412万人、2021年には24.6万人まで落ち込みましたが、その後急回復し、2025年に4,268万人 (前年比+15.8%) と初めて4,200万人を超えて過去最高となりました。訪日外国人の旅行消費額も9兆4,559億円 (+16.4%) へ拡大し、費目別では宿泊費3兆4,617億円、買物代2兆5,490億円、飲食費2兆711億円が中心です。
一方、国内需要は数量より単価・質へと比重が移っています。延べ宿泊者数は6.53億人泊で前年比0.8%減となり、日本人分が3.8%減る一方で外国人分は8.2%増の1億7,787万人泊と過去最高でした。日本人の国内旅行は延べ人数が伸び悩む半面、国内宿泊旅行の1人1回あたり単価は7万2,412円へ上昇しており、量から質への転換が進んでいます。
急速な回復の裏で、オーバーツーリズムと人手不足が供給側の制約となっています。2025年の客室稼働率は全体で61.8%となり、大阪府78.8%・東京都76.8%など都市部では高い水準に達する一方、宿泊業では清掃や接客の人手確保が追いつかず、稼働の制約となる場面が増えています。
政策面では、観光庁が観光立国推進基本計画に基づき、混雑の緩和、地方への誘客、高付加価値化を進めています。宿泊税を導入・拡大する自治体が増え、民泊についても住宅宿泊事業法と自治体の上乗せ条例による規制が並行しています。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要旅行・宿泊業界は、旅行会社やOTAが旅行商品を販売する旅行業と、ホテル・旅館・民泊が宿泊を提供する宿泊業の二層からなります。両者は重なりながらも、別の統計・別のプレイヤーで構成されています。
供給側の規模を測る統計も分かれています。旅行業では旅行会社が販売した主要旅行業者の旅行取扱額3.68兆円 (2024年度)、宿泊業では延べ宿泊者数6.53億人泊 (2025年) が使われ、いずれも需要側の旅行・観光消費額37.6兆円とは異なる対象を示しています。
旅行業では、最大手のJTB (非上場、旅行取扱額 約1兆3,121億円) に、H.I.S.・KNT-CT・日本旅行・阪急交通社などの総合旅行会社が続き、エアトリ・オープンドアといったオンライン専業が競合しています。総合旅行会社は店舗・パッケージ中心から、オンラインや法人・着地型へ業態を転換しています。
宿泊業はホテルと旅館で構造が異なります。共立メンテナンス・藤田観光・リゾートトラストなどの上場企業に加え、星野リゾートやアパグループ (いずれも非上場)、外資ラグジュアリーが多様に並立し、運営受託と所有の分離も進んでいます。
宿泊予約の集客は、OTA (オンライン旅行予約) が中核を担い、楽天トラベル・じゃらん・一休 などの国内OTAと、Booking.com・Expedia・Agoda・Airbnb などのグローバルOTAが競合しています。宿泊事業者は手数料負担と自社サイトでの直販のバランスを迫られています。
政策面では、観光庁が観光立国推進基本計画に基づき、混雑の緩和、地方への誘客、高付加価値化を進めています。宿泊税の導入・拡大や、民泊への住宅宿泊事業法と自治体条例による規制が並行し、人手不足への対応も課題となっています。
業界の3大論点
旅行・宿泊業界の規模は、単一の数字では表せません。需要側の旅行・観光消費額は2025年に37.6兆円ですが、これは日本国内で発生した旅行消費の総体で、日本人の国内旅行26兆7,845億円と訪日外国人旅行9兆4,559億円などで構成されます。
供給側には別に集計される統計があります。主要旅行業者の旅行取扱額3.68兆円 (2024年度) は、旅行会社が販売した旅行の取扱額で、旅行消費の全体ではなく旅行会社経由の販売分です。延べ宿泊者数6.53億人泊は宿泊業の数量を示し、金額ではありません。さらに訪日外客数4,268万人は「人数」、民泊の宿泊実績は別に集計される「人泊」です。これらを混同すると、「旅行業界が37.6兆円を売り上げている」「旅行会社が宿泊のすべてを扱っている」といった誤読が生じます。
業界を理解するうえでは、どの統計が何を測っているかを意識し、消費額・取扱額・宿泊者数・訪日客数を分けて捉えることが出発点になります。市場規模を語る場面では、対象と単位を明示し、安易な合算や比較を避ける姿勢が求められます。
近年の回復は、インバウンドが牽引しています。訪日外客数は2025年に4,268万人 (前年比+15.8%)、訪日消費額は9兆4,559億円 (+16.4%) で、ともに過去最高となりました。外国人の延べ宿泊者数も1億7,787万人泊と過去最高で、都市部や有名観光地の稼働を押し上げています。
一方、国内需要は数量面で伸び悩んでいます。延べ宿泊者数全体は前年比0.8%減で、日本人分は3.8%減りました。その代わりに進んでいるのが単価・質へのシフトで、国内宿泊旅行の1人1回あたり単価は7万2,412円へ上昇しています。人数が増えにくいなかで、付加価値の高い宿泊・体験に支出を振り向ける動きが強まっています。
インバウンドは成長の主な原動力ですが、為替や海外景気、特定の国・地域への依存といった変動要因も抱えています。国内需要の数量縮小を単価上昇とインバウンドでどこまで補えるかは、地域差も大きく、宿泊・旅行事業者ごとに戦略が分かれる論点です。
宿泊予約の集客は、OTA (オンライン旅行予約) が中核を担っています。宿泊予約に占めるOTA経由の比率は約44.9%とされ、楽天トラベルやじゃらんなどの国内OTAと、Booking.comやExpedia、Agoda、Airbnbなどのグローバルが競合しています。OTAは集客力が高い半面、宿泊事業者には販売額に応じた手数料負担が生じます。
宿泊事業者の選択肢は、いくつかの方向に整理できます。第1はOTAの集客力を活用する道で、複数のOTAに在庫を出して稼働を確保します。第2は自社サイトや会員制度による直販を強化する道で、手数料を抑えつつ顧客との関係を深めます。第3はメタサーチや価格比較への対応で、トラベルコなどの比較サービス経由の流入も意識した価格・在庫の管理が求められます。
この領域は公式統計に乏しく、市場規模や各社シェアは民間調査の公表値に依存します。多くの宿泊事業者にとっては、OTA経由と直販を組み合わせ、立地や客層に応じて手数料負担と顧客接点のバランスをとることが現実的な戦略となります。
よくある質問 (FAQ)
旅行・宿泊業界の市場規模はどれくらいですか?
訪日インバウンドはどこまで回復していますか?
旅行・観光消費額と旅行業取扱額は何が違いますか?
主要な旅行会社にはどんな企業がありますか?
ホテルと旅館の業界構造はどうなっていますか?
OTAとは何ですか?主要なOTAは?
民泊 (住宅宿泊事業) の規模と規制はどうなっていますか?
オーバーツーリズムへの対策や観光政策はどうなっていますか?
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