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TOPIC DETAIL · REFRIGERANT REGULATION

冷媒規制とフロン排出抑制法|低GWP冷媒への転換と機器の管理【2026年版】

エアコンや冷凍冷蔵機器の冷媒に使われるフロン類は、強力な温室効果ガスです。日本ではフロン排出抑制法が、機器の製造から使用・廃棄までを通じてフロン類の排出を抑える仕組みを定めています。業務用の冷凍空調機器は「第一種特定製品」として、使う側に点検や冷媒の回収が義務づけられ、作る側には低GWP冷媒(R32など)への転換が求められています。空調業界にとって、冷媒規制は製品設計の制約であり、競争軸でもあります。制度の全体像を整理します。

フロン排出抑制法は何を規制するのか

対象は業務用の冷凍空調機器(第一種特定製品)

フロン排出抑制法の規制の中心は、第一種特定製品です。これは、業務用のエアコン(空調機器)や冷凍・冷蔵機器であって、冷媒としてフロン類が使われているものを指します。対象かどうかは、使う場所や用途ではなく、その機器が業務用として製造・販売されたかで判断されます。一方、家庭用のエアコン・冷蔵庫・衣類乾燥機や、使用済み自動車のカーエアコンは対象外で、それぞれ家電リサイクル法・自動車リサイクル法で冷媒が回収されます(カーエアコンは第二種特定製品)。

使う側の義務――点検・漏えい報告・回収

第一種特定製品を使う事業者は「管理者」と呼ばれ、いくつかの義務を負います。まず点検で、すべての第一種特定製品について簡易点検を行い、圧縮機の定格出力7.5kW以上の機器はより詳しい定期点検の対象となります。次に算定漏えい量の報告で、事業者(法人)全体で年間1,000t-CO2以上のフロン類が漏えいした場合、国への報告が必要です(漏えい量は冷媒の量をGWPで二酸化炭素に換算して算定します)。さらに、機器の整備・廃棄時の冷媒の回収が義務づけられ、登録業者が回収し、伝票(行程管理制度)で管理されます。冷媒をみだりに大気へ放出することは禁止されています。

作る側の義務――低GWP冷媒への転換(指定製品制度)

機器を作る側(製造・輸入業者)には、指定製品制度によって、地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒への転換が求められます。これは、製品区分ごとに環境影響度(GWP)の目標値目標年度を定め、各メーカーが出荷台数で加重平均したGWPを目標値以下に抑えることを求める仕組みです。個々の製品が必ず目標値以下という意味ではなく、メーカーの出荷全体で達成する規制です。使う側(管理者)への規制とは異なり、こちらは作る側(メーカー)への規制である点が特徴です。

主なフロン類と地球温暖化係数(GWP)

GWPは、二酸化炭素(CO2=1)を基準に、地球温暖化をもたらす程度を示す数値。値が大きいほど温室効果が強い
R404A
地球温暖化係数(GWP)
3,920
主な用途
業務用冷凍冷蔵(高GWP)
R410A
地球温暖化係数(GWP)
2,090
主な用途
従来の業務用・家庭用エアコン冷媒
R407C
地球温暖化係数(GWP)
1,770
主な用途
冷凍冷蔵
R134a
地球温暖化係数(GWP)
1,430
主な用途
自動車用エアコン・ターボ冷凍機
R32
地球温暖化係数(GWP)
675
主な用途
エアコンの低GWP微燃性冷媒(移行先)
CO2(自然冷媒)
地球温暖化係数(GWP)
1
主な用途
冷凍冷蔵・給湯等の自然冷媒
読み解き

冷媒の環境への影響は、地球温暖化係数(GWP)で測ります。GWPは二酸化炭素(CO2)を1としたときの温室効果の強さで、値が大きいほど、大気に漏れた際の温暖化への影響が大きくなります。従来の業務用エアコンで使われてきたR410AはGWP2,090、業務用冷凍冷蔵で使われるR404AはGWP3,920と高い一方、エアコンの移行先であるR32はGWP675と、R410Aの3分の1程度です。自然冷媒であるCO2はGWP1で、アンモニアとともにノンフロンの選択肢となります。冷媒規制は、この高GWP冷媒から低GWP冷媒・自然冷媒への転換を促すものです。

エアコンの低GWP化(指定製品制度の目標)

