LITHIUM-ION & STORAGE BATTERIES機械・電気

リチウム電池業界の市場規模・主要企業・動向

国内のリチウムイオン蓄電池は販売金額が2023年に約9,000億円規模で、車載用が大半を占め、世界のセル製造は中国・韓国勢が先行する産業です

リチウム電池・蓄電池業界とは、スマートフォンやEV、住宅や電力系統に据え置く定置用の蓄電システムなどに使われる充電できる電池(二次電池)を、なかでもリチウムイオン電池を中心に供給する産業を指します。国内のリチウムイオン蓄電池の販売金額は2023年に約9,000億円規模に達し、その大半を車載用(約7,795億円)が占めます。一方、電池の本体である「セル」を作る工程では中国・韓国勢が世界で先行し、日本勢はパナソニックやGSユアサ、村田製作所、東芝などが車載・民生・定置といった分野で役割を担います。脱炭素に向けて定置用蓄電池や国の産業戦略も動いており、市場規模、世界の競争構造、主要企業、用途別の市場、業界構造、定置用蓄電池、政策の各軸で整理します。

最終更新

業界サマリ

業界概要

リチウム電池・蓄電池業界とは、充電できる電池(二次電池)を、リチウムイオン電池を中心に供給する産業です。用途は車載・民生・定置に広がり、国内市場は車載用が大半を占めます。セル製造では中国・韓国勢が世界で先行しています。

  • 国内販売金額は約9,000億円規模(2023年)、車載用が8〜9割を占めます。EV市場の拡大を背景に車載用が大きく伸びました
  • 世界のセル製造は中韓勢が寡占しており、日本勢は車載・民生・定置などの分野で役割を担います
  • 脱炭素で定置用・系統用が拡大し、国の産業戦略も部素材を含む供給網の強化を進めています
基礎データ: 経済産業省 生産動態統計 / 電池工業会 / 経済産業省 蓄電池・電源産業戦略 / 各社IR

市場動向

国内のリチウムイオン蓄電池の販売金額は2023年に約9,000億円とピークを付け、2024年は約8,700億円に調整しました。車載用がけん引する一方、世界のセル製造は中韓勢が先行します。

  • 販売金額は2023年に約9,000億円(ピーク)、2024年は約8,700億円です。車載用がけん引し2012年比で約6倍に伸びました
  • 販売数量(個)は2022年をピークに減少しています。金額ほど数量が伸びておらず、1個あたりの容量・単価の上昇がうかがえます
  • 世界の車載電池の搭載量はCATLが約37%で首位で、日本のパナソニックは約4%(6位)です
基礎データ: 経済産業省 生産動態統計 (リチウムイオン蓄電池、2024年) / 電池工業会 / SNE Researchなどの公表値 (世界シェア、出典帰属)

競争環境

リチウム電池・蓄電池業界では、車載セル(パナソニック・GSユアサ)、民生小型セル(村田製作所・TDK)、定置・特殊用途(東芝のSCiB)、部材メーカーなどが活動します。世界のセル供給は中国のCATL・BYD、韓国のLG・サムスン・SKが先行し、日本勢は用途や領域ごとに役割を持つ構図です。

  • 世界のセル供給は中韓勢が先行しており、日本勢は車載・民生・定置などで領域別に存在します
  • 国内ではパナソニック・GSユアサが車載・産業用、村田製作所・TDKが民生小型で強みを持ちます
  • 東芝のSCiBなど、安全性・長寿命に特色のある技術もあります
基礎データ: 各社IR / 電池工業会 / SNE Researchなどの公表値 (出典帰属)

市場規模推移

2012-2024 · 車載用 + その他(民生・定置用等)

国内リチウムイオン蓄電池の販売金額 (2012-2024年、億円、経済産業省 生産動態統計)

単位: 億円
車載用その他(民生・定置用等)
02,5005,0007,50010,0003,174122,793133,496143,606153,852164,223174,621184,097194,447205,691216,782228,996238,69624
出典: 経済産業省 生産動態統計 (リチウムイオン蓄電池、2012-2024年) / 電池工業会
2012201320142015201620172018201920202021202220232024
車載用億円1,2861,2262,0092,0232,3172,6793,2142,8243,1374,2515,4347,7957,012
その他(民生・定置用等)億円1,8881,5671,4871,5831,5351,5441,4071,2731,3101,4401,3481,2011,684
合計(億円3,1742,7933,4963,6063,8524,2234,6214,0974,4475,6916,7828,9968,696
前年比-12.0%+25.2%+3.1%+6.8%+9.6%+9.4%-11.3%+8.5%+28.0%+19.2%+32.6%-3.3%
市場規模の読み解き
国内市場規模の現在地(車載がけん引、2024年は調整)

