証券業界の市場規模・主要企業・動向
日本の証券業は純営業収益4.5兆円規模で、野村・大和の独立系大手やSBI・楽天などネット専業が対面とネットの二極で競合し、新NISAを起点に個人投資家と預り資産が拡大しています。
証券業とは、投資家の注文を取引所につなぐ委託売買、新規発行の株式・債券を引き受ける引受、自己資金で売買する自己売買、投資信託やラップ口座(運用を証券会社に一任する口座)を通じた資産運用・販売を担う金融業です。事業規模は純営業収益(受入手数料などの収益から費用を差し引いた、証券会社の実質的な稼ぎ)で4.5兆円(2024年度、証券会社259社の合算)、舞台となる株式市場は年間売買代金1,510兆円・時価総額1,192兆円(2025年)にのぼります。野村・大和の独立系大手、メガバンク系列の証券会社、SBI・楽天などネット専業が、対面とネットの二極で競合します。委託手数料の無料化と新NISAを起点とした「貯蓄から投資へ」の流れのなかで、売買手数料から預り資産ベースのストック型収益への転換が進んでいます。本ページでは、証券業界を、市場規模、業態構造、収益構造、主要プレイヤーまで順に整理します。
業界サマリ
業界概要
証券業とは、投資家と資本市場を仲介する金融業です。担う機能は、投資家の注文を取引所に取り次ぐ委託売買(ブローカレッジ)、新規発行の株式・債券を引き受けて投資家に販売する引受(アンダーライティング)、自己資金で売買する自己売買(ディーリング)、投資信託やラップ口座を通じた資産運用・販売の4つです。日本では証券会社が金融商品取引業の登録を受けて営み、野村・大和の独立系大手(銀行系列に属さない総合証券)、メガバンク系列、ネット専業、地域の中堅対面が、対面とネットの二極で並立しています。
- 証券業は委託売買・引受・自己売買・資産運用の4機能を担い、事業規模は純営業収益で4.5兆円(2024年度、会員259社)です。舞台となる株式市場は年間売買代金1,510兆円・時価総額1,192兆円にのぼります。
- 証券会社は対面とネットの二極で構成されます。野村・大和の独立系大手、SMBC日興・みずほ証券などメガバンク系列、SBI・楽天・マネックス・松井のネット専業、東海東京・岡三などの中堅対面が並立します。
- 新NISAを起点に「貯蓄から投資へ」が進行しています。個人株主は1,599万人と過去最高、公募投信の純資産は297兆円に達し、証券会社は預り資産ベースのストック型収益への転換を競っています。
市場動向
証券業の事業規模は、会員259社の純営業収益で4.52兆円(2024年度)です。2018年度の3.14兆円から拡大し、株高と新NISAが追い風となっています。市場側では、東証の年間売買代金が1,510兆円(2025年・片道)、時価総額が1,192兆円へ拡大しました。委託手数料の無料化が広がるなか、収益の軸足は売買手数料から預り資産ベースのストック型へ移っています。
- 純営業収益は4.52兆円(2024年度、会員259社)で、2018年度の3.14兆円から拡大しました。受入手数料3.06兆円・トレーディング損益0.78兆円・金融収益2.22兆円で構成されます。
- 株式の年間売買代金は1,510兆円(2025年・片道)、時価総額は1,192兆円です。上場会社数は本則市場で3,782社、2025年のIPOは66社と前年から減少しました。
- 公募投信の純資産は297兆円・過去最高(2025年11月)で、ラップ口座も22.3兆円に拡大しています。新NISAの口座数は2,696万、買付額は累計63兆円に達しています。
競争環境
日本の証券会社は、対面とネットの二極で競合します。独立系大手の野村・大和、SMBC日興・みずほ証券・三菱UFJモルガン・スタンレーといったメガバンク系列、SBI・楽天・マネックス・松井などのネット専業、東海東京・岡三などの中堅対面が並立します。独立系では野村ホールディングスが当期純利益3,407億円(2024年度・過去最高)で突出し、ネット専業はSBI証券のグループ口座が1,500万を超えるなど、口座数と手数料無料化で個人の取引を取り込んでいます。共通の論点は、手数料無料化への対応、預り資産ビジネスへの転換、銀証連携(銀行と証券会社の連携)・再編の3つです。
- 独立系大手では、野村ホールディングスが当期純利益3,407億円(2024年度・過去最高)、大和証券グループ本社が1,543億円です。営業・投資銀行・資産運用を抱える総合証券として、対面の運用提案とホールセール業務に強みを持ちます。
- ネット専業では、SBI証券のグループ口座が1,500万を超え、楽天証券のNISA口座が700万を突破しました。マネックス・松井を含め、手数料無料化とポイント経済圏の連携で個人投資家の取引を取り込んでいます。