メーカーが出荷台数の加重平均で達成する目標GWP。多くのエアコン区分で目標GWPは750に設定されている
家庭用エアコン
目標GWP
750
目標年度
2018年度
冷媒の転換
R410A(2090)→R32(675)(達成済)
業務用エアコン(店舗・事務所用)
目標GWP
750
目標年度
2025年度
冷媒の転換
R410A(2090)→R32(675)(移行中)
業務用エアコン(法定冷凍能力3トン未満)
目標GWP
750
目標年度
2020年度
冷媒の転換
R410A(2090)→R32(675)(達成済)
ビル用マルチエアコン(一部区分)
目標GWP
750
目標年度
2025年度
冷媒の転換
R410A(2090)→R32(675)(移行中)
読み解き

指定製品制度では、エアコンの区分ごとに目標GWPと目標年度が定められています。家庭用エアコンはすでに目標(GWP750、2018年度)を達成し、R410A(GWP2,090)からR32(GWP675)への転換が完了しています。なお家庭用エアコンは、使う側の第一種特定製品としての義務(点検・回収)は対象外ですが、作る側の低GWP化を求める指定製品制度では対象となります。業務用エアコンは、店舗・事務所用やビル用マルチなど区分ごとに目標年度が設定され、R32などの低GWP冷媒への移行が段階的に進んでいます。目標GWPが多くの区分で750に置かれているのは、R32(GWP675)を主軸とした転換を想定しているためです。ただし、これはメーカーの出荷全体での加重平均目標であり、個々の製品すべてが目標値以下になるという意味ではありません。

冷媒はなぜ変わってきたのか

オゾン層の保護から地球温暖化の抑制へ

冷媒の規制は、まずオゾン層の保護から始まりました。かつて使われていたCFC(特定フロン)やHCFC(指定フロン)はオゾン層を破壊するため、国際的な取り決めのもとで生産が段階的に廃止され、HCFCであるR-22などの生産も2019年に全廃されました。これに代わって普及したのが、オゾン層を破壊しないHFC(代替フロン)です。しかし、HFCはオゾン層は壊さないものの、R410A(GWP2,090)のようにGWPが高く、地球温暖化への影響が大きいという課題がありました。

低GWP冷媒・自然冷媒への移行

そこで規制の焦点は、オゾン層の保護から地球温暖化の抑制へと移りました。フロン排出抑制法の指定製品制度は、このHFCについて、よりGWPの低い冷媒への転換を促すものです。エアコンでは、R410A(GWP2,090)からR32(GWP675)への移行が代表例です。R32は微燃性があるため、安全性に配慮した設計や施工が求められますが、GWPがR410Aの3分の1程度に下がります。さらに冷凍冷蔵の分野では、CO2やアンモニアといった自然冷媒(ノンフロン)の採用も進んでいます。冷媒の低GWP化は、機器の省エネ性能とあわせて、空調メーカーの技術開発の重要なテーマとなっています。

主要論点

なぜ業務用の冷凍空調機器だけ規制が厳しいのか?

フロン排出抑制法で点検や冷媒回収の義務がかかるのは、業務用の冷凍空調機器(第一種特定製品)です。家庭用エアコンや冷蔵庫、カーエアコンは対象外で、別の法律(家電リサイクル法・自動車リサイクル法)で冷媒が回収されます。

業務用機器が重点的に規制される理由は、その規模と冷媒の量にあります。事務所・店舗・工場・倉庫などで使われる業務用の空調・冷凍冷蔵機器は、家庭用に比べて冷媒の充塡量が多く、長期間にわたって使われます。そのため、点検を怠って冷媒が漏れると、大量のフロン類が大気へ排出されるおそれがあります。

こうした機器を使う事業者に、簡易点検・定期点検(7.5kW以上)、年間1,000t-CO2以上の漏えいの報告、整備・廃棄時の回収を求めることで、使用中や廃棄時の排出を抑えるのが、第一種特定製品の管理の狙いです。家庭用は台数が多い一方で1台あたりの冷媒量が少なく、リサイクル制度で回収する枠組みが選ばれています。

冷媒規制は空調メーカーにとって何を意味するのか?

