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大手生命保険会社の業績比較|上場・相互会社を開示指標で整理【2026年版】

日本の生命保険業界は、業界首位の日本生命をはじめ大手3社が非上場の相互会社で、第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングスが上場しています。組織形態が異なるため、横並びの比較は各社が共通して開示する保険料等収入・総資産・基礎利益などの指標で行います。本ページでは、大手6社を2025年3月期(2024年度)の開示指標で整理し、規模・収益・組織形態の違いを比較します。

大手生命保険会社6社の開示指標比較(2025年3月期)

下表は大手6社を保険料等収入の大きい順に並べたものです。特記のない数値は連結ベースですが、明治安田生命の保険料等収入・総資産は単体ベース、かんぽ生命の基礎利益は単体ベースで、開示の基準が一部異なる点に注意が必要です。基礎利益は各社で「グループ基礎利益」「単体基礎利益」など範囲が異なるため、水準の比較は目安として捉えてください。第一生命ホールディングス・かんぽ生命・T&Dホールディングスは、基礎利益とは別に、各社が中期経営計画の目標などに用いる独自の利益指標である「修正利益」も主要な業績指標として開示しています。

日本生命 — 相互会社、業界首位

日本生命は、保険契約者を社員(構成員)とする相互会社で、保険料等収入7.9兆円・総資産96.3兆円といずれも業界最大の、生命保険業界の首位企業です。相互会社のため上場しておらず、株主向けの配当ではなく契約者への配当を行います。

本業のもうけを示すグループ基礎利益は10,109億円(前年比+32.3%)で、初めて1兆円を超えました。金利上昇による運用環境の改善が寄与しています。保険金の支払余力を示す健全性の指標であるソルベンシー・マージン比率(200%以上が健全性の一つの目安)は、単体で889.4%と高い水準です。

グループには大樹生命やニッセイ・ウェルス生命などを抱えるほか、海外事業の拡大を進めています。2025年度には海外の生命保険会社レゾリューション・ライフを完全子会社化するなど、国内市場の成熟を見据えた海外・資産運用ビジネスへの展開が成長戦略の柱です。

第一生命ホールディングス — 上場最大手、海外に強み

第一生命ホールディングスは、2010年に相互会社から株式会社へ転換して上場した、上場生保の最大手です。傘下に第一生命・ネオファースト生命・第一フロンティア生命などを持つ持株会社で、2026年4月に第一ライフグループへ商号を変更する予定です。保険料等収入は6.8兆円、総資産は69.6兆円です。

同社が主要KPIとするのはグループ修正利益で、4,395億円(前年比+38.0%)と大きく伸びました。参考として開示する基礎利益は6,388億円です。企業価値の目安となるグループEVは約8.2兆円規模に達します。

特徴は海外事業の大きさです。米国のプロテクティブ生命をはじめ、北米・豪州・アジアで事業を展開しており、海外が利益の重要な柱となっています。機動的な資本調達やM&Aを進めるうえで、株式会社・上場という形態を選んできた経緯があります。

住友生命 — 相互会社、健康増進型で独自色

住友生命は、日本生命・明治安田生命とともに大手の一角を占める相互会社です。保険料等収入は3.4兆円(前年比+27.7%)、総資産は48.9兆円です。

グループ基礎利益は3,799億円(前年比+24.3%)で、開示開始以来の最高益となりました。経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)を178%と自主的に開示しており、新しい健全性規制への対応でも先行しています。

商品面では、運動などの健康増進活動に応じて保険料が変動する「Vitality(バイタリティ)」を展開し、独自色を打ち出しています。海外では米国のシメトラ・ファイナンシャルを傘下に持ち、海外事業も収益の柱の一つです。

かんぽ生命 — 日本郵政グループ、郵便局網が基盤

かんぽ生命は、日本郵政グループの上場会社で、全国の郵便局網を販売チャネルとする点が最大の特徴です。保険料等収入は3.2兆円(前年比+27.0%)、総資産は59.6兆円で、相互会社3社に次ぐ規模です。

基礎利益(単体)は2,421億円、主要KPIである修正利益は1,457億円です。企業価値の目安となるEVは3兆9,409億円です。1契約あたりの加入限度額が法令で定められているなど、他社にない制約のもとで事業を運営しています。

