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定置用・系統用蓄電池|脱炭素で急拡大する需要と系統接続【2026年版】

定置用蓄電池は、住宅や工場、電力系統に据え置いて電気を蓄える蓄電池で、大きく家庭用と系統用に分かれます。脱炭素と再生可能エネルギーの拡大を背景に、とくに電力系統に直接つなぐ系統用蓄電池の需要が急拡大しています。系統用蓄電池は、系統接続の申込み(接続検討)が2024年9月末で約8,800万kWに達し、実際に連系した約10万kWを大きく上回る勢いです。国の長期脱炭素電源オークションでも初回に系統用蓄電池が109万kW落札されるなど、政策の後押しも進んでいます。家庭用・系統用の役割、急拡大の背景、コストと政策を整理します。

オークション落札
109万kW
長期脱炭素電源オークション初回(2024年1月)で落札された系統用蓄電池
出典: 資源エネルギー庁 系統用蓄電池 関連資料
系統用の連系済み
約10万kW
実際に電力系統につながった系統用蓄電池(2024年9月末)
出典: 資源エネルギー庁 系統用蓄電池 関連資料
接続検討の申込み
約8,800万kW
系統接続を検討する系統用蓄電池の申込み。連系済を大きく上回る急増(2024年9月末)
出典: 資源エネルギー庁 系統用蓄電池 関連資料

定置用・系統用蓄電池をどう読むか

家庭用と系統用 — 二つの定置用蓄電池

定置用蓄電池は、据え置く場所と役割によって、大きく二つに分かれます。家庭用は、住宅に設置して電気を蓄える蓄電池で、多くは屋根の太陽光発電と組み合わせて使われます。昼間に太陽光で発電した電気をためて夜に使う「自家消費」や、停電時の備えとしての役割があります。数kWh程度の容量で、家庭の電気の使い方に合わせて導入されます。

一方、系統用は、電力系統(送配電網)に直接つないで大量の電気を蓄える大型の蓄電池です。数千kWから数万kW規模で、発電所のように電力市場で電気を売り買いしたり、電力の需給を調整したりします。このほか、工場やビルに置く業務産業用もあり、ピーク時の電力使用を抑えたり、非常用電源として使ったりします。同じ「定置用」でも、家庭用と系統用では規模も役割も大きく異なり、いま急拡大しているのは主に系統用です。

なぜ系統用蓄電池が急拡大しているのか

系統用蓄電池が急拡大している最大の理由は、再生可能エネルギーの出力変動を吸収する役割です。太陽光や風力は天候によって発電量が変わり、昼間に太陽光が余る一方、夜間や曇天では足りなくなります。この変動をならすために、余った電気をためて足りないときに放出する系統用蓄電池が、電力の安定供給に欠かせなくなっています。

この需要は、数字にはっきり表れています。系統への接続を検討する申込み(接続検討)は2024年9月末で約8,800万kWに達し、実際に系統につながった約10万kWの実に数百倍にのぼります。まだ計画・検討の段階のものが大半ですが、それだけ多くの事業者が系統用蓄電池への参入を狙っていることを示します。背景には、2022年の電気事業法の改正で、1万kW以上の系統用蓄電池が「発電事業」に位置づけられ、電力市場で収益を得る事業として取り組みやすくなったことがあります。国の長期脱炭素電源オークションの初回(2024年1月)でも、系統用蓄電池が109万kW落札され、脱炭素に向けた電源として長期の投資が支えられています。

コストと政策 — 普及の条件

定置用蓄電池の普及を左右する最大の要素がコストです。蓄電池は初期投資が大きく、電気代の節約や電力市場での収益で投資を回収できるかが、導入の判断を分けます。国は、蓄電システムの価格の低下を目標に掲げ、2030年の目標価格として家庭用7万円/kWh・業務産業用6万円/kWhを示しています。量産の拡大と技術の進歩で価格が下がれば、導入はさらに広がる見通しです。

政策面では、価格の目標に加えて、系統用蓄電池を発電事業として扱う制度の整備、長期脱炭素電源オークションによる投資の下支え、家庭用・業務産業用への補助など、複数の後押しが進んでいます。系統用では、系統に接続するためのルールや、電力市場で蓄電池がためた電気を売り買いする仕組みの整備も課題です。脱炭素に向けて再生可能エネルギーを増やすほど、その変動を支える蓄電池の重要性が高まるため、コストの低減と制度の整備を両輪に、定置用蓄電池の市場は拡大が続くとみられます。

主要論点

なぜ定置用蓄電池は脱炭素に欠かせないのか?

脱炭素に向けて太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やすと、電力の需給を合わせることが難しくなります。太陽光は昼間に多く発電して夜はゼロになり、天候によっても発電量が大きく変わります。電気は基本的にためられず、発電と使用を常に一致させる必要があるため、変動の大きい再生可能エネルギーが増えるほど、需給の調整が課題になります。

この課題を解決するのが定置用蓄電池、とくに系統用蓄電池です。太陽光が余る昼間に電気をため、足りない夜間や曇天のときに放出することで、再生可能エネルギーの変動をならし、電力を安定して供給できます。火力発電の出力調整に頼らずに需給を合わせられるため、脱炭素と電力の安定供給を両立する手段として期待されています。

再生可能エネルギーの導入が進むほど、それを支える蓄電池の必要性が高まる関係にあります。系統用蓄電池の接続検討の申込みが2024年9月末で約8,800万kWに達しているのは、再生可能エネルギーの拡大に伴う需要の高まりを映しています。定置用蓄電池は、脱炭素を実現するうえでの重要なインフラになりつつあります。

系統用蓄電池の申込みが、なぜ連系実績を大きく上回るのか?