冷媒規制は、空調メーカーにとって製品設計上の制約であると同時に、競争軸でもあります。指定製品制度により、メーカーはエアコンなどの区分ごとに定められた目標GWP(多くは750)を、出荷台数の加重平均で達成しなければなりません。これは、高GWP冷媒であるR410A(GWP2,090)から、R32(GWP675)などの低GWP冷媒への転換を促します。

低GWP冷媒への対応は、単に冷媒を置き換えれば済むものではありません。R32のような冷媒には微燃性があるため、安全性に配慮した機器設計や、据付・メンテナンスの技術が求められます。省エネ性能を維持・向上させながら低GWP化を実現する技術力が、メーカーの競争力を左右します。

さらに、冷媒の漏えい防止や回収のしやすさ、冷媒充塡量の低減といった設計上の工夫も、規制対応の一環として求められています。冷媒規制への対応は、省エネ・脱炭素と並ぶ、空調メーカーの重要な開発テーマとなっています。

冷媒はこれからどう変わっていくのか?

冷媒の規制は、オゾン層の保護から地球温暖化の抑制へと軸足を移しながら、段階的に強化されてきました。オゾン層を破壊するCFC・HCFCの全廃を経て、現在は、オゾン層は壊さないものの温暖化への影響が大きいHFC(代替フロン)について、より低GWPの冷媒への転換が進んでいます。

エアコンでは、家庭用がすでにR32(GWP675)への転換を終え、業務用も区分ごとに目標年度が設定されて移行が進んでいます。今後は、業務用エアコンのさらなる低GWP化に加え、冷凍冷蔵分野でのCO2やアンモニアといった自然冷媒(ノンフロン)の採用拡大が見込まれます。

もっとも、低GWP冷媒や自然冷媒には、微燃性や高圧、毒性といった扱いの難しさもあり、安全性・省エネ性・経済性のバランスをとりながらの移行となります。冷媒規制は今後も、国際的な枠組みや技術の進展にあわせて見直されていく見通しで、空調業界は製品開発と規制対応を両輪で進めていくことになります。

よくある質問

フロン排出抑制法とは何ですか?
フロン排出抑制法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律)は、冷媒にフロン類を使う機器から、フロン類が大気へ排出されるのを抑えるための法律です(環境省・経済産業省)。機器の製造から使用・廃棄までのライフサイクルを通じて、作る側には低GWP冷媒への転換、使う側には点検や冷媒の回収を求めています。
第一種特定製品とは何ですか?
第一種特定製品とは、業務用のエアコン(空調機器)や冷凍・冷蔵機器のうち、冷媒としてフロン類が使われているものを指します。対象かどうかは、業務用として製造・販売されたかで判断されます。家庭用のエアコン・冷蔵庫や、使用済み自動車のカーエアコンは対象外で、それぞれ家電リサイクル法・自動車リサイクル法で回収されます。
業務用エアコンを使う事業者には、どんな義務がありますか?
第一種特定製品を使う事業者(管理者)には、主に3つの義務があります。1つ目は点検で、すべての機器の簡易点検に加え、7.5kW以上の機器は定期点検の対象です。2つ目は算定漏えい量の報告で、事業者全体で年間1,000t-CO2以上のフロン類が漏えいした場合、国に報告します。3つ目は整備・廃棄時の冷媒の回収で、登録業者が回収し、伝票(行程管理制度)で管理します。
GWP(地球温暖化係数)とは何ですか?
GWP(地球温暖化係数)は、二酸化炭素(CO2)を1としたときに、その物質が地球温暖化をもたらす程度を示す数値です。値が大きいほど温室効果が強く、大気に漏れた際の温暖化への影響が大きくなります。冷媒では、従来の業務用エアコンのR410AがGWP2,090、移行先のR32がGWP675、自然冷媒のCO2がGWP1です。
R32はなぜ使われるようになったのですか?
R32は、エアコンの冷媒として使われてきたR410A(GWP2,090)に比べ、GWPが675とおよそ3分の1に低いためです。フロン排出抑制法の指定製品制度で、エアコンには目標GWP(多くは750)が定められており、家庭用エアコンはR410AからR32への転換をすでに終え、業務用エアコンも段階的に移行が進んでいます。R32は微燃性があるため、安全性に配慮した設計・施工が求められます。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    環境省・経済産業省 フロン排出抑制法Q&A(第6版)
  2. 2.
    日本冷凍空調工業会 フロン排出抑制法の指定製品 目標値・目標年度 一覧表(2024年10月)
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