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銀行業の収益構造|資金運用・役務・特定取引の3区分とビジネスモデル【2026年版】

銀行業の収益は3区分で構成されます。貸出金利と預金金利の差である「預貸金利ざや」と有価証券利息を稼ぐ①資金運用収益、投信窓販やM&Aの手数料による②役務取引等収益、市場取引・デリバティブから得る③特定取引収益。FY2024連結で全国銀行92行は経常収益40.2兆円、純利益5.2兆円。マイナス金利解除と海外金利高で資金運用収益は5年で約2.8倍に伸長、新NISAで役務収益も拡大基調と、ビジネスモデルの転換が進んでいます。

FY2024経常収益
40.2兆円
全国銀行92行連結、FY2020の18.5兆から+117%拡大
出典: 全国銀行協会 全国銀行 連結P/L (FY2020-2024、92行連結)
FY2024経常利益
7.1兆円
5年で約2.5倍 (FY2020はコロナ反動の特異点)、マイナス金利解除と海外金利高で利益急増
出典: 全国銀行協会 全国銀行 連結P/L (FY2020-2024、92行連結)
FY2024資金運用収益
27.0兆円
FY2020の9.6兆から約2.8倍に伸長、政策金利上昇への感応度が最も高い区分
出典: 全国銀行協会 全国銀行 連結P/L (FY2020-2024、92行連結)
FY2024役務取引等収益
5.5兆円
投信窓販・M&A・送金等、新NISA開始で拡大基調、メガバンク3グループで約3.7兆を占める
出典: 全国銀行協会 全国銀行 連結P/L (FY2020-2024、92行連結)

銀行業 収益3区分の構造と主要源泉

資金運用・役務・特定取引の内訳・主要源泉・FY2024額
区分名称時期ステージ定義
資金運用収益 (利ざや+有価証券)金利感応度 最大27.0兆円 (業務収益小計36.7兆の73%)銀行業の最大の収益源で、預貸金利ざや (貸出金利回りと預金利回りの差) と有価証券利息 (国債・社債・株式配当などから得る利息) で構成されます。政策金利上昇局面で預貸金利ざやが拡大、海外金利の高水準で外貨建て利息収入も伸びるため、金利感応度が最も高い区分です。
役務取引等収益 (投信窓販+M&A+送金)金利非依存の柱5.5兆円 (業務収益小計36.7兆の15%)銀行口座を起点に提供する手数料ビジネス全般を指し、投信窓販 (投資信託を銀行窓口で販売する業務)、保険販売、送金手数料、M&Aアドバイザリー、信託受託、為替取引などを含みます。新NISA開始や資産運用立国政策で個人運用関連が拡大基調、メガバンクグループはM&A・IPO主幹事などの法人向けでシェアが高い区分です。
特定取引収益 (市場取引+デリバティブ)収益ブレ 大1.4兆円 (業務収益小計36.7兆の3.9%)デリバティブ取引・国債先物・外貨FX・株式トレーディングなどの市場取引から得る収益で、市場環境のブレに連動して四半期ごとに大きく振れます。FY2024でも前年比で増減幅が大きく、各メガの市場部門の運用力で差が出る区分です。リスク管理の高度化が求められます。
読み解き

銀行業のビジネスモデルは「3区分のバランス」で評価されます。資金運用収益への偏重は金利環境への依存度が高く、政策金利が下がると一気に収益が縮小するリスクがあります。一方、役務と特定取引の合計比率が高ければ金利非依存の収益源を持つ「総合金融グループ型」に近く、収益の安定性が高い構造です。本ページの構成比は「業務収益小計 = 3区分 + その他業務収益2.8兆」を分母とし、銀行業務の収益構造を読み取るためのバランス指標です。 FY2024全国銀行92行連結では資金運用73%、役務15%、特定取引4%、その他業務8%の構成で、資金運用比率が圧倒的に高い構造です。これはメガバンクグループでもほぼ同様で、海外金利感応度が高いMUFGが特に資金運用依存度が高い傾向にあります。

全国銀行92行連結 収益3区分の5年推移 (FY2020-FY2024)

