最終更新
STAT DETAIL · APPLICATIONS

リチウムイオン電池の用途別市場|車載・民生・定置と電池の種類【2026年版】

リチウムイオン電池の用途は、EVなどの車載用、スマートフォンや電動工具などの民生用、家庭用・系統用の蓄電システムなどの定置用に分かれます。国内では金額の約8割強を車載用が占め(2023年 約87%・2024年 約81%)、EV市場の拡大とともに車載用の比率が高まってきました。用途ごとに求められる容量・出力・安全性・コストが異なり、使われる電池の種類(三元系・リン酸鉄・チタン酸リチウムなどの化学)も違います。

国内リチウムイオン蓄電池の用途別 金額構成比の推移(2012-2024年、%)

車載用とその他(民生・定置用等)の金額構成比。車載用は2012年の約40.5%から2023年 約87%へ高まり、2024年は約81%
単位: %
出典: 経済産業省 生産動態統計 / 電池工業会 二次電池販売金額長期推移(車載用/その他の金額から構成比を算出)
2012201320142015201620172018201920202021202220232024
車載用%40.5043.9057.5056.1060.2063.4069.6068.9070.5074.7080.1086.6080.60
その他(民生・定置用等)%59.5056.1042.5043.9039.8036.6030.4031.1029.5025.3019.9013.4019.40
合計(%100100100100100100100100100100100100100
読み解き

国内のリチウムイオン蓄電池を金額の用途構成比で見ると、車載用の比率が2012年の約40.5%から2023年には約87%へと大きく高まりました。EV・ハイブリッド車向けの需要が拡大した一方、かつて市場の中心だった民生用を含む「その他」の比率は低下しています。用途の重心が民生から車載へと移ってきたことがわかります。

2024年は車載用の比率が約81%へとやや下がりました。これはEV需要が一服して車載用の金額が減る一方、民生・定置用などの「その他」が回復したためです。ここでの構成比は販売金額をもとに算出したもので、民生用と定置用のそれぞれの金額の内訳は公表統計にないため、以下では用途ごとの特徴を定性的に整理します。

このグラフに関連するトピック

リチウムイオン電池の主な種類(正極材の化学)と用途

正極材などの化学の違いによる特徴と、主に使われる用途。数値でなく定性的な特徴で整理
三元系(NCM・NCA)
電池の種類(化学)
ニッケル・コバルト・マンガン(またはアルミ)を使う正極材。エネルギー密度が高く高容量だが、コバルトを使うためコストは高め
特徴
EV(高性能・長距離)、民生
リン酸鉄(LFP)
電池の種類(化学)
鉄とリンを使う正極材。安全性・長寿命・低コストに優れる一方、エネルギー密度はやや低い。中国勢が採用を主導
特徴
EV(普及価格帯)、定置用
チタン酸リチウム(LTO、東芝のSCiB)
電池の種類(化学)
負極にチタン酸リチウムを使う。高い安全性・長寿命・急速充電・低温性能が特色で、エネルギー密度は低い
特徴
定置・産業用、バス・鉄道など特定用途
コバルト酸リチウム(LCO)
電池の種類(化学)
コバルトを使う正極材。エネルギー密度が高く小型化に向く。実用化初期から民生用で使われてきた
特徴
スマートフォン・ノートPCなどの民生小型
読み解き

リチウムイオン電池は、正極材などに使う材料(化学)によって、エネルギー密度・安全性・寿命・コストが異なります。高容量の三元系(NCM・NCA)は長距離EVや高性能機器に、安全・低コストのリン酸鉄(LFP)は普及価格帯のEVや定置用に、それぞれ向いています。LFPは中国勢が採用を主導し、世界的に採用が広がっています。

チタン酸リチウム(LTO)を使う東芝のSCiBは、安全性・長寿命・急速充電・低温性能に特色があり、定置・産業用やバス・鉄道などの特定用途で使われます。コバルト酸リチウム(LCO)は実用化初期から民生小型で使われてきました。次世代技術として、電解液を固体に置き換える全固体電池の開発も各社で進みますが、量産・本格普及には時間を要する段階です。