系統用蓄電池は、系統への接続を検討する申込み(接続検討)が2024年9月末で約8,800万kWに達する一方、実際に系統につながった連系済は約10万kWにとどまり、両者に大きな開きがあります。これは、多くのプロジェクトがまだ計画・検討の段階にあるためです。

申込みが急増した背景には、事業として系統用蓄電池に取り組む環境が整ってきたことがあります。2022年の電気事業法の改正で1万kW以上の系統用蓄電池が「発電事業」に位置づけられ、電力市場で電気を売り買いして収益を得られるようになりました。長期脱炭素電源オークションによる長期の投資の下支えもあり、多くの事業者が参入を狙って接続を申し込んでいます。

ただし、申込みのすべてが実現するわけではありません。系統に接続できる容量には限りがあり、送配電網の増強や接続ルールの整備が追いつかなければ、計画は進みません。採算がとれるかの見極めや、系統の空き容量による選別も働きます。接続検討の申込みは市場の期待の大きさを示す一方、連系までには系統の制約やコストのハードルがあり、実際の導入がどこまで進むかはこれからの課題です。

定置用蓄電池の普及には、何が必要か?

定置用蓄電池の普及に最も必要なのは、コストの低減です。蓄電池は初期投資が大きく、家庭用なら電気代の節約、系統用なら電力市場での収益で投資を回収できるかが、導入を左右します。国は2030年の目標価格として家庭用7万円/kWh・業務産業用6万円/kWhを掲げており、量産の拡大と技術の進歩で価格が下がることが、普及の前提になります。

次に必要なのが、制度と市場の整備です。系統用蓄電池では、系統に接続するためのルール、蓄電池がためた電気を電力市場で売り買いする仕組み、発電事業としての扱いなど、事業環境の整備が導入を支えます。送配電網の増強によって、接続できる容量を広げることも課題です。家庭用・業務産業用では、補助制度が導入の後押しになります。

さらに、安全性への対応も欠かせません。多数の電池を集めて設置する系統用蓄電池では、発熱や火災を防ぐ安全対策が重要で、設置や運用のルールづくりが進められています。コストの低減、制度・市場の整備、安全性の確保という条件がそろうことで、定置用蓄電池の普及が本格化していきます。

中期見通し

近未来1-2年

系統用蓄電池の申込みの一部が、連系・稼働へと動き出します。接続検討の申込みが約8,800万kWにのぼるなか、系統の空き容量や採算を見極めながら、実際に系統につながる案件が増えていく見通しです。長期脱炭素電源オークションや発電事業としての制度が、投資の判断を後押しします。

中期3-5年

コストの低下と制度の整備で、導入が本格化します。2030年の目標価格に向けて蓄電システムの価格が下がり、家庭用・業務産業用・系統用のいずれでも導入が広がる見通しです。再生可能エネルギーの拡大に合わせて、電気をためて需給を調整する蓄電池の役割が定着していきます。

長期5-10年

定置用蓄電池が電力インフラの一部として組み込まれます。再生可能エネルギーを主力電源にしていくうえで、その変動を支える蓄電池は不可欠なインフラになります。電力市場での蓄電池の活用や、電気自動車の電池を系統とやり取りに使う仕組みなど、蓄電池を軸とした電力システムへの移行が長期の論点となります。

よくある質問

定置用蓄電池と系統用蓄電池は何が違いますか?
定置用蓄電池は、住宅や工場、電力系統に据え置いて電気を蓄える蓄電池の総称で、家庭用・業務産業用・系統用に分かれます。このうち系統用蓄電池は、電力系統(送配電網)に直接つないで大量の電気を蓄える大型のもので、数千kWから数万kW規模です。家庭用が数kWh程度で自家消費や停電の備えに使われるのに対し、系統用は電力市場での売買や需給の調整といった、発電所に近い役割を担います。
なぜ系統用蓄電池が急拡大しているのですか?
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候で出力が変動するため、余った電気をためて足りないときに放出する系統用蓄電池が、電力の需給調整に欠かせなくなっているためです。系統への接続を検討する申込みは2024年9月末で約8,800万kWに達し、実際に連系した約10万kWを大きく上回ります。2022年の電気事業法改正で系統用蓄電池が発電事業に位置づけられ、事業として取り組みやすくなったことも後押ししています。
長期脱炭素電源オークションと蓄電池の関係は?
長期脱炭素電源オークションは、脱炭素に向けた電源への長期の投資を支える制度で、蓄電池も対象になっています。初回(2024年1月)では、系統用蓄電池が109万kW落札されました。落札した事業者は長期にわたって収入が支えられるため、初期投資の大きい系統用蓄電池への投資を後押しする仕組みとして機能しています。
家庭用蓄電池はどんなときに使われますか?
家庭用蓄電池は、多くが屋根の太陽光発電と組み合わせて使われます。昼間に太陽光で発電した電気をためて夜に使う「自家消費」や、停電時の非常用電源としての役割があります。電気代の節約や、災害への備えを目的に導入されます。普及の鍵は価格で、国は2030年の目標価格として家庭用7万円/kWhを掲げ、価格の低下を促しています。
定置用蓄電池の普及に向けた課題は何ですか?
最大の課題はコストの低減です。蓄電池は初期投資が大きく、国は2030年の目標価格(家庭用7万円/kWh・業務産業用6万円/kWh)を掲げています。加えて、系統用では系統に接続するためのルールや電力市場での取引の仕組み、送配電網の増強といった制度・インフラの整備、多数の電池を設置する際の安全対策も課題です。コスト・制度・安全性の条件がそろうことで、普及が本格化していきます。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    資源エネルギー庁 系統用蓄電池の現状と課題
  2. 2.
    経済産業省 定置用蓄電システムの現状と課題
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