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損害保険の収益構造|コンバインドレシオと引受・資産運用の二本柱【2026年版】

損害保険会社の収益は、保険引受と資産運用の二本柱です。FY2024、引受の効率を示すコンバインドレシオは96.0%(正味損害率64.1+正味事業費率31.9)で引受は黒字を維持し、資産運用粗利益は2兆2,316億円と保険引受利益1,263億円を大きく上回りました。運用粗利益の急増は政策保有株式の売却益という一過性の要因が主因です。コンバインドレシオの推移、収益の二本柱、運用利回りの動きを、損保協会会員ベースの業界合算(単体)で整理します。

コンバインドレシオ(FY2024)
96.0%
正味損害率64.1+正味事業費率31.9、100%を下回ると引受は黒字
出典: 損保協会 決算概況(業界合算、単体)
保険引受利益(FY2024)
1,263億円
本業の保険引受の損益(業界合算、単体)
出典: 損保協会 決算概況
資産運用粗利益(FY2024)
2兆2,316億円
政策保有株式の売却益で急増(一過性)
出典: 損保協会 決算概況
当期純利益(FY2024)
1兆8,173億円
業界合算(単体)。3メガ連結の合計とは集計範囲が異なる
出典: 損保協会 決算概況

コンバインドレシオの推移(FY2008-2024、%)

正味損害率と正味事業費率の合計。100%を下回ると引受は黒字。FY2024は96.0%
読み解き

コンバインドレシオ(CR)は、保険金の割合(正味損害率)と経費の割合(正味事業費率)を合計した、保険引受の効率を示す指標です。100%を下回ると引受は黒字です。FY2008-2012はリーマンショックや東日本大震災(FY2011は117.2%)で100%超が続きましたが、2013年以降は火災保険などの料率改定を背景に構造的に改善し、90%台前半まで低下しました。ただし台風21号などが相次いだFY2018は101.6%へ一時悪化し、コロナで事故が減ったFY2020は90.7%まで改善するなど、災害の規模で大きく振れます。

内訳をみると、正味事業費率は32%前後で安定している一方、正味損害率は自然災害で大きく動きます。CRの変動の主因は損害率です。なお正味損害率・正味事業費率は、正味収入保険料(FY2024で9兆5,782億円)を分母とする比率です。

このグラフに関連するトピック

収益の二本柱(FY2022-2024、億円)

保険引受損益と資産運用損益(業界合算、単体)。運用粗利益がFY2024に急増(政策保有株式の売却益)
読み解き

収益の二本柱を業界合算(単体)でみると、FY2024は保険引受利益1,263億円に対し、資産運用粗利益は2兆2,316億円と、運用が引受を大きく上回りました。運用粗利益は前年の9,548億円から倍増しましたが、これは政策保有株式の売却益が押し上げた一過性の要因で、恒常的な運用力を示すものではありません。経常利益・当期純利益も、この運用粗利益の急増を反映して大きく伸びています。

注意したいのは、コンバインドレシオ(CR)と保険引受利益は必ずしも同じ方向に動かないことです。FY2023からFY2024にかけてCRは96.9%から96.0%へ改善しましたが、保険引受利益は1,769億円から1,263億円へ減少しました。保険引受利益には異常危険準備金の繰入・取崩しなど、CRに表れない要素が含まれるためです。引受の効率(CR)と引受の損益(保険引受利益)は、別の指標として見る必要があります。

運用資産利回りの推移(FY2008-2024、%)

運用資産に対する運用収益の割合。FY2020の2.1%からFY2024の4.1%へ上昇
読み解き

運用資産利回りは、長く2%台で推移してきましたが、FY2023に3.4%、FY2024に4.1%へ上昇しました。金利の上昇に加え、政策保有株式の売却益が利回りを押し上げた面があり、近年の上昇には一過性の要素を含みます。損害保険会社は取引先との関係維持などのために多額の上場株式を保有してきましたが、ガバナンス改革を契機に売却を加速しており、その売却益が運用収益を膨らませています。

主要論点

なぜコンバインドレシオが96%(引受がほぼトントン)でも最高益を更新できるのか?

損害保険会社の収益は、保険引受と資産運用の二本柱です。FY2024のコンバインドレシオは96.0%で、保険引受利益は1,263億円にとどまりました。一方で、資産運用粗利益は2兆2,316億円と引受利益を大きく上回り、業績の主役となっています。

この差を生んでいるのが、政策保有株式の売却益です。損害保険会社は取引先との関係維持などのために多額の上場株式を保有してきましたが、ガバナンス改革を契機に売却を加速しており、その売却益が運用粗利益(前年9,548億円から2兆2,316億円へ倍増)を押し上げました。運用資産利回りもFY2023の3.4%からFY2024の4.1%へ上昇しています。

つまり、本業の引受は料率改定で安定した黒字を維持しつつ、運用が利益を上乗せする構造です。ただしFY2024の運用益は政策保有株式の売却という一過性の要因に支えられており、恒常的な収益力とは区別して見る必要があります。

コンバインドレシオはなぜ年によって大きく振れるのか?

