最終更新
TOPIC DETAIL · ASSET MANAGEMENT NATION

資産運用立国と政策動向|実現プランとアセットオーナー改革、協会統合【2026年版】

「資産運用立国」は、家計に眠る約2,000兆円の金融資産を投資へと動かし、資産運用業を国際競争力のある産業へ育てる政府の方針です。2023年12月の資産運用立国実現プランを起点に、運用会社の運用力向上、年金・保険などアセットオーナーの改革、新興運用業者の参入促進といった取り組みが進められています。金融庁は資産の流れ(インベストメントチェーン)全体を横断的にモニタリングし、その進捗を「プログレスレポート」として毎年公表しています。本ページでは、資産運用立国の政策の全体像と主な柱を整理します。

資産運用立国の主な政策の柱

資産運用立国実現プラン(2023年12月)とその後の取り組み
運用力の向上
ねらい
運用会社の運用力・体制を世界水準へ
主な取り組み
グローバル資産・オルタナティブ投資の強化、商品の組成・管理(プロダクトガバナンス)の高度化
アセットオーナーシップの改革
ねらい
年金・保険などの運用を高度化
主な取り組み
アセットオーナー・プリンシプルの策定(2024年8月)、受益者最善の利益の徹底
新規参入と成長資金
ねらい
新しい運用会社の参入を促す
主な取り組み
新興運用業者促進プログラム(日本版EMP)、登録制度の創設・規制緩和(2025年5月施行)
制度・基盤の整備
ねらい
家計の投資環境と業界基盤を整える
主な取り組み
新NISAの開始(2024年1月)、業界団体の統合による資産運用業協会の発足(2026年4月)
読み解き

資産運用立国実現プランは、運用会社の運用力の向上、年金・保険などのアセットオーナーシップの改革、新しい運用会社の新規参入と成長資金の供給、そして家計の投資環境を整える制度・基盤の整備を、大きな柱としています。それぞれが、家計の資金を投資へ動かし、運用業を国際競争力のある産業へ育てるという目標に向けた取り組みです。

これらは個別の施策ではなく、インベストメントチェーン全体を底上げする一体の取り組みとして設計されています。家計が安心して投資できる環境(新NISA)、その資金を預かり運用する運用会社の力(運用力向上)、年金など大口の資金の出し手の改革(アセットオーナー)、そして新しい担い手の参入(日本版EMP)が、互いにつながって機能することが想定されています。

主要論点

なぜ「資産運用立国」を掲げるのか?

背景には、家計の金融資産 約2,000兆円の多くが現預金にとどまり、投資に向かってこなかったという課題があります。現預金は安全な一方、長期では物価上昇に目減りしやすく、企業の成長資金としても循環しません。この資金を投資へ動かせば、家計には資産所得が生まれ、企業には成長資金が供給され、運用業も成長するという好循環が期待できます。

もう一つの背景は、日本の資産運用業の国際競争力です。金融庁のプログレスレポートでは、日本の大手運用会社の運用資産や収益性が世界の大手運用会社と比較され、銀行・保険・証券に並ぶ「第4の柱」として、世界の運用会社と質・量ともに伍していけるプレーヤーを育てることが課題として示されています。家計マネーの受け皿となる運用業そのものを、国際競争力のある産業へ育てることがねらいです。

業界戦略への示唆: 資産運用立国は、新NISAによる個人マネーの流入と、運用業の高度化を同時に進める政策です。運用会社にとっては、残高の拡大という追い風と、運用力・ガバナンスの向上という宿題が同時に課されています。低コスト競争のなかで運用の付加価値をどう高めるかが、政策の実効性を左右します。

アセットオーナー・プリンシプルとは何か?

アセットオーナーとは、年金基金や保険会社、大学ファンドなど、自ら資金を保有して運用を委託する大口の資金の出し手です。これらの運用が高度化すれば、運用会社への委託を通じて、インベストメントチェーン全体の質が上がります。

そこで内閣官房は2024年8月、アセットオーナー・プリンシプルを策定しました。これは、アセットオーナーが受益者(年金加入者など)の最善の利益を第一に、運用方針を定め、運用委託先を適切に選び評価し、運用の専門性を高めることなどを求める原則です。公的年金や企業年金、保険会社などが、自らの運用体制を見直す指針となります。

業界戦略への示唆: アセットオーナーの改革が進めば、運用会社は運用成績や運用プロセスをこれまで以上に厳しく評価されることになります。成績や体制の良い運用会社に資金が集まり、そうでない会社は委託を外される選別が働きます。アセットオーナー改革は、運用会社にとって運用力で選ばれる競争を一段と強める要因です。

