最終更新
STAT DETAIL · WEALTH MANAGEMENT

証券会社の預り資産とストック型ビジネス|投信・ファンドラップの拡大【2026年版】

証券会社の収益は、株式売買のたびに得る手数料(フロー型)から、預り資産に応じて継続的に得る収益(ストック型)へと軸足を移しています。証券会社が販売し預かる公募投資信託の純資産は297.4兆円と過去最高(投資信託協会)、運用を一任するファンドラップの契約金額は22.3兆円に達しました。委託手数料の無料化が進むなか、投資信託の信託報酬やラップの運用報酬といった、預り資産に応じた収益が証券ビジネスの柱になりつつあります。本ページでは、預り資産・投信・ファンドラップを軸に、証券会社のストック型ビジネスを整理します。

公募投信の純資産
297.4兆円
証券会社などが販売・保有する公募投資信託の残高(2025年11月末)。過去最高を更新
出典: 投資信託協会 数字で見る投資信託
ファンドラップ契約金額
22.3兆円
運用を一任するサービスの契約残高(2025年11月末)。ストック型収益の柱の一つ
出典: 投資信託協会 数字で見る投資信託
公募投信の年間純資金流入
16.8兆円
解約を上回って流入した額(2024年)。過去最長の21年連続の純流入
出典: 投資信託協会 数字で見る投資信託
投信の家計金融資産比率
6.27%
個人の金融資産に占める投資信託の割合。伸びしろの大きさを示す
出典: 投資信託協会(資金循環統計ベース)

フロー型とストック型の収益の違い

証券会社の収益モデル。委託手数料の無料化を背景に、軸足はフロー型からストック型へ移っている
読み解き

証券会社の収益は、大きくフロー型ストック型に分けられます。フロー型は、株式売買の委託手数料やトレーディング損益のように、売買のたびに得る収益です。相場や売買の活発さに左右され、変動が大きいうえ、委託手数料の無料化で細りやすくなっています。

これに対しストック型は、投資信託の信託報酬やファンドラップの運用報酬のように、預り資産の残高に応じて継続的に得る収益です。預り資産が積み上がるほど収益が安定するため、各社はこのストック型への転換を競っています。証券会社が販売・保有する公募投信は297.4兆円、ファンドラップは22.3兆円に達し、ストック型の土台が広がってきました。

公募投資信託の内訳 (2025年11月末、兆円)

株式投信と公社債投信で公募投信全体。株式投信が9割超を占める
読み解き

公募投資信託297.4兆円の内訳は、株式投信が280.7兆円(94.4%)、公社債投信が16.7兆円(5.6%)です。株式投信が9割超を占め、いずれも過去最高の水準にあります(投資信託協会)。

この株式投信の中で存在感を高めているのが、低コストのインデックス投信(176.6兆円)やETF(108.8兆円、上場投資信託)です。いずれも株式投信に含まれる内数で(インデックス型のETFもあるため両者は重なります)、合計ではありませんが、低コスト商品が広く保有されていることを示します。信託報酬の料率が低いこれらの商品が広がるほど、預り資産あたりの収益率は下がりやすくなります。なお、これらの公募投信とは別に、機関投資家向けの私募投信が119.1兆円あります。

主要論点

ストック型ビジネスとは何か、なぜ移行するのか?

ストック型ビジネスとは、預り資産の残高に応じて継続的に収益を得る形です。投資信託の信託報酬やファンドラップの運用報酬が代表で、売買のたびに稼ぐフロー型(委託手数料など)と対になります。

移行の背景には、委託手数料の無料化があります。ネット証券を中心に国内株式の売買手数料が無料化され、フロー型の収益が細りました。そこで各社は、投資信託の販売やファンドラップで預り資産を積み上げ、その残高に応じた安定収益を確保する方向に動いています。証券会社が販売・保有する公募投信は297.4兆円と過去最高(投資信託協会)、ファンドラップは22.3兆円に達し、ストック型の土台が広がってきました。これらは証券会社が顧客から預かる資産(預り資産)であり、運用会社が得る運用収益とは区別されます。

預り資産を増やせば、証券会社は儲かるのか?