資金運用・役務・特定取引の積み上げ推移
単位: 兆円
資金運用役務特定取引
0.0010.020.030.040.014.22015.32122.62231.12333.924
出典: 全国銀行協会 全国銀行 連結P/L (FY2020-2024、92行連結)
年度20202021202220232024
資金運用兆円9.609.7016.7024.5027
役務兆円4.104.504.805.205.50
特定取引兆円0.501.101.101.401.40
合計(兆円14.2015.3022.6031.1033.90
前年比+7.7%+47.7%+37.6%+9.0%
読み解き

FY2020 → FY2024で資金運用収益は9.6 → 27.0兆 (約2.8倍) と劇的に拡大、3区分合計でも14.2 → 33.9兆 (約2.4倍) と全体規模も急拡大しました。上のグラフは積み上げで3区分の構成比変化が読み取れます。 伸長は段階的で、FY2022 → FY2023で資金運用が16.7 → 24.5兆 (+7.8兆) と既に大きく伸びており、これは海外金利高 (米国FFレート上昇) と海外貸出残高拡大によるものです。FY2023 → FY2024で更に+2.4兆と加速したのは2024/3マイナス金利解除、2024/7政策金利0.25%、2025/1の0.5%への段階利上げで国内預貸金利ざやが回復したためです。役務収益は+36%と緩やかに拡大、特定取引も+189%と回復基調にあり、3区分すべてが拡大した健全な構造です。

メガバンク2社 役務取引等収益と信託収益の比較 (FY2024連結、MUFGとSMFG)

MUFGとSMFGの役務・信託合算、全国銀行92行 役務収益5.5兆円との対比
単位: 兆円2 カテゴリ・合計 3.66
0.000.631.251.882.502.09MUFG1.57SMFG
出典: 各社IR (Factbook・決算説明資料) FY2024連結、役務取引等収益と信託収益の合算
カテゴリMUFGSMFG
値(兆円2.091.57
シェア57.1%42.9%
読み解き

FY2024連結ベースの2社合計役務取引等収益と信託収益はMUFG 2.1兆+SMFG 1.6兆=3.7兆円で、全国銀行92行連結 役務取引等収益5.5兆円の約66%を占めます。本グラフはみずほFGの役務関連数値が現時点でデータ整備中のため対象外としており、みずほFGを加味した推計値はIR短信を別途参照することを推奨します。 MUFGとSMFGの役務収益優位は①投信窓販シェア (個人顧客基盤と信託子会社・証券子会社の連携)、②M&Aアドバイザリー業務 (MUFGモルガン・スタンレー証券、SMBC日興などの銀行系証券が大型案件で関与)、③IPO主幹事業務、④信託受託 (年金信託・包括信託) の4領域で機能しています。地銀には地域企業との長期取引と相続承継絡みの差別化余地が残るものの、規模では太刀打ちできない構造です。

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全国銀行92行連結 経常利益の5年推移 (FY2020-FY2024)

収益拡大の最終効果としての経常利益、3区分推移と並ぶ業績指標
単位: 兆円
0.002.004.006.008.002.90204.00214.10225.30237.1024
出典: 全国銀行協会 全国銀行 連結P/L (FY2020-2024、92行連結)
年度20202021202220232024
値(兆円2.9044.105.307.10
前年比
読み解き

経常利益はFY2020の2.9兆 → FY2024の7.1兆と約2.4倍に拡大しました。これは資金運用収益の急拡大 (約2.8倍) が直接寄与した結果で、収益3区分の拡大がそのまま利益に転換した構造を示しています。FY2020からFY2022までの3年で約1.4倍、FY2022からFY2024までの2年で更に約1.7倍と段階的に伸長しています。 経常利益拡大の要因は①預貸金利ざや回復 (マイナス金利解除以降の段階利上げ)、②海外金利高による外貨建て利息収入の伸び、③役務取引等収益の拡大 (新NISA・M&A)、④G&A費用の伸び抑制 (店舗統廃合・DX投資) の4点です。逆に逆風となるのは①与信費用の振れ、②有価証券評価損リスク、③米国景気変動の波及で、これらは中期2027-2029年に表面化し利益水準のブレを大きくする可能性があります。

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主要論点

利ざや拡大の持続性はどこまで?

