銀行業界の市場規模・主要企業・動向
全国銀行は預金1,037兆円規模の金融業の中核で、2024年のマイナス金利解除を経て利ざやが回復し、収益拡大局面に入っています。
銀行業とは、預金者から預かった資金を企業・個人に貸し出し、利ざやを得ることを柱とする金融業です。全国銀行92行はFY2024連結ベースで預金1,037兆円・貸出703兆円・経常利益7.14兆円の規模で、2024年3月のマイナス金利解除を経て収益が拡大しています。メガ3グループで純利益の76%を占める集中と、地方銀行61行・第二地方銀行34行・信託銀行・ゆうちょ銀行などの業態階層が共存し、金利上昇局面の利ざや管理、地銀再編、資産運用立国戦略下の役務収益強化が共通の論点です。本ページでは、銀行業界を、市場規模、業態構造、メガバンク業績、金利環境、規制の5軸で整理します。
業界サマリ
業界概要
銀行業とは、預金者から預かった資金を企業・個人に貸し出すことで利ざやを得る金融業です。日本では明治期の国立銀行条例(1872年)で近代銀行制度が始まり、現在は都市銀行(メガ3とりそな系)・地方銀行61行・第二地方銀行34行・信託銀行・ゆうちょ銀行・ネット銀行・信用金庫/信用組合の7業態が階層構造を形成しています。このうち全国銀行92行が連結ベースで合算統計に集計され、預金量・貸出残高・収益規模で業界の中核を担っています。
- 銀行業界は7業態の階層構造を持ち、その中核をなす全国銀行92行は連結ベースで預金1,037兆円・貸出703兆円(FY2024末)の規模です。都市銀行から信用金庫・信用組合まで、規模や地盤の異なる金融機関が並存しています。
- FY2024の全国銀行連結業績は経常利益7.1兆円・当期純利益5.2兆円で、FY2020から約2.5倍・約2.3倍に拡大しました。2024年3月のマイナス金利解除後の利ざや拡大と海外業務収益の伸びが寄与しています。
- メガ3グループ(MUFG・SMFG・みずほFG)で純利益3.93兆円を稼ぎ、全国銀行の76%を占めます。一方、家計金融資産2,351兆円のうち現金・預金が1,140兆円(48.5%)滞留する貯蓄超過構造が、銀行の資金調達基盤を支えています。
市場動向
銀行業界の市場規模は、全国銀行92行のFY2024連結ベースで預金1,037兆円・貸出金703兆円・経常利益7.14兆円です。2024年3月のマイナス金利解除以降、政策金利は0.0〜0.1%から0.5%へ段階的に引き上げられ、預貸金利ざやの回復で経常利益はFY2020から約2.5倍に拡大しました。預金者側では家計金融資産2,351兆円の48.5%が現金・預金で滞留する貯蓄超過構造が、資金調達基盤を支えています。
- 全国銀行の預金は1,037兆円(FY2024末、92行連結)で、FY2020の914兆円から約13%拡大しました。家計の貯蓄超過と企業の手元流動性確保を背景に、預金は構造的に積み上がっています。
- 貸出金は703兆円(FY2024末)で、FY2020から約17%伸びました。このうち地方銀行61行が267兆円、第二地方銀行34行が71.3兆円を占め、中小企業向け融資と住宅ローンが主軸です。
- 経常収益40.2兆円のうち資金運用収益27.0兆円が中核で、金利上昇による利息収入の拡大が顕著です。マネーストックM3は1,622兆円(前年比1.7%増)、広義流動性は2,264兆円で安定的に推移しています。
競争環境
日本の銀行業は、メガ3グループ(三菱UFJ FG・三井住友FG・みずほFG)・地方銀行61行・第二地方銀行34行・信託銀行・ゆうちょ銀行・ネット銀行などが並存する業態階層構造です。メガ3で純利益3.93兆円(全国銀行の76%)を占める集中と、地銀協61行の預金337兆円・第二地銀協34行の71.3兆円という地域金融の厚みが共存しています。共通の論点は、金利上昇局面の利ざや管理と有価証券評価損リスク、地銀再編とデジタル化への対応、資産運用立国戦略下の役務収益強化の3つです。
- メガ3グループは、三菱UFJ FGがFY2024連結純利益1.86兆円・預金228.5兆円で世界G-SIBs(システム上重要な銀行)の一角、三井住友FGが1.18兆円・経費率58%で3メガ最高効率、みずほFGが0.89兆円で銀行・証券・信託の一体運営を進めています。3社とも純利益はFY2020から約2倍に拡大しました。
- 準大手・地方銀行では、りそなHDが信託統合を伴う中堅準大手、三井住友トラスト・グループが信託首位(受託残高81兆円)、ゆうちょ銀行が個人預金中心で約190兆円を保有します。地方銀行では横浜銀行・千葉銀行・ふくおかFG・コンコルディアFGなどが大手として地域経済を支えています。
