LIFE INSURANCE金融

生命保険業界の市場規模・主要企業・動向

生命保険は収入保険料36兆8,037億円規模の金融業で、相互会社の大手3社を中心に、金利上昇と経済価値ベースの新ソルベンシー規制が経営環境を変えつつあります。

生命保険業とは、契約者から保険料を集め、死亡・医療・老後などのリスクに備える保障を提供する金融業です。2024年度の収入保険料は36兆8,037億円、業界の総資産は418兆円で、コロナ禍の落ち込みから回復したのち微減しました。業界首位の日本生命をはじめ大手3社が非上場の相互会社(契約者が社員=構成員となり、株主や上場を持たない組織形態)である点が特徴で、第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングスの上場勢、外資系、ネット生保、共済が並存します。死亡保障から医療・がん(第三分野)への重心シフト、金利上昇による基礎利益の改善、2026年に始まる経済価値ベースのソルベンシー規制が共通の論点です。本ページでは、生命保険業界を、市場規模、業態構造、大手プレイヤー、募集チャネル、規制・資産運用の5軸で整理します。

最終更新

業界サマリ

業界概要

生命保険業とは、契約者から保険料を集め、死亡・医療・老後などに備える保障を提供する金融業です。日本では会社の組織形態に特徴があり、業界首位の日本生命をはじめ明治安田生命・住友生命の大手3社が、契約者を社員(構成員)とする相互会社として非上場で運営されています。これに、第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングスの上場グループ、外資系生保、ネット生保、共済が加わり、2024年度の収入保険料は業界全体で36兆8,037億円の規模です。

  • 生命保険業界の収入保険料は2024年度に36兆8,037億円で、コロナ禍の落ち込みから回復したのち微減しました。業界の総資産は418兆円規模で、その大半を有価証券で運用する国内有数の機関投資家でもあります。
  • 大手は相互会社3社が中核です。業界首位の日本生命、明治安田生命、住友生命が非上場の相互会社で、第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングスが上場し、外資系・ネット生保・共済が周辺を形づくっています。
  • 商品面では、死亡保障から医療・がんなどの第三分野へ重心が移っています。個人保険の保有契約件数は17年連続で増える一方、保有契約高(死亡保障の金額)は減少し、1件あたりの保障額が小さい医療系商品が増えています。
基礎データ: 生命保険協会「生命保険の動向」/ 各社 決算開示 / 生命保険文化センター 全国実態調査 / 金融庁 保険モニタリングレポート

市場動向

生命保険業界の市場規模は、2024年度の収入保険料で36兆8,037億円です。コロナ禍の2020年度に29兆1,978億円まで落ち込んだ後、2023年度の37兆5,217億円まで回復し、2024年度は前年比98.1%と微減しました。契約のストックでは、個人保険の保有契約件数が17年連続で増加する一方、保有契約高は減少しており、保障内容の質的な変化が進んでいます。

  • 収入保険料は2024年度に36兆8,037億円(前年比98.1%)です。2020年度の29兆1,978億円を底に2023年度の37兆5,217億円まで回復した後の微減で、保険種類別では個人保険28兆3,219億円が中心です。
  • 個人保険の保有契約件数は1億9,530万件で17年連続増加です。一方、保有契約高は778兆9,902億円へ減少し、保有契約の年換算保険料28.2兆円のうち第三分野が7.3兆円を占めています。
  • 業界の総資産は418兆5,222億円(前年比97.6%)で、有価証券347兆1,507億円が中心です。国債163兆7,005億円・外国証券105兆2,761億円を主軸に、長期の保険負債に対応した運用が行われています。
基礎データ: 生命保険協会「生命保険の動向」2025年版 (FY2018-2024、業界全社合計)