コンバインドレシオ(CR)の変動の主因は、正味損害率です。経費の割合を示す正味事業費率は32%前後で安定していますが、保険金の割合を示す正味損害率は、自然災害の規模によって大きく動きます。

過去をみると、東日本大震災のFY2011はCRが117.2%、台風21号など自然災害が相次いだFY2018は101.6%へ悪化しました。一方、外出自粛で事故が減ったコロナ下のFY2020は90.7%まで改善しています。CRが100%を超えた年は、保険引受が赤字だったことを意味します。

2013年以降は、火災保険などの料率改定によってCRが構造的に改善し、災害が少ない年は90%台前半で推移しています。ただし大規模災害が発生すれば一気に100%を超える変動の大きさが、保険引受の特徴です。

政策保有株式の売却が一巡した後、収益力はどうなるのか?

FY2024の運用粗利益2兆2,316億円や運用資産利回り4.1%は、政策保有株式の売却益という一過性の要因に大きく支えられています。3メガ損保グループは政策保有株式のゼロ化に向けた方針を示しており、売却益は中期的にいずれ一巡します。

売却益が剥落した後は、恒常的な収益力が問われます。資産運用では、金利水準を反映した利息・配当などの安定的な運用収益が中心となります。保険引受では、自然災害リスクを織り込んだ料率改定によって、引受利益をどこまで積み上げられるかが焦点です。

つまり、足元の高水準の利益は政策保有株式の売却という特殊要因を含んでおり、これを除いた引受と運用の実力値こそが、中長期の収益力を見るうえで重要になります。

中期見通し

近未来1-2年

FY2025-2026は、政策保有株式の売却益がどこまで続くかが運用損益を左右します。FY2024に倍増した運用粗利益は、売却ペース次第で反動も想定されます。保険引受は、火災保険などの料率改定で安定した黒字の維持が見込まれますが、大規模な自然災害が発生すればコンバインドレシオは一時的に悪化します。

中期3-5年

中期では、政策保有株式の売却が一巡し、一過性の売却益が剥落した後の恒常的な収益力が問われます。資産運用は金利水準を反映した利息・配当が中心となり、保険引受は災害リスクを織り込んだ料率設計で引受利益を積み上げられるかが焦点です。引受の規律と運用環境の両面が、業績を左右します。

長期

長期では、自然災害の激甚化が正味損害率を押し上げる構造的な圧力となり、コンバインドレシオの管理が一段と重要になります。資産運用は金利感応度と資本効率が問われ、政策保有株式の売却で得た資金をどう成長投資や株主還元に振り向けるかが、収益力と企業価値を左右します。

よくある質問

コンバインドレシオとは何ですか?
保険引受の効率を測る指標で、支払った保険金の割合(正味損害率)と経費の割合(正味事業費率)を合計したものです。100%を下回ると保険引受は黒字、上回ると赤字を意味します。FY2024の業界平均は96.0%(正味損害率64.1+正味事業費率31.9)で、引受は黒字を維持しています。大規模な自然災害が発生した年には100%を超えることもあり、台風が相次いだFY2018は101.6%でした。
コンバインドレシオが96%(ほぼトントン)でも最高益なのはなぜですか?
保険引受と資産運用の二本柱のうち、資産運用が利益を押し上げているためです。FY2024の保険引受利益は1,263億円にとどまる一方、資産運用粗利益は2兆2,316億円と引受利益を大きく上回りました。運用粗利益の急増は、政策保有株式の売却益という一過性の要因が主因です。引受は安定した黒字を維持しつつ、運用が利益を上乗せする構造です。
正味損害率と正味事業費率の違いは何ですか?
正味損害率は、正味収入保険料に対する支払保険金(と損害調査費)の割合で、FY2024は64.1%です。正味事業費率は、保険料に対する保険募集・維持管理などの経費の割合で、FY2024は31.9%です。両者を合計したものがコンバインドレシオ(96.0%)です。事業費率は32%前後で安定していますが、損害率は自然災害の規模によって大きく動きます。
資産運用粗利益が急増したのはなぜですか?
政策保有株式の売却益が主因です。損害保険会社は取引先との関係維持などのために多額の上場株式を保有してきましたが、ガバナンス改革を契機に売却を加速しており、その売却益がFY2024の資産運用粗利益を前年の9,548億円から2兆2,316億円へ倍増させました。運用資産利回りも4.1%へ上昇しています。ただしこれは一過性の要因で、恒常的な運用力とは区別して見る必要があります。
この収益データはどの範囲の数字ですか?
損害保険協会「損害保険会社の決算概況」に基づく、会員会社の業界合算(単体)の数字です。FY2024(2024年度)通期で、正味損害率・正味事業費率・運用資産利回りは公表値、保険引受利益・資産運用粗利益・当期純利益は業界合算の損益です。海外子会社などを含む3メガ損保グループの連結業績とは集計範囲が異なります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本損害保険協会「損害保険会社の決算概況」
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