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証券会社の収益構造|手数料無料化とストック型への転換【2026年版】

証券会社の収益は、株式売買の取次ぎや引受で得る受入手数料、自己売買のトレーディング損益、信用取引や配当などの金融収益で構成されます。2024年度の会員合算では、受入手数料3.06兆円・トレーディング損益0.78兆円・金融収益2.22兆円(いずれも金融費用を差し引く前の営業収益ベース)で、これらから金融費用を差し引いた純営業収益は4.52兆円です。委託手数料の無料化が進むなか、収益の軸足は売買のたびに稼ぐフロー型から、預り資産に応じたストック型へ移っています。本ページでは、証券業の収益内訳とその転換を整理します。

受入手数料(2024年度)
3.06兆円
委託・引受・募集・投信販売などの手数料、営業収益ベース
出典: 日本証券業協会 会員の決算概況
トレーディング損益(2024年度)
0.78兆円
自己資金による有価証券の売買損益
出典: 日本証券業協会 会員の決算概況
金融収益(2024年度・総額)
2.22兆円
信用取引の金利・配当など。金融費用控除後の純額は0.65兆円
出典: 日本証券業協会 会員の決算概況
純営業収益(2024年度)
4.52兆円
営業収益から金融費用を差し引いた、業界規模の主指標
出典: 日本証券業協会 会員の決算概況

証券業の営業収益(総額)の内訳の推移 (FY2018-2024年度、兆円)

受入手数料・トレーディング損益・金融収益(総額)・その他の積み上げ。営業収益から金融費用を差し引いた純営業収益が業界規模の主指標
読み解き

証券業の営業収益(金融費用を差し引く前の総額)は、2024年度に6.09兆円でした。内訳は受入手数料3.06兆円・トレーディング損益0.78兆円・金融収益(総額)2.22兆円が中心です。ここから金融費用1.57兆円を差し引いた純営業収益4.52兆円が、業界規模を表す主指標になります(営業収益の総額と純営業収益を混同しないことが重要です)。

近年の特徴は、金融収益(総額)の伸びです。2023年度の1.81兆円から2024年度の2.22兆円へ増えました。ただしこれは信用取引などの金利収入で総額が膨らんだもので、対応する金融費用1.57兆円を差し引いた純金融収益は0.65兆円にとどまります。金融収益の総額と純額の差が大きい点に注意が必要です。

一方、株式売買の委託手数料は受入手数料の一部にすぎません。2024年度の委託手数料は0.65兆円で、受入手数料3.06兆円の中では投資信託の販売などの「その他の受入手数料」が最大です。ネット証券を中心とした委託手数料の無料化が進むなかで、収益の柱は売買手数料から預り資産ベースのストック型へと移りつつあります。

受入手数料の内訳 (2024年度、億円)

委託手数料は受入手数料の一部、投資信託の販売などの「その他の受入手数料」が最大
読み解き

受入手数料3.06兆円(30,552億円)の内訳を見ると、最大は「その他の受入手数料」19,034億円で、投資信託の販売手数料や口座管理料などが含まれます。株式売買の委託手数料は6,480億円で受入手数料の一部にとどまり、引受け・売出しの手数料2,322億円、募集・売出しの取扱手数料2,716億円が続きます。

委託手数料の無料化が話題になりますが、無料化が直接およぶのは主に国内株式の委託手数料です。証券会社の手数料収益はそれ以外の幅広い項目で構成されており、とくに投資信託の販売を含む「その他の受入手数料」が収益の中心になっている点が、収益構造の転換を映しています。

業態別の収益構成の違い (2024年度=2025年3月期)

会計基準が異なるため規模の単純比較はできない。ここでは収益の「柱」の違いを示す
読み解き

業態によって収益の柱は大きく異なります。対面の大手である大和証券グループ本社は、投資信託や投資一任を含む「その他の受入手数料」が厚く、運用提案型の収益構成です。ネット専業の松井証券は、株式の委託手数料と信用取引の金利収入(金融収益)が柱で、無料化のなかでも信用取引などで収益を確保しています。マネックスグループは、米国株や暗号資産の取引に連動するトレーディング損益・金融収益の比重が高く、グループ連結で証券単体ではありません。

各社は会計基準が異なる(大和・松井は日本基準、マネックスは国際会計基準)ため、金額の単純な比較はできません。ここで重要なのは、同じ証券業でも業態によって「どこで稼ぐか」が大きく違うという点です。なお、金融収益は信用取引などで総額が大きく見えますが、対応する金融費用を差し引いた純額で捉える必要があります。

主要論点

手数料を無料にして、証券会社はなぜ儲かるのか?