かつての保険販売をめぐる問題を経て営業を立て直す過程にあり、新規契約は回復基調にあります。郵便局という対面ネットワークと、簡易な手続きで加入できる商品設計が、地方や高齢層を中心とした顧客基盤を支えています。

明治安田生命 — 相互会社、高い利益水準

明治安田生命は、明治生命と安田生命が2004年に合併して誕生した相互会社です。開示の中心は単体ベースで、保険料等収入は2.8兆円、総資産は46.1兆円です(いずれも単体)。

グループ基礎利益は6,264億円(前年比+11.6%、単体基礎利益は5,554億円)で、保険料等収入の規模に比べて利益水準が高いのが特徴です。ソルベンシー・マージン比率は連結で1063.9%と、大手のなかでも高い健全性を示しています。

「みんなの健活プロジェクト」など健康増進の取り組みや、地域社会とのつながりを重視する経営を掲げています。海外では米国のスタンコープ・ファイナンシャル・グループを傘下に持ち、国内の安定した収益基盤に海外事業を加える構図です。

T&Dホールディングス — 専門特化の保険グループ

T&Dホールディングスは、太陽生命・大同生命・T&Dフィナンシャル生命を傘下に持つ上場の保険グループです。保険料等収入は2.6兆円(前年比+4.2%)です。

基礎利益は1,620億円(前年比+28.8%)、主要KPIであるグループ修正利益は1,415億円(前年比+36.7%)と伸びています。

グループの特徴は、顧客層ごとの専門特化です。大同生命が中小企業の経営者向け保障、太陽生命が家庭の中高齢層向け保障に強みを持ち、それぞれの市場で独自のポジションを築いています。資本効率を意識した経営と、専門マーケットでの収益性が持ち味です。

主要論点

なぜ大手生保の比較は「保険料等収入」や「基礎利益」で行うのか?

大手生保の横並び比較が、上場会社の純利益などではなく保険料等収入や基礎利益で行われるのは、大手3社(日本生命・明治安田生命・住友生命)が非上場の相互会社だからです。相互会社は株式を上場しておらず、株主向けの連結決算という形で全社共通の指標が取りにくいのです。

そこで使われるのが、保険業法に基づくディスクロージャー誌などで各社が共通して開示する指標です。保険料等収入は、契約者から受け取る保険料に再保険収入などを加えた損益計算書上の収入で、事業の規模を示します。基礎利益は、保険本業の収支と利息・配当などの運用収益から、一時的な損益を除いたもので、本業のもうけを示す生保特有の指標です。

ただし、これらの指標にも基準の違いがあります。連結か単体か、グループ基礎利益か単体基礎利益かによって数字の範囲が変わるため、本ページでも基準を明示しています。各社の規模や収益力を比べるときは、こうした集計範囲の違いを踏まえて読む必要があります。

相互会社と上場会社で、経営の重点はどう違うのか?

相互会社と株式会社(上場会社)では、誰のために経営するかという基本の枠組みが異なります。相互会社の日本生命・明治安田生命・住友生命は、契約者を社員(構成員)とし、利益(剰余)を契約者への配当として還元します。株価や四半期ごとの株主還元に左右されにくく、数十年に及ぶ生命保険契約を長期で安定的に運営しやすいという考え方です。

一方、上場会社の第一生命ホールディングスやT&Dホールディングスは、資本市場から機動的に資金を調達でき、M&Aや株主還元を積極的に展開できます。実際、第一生命は海外M&Aを成長戦略に据えて2010年に株式会社へ転換しており、上場の利点を生かしています。かんぽ生命は日本郵政グループの一員として、郵便局網という独自の基盤を持ちます。

この違いは、海外展開の積極性や資本効率への姿勢に表れます。ただし、相互会社も海外M&Aや資産運用ビジネスを拡大しており、組織形態だけで戦略が決まるわけではありません。共通する課題は、国内市場の成熟のなかで、健全性を保ちながら成長をどう確保するかという点です。

金利上昇は大手各社の収益にどう表れているのか?