マイナス金利解除以降、政策金利は0.0-0.1% → 0.25% (2024/7) → 0.5% (2025/1) と段階利上げが進み、預貸金利ざや回復で資金運用収益は9.6 → 27.0兆 (約2.8倍) に伸長。経常利益も2.9 → 7.1兆 (約2.5倍) と劇的に拡大しました。地銀再編・地域金融力強化プランの本格運用 (2026年度〜)、企業価値担保権 (事業全体を担保にした2026/5導入予定の新担保制度) の影響も並行で発生します。

持続性の3つの逆風: (1) 政策金利の上昇余地 — 2026年以降の追加利上げは消費者物価指数と賃金上昇率次第で、累計0.75-1.0%で頭打ちとなる可能性、(2) 有価証券評価損リスク — 全国銀行 有価証券残高267兆円のうち国債等の保有が金利上昇で評価損 (時価が取得原価を下回る損失) を抱える可能性、(3) 与信費用の振れ (貸倒に備える引当金繰入と不良債権償却の合計) — メガバンクグループの海外貸出残高拡大に伴い、新興国景気変動で与信費用が増減します。

業界戦略への示唆: 短期2025-2026年は利ざや拡大が継続する見通しだが、中期2027-2029年は①金利上昇局面の終息、②有価証券評価損の表面化、③米国景気変動の波及、で利益水準はFY2024ピーク比で減益圧力に直面し得ます。役務収益のウェイト引き上げが利ざや依存からの脱却の試みです。

役務収益拡大の限界はあるか?

役務取引等収益はFY2020の4.1 → FY2024の5.5兆と+36%の拡大に留まり、資金運用収益 (約2.8倍) と比較すると伸びが緩い水準にあります。これは銀行窓販で扱う商品 (投資信託・保険) のシェアが頭打ちで、独立系運用会社・証券・ロボアドバイザーとの競合が激化しているためです。

拡大ドライバーの4軸: (1) 新NISA — 2024/1開始の改正少額投資非課税制度で、年間360万円までの非課税投資枠を活用した投信流入が銀行窓販を後押し、(2) 資産運用立国 — 政府が家計資産を貯蓄から投資へシフトさせる戦略で、銀行と信託の運用助言ビジネスが拡大、(3) M&Aアドバイザリー — 国内大型M&A・事業承継・PEファンド絡みの案件で銀行系証券のシェア拡大、(4) 信託受託 — 年金信託・包括信託・相続承継信託で信託銀行系列が優位という4領域です。

業界戦略への示唆: 中期で役務収益が+20-30%拡大する余地はあるが、独立系運用会社やロボアドバイザーとの競合で銀行のシェアが侵食される構造変化も並行しています。メガバンク3グループは銀証信一体運営でシェアを維持、地銀には地域密着の運用助言と相続承継絡みの信託機能で差別化機会が残ります。

与信費用の波及で利益はどこまで揺れるか?

与信費用 (貸倒に備える引当金繰入と不良債権償却の合計) はマクロ景気と新興国情勢に連動して四半期ごとに振れます。FY2024の全国銀行92行連結 経常利益7.1兆円のうち、有価証券関係損益と与信費用は数百億から1兆規模のブレを発生させる項目で、過去5年で最も振れた区分です。

振れの3大ドライバー: (1) 米国景気後退 — 2026-2027年に景気後退が起きた場合、メガ3の海外貸出 (Krungsri・Bank Danamon・Union Bank譲渡後の北米事業など) で与信費用が拡大、(2) 新興国通貨変動 — タイバーツ・インドネシアルピアなどの通貨変動が現地貸出の与信費用に直結、(3) 国内中小企業の業況 — マイナス金利解除に伴う金利負担増で中小企業の倒産が増加し、地銀・第二地銀の与信費用が増加する可能性です。

業界戦略への示唆: 与信費用の波及で全国銀行92行連結 経常利益がFY2024の7.1兆ピーク比で-10〜-20%程度の減益局面に入る可能性は中期で十分にあります。逆に景気が安定なら経常利益はさらに+10〜+15%拡大も視野で、3つの利益振れ要因 (利ざや・役務・与信費用) のバランスが中期収益の見通しを決めます。

中期見通し

近未来 1-2年

2026-2027年は 資金運用収益が高水準を維持、役務収益がやや加速する局面 です。政策金利0.5%を起点に経済・物価指標次第で追加利上げ議論が続き、預貸金利ざや拡大が継続します。新NISA関連の投信流入で役務取引等収益が+8-12%/年の伸び見込みで、全国銀行92行連結 経常利益はFY2024の7.1兆水準を維持または微増する見通しです。一方、地銀再編と企業価値担保権の2026/5導入で中堅企業向け融資の競争環境が変化します。