競争環境

日本の生命保険業は、相互会社の大手3社(日本生命・明治安田生命・住友生命)を中心に、上場グループ(第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングス)・外資系・ネット生保・共済が並存します。業界首位は相互会社の日本生命で、保険料等収入は7.9兆円規模です。なお、各社が開示する保険料等収入は再保険収入なども含む会計上の収入で、業界全体の集計値である収入保険料(36兆8,037億円)とは集計範囲が異なるため、各社の値を足し合わせて業界合計と比べることはできません。相互会社は非上場のため、各社は保険業法に基づくディスクロージャー誌で経営内容を開示しており、横並びの比較は保険料等収入・総資産・基礎利益・ソルベンシー・マージン比率・EV(エンベディッド・バリュー)といった開示指標で行います。共通の論点は、金利上昇下の基礎利益改善、第三分野へのシフト、2026年の経済価値ベース規制への対応です。

  • 相互会社の大手3社は、日本生命が保険料等収入7.9兆円・総資産96.3兆円で業界首位、明治安田生命・住友生命がこれに続きます。いずれも契約者を社員とする非上場の相互会社で、グループ基礎利益は金利上昇を背景に改善しています。
  • 上場グループでは、第一生命ホールディングス(2026年4月に第一ライフグループへ商号変更)が保険料等収入6.8兆円・グループ修正利益4,395億円で海外事業も大きく、かんぽ生命が郵便局網、T&Dホールディングスが太陽生命・大同生命を擁します。
  • 外資系・ネット生保・共済では、アフラックやメットライフなどの外資が医療・がんや外貨建てで存在感を持ち、ライフネット生命などのネット生保、JA共済や県民共済などの共済が、それぞれの強みで生保業界の周辺を形づくっています。
基礎データ: 各社2025年3月期 決算開示 (ディスクロージャー誌/決算短信) / 生命保険協会

市場規模推移

2018-2024 · 収入保険料
市場規模の読み解き
市場規模と契約動向の推移

生命保険業界の規模を示す収入保険料は、2024年度に36兆8,037億円(前年比98.1%)となり、4年ぶりに減少しました。コロナ禍の2020年度に29兆1,978億円まで落ち込んだ後、2023年度の37兆5,217億円まで回復し、2024年度はその反動で微減した形です。

保険種類別の収入保険料は、個人保険が28兆3,219億円と中心で、個人年金保険4兆6,133億円、団体年金保険2兆3,963億円、団体保険1兆1,628億円が続きます。契約のストックを見ると、個人保険の保有契約件数は1億9,530万件で17年連続の増加ですが、保有契約高(死亡保障の金額)は778兆円台へ減少しており、件数は増えても1件あたりの保障額は小さくなる傾向です。

⇒市場規模・主要指標を詳しく見る

金利環境と収益構造

生命保険会社の収益の柱は、保険料収入と資産運用です。長く続いた低金利のもとで、過去に高い予定利率(保険料の計算で見込む運用利回り)を約束した契約が運用利回りを上回る逆ざやが経営の重しでしたが、国内金利の上昇局面でこの負担が和らいでいます。

本業のもうけを示す基礎利益は各社で改善しており、業界首位の日本生命はグループ基礎利益が初めて1兆円を超えました。一方で、外貨建て保険の販売や外国証券での運用は為替変動の影響を受けやすく、金利上昇は保有する債券の評価にも影響します。保有契約の年換算保険料(契約期間中に平均して支払われると仮定した1年分の保険料)は28.2兆円(うち医療・がんなどの第三分野が7.3兆円)で、保障内容の重心が第三分野へ移っています。

⇒大手生保の業績比較を見る

資産運用と機関投資家としての側面

生命保険会社は、契約者から預かった保険料を長期で運用する国内有数の機関投資家です。2024年度末の業界の総資産は418兆5,222億円(前年比97.6%)で、2年ぶりに減少しました。

資産の大半は有価証券で、その残高は347兆1,507億円にのぼります。内訳は国債が163兆7,005億円と最も多く、外国証券105兆2,761億円、社債24兆7,718億円、株式29兆8,928億円が続きます。保険負債が長期にわたるため、国債を中心とした債券で安定運用しつつ、利回りを求めて外国証券にも配分する構造です。金利上昇は新規の運用利回りを高める一方、保有債券の評価には逆風となるため、資産と負債のバランス管理(ALM)が経営課題となっています。