2024年度(2025年3月期)の大手各社の決算では、基礎利益の改善が共通して見られました。長く続いた超低金利のもとで、過去に高い予定利率(保険料の計算で契約者に約束する運用利回り)を見込んだ契約で、実際の運用利回りがそれを下回る「逆ざや」が収益を圧迫してきましたが、国内金利の上昇でこの構図が和らいでいます。

象徴的なのが日本生命で、グループ基礎利益が初めて1兆円を超えました(前年比+32.3%)。住友生命は開示開始以来の最高益、T&Dホールディングスも基礎利益が前年比+28.8%と伸びています。新たに購入する国債などの利回りが高まり、本業のもうけが押し上げられた格好です。

ただし、金利上昇は保有する債券の評価額を下げる方向にも働き、為替変動の影響を受ける外貨建て保険や外国証券の運用にも影響します。各社は資産と負債の金利感応度を合わせる資産負債管理(ALM)を高度化させており、2026年3月末から始まる経済価値ベースのソルベンシー規制への対応も収益・運用戦略の焦点となります。

中期見通し

近未来1-2年

2026-2027年は、金利上昇を背景とした基礎利益の改善が続くかが焦点です。各社とも運用環境の好転を収益に取り込んでいますが、保有債券の評価や外貨建て保険の販売動向は為替次第で振れます。2026年3月末から始まる経済価値ベースのソルベンシー規制への対応が、各社の資本政策や商品戦略に表れ始めます。

中期3-5年

中期では、国内市場の成熟を見据えた海外事業と資産運用ビジネスの拡大が、各社の成長を左右します。第一生命ホールディングスや日本生命は海外M&Aを継続し、相互会社も含めて海外比率が高まる見通しです。基礎利益に加えて、企業価値の目安となるEVや経済価値ベースの指標が、各社を比較する指標として重みを増します。

長期

長期では、人口減少と高齢化が国内の契約基盤を細らせる一方、医療・介護・資産形成へのニーズは厚みを保ちます。大手各社は、国内の安定した基盤に海外・運用ビジネスを重ねる多角化を進めており、相互会社と上場会社という組織形態の違いを超えて、資本効率と健全性の両立が共通の経営テーマとなります。

よくある質問

生命保険会社の規模ランキング(大手の順位)は?
保険料等収入(各社の開示ベース)で見ると、首位は相互会社の日本生命(7.9兆円)です。次いで第一生命ホールディングス(6.8兆円)、住友生命(3.4兆円)、かんぽ生命(3.2兆円)、明治安田生命(2.8兆円、単体)、T&Dホールディングス(2.6兆円)が続きます。総資産でも日本生命が96.3兆円で最大です。
なぜ日本生命や明治安田生命は上場していないのですか?
これらは「相互会社」という組織形態だからです。相互会社は保険契約者がそのまま会社の社員(構成員)となり、株主が存在しないため、証券取引所に上場していません。利益(剰余)は契約者への配当として還元されます。長期の生命保険契約を、短期的な株価や株主還元に左右されずに運営しやすいという考え方に基づきます。大手では日本生命・明治安田生命・住友生命が相互会社です。
基礎利益とは何ですか?
基礎利益は、生命保険会社の本業のもうけを示す指標です。保険料収入や保険金などの保険関係の収支と、利息・配当金などの運用収益から、有価証券の売却損益のような一時的・臨時の損益を除いて算出します。2024年度は金利上昇による運用環境の改善で各社の基礎利益が伸び、日本生命のグループ基礎利益は初めて1兆円を超えました。なお「グループ基礎利益」「単体基礎利益」など範囲の取り方は会社により異なります。
保険料等収入と収入保険料は違うものですか?
はい、集計の取り方が異なります。本ページの大手比較で使う「保険料等収入」は、各社の損益計算書上の項目で、保険料収入に再保険収入などを加えたものです。一方「収入保険料」は生命保険協会が業界全社を合算して集計する市場規模の指標で、2024年度は36兆8,037億円です。各社の保険料等収入を足し合わせて業界の収入保険料と比べることはできません。
EV(エンベディッド・バリュー)とは何ですか?
EV(エンベディッド・バリュー)は、生命保険会社の企業価値を測る指標の一つで、現時点の純資産にあたる部分と、すでに保有している契約が将来生み出すと見込まれる利益の価値を合わせたものです。生命保険は契約期間が長く、会計上の利益だけでは企業価値を捉えにくいため補完的に使われます。第一生命ホールディングスのグループEVは約8.2兆円、かんぽ生命のEVは3兆9,409億円が開示されています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    大手6社の2025年3月期(2024年度)決算開示
  2. 2.
    生命保険協会「生命保険の動向」2025年版
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