- メガバンク系列・中堅対面では、SMBC日興・みずほ証券・三菱UFJモルガン・スタンレーが親グループの顧客基盤と銀証連携で展開し、東海東京・岡三などが地域に根ざした対面営業を続けています。
市場規模推移
2018-2024 · 純営業収益 / 株式売買代金 (片道)証券業の純営業収益の推移 (兆円)
株式の年間売買代金 (片道、兆円、JPX)
証券業の事業規模は、証券会社の純営業収益で表されます。純営業収益とは、株式売買の取次ぎや引受で得る受入手数料、自己売買のトレーディング損益、信用取引(投資家が証券会社から資金や株式を借りて行う取引)などの金融収益を合算し、そこから金融費用を差し引いた、証券会社の実質的な稼ぎです。
日本証券業協会の会員259社合算で、純営業収益は2024年度に4.52兆円となり、2018年度の3.14兆円から拡大しました。背景には、株価指数の上昇による売買の活発化、2024年1月開始の新NISAによる個人マネーの流入、金利のある世界への転換があります。市場側でも、東証の年間売買代金は2025年に1,510兆円(片道)、時価総額は1,192兆円へ拡大し、証券会社の収益機会を押し上げています。
証券会社の収益は、委託手数料・引受手数料などの受入手数料、自己売買のトレーディング損益、信用取引や配当などの金融収益で構成されます。2024年度の会員合算では、受入手数料が3.06兆円、トレーディング損益が0.78兆円、金融収益が2.22兆円でした。
この構造は転換期にあります。ネット証券を中心に国内株式の売買手数料が無料化され、売買のたびに稼ぐフロー型の収益モデルが細りました。代わって各社が強化するのが、投資信託やラップ口座の預り資産に応じて継続的に得るストック型の収益です。公募投信の純資産は297兆円、ラップ口座の契約金額は22.3兆円と拡大しており、「資産を売買させる」ビジネスから「資産を預かり続ける」ビジネスへの移行が、業界共通のテーマとなっています。
主要トピック
業界構造
主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要証券業界は、投資家と資本市場を仲介する証券会社を中核に、その活動を支える取引所・規制当局・周辺機関が層をなす構造です。証券会社は、投資家の注文を取引所につなぐ委託売買、新規発行の株式・債券を引き受ける引受、自己資金で売買する自己売買、投資信託やラップ口座を通じた資産運用・販売の4機能を担います。
制度基盤を支えるのが、市場を運営する日本取引所グループ(JPX)・東京証券取引所、金融商品取引業の登録・監督を担う金融庁、業界の自主規制を担う日本証券業協会です。売買の決済を担う日本証券クリアリング機構や、株式の電子的な管理を担う証券保管振替機構(ほふり)も、市場の土台を形づくっています。
証券会社は、独立系大手・銀行系・ネット専業・中堅対面・外資系に大別され、対面とネットの二極で競い合います。独立系では野村ホールディングスが当期純利益3,407億円(2024年度・過去最高)で突出し、大和証券グループ本社(同1,543億円)が続きます。両社は営業・ホールセール・資産運用を抱える総合証券です。
メガバンク系列では、SMBC日興証券・みずほ証券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券が、親グループの顧客基盤と銀証連携を強みとします(いずれも非上場の子会社)。ネット専業では、SBI証券(グループ口座1,500万超)・楽天証券(NISA口座700万)・マネックス・松井が、手数料無料化とポイント経済圏で個人投資家を取り込んでいます。地域には東海東京・岡三などの中堅対面が根ざしています。
証券会社の収益は、委託手数料の無料化を背景に、売買のたびに稼ぐフロー型から、預り資産に応じて継続的に得るストック型へ軸足を移しています。公募投信の純資産は297兆円、ラップ口座の契約金額は22.3兆円に拡大しました。背後では、投資信託を組成する資産運用会社、資産を管理する信託銀行、企業を調査するアナリストや格付会社が、証券会社の業務を支えています。
需要側では、新NISAを起点に個人投資家が拡大し、個人株主は1,599万人と過去最高です。一方、日々の株式売買では海外投資家が委託の約66%を占め、信託銀行や投資信託などの機関投資家、自社株を持ち合う事業法人が市場に参加します。証券会社は、これら多様な投資家層と、資金調達を行う発行体(上場企業)の双方を仲介しています。
業界の3大論点
手数料無料化が進むなか、証券会社はどうやって稼ぐのか?