ネット証券を中心に国内株式の委託手数料が無料化されました。それでも証券会社が収益を上げられるのは、委託手数料が収益の一部にすぎないからです。2024年度の会員合算では、受入手数料3.06兆円のうち委託手数料は0.65兆円にとどまり、投資信託の販売などの「その他の受入手数料」19,034億円が最大です。

無料化した株式売買の周辺で、各社は収益を確保します。信用取引の金利(金融収益)、投資信託の販売手数料や信託報酬、外国株、暗号資産、ポイント経済圏との連携などです。委託手数料の無料化はむしろ集客の入口であり、口座を獲得したうえで、預り資産に応じた継続的な収益や金融収益で稼ぐ構造へと組み替えが進んでいます。

金融収益の総額が大きいのに、なぜ規模は純営業収益で見るのか?

2024年度の金融収益(総額)は2.22兆円と、受入手数料に次ぐ大きさです。しかしこの金融収益には、信用取引などで投資家から得る金利のほか、それを賄うための資金調達コストに対応する部分が含まれます。対応する金融費用1.57兆円を差し引いた純金融収益は0.65兆円にとどまります。

このため、証券業の規模は、金融費用を差し引いた後の純営業収益4.52兆円で捉えます。営業収益(総額)6.09兆円のまま規模を語ると、金融収益の総額の膨らみで実態以上に大きく見えてしまいます。信用取引が活発な局面では金融収益の総額が大きく増えますが、純額で見ると影響は限定的です。収益構造を読むときは、総額と純額の区別が欠かせません。

フロー型からストック型への転換は、どこまで進むのか?

証券会社の収益は、売買のたびに稼ぐフロー型(委託手数料・トレーディング)から、預り資産に応じて継続的に得るストック型(投資信託の信託報酬・ラップ口座の運用報酬)へと軸足を移しています。委託手数料の無料化が、この転換を加速させました。受入手数料の中で投信販売などの「その他の受入手数料」が最大になっているのも、その表れです。

ただし、ストック型への移行も万能ではありません。低コストのインデックス型投資信託が広がるなかで、預り資産に対する運用報酬率(信託報酬)の引き下げ競争が進んでおり、預り資産を積み増しても収益率は逓減しやすい構造です。手数料無料化に続く「次の値下げ」は、すでに運用報酬の領域で始まっています。預り資産をどれだけ積み上げ、付加価値の高い提案で収益率を保てるかが、転換の成否を左右します。

中期見通し

近未来1-2年

委託手数料の無料化が定着するなか、各社は信用取引の金利収入、投資信託の販売、外国株・暗号資産などで収益を確保します。金融収益は金利環境と信用取引の活発さに左右されるため、総額の振れは大きくなります。

中期3-5年

預り資産に応じたストック型の収益への転換が一段と進みます。一方で運用報酬率の引き下げ競争が続くため、預り資産の積み増しが収益にどう結びつくかが収益構造の質を分けます。

長期5-10年

「貯蓄から投資へ」が定着すれば、預り資産ベースの収益が証券業の収益を底上げします。フロー型の手数料に依存しない収益構造をどこまでつくれるかが、長期の収益性を決めます。

よくある質問

証券会社の収益はどんな構成ですか?
証券会社の収益は、受入手数料(株式売買の取次ぎや引受、投資信託の販売など)、トレーディング損益(自己資金の売買)、金融収益(信用取引の金利・配当など)で構成されます。2024年度の会員合算(営業収益ベース)では、受入手数料3.06兆円・トレーディング損益0.78兆円・金融収益2.22兆円で、ここから金融費用を差し引いた純営業収益は4.52兆円です。
手数料が無料なのに証券会社が儲かるのはなぜですか?
無料化が直接およぶのは主に国内株式の委託手数料で、これは証券会社の収益の一部にすぎません。2024年度の委託手数料は0.65兆円で、受入手数料3.06兆円の中では投資信託の販売などの「その他の受入手数料」が最大です。信用取引の金利、投資信託の信託報酬、外国株、ポイント経済圏との連携など、株式売買の周辺で収益を確保しています。
純営業収益と営業収益はどう違いますか?
営業収益は、受入手数料・トレーディング損益・金融収益などの総額です(2024年度の会員合算で6.09兆円)。純営業収益は、ここから金融費用1.57兆円を差し引いた額(4.52兆円)で、業界規模を表す主指標です。金融収益は信用取引などで総額が大きく見えますが、金融費用を差し引いた純額で捉える必要があります。
金融収益が大きいのはなぜですか?
金融収益には、信用取引で投資家に貸し付ける資金の金利や、保有有価証券の配当などが含まれます。信用取引が活発な局面では総額が膨らみます。ただし、その原資を調達するための金融費用が対応するため、2024年度は金融収益(総額)2.22兆円に対し、金融費用1.57兆円を差し引いた純金融収益は0.65兆円でした。総額と純額の差が大きい項目です。
ストック型の収益とは何ですか?
売買のたびに得る手数料(フロー型)に対し、預り資産に応じて継続的に得る収益(投資信託の信託報酬、ラップ口座の運用報酬など)をストック型と呼びます。委託手数料の無料化を背景に、各社はこのストック型の収益への転換を進めています。受入手数料の中で投資信託の販売などの「その他の受入手数料」が最大になっているのも、その表れです。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    日本証券業協会 会員の決算概況
  2. 2.
    各社 決算短信(2025年3月期)
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