- ネット銀行・新興勢では、楽天銀行が口座数首位(1,763万)、住信SBIネット銀行が2026年8月にドコモ・三井住友信託銀行との統合を予定し、auじぶん銀行・セブン銀行・ソニー銀行などが続きます。デジタル決済・キャッシュレスの広がりを背景に存在感を高めています。
市場規模推移
2020-2024 · 預金 + 貸出金| 年度 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|---|---|
| 預金(兆円) | 914.12 | 949.37 | 982.65 | 1021.39 | 1037.35 |
| 貸出金(兆円) | 601.21 | 621.63 | 647.88 | 681.56 | 702.75 |
| 合計(兆円) | 1515.33 | 1571.00 | 1630.53 | 1702.95 | 1740.10 |
| 前年比 | — | +3.7% | +3.8% | +4.4% | +2.2% |
全国銀行とは全国銀行協会に加盟する商業銀行の総称で、現在92行が連結ベースで合算統計に集計されます。連結ベースの預金はFY2024末で1,037兆円、貸出金は703兆円、有価証券は267兆円、純資産は66兆円の規模です。
預金はFY2020の914兆円から約13%拡大し、貸出金も601兆円から703兆円へ伸びました。家計の貯蓄超過と企業の手元流動性確保を背景に預金が構造的に積み上がり、貸出は中小企業向け融資と住宅ローンを中心に増えています。預貸率は約68%で、預金の一部は有価証券運用にも回っています。
マイナス金利政策は2016年1月に日本銀行が導入し、約8年後の2024年3月に解除されました。以降、政策金利は0.0〜0.1%から0.25%(2024年7月)、0.5%(2025年1月)へ段階的に引き上げられ、貸出利回りと預金利回りの差である預貸金利ざやが回復しています。
この結果、全国銀行の連結経常利益はFY2020の2.91兆円からFY2024の7.14兆円へ約2.5倍に拡大しました。中核となる資金運用収益はFY2020の9.6兆円から27.0兆円へ伸び、預貸金利ざやの回復と外貨建て利息収入が同時に効いた形です。一方で、金利上昇は保有する米国債などの有価証券評価損リスクも高め、銀行は資産と負債のバランス管理の高度化を迫られています。
銀行業の資金調達基盤は家計の預金です。日銀の資金循環統計によれば、2025年12月末の家計金融資産2,351兆円のうち現金・預金が1,140兆円(48.5%)を占め、証券541兆円(23.0%)、保険・年金581兆円(24.7%)が続きます。この貯蓄超過構造が、銀行の安定的な低コスト資金調達を支えています。
ただし2024年1月開始の新NISAを契機に、現預金比率は18年ぶりに50%を割り込みました。若年層を中心に投資信託への資金流入が続いており、預金から投資へのシフトは、銀行にとって調達基盤の変化であると同時に、投信・保険の販売手数料という役務収益の拡大機会でもあります。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要日本の銀行業界は、都市銀行・地方銀行・第二地方銀行・信託銀行・ゆうちょ銀行・ネット銀行・信用金庫/信用組合の7業態が並ぶ階層構造です。このうち全国銀行92行が連結ベースで合算統計に集計され、預金1,037兆円・貸出金703兆円(FY2024末)の規模を持ちます。
業界の制度基盤を支えるのが日本銀行と金融庁です。日本銀行は金融政策を通じて金利環境を左右し、最後の貸し手として銀行を支えます。金融庁は銀行業の免許や検査、金融行政方針を担います。預金者保護のための預金保険機構や、全国銀行協会などの業界団体も、業界の土台を形づくっています。
業界の中核は、三菱UFJ FG・三井住友FG・みずほFGのメガ3グループです。3社合計の純利益3.93兆円は全国銀行の76%にあたり、海外業務や手数料ビジネスで地方銀行に先行しています。これにりそなHDを加えた4グループが都市銀行を構成します。
一方で、各都道府県を地盤とする地方銀行61行(預金337兆円)や、旧相互銀行を起源とする第二地方銀行34行(預金71.3兆円)が地域金融を支えています。さらに、信託業務に特化する信託銀行、郵便局網を持つゆうちょ銀行、店舗を持たない楽天銀行などのネット銀行が、それぞれの強みで競い合っています。
銀行業は健全性規制と金利環境に大きく左右されます。バーゼルIIIに基づく自己資本比率規制では、国際統一基準で8%、国内基準で4%が求められ、メガ3には世界的に重要な銀行への上乗せ(G-SIBsサーチャージ)も適用されます。マネー・ローンダリング対策では、FATFの審査を踏まえた態勢整備が継続課題です。
