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火災保険と自然災害|激甚化する風水害と火災保険料の改定【2026年版】

火災保険は、火事だけでなく台風・豪雨・雪害などの自然災害(風水害)も補償します。損保協会の集計では、過去の風水害による支払保険金は2018年の台風21号が1兆678億円で最大、上位10件のうち5件が2018〜2019年に集中しています。災害の頻発・激甚化を受け、火災保険の参考純率は全国平均+13.0%(2023年届出)へ引き上げられ、水害の保険料は地域別に5区分へ細分化されました。風水害の支払、損害率の変動、物件別の収支を整理します。

なぜ火災保険は自然災害の影響を強く受けるのか

激甚化する風水害の支払

火災保険は、住宅や建物の火災に加え、台風・豪雨・洪水・雪害といった自然災害による損害も補償します。このため、大規模な自然災害が発生すると、保険金の支払いが急増します。損保協会の集計では、過去の風水害による支払保険金は2018年の台風21号が1兆678億円で最大で、上位10件のうち5件が2018〜2019年に集中しています。気候変動を背景に、台風や豪雨の頻発・激甚化が、火災保険の支払いを押し上げる構造です。

災害で大きく変動する収支

自然災害は、火災保険の収支を年ごとに大きく変動させます。損害保険料率算出機構(GIROJ)の元受直接ベースでみると、火災保険の損害率は大規模災害の有無で振れ、災害が少なく料率改定が進んだ年には下がりますが、大規模災害が発生すれば一気に上昇します。火災保険の引受は、災害が少ない年に利益を確保し、大規模災害の年に備える、という変動の大きい収支構造です。

再保険と料率改定での備え

保険会社は、大規模災害のリスクの一部を再保険(引き受けたリスクをさらに別の保険会社に移すしくみ)に出して備えます。あわせて、災害リスクの高まりを保険料に反映する料率改定を進めています。火災保険の参考純率は全国平均+13.0%(2023年届出)へ引き上げられ、水害の保険料は被害リスクに応じて地域別に5区分へ細分化されました。気候リスクを織り込んだ料率設計と、防災・減災との連携が、業界共通の課題です。

過去の風水害による支払保険金ランキング(上位10件)

損保協会集計。支払保険金は火災・新種+自動車+海上を横断した公表合計(地震保険は政府再保険の別制度のため除く)
読み解き

過去の風水害による支払保険金は、2018年の台風21号が1兆678億円で最大で、2019年の台風19号(東日本台風、5,826億円)、台風15号(房総半島台風)が続きます。上位10件のうち5件が2018〜2019年で、近年の災害の激甚化が際立ちます。

支払保険金の「合計」は、火災・新種に加えて自動車・海上を横断した公表値です。災害では建物だけでなく車(自動車保険)なども被災するため、火災・新種だけより大きくなります。なお千万円単位の四捨五入のため、内訳の単純な和は合計欄と一致しないことがあり、合計欄が公表値です。地震による損害は、政府再保険付きの地震保険という別制度で扱われるため、このランキングには含まれません。

火災保険の損害率の推移(FY2020-2024、%)

支払保険金÷保険料(GIROJ元受直接)。FY2020の73.9%からFY2024の42.8%へ低下(近年は大規模災害が少なく料率改定が進んだため)
読み解き

火災保険の損害率(支払保険金÷保険料、GIROJ元受直接)は、FY2020の73.9%からFY2024の42.8%へ低下しました。ただし、これは構造的な収支改善ではありません。近年に台風21号級の大規模災害が少なかったことに加え、料率改定で保険料(損害率の分母)が上がったことが、損害率を押し下げています。大規模災害が発生した年には、損害率は再び急騰します。

損害率の分母は、GIROJの元受直接ベースの保険料(FY2024で1兆5,347億円)です。市場規模としてよく使われる損保協会の正味収入保険料(火災1兆7,710億円)とは集計の基準が異なります。火災保険の収支は、災害の少ない年に利益を確保し、大規模災害の年に備える変動の大きさが特徴で、損害率は単年では収支の方向を判断しにくい指標です。

物件別の火災保険料・損害率(FY2024、GIROJ元受直接)

住宅・一般・工場・倉庫の主要4物件。特約火災等を含む総合計とは一致しないため構成比は示さない
読み解き

物件別にみると、FY2024の損害率は住宅物件が50.8%と最も高く、工場物件、一般物件、倉庫物件が続きます。住宅物件は台風・豪雨など自然災害の影響を受けやすく、損害率が高めに出ます。

ここでの4物件(住宅・一般・工場・倉庫)の保険料は、火災保険の総合計とは一致しません。総合計には特約火災などが含まれるためで、構成比(シェア)は示していません。物件の性質によって、自然災害への弱さや1件あたりの規模が異なり、損害率の水準にも差が表れます。

主要論点

火災保険はなぜ値上がりしているのか?

近年、台風や豪雨などの自然災害が頻発・激甚化し、火災保険の保険金支払いが増えているためです。損保協会の集計では、過去の風水害による支払保険金は2018年の台風21号が1兆678億円で最大、上位10件のうち5件が2018〜2019年に集中しています。

これを受け、料率の目安となる参考純率は全国平均+13.0%(2023年届出)へ引き上げられ、水害の保険料は被害リスクに応じて地域別に5区分へ細分化されました。各社はこれをもとに保険料を改定しています。気候変動で災害リスクが高まるなか、保険料への反映が続く見通しです。

火災保険は、契約者の保険料負担と、災害リスクに見合った収支のバランスが問われます。料率改定が災害リスクの上昇に追いつくか、再保険のコストをどう吸収するかが、中期的な論点です。

火災保険の損害率はなぜ年によって大きく振れるのか?