新興運用業者の参入と協会統合 — 制度面の後押し

資産運用立国では、既存の大手だけでなく、新しい運用会社(新興運用業者)の参入も促されています。金融庁は、業歴が短いことだけを理由に新規参入を妨げないよう登録制度を整え、運用に関わる業務を外部に委託しやすくする規制緩和を2025年5月に施行しました。年金や保険会社が新興運用会社へ資金を委託する取り組み(新興運用業者促進プログラム、日本版EMP)も進んでいます。これは、独立系の運用会社や新規参入者にとって、追い風となる枠組みです。

制度・基盤の面では、2026年4月に、投資顧問業協会と投資信託協会が統合して資産運用業協会が発足しました。投資信託と投資一任にまたがる業界団体を一本化することで、ルール整備や情報発信を一体で進める基盤が整います。

業界戦略への示唆: 新規参入の促進と業界団体の統合は、運用業の裾野を広げ、ルールを共通化する制度面の後押しです。新興運用業者にとっては参入のハードルが下がり、既存の運用会社にとっては、新しい担い手との競争と協働の双方が広がります。資産運用立国は、運用業の担い手の多様化を後押しする政策でもあります。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、アセットオーナー・プリンシプルの定着と、新興運用業者の参入促進が進む見通しです。金融庁はプログレスレポートを通じて運用業の高度化を継続的にモニタリングし、年金・保険などのアセットオーナーが運用委託先の選定や評価を見直す動きが広がるとみられます。2026年4月に発足した資産運用業協会も、制度整備の役割を担います。

中期3-5年

2028-2030年は、日本の運用業の国際競争力をどこまで高められるかが問われる時期です。プログレスレポートが掲げる、世界の運用会社と質・量ともに伍していくという方向に向け、運用会社の運用力・収益性の向上、グローバル資産やオルタナティブへの投資の広がりが論点となります。新NISAで流入した個人マネーを、運用の付加価値にどう結びつけるかが鍵です。

長期5-10年

2030年以降は、資産運用立国が家計の資産形成と運用業の成長を両立させる仕組みとして定着するかが焦点です。家計の現預金から投資へのシフトが続き、運用業が国際競争力を備えた産業へと育てば、家計の資産所得の拡大と企業への成長資金の供給という好循環が回り始めます。政策の継続性と、運用業自身の高度化の両輪が、その実現を左右します。

よくある質問

資産運用立国とは何ですか?
資産運用立国は、家計に眠る約2,000兆円の金融資産を投資へと動かし、あわせて日本の資産運用業を国際競争力のある産業へ育てることを目指す政府の方針です。2023年12月の資産運用立国実現プランを起点に、運用会社の運用力向上、アセットオーナーの改革、新規参入の促進、家計の投資環境の整備(新NISAなど)が進められています。
資産運用立国実現プランとは何ですか?
2023年12月に政府がまとめた、資産運用立国を実現するための計画です。運用会社の運用力の向上、年金・保険などアセットオーナーの改革、新しい運用会社の参入促進、家計の投資環境の整備などを柱としています。新NISAの開始(2024年1月)も、この流れの一環に位置づけられます。
アセットオーナー・プリンシプルとは何ですか?
アセットオーナー(年金基金・保険会社・大学ファンドなど、運用を委託する大口の資金の出し手)が守るべき原則として、内閣官房が2024年8月に策定したものです。受益者の最善の利益を第一に、運用方針を定め、運用委託先を適切に選び評価し、運用の専門性を高めることなどを求めています。
プログレスレポートとは何ですか?
金融庁が、資産運用サービスの高度化に向けた取り組みの進捗を毎年まとめて公表する報告書です(2025年版は2025年6月公表)。家計から販売会社・運用会社・アセットオーナー・投資先へと至る資産の流れ(インベストメントチェーン)全体を横断的にモニタリングし、運用力の向上や新興運用業者の参入などの状況を示しています。
資産運用業協会の発足とは何ですか?
2026年4月に、投資顧問業協会と投資信託協会が統合して発足した業界団体です。投資信託と投資一任にまたがる業界団体を一本化することで、ルール整備や情報発信を一体で進める基盤を整えるもので、資産運用立国の制度・基盤整備の一環に位置づけられます。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    金融庁 資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2025
  2. 2.
    資産運用立国実現プラン
  3. 3.
    アセットオーナー・プリンシプル
  4. 4.
    金融商品取引法改正に伴う関係政令・府令 (新興運用業者の参入促進)
📄 資料DL💬 無料相談