国内のリチウムイオン蓄電池の販売金額は、2020年の約4,400億円から2023年の約9,000億円へと急拡大しました。けん引役は車載用で、2012年の約1,286億円から2023年には7,795億円へと約6倍に伸びています。ただし2024年は車載用が7,012億円とやや減少し、全体も約8,700億円に調整しました。

販売数量(個数)でみると車載用は2022年をピークに減少しており、金額ほど数量が伸びていない点(1個あたりの容量・単価の上昇)も特徴です。金額と数量は集計の対象が異なるため、市場規模は金額で捉えるのが基本です。民生・定置用などの「その他」は2024年に回復しました。

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世界のセル製造は中韓が先行、日本勢の立ち位置

電池セルそのものの製造では、中国のCATL・BYD、韓国のLGエナジーソリューション・サムスンSDI・SKが世界市場の大半を占めます。2024年の車載用電池の搭載量シェアはCATLが約37%で首位、上位を中韓5社が固め、日本のパナソニックは約4%(6位)です。日本勢は2010年代に車載セルで世界上位にありましたが、中韓の大規模な投資を背景に相対的な位置づけは低下しました。

それでもパナソニックは北米・テスラ向け、GSユアサは車載・産業用、村田製作所やTDKは民生用、東芝はSCiBといった分野で役割を保っています。日本勢は量産規模より、高品質・安全性・特定用途での差別化を軸とする構図です。

⇒世界の競争構造を詳しく見る

用途の広がりと脱炭素・産業戦略

リチウムイオン電池の用途は、車載・民生(スマートフォンや電動工具)・定置(家庭用や系統用の蓄電システム)へと広がっています。とくに脱炭素と再生可能エネルギーの拡大を背景に、電力系統につなぐ系統用蓄電池の導入計画が急増しています。

国は蓄電池・電源産業戦略で国内製造基盤150GWh/年(2030年代半ば)や、日本企業の蓄電池関連売上高を2025年から2035年に3倍へ拡大する目標を掲げ、経済安全保障の観点からも部素材を含む供給網の強化を進めています。次世代技術として全固体電池の開発も各社で進みますが、本格普及には時間を要する段階です。

⇒政策・産業戦略を詳しく見る

⇒定置用・系統用蓄電池を詳しく見る

主要トピック

市場データ

業界構造

主要プレイヤー / サプライヤー / 流通 / 需要
リチウム電池・蓄電池業界の構造
主要プレイヤー (2026年6月時点)
01
バリューチェーン (部材 → セル → パック・システム)
Value chain — 部材は日本勢に存在感、セル量産は中韓が先行
部材 (正極材・負極材・電解液・セパレータ)
セル (電池本体)
パック・モジュール・蓄電システム
02
主要プレイヤー (用途別、品目ごとに担い手が異なる)
By use — 車載 / 民生 / 定置・特殊 / 部材。世界シェア% は global-competition L2 で詳述
定置・特殊用途 (安全性・長寿命・大型定置)
東芝
2023年に非上場化
SCiB(チタン酸リチウム)、安全性・長寿命・急速充電。定置・産業・車両向け
マクセル
全固体(小型)
全固体電池(コイン形)・民生電池を手がける
世界の大手セルメーカー (中国・韓国が先行)
CATL (寧徳時代)
世界首位
中国。車載用電池セルの搭載量で世界首位
BYD
中国大手
中国。リン酸鉄(LFP)を軸に車載・定置で拡大
LGエナジーソリューション
韓国大手
韓国。車載用セルで世界上位
サムスンSDI
韓国大手
韓国。車載・民生・定置のセル
SK On
韓国大手
韓国。車載用セルに注力
03
需要先 (最終用途)
Demand — 車載が中心、定置用が脱炭素で拡大
自動車 (車載・EV/HEV)
定置用 (家庭用・系統用・産業用)
民生 (スマホ・PC・電動工具)
産業・その他
経済産業省 生産動態統計 機械統計 (リチウムイオン蓄電池、2024年) / 電池工業会 / 経済産業省 蓄電池・電源産業戦略 (2026年) / 各社IR。世界のセル製造は中国・韓国勢が先行し、日本勢は用途・領域ごとに役割を担う。会社別の世界シェアは global-competition ページで公表値に出典帰属して整理する。
業界構造の読み解き
バリューチェーンの全体像(部材→セル→用途)

