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自動車保険の市場と損害率|任意自動車の規模と損害率の上昇【2026年版】

任意自動車保険は、損害保険で最大の種目です。市場規模(正味収入保険料)は4兆4,586億円(損保協会会員ベース)で、損害率や補償の内訳は損害保険料率算出機構(GIROJ)の統計(元受直接ベース)で分析します。GIROJの元受直接ベースで、損害率(支払保険金÷保険料)はFY2020の43.4%からFY2024の54.3%へ上昇しました。コロナ後の事故回復と修理費の高騰が背景です。損害率の推移、補償種目別の支払と契約への付帯を整理します。

任意自動車の市場規模(FY2024)
4兆4,586億円
損保協会 正味収入保険料、損害保険で最大の種目
出典: 損保協会 種目別統計表
損害率(FY2024)
54.3%
GIROJ元受直接:支払保険金2兆1,543億円÷保険料3兆9,671億円(市場規模4兆4,586億円で割った値ではない)
出典: GIROJ統計集2024年度 自動車保険
契約件数(FY2024)
6,663万件
GIROJ統計集(元受直接ベース)
出典: GIROJ統計集2024年度 自動車保険
支払保険金(FY2024)
2兆1,543億円
GIROJ元受直接。車両・対物賠償が中心
出典: GIROJ統計集2024年度 自動車保険

任意自動車保険の損害率の推移(FY2020-2024、%)

支払保険金÷保険料(GIROJ元受直接)。FY2020の43.4%からFY2024の54.3%へ上昇
読み解き

損害率(支払保険金÷保険料、GIROJ元受直接)は、FY2020の43.4%からFY2024の54.3%へ上昇しました。コロナ下のFY2020-2021は外出自粛で事故が減り損害率が低く抑えられていましたが、行動が回復したFY2022以降に上昇しています。加えて、電子部品やセンサーを多用した車の修理費の高騰が、1件あたりの支払いを押し上げています。

損害率の分母は、GIROJの元受直接ベースの保険料(FY2024で3兆9,671億円)です。市場規模としてよく使われる損保協会の正味収入保険料(4兆4,586億円)とは集計の基準が異なるため、支払保険金を市場規模で割ると損害率は違う値になります。損害率を読むときは、分母をそろえて見る必要があります。

このグラフに関連するトピック

補償種目別の支払保険金(FY2024、億円)

任意自動車保険の支払保険金の内訳(GIROJ元受直接)。車両・対物賠償が中心
読み解き

FY2024の支払保険金2兆1,543億円の内訳は、車両(9,342億円、43.4%)と対物賠償(7,613億円、35.3%)が中心で、両者で約8割を占めます。これに対人賠償(3,026億円、14.0%)が続きます。車両・対物賠償は、車の修理や相手の財物への賠償といった物的損害で、支払件数も多いのが特徴です。

対人賠償は支払件数が少ない一方、死亡・後遺障害など1件あたりが高額になります。自動車技術の進歩で対人事故は減少傾向にありますが、車両・対物賠償の修理費の上昇が、全体の損害率を押し上げる構図です。

補償種目別の付帯台数・支払件数(FY2024、万件)

各補償が付いている契約の台数と支払件数(GIROJ元受直接)。付帯台数は補償ごとに重複するため合算しない
読み解き

補償種目別の付帯台数は、その補償が付いている契約の台数です。1つの契約が複数の補償を持つため、補償をまたいで足し合わせることはできません。対人賠償・対物賠償はほぼ全契約に付帯し(6,640万台規模)、人身傷害(実損払)も広く付帯しています。一方、車両保険は4,064万台と、保険料が高く任意で付ける性格から付帯率が相対的に低くなっています。

支払件数では、車両(226万件)や対物賠償(188万件)が多く、日常の物損事故が件数の大半を占めます。対人賠償は32万件と少なく、件数は少ないが1件あたりが高額という対人賠償の性格が表れています。

主要論点

任意自動車保険の損害率はなぜ上昇しているのか?

GIROJの元受直接ベースで、損害率はFY2020の43.4%からFY2024の54.3%へ上昇しました。要因は2つあります。1つはコロナ後の事故回復で、外出自粛で減っていた事故がFY2022以降に戻ったことです。

もう1つは修理費の高騰です。近年の車は、自動ブレーキなどの先進装備に多くのセンサーや電子部品を使っており、軽微な事故でも交換部品が高額になりがちです。これが車両保険・対物賠償の1件あたりの支払いを押し上げています。FY2024は支払保険金2兆1,543億円が保険料3兆9,671億円の54.3%に達しました。

損害率の上昇に対しては、保険料の改定(値上げ)で収支を整える対応が続いています。事故件数は安全技術で減る方向にある一方、1件あたりの修理費が上がるため、件数の減少が損害率の低下に直結しにくいのが、足元の自動車保険の特徴です。

市場規模の「4.46兆円」と損害率の分母「3.97兆円」は何が違うのか?