ネット証券を中心に国内株式の売買手数料が無料化され、売買のたびに手数料を得るフロー型の収益モデルは細りつつあります。それでも証券業全体の純営業収益は2018年度の3.14兆円から2024年度の4.52兆円へ拡大しました。稼ぎ方の組み替えが進んでいます。
第一の柱は、預り資産に応じて継続的に得るストック型の収益です。投資信託の信託報酬の一部やラップ口座の運用報酬は、顧客が資産を預け続けるかぎり毎年得られます。公募投信の純資産は297兆円、ラップ口座の契約金額は22.3兆円に拡大しており、「売買させる」ビジネスから「預かり続ける」ビジネスへの移行が進んでいます。
第二の柱は、手数料以外の収益です。2024年度の会員合算では、自己売買のトレーディング損益が0.78兆円、信用取引や配当などの金融収益が2.22兆円を占めます。さらに、企業の資金調達を支える引受や、M&Aの助言といった投資銀行業務も収益源です。ネット証券は、信用取引の金利収入や、株式貸借、外国株・暗号資産、ポイント経済圏との連携など、無料化した株式売買の周辺で収益を確保する戦略をとっています。
ただしストック型への移行も万能ではありません。低コストのインデックス型投資信託が広がるなかで、預り資産に対する運用手数料率である信託報酬の引き下げ競争が進んでおり、預り資産を積み増しても収益率は逓減しやすい構造です。手数料無料化に続く「次の値下げ」は、すでに運用報酬の領域で始まっています。
「貯蓄から投資へ」は本当に進んでいるのか?
2024年1月に始まった新NISA(少額投資非課税制度)を契機に、個人マネーの動きは確かに変わりました。一方で、家計の資産構成はなお現預金に偏っており、変化は道半ばです。
進んでいる面を見ると、個人株主は1,599万人と過去最高(2024年度末・名寄せ人数)を更新し、20歳以上40歳未満の株主が初めて200万人を超えました。公募投信の純資産は297兆円、NISA口座は2,696万・買付額は累計63兆円に達し、若年層を中心に投資の裾野が広がっています。証券会社にとっては、新規口座の獲得と預り資産の積み上げの好機です。
ただし、伸びしろも大きいのが実態です。個人の金融資産2,194兆円のうち、現金・預金が51.0%を占め、上場株式は7.7%にとどまります。日々の株式売買でも、海外投資家が委託の約65%を占めるのに対し、個人は約28%です。つまり個人は、保有の面でも売買の面でも、市場のマジョリティには達していません。物価上昇による現預金の実質的な目減りや、金利のある世界への転換が、今後の個人の運用行動をどこまで動かすかが論点です。
対面証券とネット証券は、どう棲み分けるのか?
証券会社は対面とネットの二極に分かれ、それぞれ異なる顧客層と収益モデルで競っています。手数料無料化は、この二極化を加速させました。
ネット専業は、低コストの非対面チャネルで個人の取引を取り込みます。SBI証券のグループ口座は1,500万を超え、楽天証券のNISA口座は700万を突破しました。株式売買手数料の無料化を集客の入口とし、信用取引の金利、投資信託、外国株、ポイント経済圏との連携で収益を確保します。マネックス・松井を含め、若年層と新規投資家の獲得で先行しています。
対面の独立系大手・銀行系は、富裕層や法人を主な顧客とし、運用提案や相続・事業承継、引受・M&Aといった助言で価値を出します。野村ホールディングスは当期純利益3,407億円(2024年度・過去最高)、大和証券グループ本社は1,543億円を稼ぎました。メガバンク系列のSMBC日興・みずほ証券・三菱UFJモルガン・スタンレーは、親グループの顧客基盤と銀証連携を強みとします。手数料の薄利化が進むなか、両者とも預り資産に応じたストック型のビジネスへ軸足を移している点は共通です。
よくある質問 (FAQ)
証券業界の市場規模はどれくらいですか?
証券会社の主要プレイヤーはどこですか?
証券会社はどうやって収益を上げていますか?
手数料無料化で証券会社の経営は成り立つのですか?
ネット証券と対面証券の違いは何ですか?
新NISAで個人投資家はどれくらい増えましたか?
日本株は誰が一番売買しているのですか?
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