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自賠責保険のしくみと収支|保険料・支払・損害率の推移【2026年版】

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、すべての自動車・原付に加入が義務づけられた強制保険で、交通事故の被害者救済を目的とします。補償は対人賠償に限られ、限度額は死亡3,000万円・傷害120万円・後遺障害は最大4,000万円(国土交通省)です。GIROJの元受直接ベースで、契約は3,961万件、保険料は6,758億円です。利潤も損失も残さないノーロス・ノープロフィット原則、保険料と支払の収支、損害率の推移を整理します。

自賠責の保険料(FY2024)
6,758億円
GIROJ元受直接(市場規模の損保協会 正味収入保険料6,623億円とは集計基準が異なる)
出典: GIROJ統計集2024年度 自賠責保険
契約件数(FY2024)
3,961万件
GIROJ統計集(元受直接ベース)
出典: GIROJ統計集2024年度 自賠責保険
損害率(FY2024)
80.5%
GIROJ元受直接:支払保険金5,441億円÷保険料6,758億円
出典: GIROJ統計集2024年度 自賠責保険
支払保険金(FY2024)
5,441億円
GIROJ元受直接。死亡+傷害(後遺障害含む)
出典: GIROJ統計集2024年度 自賠責保険

自賠責保険の保険料と支払保険金の推移(FY2020-2024、億円)

GIROJ元受直接。保険料は2023年の料率引き下げで8,113億円(FY2020)から6,758億円(FY2024)へ減少
読み解き

自賠責の保険料は、2023年の料率引き下げを受けて、8,113億円(FY2020)から6,758億円(FY2024)へ減少しました。支払保険金も減少傾向にあります。自賠責はノーロス・ノープロフィット原則で運営され、保険料は将来の収支が均衡するよう算定されるため、過去の収支や運用環境を踏まえて定期的に改定されます。

ここでの金額は、GIROJの元受直接ベースです。市場規模としての自賠責は、損保協会の正味収入保険料で6,623億円と集計の基準が異なります。なお支払保険金には、無保険車やひき逃げの被害者を救済する政府保障事業の分も含まれます。

このグラフに関連するトピック

自賠責保険の支払保険金の内訳(FY2024、億円)

死亡と傷害(後遺障害含む)の2区分(GIROJ元受直接)。両者の合計が支払保険金の総額
読み解き

FY2024の支払保険金5,441億円の内訳は、傷害(後遺障害含む)が4,839億円(88.9%)、死亡が602億円(11.1%)です。傷害の支払件数は812,684件と多く、通院・治療や後遺障害が中心です。死亡は2,461件と少ない一方、1件あたり死亡3,000万円を限度に高額になります。

自賠責は対人賠償に限られ、相手の車や物(対物賠償)、自分の車(車両)は対象外です。これらは任意の自動車保険でカバーされます。被害者1名あたりの限度額は、傷害120万円・死亡3,000万円・後遺障害は等級に応じて最大4,000万円(常時介護の場合)と定められています(国土交通省)。

自賠責保険の損害率の推移(FY2020-2024、%)

支払保険金÷保険料(GIROJ元受直接)。FY2022の70.0%を底に、料率引き下げ後のFY2023は81.0%へ上昇
読み解き

損害率(支払保険金÷保険料、GIROJ元受直接)は、単調に動いていません。FY2020の74.8%からFY2022の70.0%まで低下した後、FY2023に81.0%へ急上昇し、FY2024は80.5%です。上昇に転じた主因は、2023年の料率引き下げです。支払保険金も減りましたが、保険料(損害率の分母)がそれ以上に減ったため、比率としての損害率は上がりました。

自賠責はノーロス・ノープロフィット原則で運営されるため、損害率は単年の収益性ではなく、料率改定の影響を映す指標として読む必要があります。料率は将来の収支が均衡するよう設定され、損害率が低い局面が続けば引き下げ、高ければ引き上げ、という調整が行われます。

主要論点

自賠責保険と任意の自動車保険は何が違うのか?

最も大きな違いは、加入の義務と補償の範囲です。自賠責保険は、すべての自動車・原付に加入が義務づけられた強制保険で、交通事故の被害者救済を目的とします。補償は対人賠償に限られ、相手の車や物(対物賠償)、自分の車(車両)は対象外です。

補償の限度額も定められており、被害者1名あたり傷害120万円・死亡3,000万円・後遺障害は等級に応じて最大4,000万円(常時介護の場合)です(国土交通省)。この限度額を超える賠償や、対物・車両などの損害は、任意の自動車保険でカバーします。

つまり、自賠責は最低限の対人賠償を社会全体で担保するしくみで、任意保険がその上乗せと幅広い補償を担う、という役割分担です。

ノーロス・ノープロフィット原則とは何か?

