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STRUCTURAL DETAIL · INDUSTRY STRUCTURE

クレジットカード業界の構造|発行・加盟店・決済ネットワークの仕組み【2026年版】

クレジットカードの取引は、カードを発行するイシュア、加盟店と契約するアクワイアラ、決済ネットワークを提供する国際ブランドの三層で成り立っています。この役割分担と、銀行系・流通系・信販系・ネット系・メーカー系という出自の異なる会社の広がり、そして1回の決済がどのように処理されるかという観点から、クレジットカード業界の仕組みを順に整理します。

クレジットカード業界の構造

発行・加盟店契約・決済ネットワークの三層と、出自別の5系統

クレジットカード業界は、発行(イシュア)・加盟店契約(アクワイアラ)・決済ネットワーク(国際ブランド)の三層で組み立てられています。日本ではイシュアとアクワイアラを同じ会社が兼ねることが多く、三井住友カードやJCBのように両方を手がける会社もあれば、楽天カードのように発行に集中する会社もあります。カードを発行する会社は出自によって5系統に分かれ、日本クレジット協会の調査対象だけで263社が確認できます。特定企業による寡占ではなく、多数の会社が領域ごとに競い合う構造です。

イシュア(発行会社)
役割
クレジットカードを発行し、会員の利用代金を立替えて請求する。会費・分割/リボ手数料が収益源
代表的なプレイヤー
楽天カード・イオンカード・三井住友カード・三菱UFJニコス など
アクワイアラ(加盟店契約会社)
役割
加盟店を開拓・契約し、売上を立替払いして加盟店手数料を受け取る。決済端末や処理基盤も担う
代表的なプレイヤー
三井住友カード・JCB・三菱UFJニコス など
国際ブランド(決済ネットワーク)
役割
世界共通で使える決済ネットワークとブランドを提供する。発行・加盟店契約は各社が担う場合が多い
代表的なプレイヤー
Visa・Mastercard・JCB・American Express・Diners Club

イシュア・アクワイアラ・国際ブランド — 三層の役割分担

クレジットカードの仕組みは、3つの役割の分担で成り立っています。イシュア(発行会社)は、会員にカードを発行し、利用代金を立替えて後から請求する会社です。会費や分割払い・リボ払いの手数料、キャッシングの金利が主な収益源で、楽天カードやイオンカードのように消費者と直接つながる会社がこれにあたります。

アクワイアラ(加盟店契約会社)は、店舗やECサイトなどの加盟店と契約し、会員の支払いを加盟店に立替払いして、加盟店から手数料(加盟店手数料)を受け取る会社です。加盟店の開拓や、決済端末・決済処理の基盤づくりも担います。三井住友カードのstera(加盟店向け決済プラットフォーム)などが代表例です。

国際ブランドは、Visa・Mastercardのように、世界中で使える決済ネットワークとブランドを提供する立場です。VisaやMastercardは、カードの発行や加盟店契約そのものは行わず、各社にネットワークを提供します。一方、日本発のJCBやAmerican Expressは、ブランドの提供に加えて発行・加盟店契約も自ら手がける度合いが大きい点が異なります。日本ではイシュアとアクワイアラを1社が兼ねることが多く、欧米と比べて役割の分離が緩やかなのが特徴です。

出自別の5系統 — 銀行系・流通系・信販系・ネット系・メーカー系

カードを発行する会社は、出自によって大きく5つの系統に分かれます。銀行系は、メガバンクや国際ブランドを母体とする会社で、三井住友カード(SMFG)・三菱UFJニコス(MUFG)・JCBなどが含まれます。発行から加盟店契約まで幅広く手がけ、取扱高でも大きな位置を占めます。流通系は、小売や交通の本業と連携する会社で、イオンカード(イオンフィナンシャルサービス)・セゾン/UCカード(クレディセゾン)・エポスカード(丸井グループ)・ビューカード(JR東日本)などがあり、自社の経済圏や会員基盤を強みとします。

信販系は、もともと割賦販売(ショッピングクレジット)を手がけてきた会社で、オリコ(オリエントコーポレーション)・ジャックス・アプラスなどがあり、カードとオートローン・ショッピングクレジットを併営します。ネット系は、楽天カード・PayPayカード・au PAYカード・メルカードなど、インターネットやスマートフォン、ポイント経済圏を起点に急伸している新しい系統です。メーカー系は、トヨタファイナンスのように製造業のグループに属し、自社・グループの顧客向けに展開する会社です。

これらの系統は、母体の事業との連携の仕方が異なり、それぞれの会員基盤や強みを生かして競い合っています。最大手の多くが銀行や事業会社の非上場子会社である点も、この業界の特徴です。系統をまたぐ提携や、ネット系の台頭による競争の活発化が、近年の構造変化の中心になっています。