金利環境では、2024年3月のマイナス金利解除を起点に、政策金利が0.5%(2025年1月)まで段階的に引き上げられ、利ざやが回復しました。直近では、企業価値担保権の2026年5月導入や地銀再編、ネット銀行を軸としたキャッシュレス決済の広がりが、業界共通のテーマとなっています。
業界の3大論点
全国銀行92行連結の経常利益は、FY2020の2.91兆円からFY2024の7.14兆円へ、5年で約2.5倍に拡大しました。背景には金利・海外・手数料の3つの構造要因があります。
最も大きいのが金利環境の転換です。2016年1月に導入されたマイナス金利政策が2024年3月に解除され、政策金利は0.0〜0.1%から0.25%(2024年7月)、0.5%(2025年1月)へ段階的に引き上げられました。貸出利回りと預金利回りの差である預貸金利ざやが回復し、資金運用収益はFY2020の9.6兆円からFY2024の27.0兆円へ拡大しました。海外金利の高水準も、外貨建て資産の利息収入を押し上げています。
次に海外業務収益の伸びです。メガ3グループ、とくにMUFGとSMFGの海外貸出残高の拡大と、米国金融市場の正常化に伴う収益機会が寄与しました。あわせて役務収益も安定拡大しており、役務取引等収益はFY2020の4.0兆円から5.5兆円へ伸び、投資信託・保険の販売手数料やM&Aアドバイザリーが主軸となっています。中期的には、金利の落ち着き次第で資金利益の上昇ペースが鈍る可能性や、有価証券の含み損リスク、海外景気の変動を注視する局面に入ります。
FY2024のメガ3(MUFG・SMFG・みずほ)合計の親会社株主に帰属する当期純利益3.93兆円は、全国銀行92行の連結純利益5.18兆円の約76%にあたります。FY2020時点の約80%からはやや低下しており、地方銀行の利益寄与が回復した一方で、絶対的な集中構造は維持されています。
集中が続く理由は、メガ3の規模の経済にあります。連結預金約559兆円を抱え、IT投資やグローバルな与信管理、コンプライアンス体制で地銀との差が開いています。国内市場が成熟するなか、メガ3は海外貸出残高(アジア・米州)で成長機会を確保し、投資信託の窓口販売や保険販売、M&A、環境・社会に配慮した資金提供などの手数料ビジネスでも先行しています。同時に、地銀協61行と第二地銀協34行をあわせた95行のなかでは、青森みちのく銀行の統合やコンコルディアFGに代表される再編の動きが続いています。
一方で地方銀行には、地域企業との長期的な関係を通じて融資を行うリレーションシップバンキングや、地域経済への貢献という固有の役割があり、メガ3にすべて吸収される構造ではありません。中期的な論点は、金融行政方針2025の「地域金融力強化プラン」が後押しする地銀再編のスピード、信託銀行・ゆうちょ銀行・ネット銀行との業態間競争、そして時価をベースに自己資本を評価する新基準の導入の影響です。
日銀の資金循環統計(2025年12月末)によれば、家計金融資産2,351兆円のうち現金・預金が1,140兆円(48.5%)を占め、証券541兆円(23.0%)、保険・年金581兆円(24.7%)が続きます。現預金比率は18年ぶりに50%を割り込み、2024年1月に始まった新NISA(少額投資非課税制度)以降、家計から投資信託への資金流入が拡大しています。
この変化を左右するのが、まず新NISAの長期的な影響です。20代から40代の若年層を中心に「貯蓄から投資へ」の流れが定着すれば、現預金比率はさらに低下する可能性があります。次に金利上昇による預金の魅力の変化で、定期預金へシフトする動きが出ています。さらに、物価上昇が続くと現預金の実質的な目減りが意識され、運用行動を変える要因となります。退職世代では、65歳超が保有金融資産の約6割を占め、運用と取り崩しのバランスが課題です。
銀行業への影響は二面的です。預金は調達金利が低く、依然として中核の資金調達源ですが、投資へのシフトが進めば、投信・保険の販売手数料や運用助言という役務収益の拡大機会にもなります。MUFG・SMFG・みずほFGは「資産運用立国」戦略のもとで資産運用ビジネスの強化を表明しており、メガ3と信託銀行が連携するモデルが今後の競争軸となります。
よくある質問 (FAQ)
日本の銀行業界の市場規模はどれくらいですか?
銀行の業態にはどんな種類がありますか?
メガバンク3グループの業績比較は?
マイナス金利解除以降、銀行の収益はどう変化しましたか?
銀行の健全性(自己資本比率)はどう測りますか?
家計金融資産の内訳は?
銀行業界の規制動向(金融行政方針)は?
キャッシュレス決済の普及度合いは?
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