同じ任意自動車保険でも、出典によって金額が異なります。市場規模としてよく使われる4兆4,586億円は、損保協会会員の正味収入保険料(再保険のやりとり後)です。一方、損害率の分母となる3兆9,671億円は、損害保険料率算出機構(GIROJ)の元受直接ベースの保険料です。集計する主体と基準が異なります。

このため、損害率は同じGIROJの元受直接どうしで計算します。FY2024の損害率54.3%は、支払保険金2兆1,543億円を保険料3兆9,671億円で割った値です。もし支払保険金を市場規模の4兆4,586億円で割ると、基準が混ざって違う値(約48%)になってしまいます。

数字を引用するときは、市場規模なら損保協会の正味収入保険料、損害率ならGIROJの元受直接、と出典をそろえる必要があります。本ページでは、市場規模の見出しは損保協会、損害率と補償の分析はGIROJ、と使い分けています。

自動運転や安全装備の普及は、損害率をどう変えるのか?

自動ブレーキなどの安全装備や自動運転技術は、事故の件数を減らす方向に働きます。実際、対人事故は減少傾向にあり、長期的には事故そのものが減ることが期待されます。

ただし、これらの装備は修理費を押し上げる側面もあります。センサーやカメラを多く積んだ車は、軽微な接触でも部品交換が高額になり、車両保険・対物賠償の1件あたりの支払いが増えます。事故が減っても、1件あたりの支払いが上がれば、損害率は簡単には下がりません。

中長期的には、事故減少と修理費上昇のどちらが勝るかが、自動車保険の損害率と保険料の方向を決めます。さらに自動運転が普及すれば、事故の責任が運転者から車のメーカー側へ移る可能性もあり、保険のしくみそのものが変わる論点もあります。

中期見通し

近未来1-2年

FY2025-2026は、修理費の高騰が続くなかで損害率が高めに推移し、保険料の改定(値上げ)で収支を整える対応が続く見通しです。コロナ後の事故回復は一巡しつつありますが、1件あたりの支払い単価の上昇が損害率を下支えします。

中期3-5年

中期では、自動ブレーキなど安全装備の普及で事故件数が減る一方、高機能な車の修理費が上がるため、損害率の方向は両者のバランス次第です。テレマティクス(走行データを使った保険)など、リスクに応じた料率の精緻化も進みます。

長期

長期では、自動運転の普及が事故の構造を変える可能性があります。事故の責任が運転者から車のメーカー側へ移れば、対人・対物賠償の役割が縮小し、製造物責任など別の保険へ需要が移ることも考えられます。自動車保険は、最大種目として業界の収益を左右し続けます。

よくある質問

任意自動車保険の市場規模はどのくらいですか?
損保協会会員ベースの正味収入保険料で4兆4,586億円(FY2024)で、損害保険で最大の種目です。任意自動車に強制保険の自賠責を加えた自動車関連で、損害保険料の過半を占めます。なお損害率や補償の分析に使う損害保険料率算出機構(GIROJ)の元受直接ベースの保険料(3兆9,671億円)とは、集計の基準が異なります。
自動車保険の損害率とは何ですか?なぜ上昇しているのですか?
損害率は、保険料に対する支払保険金の割合です。GIROJの元受直接ベースで、FY2024は支払保険金2兆1,543億円÷保険料3兆9,671億円で54.3%でした。FY2020の43.4%から上昇しており、コロナ後の事故回復と、電子部品・先進装備による修理費の高騰が主な要因です。
「4.46兆円」と「3.97兆円」は何が違うのですか?
4兆4,586億円は損保協会会員の正味収入保険料(市場規模の見出し)、3兆9,671億円は損害保険料率算出機構(GIROJ)の元受直接ベースの保険料(損害率の分母)です。集計する主体と基準が異なります。損害率はGIROJの元受直接どうしで計算するため、支払保険金を市場規模で割ると基準が混ざって違う値になります。
どの補償の支払保険金が多いのですか?
FY2024の支払保険金2兆1,543億円のうち、車両が43.4%(9,342億円)、対物賠償が35.3%(7,613億円)と、両者で約8割を占めます。対人賠償は14.0%(3,026億円)です。車両・対物賠償は物的損害で件数も多く、対人賠償は件数が少ない一方で1件あたりが高額です。
このデータの出典は何ですか?
損害率・補償種目別・契約件数は、損害保険料率算出機構(GIROJ)の「統計集2024年度 自動車保険」(元受直接ベース)に基づきます。市場規模(正味収入保険料)は損保協会の種目別統計表です。両者は集計の基準が異なるため、本ページでは出典をそろえて使い分けています。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    損害保険料率算出機構(GIROJ)「統計集2024年度 自動車保険」
  2. 2.
    日本損害保険協会「種目別統計表」
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