⇒資産運用の構成を詳しく見る

主要トピック

市場データ

業界構造

主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要
生命保険業界の構造
主要プレイヤー (2026年6月時点)
01
規制当局・業界団体・契約者保護
上流
規制当局・国際機構 (4 機関)
金融庁
保険業免許 + 検査・監督 + 保険会社向け監督指針 + 保険モニタリングレポート
財務省
保険業法の企画立案 + 国際協調 (IAIS)
生命保険契約者保護機構
保険会社破綻時の契約者保護 (補償対象契約の引受け)
IAIS (保険監督者国際機構)
保険資本基準 (ICS) — 経済価値ベース規制 (ESR) の国際枠組み
業界団体・調査機関 (3 団体)
生命保険協会 (生保協)
生命保険の動向・生命保険事業概況 (会員会社の収入保険料・保有契約・損益)
生命保険文化センター (JILI)
全国実態調査 (世帯加入率・払込保険料・加入チャネル、3年ごと)
日本アクチュアリー会
標準生命表 (予定死亡率の基礎) + 保険数理の専門人材
02
生命保険会社・共済
中流
伝統的大手 — 相互会社 (非上場)
日本生命保険
保険料等収入7.9兆円 (業界首位)
相互会社。総資産96.3兆円・グループ基礎利益1兆円超、海外レゾリューションライフ
明治安田生命保険
保険料等収入2.8兆円 (単体)
相互会社。総資産46.1兆円、海外スタンコープ・ファイナンシャル
住友生命保険
保険料等収入3.4兆円
相互会社。総資産48.9兆円、健康増進型Vitality・海外シメトラ
外資系生保 (主要、ディスクロージャー誌で開示)
アフラック生命保険
がん保険・医療保険 (第三分野) で上位、米Aflac系
メットライフ生命保険
外貨建て・変額・医療、米MetLife系
アクサ生命 / プルデンシャル・ジブラルタ生命 / マニュライフ生命 等
外資系の多様な業態 (営業職員・代理店・外貨建て)
ネット生保 (株式会社・上場)
ライフネット生命保険
インターネット完結型、20〜40代の新規契約が中心
その他ネット生保
対面コストを抑えた割安な保険料を訴求
共済・少額短期保険 (生保業法外/周辺)
JA共済連 (生命総合共済)
農業協同組合法に基づく最大級の共済
こくみん共済 coop (全労済)
消費生活協同組合法に基づく生命共済
全国生協連 (県民共済)
都道府県民共済、割安・シンプルな保障 (掛金6,568億円・2024年度)
少額短期保険 (少短)
保険金額・期間を限定、新規参入が活発 (121社・保有契約1,197万件、2024年度中間期。家財・ペット中心で生命系は一部)
03
募集チャネル・資産運用・再保険
下流
募集チャネル (直近加入 民保ベース)
営業職員
56.7%
生命保険会社の営業職員 (家庭・職場)、伝統的大手の基盤
保険代理店
15.7%
保険ショップ等の来店型窓口 + 代理店の営業職員
通信販売
7.8%
インターネット・テレビ・新聞など (ネット生保が主力)
銀行・証券窓販
4.7%
銀行・証券会社を通じた販売 (年金保険・終身保険・外貨建て)
郵便局・勤め先 等
郵便局窓口 (かんぽ)・勤め先や労働組合を通じた加入
資産運用 (総資産418兆円)
国債・公社債
国債163.7兆円
長期の保険負債に対応した中心的な運用先
外国証券
105.3兆円
利回りを求めた配分、為替ヘッジコストが収益を左右
株式
29.9兆円
政策保有の縮減と運用目的の保有
貸付金・不動産
企業向け貸付・不動産投資 (運用の補完)
運用子会社
ニッセイアセット・アセットマネジメントOne 等のグループ運用会社
再保険・周辺サービス
再保険会社
リスクの一部を移転 (海外大手再保険会社が中心)
保険ショップ・乗合代理店
複数社の商品を比較販売 (ほけんの窓口 等)
インシュアテック
健康増進型保険・査定の自動化・デジタル募集
04
需要側 (契約者)
需要側
個人 (世帯加入率 2人以上89.2%)
世帯の生命保険加入
加入率89.2%
2人以上世帯。単身世帯は45.6%、世帯の年間払込保険料は平均35.3万円
死亡保障ニーズ
平均1,936万円
世帯の普通死亡保険金額。世帯主の万一に備える保障
医療・がん保障ニーズ
医療保険95.1%
第三分野、入院・手術・がん・介護への備え
老後・資産形成ニーズ
個人年金・外貨建て・変額保険 (貯蓄性)
法人・団体
法人 (経営者・事業保障)
経営者保険・事業承継、大同生命などが中小企業向けに強み
団体保険・団体年金
企業の従業員向け団体定期保険・企業年金 (団体年金保険2.4兆円)
団体信用生命保険 (団信)
住宅ローン等に付帯、保有契約高で大きな比重
業界構造の読み解き
組織形態 — 相互会社と株式会社