中期 3-5年

2028-2030年は 利ざや拡大ペースが鈍化、役務収益とコスト効率が利益のドライバーになる局面 に入ります。政策金利の上昇余地が逓減し、米国景気変動と新興国通貨変動による海外収益のブレが上昇。有価証券評価損リスクの表面化、与信費用の振れが業績の波を作ります。一方、業務DX投資による経費削減で各行の経費率 (OHR) の改善が続き、役務収益比率は業務収益小計の15% → 18-20%へ上昇する見通しで、ビジネスモデルの転換が進みます。

長期 5-10年

2030年以降は 銀行業の収益構造が「資金運用依存」から「銀証信一体・海外」へ質的に変化する局面 に入ります。バーゼルIII経済価値ベース評価 (国際決済銀行 BIS が定める銀行の自己資本規制で、時価ベースで含み損益を自己資本に反映する算定方式) の導入で金利環境への耐性が問われます。AI・DXによる業務自動化で経費効率が改善し、メガバンクグループは資産運用立国の中核プレイヤーとして役務収益比率を25-30%へ引き上げる戦略を進めます。地銀には地域密着の運用助言と信託代理店業務での差別化が長期競争軸となります。

よくある質問

銀行はどうやって儲けているのですか?
銀行業の収益は3区分で構成されます。①資金運用収益 (預貸金利ざやと有価証券利息) 27.0兆、②役務取引等収益 (投信窓販・M&A・送金等) 5.5兆、③特定取引収益 (デリバティブ・市場取引) 1.4兆 がFY2024全国銀行92行連結の内訳です。資金運用が67%で中核、役務が14%で次の収益柱、特定取引は4%で規模は中位ながらブレが大きい区分です。
預貸金利ざやとは何ですか?
預貸金利ざや (貸出金利回りと預金利回りの差) は銀行業の最も基本的な収益源で、銀行が預金で集めた資金を貸出に回すときの利幅を表します。政策金利が上昇すると貸出金利が先に上昇し預金金利は遅れて上昇するため、利上げ局面では利ざやが拡大して資金運用収益が増えます。2024/3のマイナス金利解除と2025/1の0.5%への段階利上げで、全国銀行92行連結の資金運用収益はFY2020の9.6兆 → FY2024の27.0兆と約2.8倍に伸長しました。
業務粗利益と経常利益の違いは何ですか?
業務粗利益 (経常収益から経常費用と一部支出を除いた銀行業の基本収益指標) は3区分収益とその他業務収益の合計概算で、本ページでは業務収益小計 (=36.7兆) として計算しています。一方、経常利益7.1兆は業務収益小計からG&A費用9.2兆と与信費用などの費用を控除した利益です。業務粗利益は銀行の収益力を測る指標、経常利益は経費負担後の実利益を測る指標で、両者の差は経費効率と与信費用次第で変動します。
与信費用とは何ですか?
与信費用 (貸倒に備える貸倒引当金繰入額と、回収不能となった債権の償却額の合計) は銀行業の主要な費用項目です。マクロ経済の悪化や個別企業の倒産で増加し、銀行の経常利益を直接押し下げる要因となります。FY2024全国銀行92行連結では海外貸出残高の拡大と新興国通貨変動で与信費用がやや増加、経常利益7.1兆の中でも数百億から1兆規模のブレを発生させた項目です。米国景気後退局面で増加リスクが高まります。
新NISAは銀行の収益にどう影響しますか?
新NISAは2024/1開始の改正少額投資非課税制度で、年間360万円までの非課税投資枠を活用する制度です。初年度に約12兆円の家計資金が投資信託に流入し、銀行窓販 (投資信託を銀行窓口で販売する業務) と証券・運用会社の収益拡大に寄与しました。全国銀行92行連結の役務取引等収益はFY2020の4.1 → FY2024の5.5兆と+36%拡大、メガバンク3グループ (銀証信一体) が投信窓販とM&Aで先行する局面です。
データ出典
出典: 全国銀行協会 全国銀行 連結P/L (FY2020-2024、92行連結) / 三菱UFJ FG (8306) Factbook・統合報告書 / 三井住友FG (8316) 決算説明資料 / みずほFG (8411) 決算説明資料 (PDF) ・2026年5月アクセス
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