用途別に市場をどう読むか

車載用 — 金額の約8割強を占める最大の用途

車載用は、EV(電気自動車)やハイブリッド車に搭載される電池で、国内の販売金額の約8割強(2023年 約87%・2024年 約81%)を占める最大の用途です。求められるのは、走行距離を左右する大容量、衝突や発熱に対する安全性、そして車両価格に影響するコストです。化学では、高容量の三元系(NCM・NCA)と、安全・低コストのリン酸鉄(LFP)が二極化しており、高性能・長距離向けに三元系、普及価格帯にLFPという使い分けが進んでいます。国内ではパナソニックやGSユアサが、世界では中韓勢が中心的な担い手です。

民生用 — 成熟した市場、数量では今も大きい

民生用は、スマートフォンやノートパソコン、電動工具などに使われる小型の電池です。リチウムイオン電池が実用化された当初からの用途で、小型・軽量が重視されます。化学では、小型化に向くコバルト酸リチウム(LCO)や三元系が使われます。金額面では車載用に主役を譲りましたが、販売数量(個)では今も大きく、スマートフォンなどに膨大な数のセルが使われています。国内では村田製作所(ソニーから電池事業を承継)やTDK(子会社がスマートフォン向けで世界大手)が担い手です。

定置用 — 脱炭素で立ち上がる新たな用途

定置用は、家庭や工場、電力系統に据え置いて電気を蓄える蓄電システムに使われる電池です。脱炭素と再生可能エネルギーの拡大を背景に、太陽光と組み合わせる家庭用や、電力系統につなぐ系統用の需要が新たに立ち上がっています。求められるのは、長寿命・安全性・設置コストで、安全・長寿命のリン酸鉄(LFP)やチタン酸リチウム(東芝のSCiB)などが使われます。定置用・系統用の市場や政策の詳細は、関連ページで扱います。

主要論点

なぜ用途の重心が民生から車載へ移ったのか?

国内のリチウムイオン蓄電池は、金額の用途構成比で見ると、車載用の比率が2012年の約40.5%から2023年には約87%へと大きく高まりました。かつて市場の中心だった民生用に対し、車載用が金額面での主役になったということです。

背景にあるのは、EV・ハイブリッド車の普及です。1台のEVには、スマートフォン数千台分に相当する大容量の電池が積まれるため、EVの販売が伸びると車載用の金額が大きく増えます。一方、スマートフォンなどの民生市場は成熟し、1台あたりの電池は小型のため、数量では大きくても金額面での伸びは限られます。

この結果、数量(個)では民生用が今も大きい一方、金額では車載用が約8割強を占める構造になりました。2024年はEV需要の一服で車載用の比率がやや下がりましたが、脱炭素の流れのなかで、車載用と定置用が需要をけん引する構図は続く見通しです。

三元系とリン酸鉄(LFP)は、どう使い分けられるのか?

車載用の電池では、正極材の化学によって、大きく三元系(NCM・NCA)リン酸鉄(LFP)の二つが使い分けられています。三元系はニッケルやコバルトを使い、エネルギー密度が高く高容量です。長い走行距離が求められる高性能なEVに向きますが、コバルトを使うためコストは高めです。

リン酸鉄(LFP)は鉄とリンを使い、安全性・長寿命・低コストに優れます。エネルギー密度はやや低いものの、コストと安全性を重視する普及価格帯のEVや定置用に向いており、中国勢が採用を主導して世界的に採用が広がっています。

かつては高容量の三元系が車載用の主流と見られていましたが、コストと安全性を武器にLFPが採用を広げ、二極化が進んでいます。日本勢は高性能・安全性で強みを持つ一方、LFPで先行する中国勢との競争にどう向き合うかが課題です。用途と化学の組み合わせが、競争の構図を左右しています。

全固体電池など次世代技術は、用途をどう変えるのか?