生命保険業界の特徴は、会社の組織形態にあります。業界首位の日本生命をはじめ、明治安田生命・住友生命の大手3社は、契約者を社員(構成員)とする相互会社で、株主が存在せず上場もしていません。これに対し、第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングス・ライフネット生命は株式会社として上場しています。

どちらの形態でも、保険業法第111条により事業年度ごとのディスクロージャー誌の作成が義務づけられ、経営内容や財務状況が開示されます。相互会社は連結ベースの上場財務を公表しないため、大手の横並び比較は、上場・非上場を問わず各社が開示する保険料等収入・総資産・基礎利益・ソルベンシー・マージン比率・EVといった指標で行うのが実務です。

⇒業態構造を詳しく見る

業態 — 伝統的大手・かんぽ・外資・ネット生保・共済

生命保険会社は、組織形態に加えて成り立ちでも分かれます。伝統的大手は日本生命・第一生命・明治安田生命・住友生命で、営業職員チャネルを基盤に幅広い商品を扱います。かんぽ生命は日本郵政グループで郵便局網を持ち、保有契約件数では大きな存在です。

外資系ではアフラックやメットライフが医療・がんや外貨建てで強みを持ち、ネット生保のライフネット生命などはインターネット完結型で若年層を取り込んでいます。さらに、保険業法ではなく協同組合の法律に基づく共済(JA共済・こくみん共済coop・県民共済)や、保険金額・期間を限定した少額短期保険が、生保の周辺で相互扶助やニッチ需要を担っています。

⇒大手生保6社の比較を見る

規制と健全性 — 金融庁とソルベンシー

生命保険業は、金融庁の免許・監督のもとで運営されます。健全性は、通常の予測を超えるリスクへの支払能力を示すソルベンシー・マージン比率で測られ、200%以上が一つの目安です。万一の経営破綻に備え、生命保険契約者保護機構が契約者を保護する仕組みも整っています。

大きな転換点が、2026年3月末から適用される経済価値ベースのソルベンシー規制(ESR)です。資産と負債を時価で評価する国際基準(IAISのICS)に対応するもので、金利変動が自己資本に与える影響をより正確に捉えます。これにより、生保各社は資産と負債の金利感応度を合わせる運用(ALM)や、リスクに見合った資本配分を一段と重視することになります。

⇒ソルベンシー・経済価値ベース規制を見る

業界の3大論点

01

なぜ大手生命保険会社は上場せず相互会社のままなのか?

業界首位の日本生命をはじめ、明治安田生命、住友生命の大手3社は、株式会社ではなく相互会社という組織形態をとっています。相互会社とは、保険契約者がそのまま会社の社員(構成員)となる形態で、株主が存在せず、証券取引所にも上場していません。

相互会社が選ばれてきた背景には、生命保険事業の長期性があります。生命保険の契約は数十年に及ぶため、四半期ごとの株価や短期的な株主還元の要求に左右されず、契約者の利益を長期で優先しやすいという考え方です。利益(剰余)は配当として契約者に還元される仕組みで、株主への配当とは性格が異なります。一方で、株式会社には資本市場から機動的に資金を調達できる利点があり、海外M&Aを積極的に進める第一生命は2010年に相互会社から株式会社へ転換し、持株会社の第一生命ホールディングス(2026年4月から第一ライフグループ)として上場しています。

この組織形態の違いは、業界の見え方にも影響します。相互会社は連結ベースの上場財務を公表しないため、各社は保険業法に基づくディスクロージャー誌で経営内容を開示します。大手の横並び比較は、上場・非上場を問わず各社が開示する保険料等収入・総資産・基礎利益・ソルベンシー・マージン比率・EVといった指標で行うのが実務的です。中期的には、海外展開や資本効率を重視する流れのなかで、相互会社のままで成長資金をどう確保するかが論点となります。

02

金利上昇は生命保険会社の収益にどう効くのか?

