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TOPIC DETAIL · OVERSEAS EXPANSION

大手生保の海外展開|北米・豪州のM&Aと海外事業の収益寄与【2026年版】

国内市場が成熟するなか、大手生命保険会社は成長を海外に求めています。第一生命ホールディングスは米国のプロテクティブ、住友生命は米国のシメトラ、明治安田生命は米国のスタンコープ、日本生命はレゾリューション・ライフを傘下に収め、北米・豪州・アジアへ展開しています。海外事業はすでに各社の収益の柱になりつつあり、第一生命ホールディングスの海外事業の修正利益は1,146億円に達します。なぜ海外なのか、各社の買収はどう違うのか、収益への寄与を整理します。

なぜ生命保険会社は海外に出るのか

国内市場の長期的な縮小を見越した成長確保

最大の理由は、国内市場の長期的な縮小です。日本は人口減少と少子高齢化が進み、新規契約の母数となる現役世代が細っていきます。世帯加入率はすでに9割と高く、国内で新規に獲得できる余地は限られています。体力のある大手ほど、国内の構造的な縮小を見越して、成長する海外市場で足場を築こうとしています。

成長市場と、金利水準の高い北米

行き先の中心は北米(米国)です。米国は世界最大の保険市場で、日本より金利水準が高く、ドル建ての保険負債を高い利回りで運用しやすいという利点があります。第一生命のプロテクティブ、住友生命のシメトラ、明治安田生命のスタンコープが、いずれも米国の会社であるのはこのためです。これに加えて、第一生命は豪州(TAL)、住友生命はシンガポール(シングライフ)、日本生命はアジアの資産運用など、地域の分散も進めています。

資本効率と経済価値ベース規制への備え

海外展開は、資本効率の面からも進められています。成長の鈍い国内に資本を置き続けるより、成長する海外に配分するほうが、企業価値を高めやすいという考え方です。2026年3月末から始まる経済価値ベースのソルベンシー規制のもとでは、リスクに見合った資本配分が一段と重視されるため、収益性の高い海外事業の位置づけはさらに高まります。海外事業の価値は、企業価値の目安となるEV(エンベディッド・バリュー)にも反映されます。

大手各社の海外M&Aの違い

同じ「海外展開」でも、買収先・地域・進め方は各社で異なる
第一生命ホールディングス — 米プロテクティブと豪TAL、海外利益の柱

第一生命ホールディングスは、大手のなかでも海外展開の先頭を走ってきました。米国のプロテクティブ生命(PLC、100%子会社)を中核に、豪州のTALなどを傘下に持ち、北米・豪州を主戦場としています。2010年に株式会社へ転換し上場した機動力を生かして、海外M&Aを積極的に進めてきた経緯があります。

海外事業はすでに利益の柱です。海外事業の修正利益は1,146億円(前年比+30.0%)で、円安も追い風に堅調に推移しています。企業価値の目安となるグループEVは約8.2兆円規模に達し、その相当部分を海外事業が支えています。

住友生命 — 米シメトラとシンガポールのシングライフ

住友生命は、米国のシメトラ・ファイナンシャルを中核に海外を展開しています。シメトラは個人年金などに強みを持ち、円安も寄与して業績を伸ばしています。さらに、2024年3月にはシンガポールのシングライフを子会社化し、成長著しい東南アジアにも足場を広げました。

海外事業の規模は着実に拡大しています。海外事業の新契約の年換算保険料は2,918億円(前年比+48.8%)、保有契約の年換算保険料は1兆3,238億円(同+21.9%)で、米国とアジアの二本立てで海外事業を伸ばす構図です。

明治安田生命 — 米スタンコープを軸に

明治安田生命は、2016年に米国のスタンコープ・ファイナンシャル・グループを子会社化し、北米に足場を築きました。スタンコープは団体保険や就業不能保険などに強みを持つ会社です。明治安田生命は相互会社で、国内の安定した収益基盤に海外事業を加える構図をとっています。