国際ブランド — Visa・Mastercard・JCB・American Express・Diners Club

日本で広く使われる国際ブランドは、主に5種類です。Visaは世界最大の決済ネットワークで、日本でも多くのカードに採用されています。MastercardはVisaに次ぐ規模で、両者はブランドとネットワークの提供に専念し、発行や加盟店契約は各社が担います。このほか中国発の銀聯(ユニオンペイ)も、訪日客の利用などを背景に日本の加盟店で受け入れが広がっています。

JCBは日本発の唯一の国際ブランドで、ブランドの提供に加えて自らカードの発行・加盟店契約も手がけます。American Expressは、自社でプロパーカードを発行するほか、クレディセゾンなど提携会社によるライセンス発行も併用し、富裕層・ビジネス層に強みを持ちます。Diners Clubは、世界で最初の汎用カードを起源とする国際ブランドで、日本では三井住友トラストクラブが発行しています。VisaやMastercardが「ネットワークの提供役」に徹するのに対し、JCB・Amex・Dinersは発行まで踏み込む度合いが大きい、という違いがあります。

決済の流れと信用情報インフラ

1回の決済は、まず利用情報の流れから始まります。会員が加盟店でカードを使うと、決済情報は加盟店からアクワイアラ、国際ブランドのネットワークを経てイシュアに渡り、イシュアがその場で利用を承認します。続いてお金の流れが生じ、後日、イシュアが会員に代金を請求する一方、アクワイアラは加盟店手数料を差し引いて加盟店に立替分を支払います。このとき、アクワイアラがイシュアに支払うインターチェンジフィー(イシュアとアクワイアラの間でやり取りする手数料)が、加盟店手数料の原資の一部になります。

こうした決済を周辺で支えるのが、信用情報と決済処理のインフラです。CIC(指定信用情報機関)は、クレジットカードの契約内容や支払い状況を管理し、各社が過剰な与信を避けるための審査に利用します。金融機関やカード会社をつなぐ決済ネットワーク(CAFISなど)や、ECサイトなどの決済をまとめて仲介する決済代行(PSP=加盟店に代わって決済処理を引き受ける事業者)も、業界の土台を形づくっています。これらのインフラの高度化と、不正利用への対策が、業界共通の課題となっています。

主要論点

なぜ日本ではイシュアとアクワイアラを兼ねる会社が多いのか?

クレジットカードの仕組みでは、カードを発行するイシュアと、加盟店と契約するアクワイアラは本来別の役割です。欧米ではこの2つが分かれている場合が多いのに対し、日本では三井住友カードやJCB、三菱UFJニコスのように、同じ会社が両方を兼ねることが一般的です。

背景には、日本のクレジットカードが発展してきた経緯があります。日本では、カード会社が会員を集める(発行)と同時に、加盟店を開拓する(加盟店契約)ことで、自社のカードが使える場所を増やしてきました。会員と加盟店の両方を自社で抱えることで、決済を完結させやすく、不正対策やサービスの一貫性も保ちやすくなります。

一方、Visa・Mastercardといった国際ブランドが普及すると、あるブランドのカードを、別の会社が契約した加盟店でも使えるようになりました。これにより、発行に集中する会社(楽天カードなど)と、加盟店契約や決済処理に強い会社(三井住友カードなど)の役割分担も進んでいます。兼業と分業が併存しているのが、日本の現在の姿です。

なぜ最大手の多くが非上場の子会社なのか?

クレジットカードの取扱高で上位に立つ三井住友カード・楽天カード・JCB・三菱UFJニコスは、いずれも単独では上場していません。三井住友カードはSMFG、三菱UFJニコスはMUFG、楽天カードは楽天グループの子会社で、JCBは複数の金融機関などが株主の非上場会社です。

これは、クレジットカード事業が、銀行や流通・通信といった本業を持つ企業グループの中で育ってきたためです。銀行系は決済を金融サービスの一環として、流通系は自社の小売・交通の集客や囲い込みの手段として、ネット系は経済圏の中核としてカード事業を展開しています。カード事業は親会社の戦略と一体で運営されるため、子会社として親会社の連結に含まれる形が多くなります。

そのため、業界の規模や各社の実績を見るときは、上場している持株会社(SMFG・楽天グループなど)の開示の中で、カード事業の取扱高や会員数を確認する必要があります。上場しているのは、クレディセゾン・イオンフィナンシャルサービス・オリコ・ジャックスといった、カードやファイナンスを主力とする会社が中心です。

国際ブランドと発行会社は、どう役割を分担しているのか?