預り資産を積み上げれば収益は安定しますが、「増やせば増やすほど儲かる」とは限りません。理由は、預り資産に対する料率(信託報酬など)の引き下げ競争です。

低コストのインデックス投信は176.6兆円、ETFは108.8兆円(いずれも株式投信の内数)と存在感を高めています。これらは信託報酬の料率が低いため、預り資産が同じだけ増えても、得られる収益は相対的に小さくなります。手数料無料化に続く「次の値下げ」は、すでに運用報酬の領域で進んでいるといえます。預り資産の量だけでなく、付加価値の高い提案でどれだけ収益率を保てるかが、ストック型ビジネスの成否を分けます。

ファンドラップや投資信託の販売は、どこまで広がるのか?

投資信託は、個人の金融資産に占める割合がまだ6.27%にとどまります。現金・預金に偏った家計の資産がどこまで投資へ動くかが、ストック型ビジネスの伸びしろを左右します。販売チャネルでは、銀行経由が20.0%で、残りの約8割は証券会社などが担っており、証券会社が主要な担い手です。

ファンドラップ(22.3兆円)は、運用や銘柄選びを証券会社に一任できるサービスで、投資の知識や時間がない個人の受け皿になっています。公募投信への資金流入は過去最長の21年連続(2004〜2024年、投資信託協会)で、新しいNISAも追い風です。一方で、低コスト商品の広がりで料率が下がるなか、預り資産の拡大を収益にどうつなげるかが各社の課題です。

中期見通し

近未来1-2年

新しいNISAを追い風に、投資信託やファンドラップへの資金流入が続き、預り資産は拡大します。一方で、低コストのインデックス投信の広がりで信託報酬の料率は下がり、預り資産の伸びがそのまま収益の伸びにはつながりにくくなります。

中期3-5年

預り資産あたりの収益率の低下が続くなか、各社は運用提案やファンドラップなど付加価値の高いサービスで収益率を保てるかが問われます。預り資産の「量」から「質」への競争に移ります。

長期5-10年

投資信託が個人の金融資産に占める割合は6.27%で、欧米と比べると低い水準です。「貯蓄から投資へ」が定着し、この比率が高まれば、ストック型収益が証券業の収益を底上げします。預り資産ベースの収益をどこまで育てられるかが、長期の収益性を決めます。

よくある質問

ストック型ビジネスとは何ですか?
預り資産の残高に応じて継続的に収益を得る形を指します。投資信託の信託報酬やファンドラップの運用報酬が代表で、売買のたびに稼ぐフロー型(委託手数料など)と対になります。委託手数料の無料化を背景に、証券各社はこのストック型への転換を進めています。
公募投資信託の純資産はどれくらいですか?
2025年11月末で297.4兆円と過去最高です(投資信託協会)。内訳は株式投信280.7兆円、公社債投信16.7兆円で、株式投信が9割超を占めます。株式投信の中では、低コストのインデックス投信(176.6兆円)やETF(108.8兆円)が存在感を高めています(いずれも株式投信の内数)。
ファンドラップとは何ですか?
運用方針の決定や銘柄選び、売買を証券会社に一任するサービスです。投資家は自分で個別の売買をせず、預けた資産の運用を任せます。契約金額は2025年11月末で22.3兆円に達し、預り資産に応じた運用報酬が証券会社のストック型収益の柱の一つになっています。
預り資産が増えれば証券会社の収益も増えますか?
収益は安定しますが、比例して増えるとは限りません。低コストのインデックス投信やETFが広がり、預り資産に対する信託報酬の料率の引き下げ競争が進んでいるためです。預り資産の量だけでなく、付加価値の高い提案で収益率をどれだけ保てるかが鍵になります。
投資信託は個人の資産のどれくらいを占めますか?
個人の金融資産に占める投資信託の割合は6.27%にとどまります(投資信託協会、資金循環統計ベース)。現金・預金に偏った家計の資産がどこまで投資へ動くかが、ストック型ビジネスの伸びしろを左右します。公募投信への資金流入は過去最長の21年連続(2004〜2024年)です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    投資信託協会 数字で見る投資信託
📄 資料DL💬 無料相談