長く続いた超低金利は、生命保険会社にとって重い負担でした。過去に高い予定利率(保険料の計算で見込む運用利回り)を約束した契約では、約束した利回りを実際の運用利回りが下回る逆ざやが生じ、収益を圧迫してきたためです。国内金利が上昇局面に入ったことで、この構図が変わりつつあります。

金利上昇の効果は、まず新規の運用利回りの改善に表れます。生保は保険料を長期の国債などで運用するため、金利が上がれば新たに買う債券の利回りが高まり、本業のもうけを示す基礎利益が改善します。実際に、日本生命のグループ基礎利益は初めて1兆円を超え、他の大手各社でも基礎利益が伸びました。また、予定利率を引き上げる余地が生まれ、貯蓄性商品の魅力を高める動きにもつながります。

ただし、金利上昇は良い面ばかりではありません。保有している債券の時価は金利が上がると下落するため、評価上は逆風となります。さらに、為替変動の影響を受ける外貨建て保険や外国証券での運用では、ヘッジ(為替変動を抑える取引)のコストが収益を左右します。生保各社は、長期の保険負債と運用資産の金利感応度を合わせる資産負債管理(ALM)を高度化し、金利環境の変化に備えています。2026年に始まる経済価値ベースのソルベンシー規制は、こうした資産と負債の時価での対応を一段と促すものです。

03

2026年の経済価値ベースのソルベンシー規制(ESR)は生保経営に何を迫るのか?

経済価値ベースのソルベンシー規制(ESR)は、保険会社の支払余力を、資産と負債を時価(経済価値)で評価して測る新しい健全性規制です。金融庁の告示により、2026年3月末から保険会社に適用されます。保険監督者の国際機構であるIAISが定める保険資本基準(ICS)に対応するもので、規制(第1の柱)・内部管理と監督上の検証(第2の柱)・情報開示(第3の柱)の3本柱で構成されます。

従来のソルベンシー・マージン比率は、資産を取得原価ベースで評価する部分が残り、金利変動が負債に与える影響を十分に映しきれないという課題がありました。ESRでは、長期の保険負債を将来キャッシュフローの現在価値で評価するため、金利変動が自己資本に与える影響がより明確になります。これにより、各社は資産と負債の金利感応度を合わせる運用(ALM)や、リスクに見合った資本配分を、これまで以上に重視することになります。

経営への影響は多面的です。金利リスクや株式リスクを抑える運用へのシフト、商品設計の見直し、再保険の活用などが進む可能性があります。すでに住友生命など一部の会社は経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)を自主的に開示しており、投資家や契約者との対話の材料となっています。中期的には、ESRを軸にした資本効率の改善が、配当・自己株式取得などの株主還元(上場会社の場合)や、相互会社における契約者配当の方針にも影響していく見通しです。

よくある質問 (FAQ)