決算開示では海外単独の業績を詳しく数値で示していませんが、国内で高い利益水準(グループ基礎利益)を確保しつつ、米国事業を成長の補完として位置づけています。健康増進や地域社会との関わりを重視する国内戦略と、北米での収益確保を組み合わせています。

日本生命 — レゾリューション・ライフの完全子会社化

業界首位の日本生命は、近年の海外展開で大きな一手を打ちました。保険契約の管理・運営に特化したレゾリューション・ライフを、2024年から2025年にかけて完全子会社化したのです。レゾリューション・ライフは、他社が抱える保有契約を引き受けて効率的に運営する事業を世界で展開しており、日本生命はこれを通じて海外の保険事業に本格参入しました。

日本生命は相互会社で、これまで国内の営業基盤を軸としてきましたが、海外の保険事業と資産運用(インドの資産運用会社など)を成長の柱に加えています。レゾリューション・ライフの完全子会社化は、国内市場の成熟を見据えた、業界首位による海外シフトの象徴的な動きといえます。

海外は収益にどう寄与しているか

海外事業は利益の柱になりつつある

海外事業は、すでに各社の収益に寄与し始めています。第一生命ホールディングスの海外事業の修正利益は1,146億円(前年比+30.0%)で、グループの利益の重要な一角を占めます。住友生命の海外事業も、保有契約の年換算保険料が1兆3,238億円(同+21.9%)と伸びています。近年は円安が円換算の海外収益を押し上げる効果もありました。

企業価値の目安となるEV(エンベディッド・バリュー)にも、海外事業の価値が反映されます。EVは、現時点の純資産にあたる部分と、保有する契約が将来生み出すと見込まれる利益の価値を合わせた指標で、第一生命ホールディングスのグループEVは約8.2兆円規模です。海外で獲得した契約が、この企業価値を押し上げています。

横断比較には限界がある

ただし、各社の海外事業を同じ基準で比べるのは簡単ではありません。買収の対価(取得額)や海外単独の業績は、各社で開示の粒度が異なり、横並びの比較は限定的です。海外事業の年換算保険料を開示する会社もあれば、海外単独の数値を詳しく示さない会社もあります。

また、EVを開示するのは一部の会社で、その算定方法も会社により異なります(本ページで参照したEVは第一生命ホールディングスのグループEV、かんぽ生命のEVは約3.9兆円ですが、かんぽ生命は郵便局網を基盤とする国内中心の会社です)。各社の海外戦略は、数値の比較よりも、どの地域でどの会社を買収し、どう統合してきたかという進め方の違いで捉えるのが実態に近いといえます。

主要論点

なぜ大手生保はそろって海外、とくに北米に進出するのか?

国内市場の長期的な縮小が最大の動機です。人口減少と少子高齢化で新規契約の母数が細り、世帯加入率もすでに9割と高いため、国内で成長を続けるのは難しくなっています。体力のある大手ほど、成長する海外に活路を求めます。

行き先が北米(米国)に集中するのには理由があります。米国は世界最大の保険市場で、日本より金利水準が高く、ドル建ての保険負債を高い利回りで運用しやすいためです。第一生命のプロテクティブ、住友生命のシメトラ、明治安田生命のスタンコープが、いずれも米国の会社であるのは偶然ではありません。これに豪州(第一生命のTAL)やアジア(住友生命のシンガポール、日本生命のインド資産運用)を組み合わせ、地域を分散しています。

つまり海外展開は、当面の利益というより、国内の構造的縮小を見越した中長期の成長確保という性格が強い投資です。金利水準と市場規模の大きい北米が、その中心的な行き先になっています。

海外事業は生保の収益にどれだけ効いているのか?