自賠責保険は、保険会社が利潤も損失も残さないように運営する「ノーロス・ノープロフィット原則」で設計されています。料率は、将来の保険金支払いと経費をまかない、収支が均衡するように算定され、運用で生じた利益も契約者に還元されます。強制保険として国民全体が加入するため、保険会社の利益の対象とはしない、という考え方です。

運営上は、すべての損害保険会社が共同でリスクを引き受けるプールのしくみがとられています。各社が引き受けた自賠責のリスクを持ち寄って配分するため、年によっては各社が最終的に保有する正味が、直接引き受けた元受を上回ることもあります(共同プールでの受再・出再による)。

このため、自賠責の損害率は、一般の保険のような「利益の大きさ」を示す指標ではありません。料率が収支均衡で設定される結果として、損害率は高めの水準で推移し、料率改定によって上下します。

保険料が下がっているのに損害率が上がっているのはなぜか?

自賠責の損害率(支払保険金÷保険料)は、FY2022の70.0%を底に、FY2023に81.0%へ上昇しました。一見すると収支が悪化したように見えますが、主因は2023年の料率引き下げです。

損害率は「支払保険金」を「保険料」で割った比率です。料率が引き下げられると、分母である保険料が減ります。支払保険金も減少傾向にありましたが、保険料の減り方がそれを上回ったため、比率としての損害率は上昇しました。保険料は8,113億円(FY2020)から6,758億円(FY2024)へ減っています。

ノーロス・ノープロフィット原則のもとでは、過去に収支が黒字気味(損害率が低め)に推移すると、その分を料率引き下げで契約者に返します。損害率の上昇は、この料率引き下げの結果であり、収支の悪化を必ずしも意味しません。損害率は、料率改定の動きとあわせて読む必要があります。

中期見通し

近未来1-2年

自賠責の保険料は、ノーロス・ノープロフィット原則のもとで、過去の収支と運用環境を踏まえて定期的に改定されます。損害率は料率の水準を映して上下し、料率引き下げの後は高めに推移します。契約件数は自動車保有台数に連動し、大きな変動は見込みにくい状況です。

中期3-5年

中期では、安全装備の普及による事故の減少が、支払保険金を押し下げる方向に働きます。収支が改善すれば料率引き下げの余地が生まれますが、その結果として損害率は高めに出ます。自賠責は利益を目的としないため、収支均衡を保つ料率調整が続きます。

長期

長期では、自動運転の普及が交通事故の構造を変え、対人賠償のあり方にも影響します。事故の責任が運転者から車のメーカー側へ移れば、自賠責の役割や保険料の水準が見直される可能性があります。被害者救済という自賠責の目的は、制度の根幹として維持される見通しです。

よくある質問

自賠責保険とは何ですか?補償の範囲は?
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、すべての自動車・原付に加入が義務づけられた強制保険で、交通事故の被害者救済を目的とします。補償は対人賠償に限られ、被害者1名あたりの限度額は傷害120万円・死亡3,000万円・後遺障害は等級に応じて最大4,000万円(常時介護の場合)です(国土交通省)。相手の車や物、自分の車は対象外で、任意の自動車保険でカバーします。
自賠責保険と任意の自動車保険の違いは何ですか?
自賠責は加入が義務づけられた強制保険で、補償は対人賠償に限られ、限度額も定められています。一方、任意の自動車保険は任意加入で、対物賠償・車両・人身傷害などを幅広くカバーします。自賠責が最低限の対人賠償を社会全体で担保し、任意保険が上乗せと幅広い補償を担う、という役割分担です。
ノーロス・ノープロフィット原則とは何ですか?
自賠責保険を、保険会社が利潤も損失も残さないように運営する原則です。料率は将来の収支が均衡するよう算定され、運用益も契約者に還元されます。すべての損害保険会社が共同でリスクを引き受けるプールのしくみで運営され、自賠責の損害率は利益の大きさではなく、料率が収支均衡で設定された結果を映します。
自賠責の損害率が高い・変動するのはなぜですか?
ノーロス・ノープロフィット原則のもとで料率が収支均衡に設定されるため、損害率は高めの水準で推移します。FY2022の70.0%からFY2023は81.0%へ上昇しましたが、これは2023年の料率引き下げで保険料(損害率の分母)が減ったためで、収支の悪化を意味するものではありません。損害率は料率改定とあわせて読む必要があります。
このデータの出典と基準は何ですか?
保険料・支払保険金・契約件数・損害率は、損害保険料率算出機構(GIROJ)の「統計集2024年度 自賠責保険」(元受直接ベース)に基づきます。GIROJの統計は5年の系列や死亡・傷害の内訳・件数を備えるため、本ページの基準としています。市場規模としての正味収入保険料(6,623億円)は損保協会の種目別統計、限度額は国土交通省で、出典ごとに集計の基準が異なります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    損害保険料率算出機構(GIROJ)「統計集2024年度 自賠責保険」
  2. 2.
    日本損害保険協会「種目別統計表」
  3. 3.
    国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」
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