火災保険の損害率は、大規模な自然災害の有無で大きく変動します。GIROJの元受直接ベースで、損害率はFY2020の73.9%からFY2024の42.8%へ低下しましたが、これは近年に台風21号級の大規模災害が少なく、料率改定で保険料が上がったためで、構造的な改善ではありません。

風水害の支払ランキングをみると、台風21号(1兆678億円)のような大規模災害は特定の年に集中します。こうした災害が発生した年は損害率が一気に上昇し、引受は赤字に転じることもあります。逆に災害が少ない年は損害率が下がり、利益を確保します。

つまり、火災保険の収支は単年では方向を判断しにくく、複数年でならして見る必要があります。災害の少ない年に利益を積み、大規模災害の年に備える、という変動の大きい収支構造が、火災保険の特徴です。

火災の市場規模「1兆7,710億円」と損害率の分母「1兆5,347億円」は何が違うのか?

同じ火災保険でも、出典によって金額が異なります。市場規模としてよく使われる1兆7,710億円は、損保協会会員の正味収入保険料(再保険のやりとり後)で、損害保険で2番目に大きい種目です。一方、損害率の分母となる1兆5,347億円は、損害保険料率算出機構(GIROJ)の元受直接ベースの保険料です。集計する主体と基準が異なります。

このため、損害率は同じGIROJの元受直接どうしで計算します。支払保険金を市場規模の1兆7,710億円で割ると、基準が混ざって違う値になってしまいます。

数字を引用するときは、市場規模なら損保協会の正味収入保険料、損害率ならGIROJの元受直接、と出典をそろえる必要があります。本ページでは、市場規模の見出しは損保協会、損害率と物件別の分析はGIROJ、と使い分けています。

中期見通し

近未来1-2年

FY2025-2026は、災害リスクの高まりを反映した火災保険の料率改定が続く見通しです。損害率は大規模災害の有無で振れ、災害が少なければ低めに、大規模災害が起きれば一時的に急騰します。契約者の保険料負担と、災害に見合った収支のバランスが問われます。

中期3-5年

中期では、気候変動を背景とした台風・豪雨の頻発・激甚化が、火災保険の収支に構造的な圧力をかけます。料率改定が災害リスクの上昇に追いつくか、再保険のコストの上昇をどう吸収するか、水災区分の精緻化がどこまで進むかが焦点です。

長期

長期では、気候リスクを織り込んだ料率設計と、防災・減災との連携が、火災保険の持続性を左右します。災害が激甚化するなかで保険料の負担が過大にならないよう、ハザードマップに基づく料率の細分化や、社会全体での災害への備えとの組み合わせが、業界共通の課題となります。

よくある質問

風水害で最も支払保険金が大きかった災害は何ですか?
2018年の台風21号で、支払保険金は1兆678億円と過去最大です。2019年の台風19号(東日本台風、5,826億円)、台風15号(房総半島台風)が続き、上位10件のうち5件が2018〜2019年に集中しています(損保協会集計)。この支払保険金は火災・新種に加えて自動車・海上を横断した公表合計で、地震保険は政府再保険の別制度のため含まれません。
火災保険はなぜ値上がりしているのですか?
台風や豪雨などの自然災害が頻発・激甚化し、保険金の支払いが増えているためです。過去の風水害支払は2018年の台風21号が1兆678億円で最大で、上位10件中5件が2018〜2019年に集中しています。これを受け、参考純率は全国平均+13.0%(2023年届出)へ引き上げられ、水害の保険料は地域別に5区分へ細分化されました。
火災保険の損害率はなぜ変動するのですか?
大規模な自然災害の有無で大きく変動するためです。GIROJの元受直接ベースで、損害率はFY2020の73.9%からFY2024の42.8%へ低下しましたが、これは近年に大規模災害が少なく料率改定で保険料が上がったためで、構造的な改善ではありません。大規模災害が発生した年には、損害率は再び急騰します。
物件別で損害率に違いはありますか?
あります。FY2024(GIROJ元受直接)では、住宅物件の損害率が50.8%と最も高く、工場物件、一般物件、倉庫物件が続きます。住宅物件は台風・豪雨など自然災害の影響を受けやすい傾向があります。なお主要4物件の保険料は、特約火災等を含む総合計とは一致しません。
このデータの出典と基準は何ですか?
風水害の支払保険金ランキングは損保協会の集計(火災・新種+自動車+海上の横断合計、地震保険除く)です。火災保険の損害率・物件別は損害保険料率算出機構(GIROJ)の統計集(元受直接ベース)で、市場規模(正味収入保険料、火災1兆7,710億円)は損保協会の種目別統計表です。出典ごとに集計の基準が異なります。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本損害保険協会「過去の主な風水災等による保険金の支払い」
  2. 2.
    損害保険料率算出機構(GIROJ)「統計集2024年度 火災保険」
  3. 3.
    日本損害保険協会「種目別統計表」
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