クレジットカードには、必ずVisaやMastercard、JCBなどの国際ブランドのマークが付いています。これは、そのカードがどの決済ネットワークで使えるかを示すものです。国際ブランドと、カードを発行する会社(イシュア)は、役割が異なります。

VisaとMastercardは、世界共通の決済ネットワークとブランドを提供する立場で、カードの発行や加盟店契約は行いません。たとえば「楽天カード(Visa)」は、楽天カードが発行し、Visaのネットワークで決済される、という組み合わせです。一つの発行会社が、Visa・Mastercard・JCBなど複数のブランドからカードを選べるようにしているのは、このためです。

一方、JCBやAmerican Expressは、ブランドの提供に加えて、自社でカードの発行や加盟店契約も手がけます。日本発のJCBは、国内に独自の加盟店網を持ち、海外でもブランドを広げています。国際ブランドが「どこで使えるか」を、発行会社が「誰に発行し、どう請求するか」を担う、という分業が、クレジットカードの世界共通の仕組みになっています。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、ネット系カードの台頭が業界構造の変化を牽引するとみられます。楽天カードやPayPayカードなど、ポイント経済圏やスマートフォンを起点とする会社が会員と利用を伸ばし、銀行系・流通系の既存大手との競争を強めます。発行や決済の利便性を高めるナンバーレスカードやデジタルカードの広がりも続きます。

中期3-5年

中期では、決済インフラの高度化と、系統をまたぐ提携が進む見通しです。タッチ決済や本人認証の標準化、加盟店向け決済プラットフォームの共通化が、アクワイアリングの効率を高めます。ポイント経済圏を軸とした囲い込みが強まる一方、ブランドや決済代行を介した会社間の連携も広がり、競争と協調が併存します。

長期

長期では、コード決済やそのほかのキャッシュレス手段との競争・補完の中で、クレジットカードの役割が問われます。クレジットカードは、後払いと与信という機能で他の決済手段と差別化されますが、決済インフラとしては相互に連携する場面も増えます。発行・加盟店契約・決済ネットワークという三層の枠組みは維持されつつ、各層を担うプレイヤーの組み合わせが変化していくと見込まれます。

よくある質問

イシュアとアクワイアラの違いは何ですか?
イシュア(発行会社)は、クレジットカードを発行して会員に利用代金を請求する会社で、楽天カードやイオンカードなどが該当します。アクワイアラ(加盟店契約会社)は、加盟店と契約して売上を立替払いし、加盟店手数料を受け取る会社で、三井住友カードやJCBなどが該当します。日本では、1つの会社がイシュアとアクワイアラを兼ねることが多いのが特徴です。
クレジットカード会社にはどんな種類がありますか?
出自によって、銀行系(三井住友カード・三菱UFJニコス・JCB)・流通系(イオン・セゾン・エポス)・信販系(オリコ・ジャックス)・ネット系(楽天・PayPay)・メーカー系(トヨタファイナンス)の5系統に大きく分かれます。日本クレジット協会の調査対象だけで263社が存在し、多数の会社が競い合っています。
国際ブランドの役割は何ですか?
Visa・Mastercard・JCB・American Express・Diners Clubといった国際ブランドは、世界共通で使える決済ネットワークとブランドを提供します。VisaとMastercardは発行や加盟店契約を行わずネットワーク提供に専念し、JCB・Amex・Dinersはブランド提供に加えて発行や加盟店契約も自ら手がけます。
なぜ大手カード会社の多くは上場していないのですか?
取扱高で上位の三井住友カード・楽天カード・JCB・三菱UFJニコスは、いずれも単独では上場しておらず、SMFG・楽天グループ・MUFGなどの子会社や、金融機関が株主の非上場会社です。カード事業が銀行・流通・通信などの本業を持つ企業グループの中で育ち、親会社の戦略と一体で運営されてきたためです。上場しているのは、クレディセゾン・イオンフィナンシャルサービス・オリコ・ジャックスなどが中心です。
クレジットカード会社は何社ありますか?
日本クレジット協会のクレジットカード契約数調査の対象だけで、2025年時点で263社が確認できます。これは契約数を報告している会社の数で、銀行系・流通系・信販系・ネット系・メーカー系の各系統にわたります。特定の企業が業界全体を占める寡占ではなく、多数の会社が領域ごとに競い合う構造です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    一般社団法人 日本クレジット協会「クレジットの基礎知識」(クレジットの契約関係・割賦販売法による分類)
  2. 2.
    一般社団法人 日本クレジット協会「クレジットカード契約数」(CIC、各年12月末)
  3. 3.
    各社 会社情報・IR(系統別の代表プレイヤー)
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