生命保険業界の市場規模はどれくらいですか?
2024年度の収入保険料は業界全体で36兆8,037億円です。コロナ禍の2020年度に29兆1,978億円まで落ち込んだ後、2023年度の37兆5,217億円まで回復し、2024年度は前年比98.1%と4年ぶりに減少しました。保険種類別では個人保険が28兆3,219億円と中心で、個人年金保険4兆6,133億円、団体年金保険2兆3,963億円、団体保険1兆1,628億円が続きます。業界の総資産は418兆5,222億円で、その大半を有価証券で運用しています。
相互会社と株式会社の生命保険会社は何が違いますか?
相互会社は保険契約者がそのまま会社の社員(構成員)となる組織形態で、株主が存在せず上場もしていません。利益(剰余)は契約者への配当として還元されます。業界首位の日本生命をはじめ、明治安田生命、住友生命が相互会社です。一方、株式会社は株主が出資する形態で、上場すれば証券取引所で株式が売買されます。第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングス・ライフネット生命が上場会社です。相互会社は連結の上場財務を公表しないため、各社は保険業法に基づくディスクロージャー誌で経営内容を開示しています。
大手生命保険会社の順位・規模は?
保険料等収入(各社の決算開示ベース)で見ると、業界首位は相互会社の日本生命で7.9兆円規模です。次いで第一生命ホールディングス6.8兆円、住友生命3.4兆円、かんぽ生命3.2兆円、明治安田生命2.8兆円(単体ベース)、T&Dホールディングス2.6兆円が続きます。本業のもうけを示す基礎利益では、日本生命のグループ基礎利益が初めて1兆円を超えました。相互会社(日本生命・明治安田生命・住友生命)と上場会社で開示の基準が異なるため、横並びの比較は各社が共通して開示する指標で行います。
収入保険料と保険料等収入は何が違いますか?
似た言葉ですが、集計の取り方が異なります。「収入保険料」は生命保険協会が業界全社を合算して集計する指標で、2024年度は36兆8,037億円です。一方「保険料等収入」は各社の損益計算書(P/L)上の項目で、保険料収入に再保険収入などを加えたもので、業界合計では43兆円規模になります。本ページの市場規模グラフや見出しでは、業界の標準的な集計である収入保険料を用い、大手各社の横並び比較では各社が開示する保険料等収入を用いています。
第三分野(医療・がん保険)とは何ですか?
生命保険(死亡保障など、第一分野)と損害保険(モノや財産の補償、第二分野)の中間に位置する、医療・がん・介護・就業不能などを保障する分野を第三分野と呼びます。生命保険会社と損害保険会社の双方が販売でき、外資系のアフラックなどが強みを持ちます。近年は死亡保障の需要が伸び悩む一方で第三分野が拡大しており、保有契約の年換算保険料28.2兆円のうち、第三分野が7.3兆円を占めています。医療保険の世帯加入率は95.1%に達し、生保各社の主力商品となっています。
生命保険はどんなチャネルで加入されていますか?
生命保険文化センターの2024年度調査によれば、直近に加入した民間生命保険の加入チャネルは、生命保険会社の営業職員が56.7%で最も多く、次いで保険代理店(保険ショップなど)が15.7%、通信販売(インターネットなど)が7.8%、銀行・証券会社経由が4.7%、勤め先などを通じてが3.4%です。長く主軸だった営業職員チャネルに対し、来店型の保険ショップやインターネット、銀行窓口など、対面の営業職員以外のチャネルが選択肢として広がっています。
ソルベンシー・マージン比率と経済価値ベース規制(ESR)とは?
ソルベンシー・マージン比率は、保険会社が通常の予測を超えるリスクにどれだけ支払能力を備えているかを示す健全性の指標で、200%以上が健全性の一つの目安とされています。これに加えて、資産と負債を時価(経済価値)で評価する経済価値ベースのソルベンシー規制(ESR)が2026年3月末から適用されます。保険監督者の国際機構であるIAISの保険資本基準(ICS)に対応するもので、金利変動が自己資本に与える影響をより正確に捉え、生保各社の資産負債管理(ALM)を高度化させる狙いがあります。
共済と生命保険は何が違いますか?
共済は、JA共済・こくみん共済coop(全労済)・県民共済などが提供する相互扶助の制度で、農業協同組合法や消費生活協同組合法といった協同組合の法律に基づきます。保険業法に基づく生命保険とは根拠となる法律が異なり、生命保険協会の統計には含まれません。組合員や地域住民を対象に、掛金が割安でシンプルな保障を提供する点が特徴です。生命保険と保障内容が重なる部分もありますが、加入条件や保障設計、税制の扱いなどに違いがあり、生保業界にとっては周辺の業態として位置づけられます。
損害保険
別industry。第三分野(医療・がん・介護)を生保・損保双方が扱う
銀行
銀行窓販で年金保険・終身保険を販売、生保の販売チャネルの一つ
証券準備中
変額保険・特別勘定の運用や、資産形成商品で隣接
資産運用準備中
生保は国内有数の機関投資家、運用子会社を通じた資産運用ビジネス

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参考資料 / 一次ソース

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