海外事業は、すでに各社の収益の柱になりつつあります。第一生命ホールディングスの海外事業の修正利益は1,146億円(前年比+30.0%)で、グループ利益の重要な一角を占めます。住友生命の海外事業も、保有契約の年換算保険料が1兆3,238億円(同+21.9%)と拡大しています。

企業価値の面でも、海外で獲得した契約はEV(エンベディッド・バリュー)を押し上げます。EVは、純資産と、保有契約が将来生み出す利益の価値を合わせた指標で、第一生命ホールディングスのグループEVは約8.2兆円規模です。近年は円安が円換算の海外収益を膨らませる効果もありました。

ただし注意も必要です。海外事業は為替変動の影響を大きく受け、円高に振れれば円換算の収益は縮みます。また、買収した会社の統合や現地の規制対応にはリスクが伴います。海外事業の伸びは、為替の追い風と切り分けて、本業の実力として持続するかを見る必要があります。

相互会社と上場会社で、海外展開の進め方は違うのか?

組織形態は、海外M&Aの機動力に一定の影響を与えます。上場会社である第一生命ホールディングスは、株式や資本市場を活用して資金を調達でき、プロテクティブやTALの買収など、海外M&Aを早くから積極的に進めてきました。資本市場へのアクセスは、大型買収を機動的に行ううえで利点になります。

一方、相互会社である日本生命・住友生命・明治安田生命も、海外展開で引けを取りません。日本生命はレゾリューション・ライフを完全子会社化し、住友生命はシメトラとシングライフ、明治安田生命はスタンコープを傘下に収めています。相互会社は内部留保や借入などで買収資金をまかなっており、組織形態の違いが海外展開の積極性を決定づけるわけではありません。

むしろ共通しているのは、国内市場の成熟という同じ課題に直面し、北米を中心に成長を補おうとしている点です。組織形態を問わず、海外事業をどう収益の柱に育て、為替や統合のリスクをどう管理するかが、各社に共通する経営テーマになっています。

よくある質問

大手生命保険会社はどこの海外企業を買収していますか?
第一生命ホールディングスは米国のプロテクティブ生命と豪州のTAL、住友生命は米国のシメトラ・ファイナンシャルとシンガポールのシングライフ、明治安田生命は米国のスタンコープ・ファイナンシャル・グループを傘下に持ちます。日本生命は、保険契約の管理に特化したレゾリューション・ライフを2024年から2025年にかけて完全子会社化しました。北米を主戦場に、豪州・アジアを組み合わせる構図です。
なぜ生命保険会社は海外に進出するのですか?
国内市場が人口減少で長期的に縮小すると見込まれ、世帯加入率もすでに9割と高く、国内で成長を続けるのが難しいためです。世界最大の保険市場で金利水準の高い北米を中心に、成長を求めています。2026年3月末からの経済価値ベースのソルベンシー規制のもとで資本効率が重視されることも、収益性の高い海外事業の位置づけを高めています。
海外事業は生保の収益にどれくらい寄与していますか?
すでに利益の柱になりつつあります。第一生命ホールディングスの海外事業の修正利益は1,146億円(前年比+30.0%)、住友生命の海外事業の保有契約の年換算保険料は1兆3,238億円(同+21.9%)です。企業価値の目安となるEVにも海外事業の価値が反映され、第一生命ホールディングスのグループEVは約8.2兆円規模です。ただし為替変動の影響を大きく受ける点には注意が必要です。
日本生命のレゾリューション・ライフ子会社化とは何ですか?
業界首位の日本生命が、保険契約の管理・運営に特化したレゾリューション・ライフを、2024年から2025年にかけて完全子会社化したものです。レゾリューション・ライフは、他社が抱える保有契約を引き受けて効率的に運営する事業を世界で展開しており、日本生命はこれを通じて海外の保険事業に本格参入しました。国内市場の成熟を見据えた、業界首位による海外シフトの象徴的な動きです。
各社の海外事業の規模を比較できますか?
横断的な比較は限定的です。買収の対価や海外単独の業績は、各社で開示の粒度が異なり、同じ基準で並べるのが難しいのが実情です。本ページでは、開示されている海外事業の収益(第一生命ホールディングスの海外修正利益、住友生命の海外年換算保険料など)とEVを参照しつつ、各社の戦略はどの地域でどの会社を買収したかという進め方の違いで捉えています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    大手各社の2025年3月期 決算開示(海外事業)
  2. 2.
    各社IR・適時開示(海外M&Aの地域・形態)
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