現在の市場の主役は、電解液を使う液系のリチウムイオン電池です。そのなかで、次世代技術として注目されるのが、電解液を固体に置き換える全固体電池です。安全性やエネルギー密度の向上が期待され、トヨタや日産、マクセル、村田製作所などが開発を進めています。

ただし、全固体電池は製造技術やコストに課題が残り、量産・本格普及には時間を要する段階です。現時点では、小型のコイン形などで一部実用化が進むにとどまり、車載用での本格採用の時期は各社が開発を続けている状況です。「確立した技術」と断定できる段階ではありません。

当面は、液系のリチウムイオン電池が用途の中心であり続け、三元系とリン酸鉄(LFP)の使い分けや、ナトリウムイオン電池などの新しい選択肢も含めて、用途ごとに最適な電池が選ばれていく見通しです。全固体電池が実用化されれば、車載用を中心に用途の構造が変わる可能性があります。

中期見通し

近未来1-2年

金額の用途構成比では、車載用が約8割前後を占める構図が続きます。EV需要の回復ペース次第で車載用の比率は上下しますが、民生用の成熟と定置用の立ち上がりのなかで、車載用が最大の用途である状況は変わりません。化学では、コストと安全性を武器にリン酸鉄(LFP)の採用がさらに広がる見通しです。

中期3-5年

定置用の比率が高まるとみられます。脱炭素と再生可能エネルギーの拡大を背景に、家庭用・系統用の蓄電システムの需要が伸び、車載一辺倒だった用途構造に広がりが出ます。安全・長寿命のリン酸鉄(LFP)やチタン酸リチウム(SCiB)が、定置用で存在感を高める見通しです。

長期5-10年

全固体電池など次世代技術の実用化が、用途の構造を変える可能性があります。全固体電池が車載用で本格採用されれば、走行距離や安全性が向上し、EVの普及を後押しします。あわせて、ナトリウムイオン電池などの新しい化学も、コストや資源の観点から用途を広げる可能性があります。

よくある質問

リチウムイオン電池にはどんな用途がありますか?
大きく車載用(EV・ハイブリッド車)、民生用(スマートフォン・ノートパソコン・電動工具など)、定置用(家庭用・系統用の蓄電システム)の3つに分かれます。国内の販売金額では車載用が約8割強(2023年 約87%・2024年 約81%)を占め、民生用は数量では今も大きい一方、定置用は脱炭素を背景に新たに立ち上がっています。
車載用は市場のどれくらいを占めますか?
国内の販売金額では、車載用が約8割強を占めます。比率は2012年の約40.5%から2023年に約87%へと高まり、2024年は約81%でした。EV・ハイブリッド車の普及で、1台あたり大容量の電池が使われることが背景です。民生用と定置用のそれぞれの金額の内訳は、公表統計にはありません。
三元系とリン酸鉄(LFP)は何が違いますか?
どちらも車載用に使われる電池の化学(正極材)です。三元系(NCM・NCA)はニッケルやコバルトを使い、エネルギー密度が高く高容量ですが、コストは高めです。リン酸鉄(LFP)は鉄とリンを使い、安全性・長寿命・低コストに優れる一方、エネルギー密度はやや低めです。高性能・長距離向けに三元系、普及価格帯にLFPという使い分けが進み、LFPは中国勢が採用を主導しています。
SCiBやチタン酸リチウムとは何ですか?
チタン酸リチウム(LTO)は、負極にチタン酸リチウムを使うリチウムイオン電池で、東芝のSCiBが代表例です。安全性・長寿命・急速充電・低温性能に特色があり、エネルギー密度は低いものの、定置・産業用やバス・鉄道などの特定用途で使われます。安全性や充放電の耐久性が重視される用途に向いた電池です。
全固体電池はもう使われていますか?
全固体電池は、電解液を固体に置き換える次世代技術で、安全性やエネルギー密度の向上が期待されています。トヨタや日産、マクセル、村田製作所などが開発を進めていますが、量産・本格普及には製造技術やコストの課題が残ります。現時点では小型のコイン形などで一部の実用化が進むにとどまり、車載用での本格採用の時期は各社が開発を続けている段階です。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    経済産業省 生産動態統計 機械統計(電池) / 電池工業会
  2. 2.
    各社IR・公表資料(電池の化学・用途)
📄 資料DL💬 無料相談