リチウムイオン電池は、正極材・負極材・電解液・セパレータといった部材から、それらを組み合わせたセル(電池本体)、さらにセルを束ねたパック・モジュール・蓄電システムへと積み上がります。

日本勢は部材(正極材の住友金属鉱山、セパレータの旭化成・東レなど)で一定の存在感を保ちつつ、セル製造では中国・韓国勢が量産規模で先行しています。用途は車載・民生・定置に分かれ、それぞれ求められる容量・出力・安全性・コストが異なります。

⇒業界構造を詳しく見る

プレイヤーの構成(車載・民生・定置・特殊)

国内のプレイヤーは用途で分かれます。車載ではパナソニック(北米・テスラ向けの円筒形に強み)とGSユアサ(自動車メーカーとの合弁、産業用も)が中心です。

民生小型では村田製作所(ソニーから電池事業を承継)やTDK(子会社がスマートフォン向けで世界大手)が担い、定置・特殊用途では安全性・長寿命に特色のある東芝のSCiB(チタン酸リチウム)があります。マクセルは全固体電池(小型)を手がけます。

⇒主要企業を詳しく見る

世界の中での日本勢と、脱炭素・経済安全保障

世界のセル市場は中国・韓国勢が量産投資で先行し、日本勢は2010年代の優位から相対的に縮小しました。一方で脱炭素に向けて車載・定置用の需要は拡大基調にあります。

国は蓄電池・電源産業戦略で国内製造基盤の確立(150GWh/年)や売上高3倍を掲げ、経済安全保障の観点から部素材を含む供給網の強化を進めています。リサイクルや次世代の全固体電池も中長期のテーマです。リチウム電池は自動車・再エネ・電子機器など多くの産業を下支えする基盤になっています。

⇒政策・産業戦略を詳しく見る

業界の3大論点

01

なぜ日本勢は車載用セルで世界シェアを落としたのか?

リチウムイオン電池は日本企業が実用化を先導し、2010年代前半には日本勢が車載用セルでも世界の上位を占めていました。しかし足元では、世界の車載用電池の搭載量シェアはCATL(約37%)を筆頭に中国・韓国勢が大半を握り、日本のパナソニックは約4%(6位)にとどまります。

背景には3つの要素があります。第1は投資規模と量産能力の差で、中韓勢は政府支援も得て大規模な工場新設を継続し、量産によるコスト低減で先行しました。第2はEV市場の地域構造で、世界のEV販売は中国が最大の市場となり、現地のセルメーカーが需要を取り込みました。第3はリン酸鉄(LFP)系の台頭で、コストと安全性に優れるLFPを中国勢が主導し、用途を広げています。

日本勢はこうしたなかで、量産規模での正面競争よりも、高品質・安全性・特定用途での差別化(パナソニックの北米・テスラ向け円筒形、東芝のSCiB、定置用や次世代の全固体など)に軸足を移しています。撤退や縮小もありましたが、部材や特定領域では引き続き存在感を保っています。

02

国内市場で「金額」と「数量(個)」がなぜ食い違うのか?

リチウムイオン蓄電池の国内市場を見ると、販売金額は2023年(車載用7,795億円)にピークを付けた一方、販売数量(個数)は車載用が2022年にピークで、両者の山がずれています。2024年は数量がさらに減っても金額の減少は相対的に小さく、金額と数量が一致して動いていません。

この食い違いは、1個(1セル)あたりの容量や単価が上がっていることで説明できます。車載用では、より大容量・高性能のセルへと製品の中身が変化し、原材料価格の影響も受けます。同じ「1個」でも中身が違えば金額は変わるため、個数の増減だけでは市場の実態を捉えきれません。

したがって、市場規模を語るときは金額で捉えるのが基本です。数量(個)は需要の「数」を示す補助的な指標として、金額とあわせて見るのが妥当です。両者は集計の対象が異なり、単純に対応づけられない点に注意が必要です。

03

脱炭素と政策は蓄電池市場をどう変えるのか?

リチウムイオン電池の用途は車載が中心ですが、脱炭素の流れのなかで定置用蓄電池が新たな柱として伸びています。とくに電力系統に直接つなぐ系統用蓄電池は、再生可能エネルギーの出力変動を吸収する役割で注目され、系統接続の申込みが短期間で大きく増えています。長期脱炭素電源オークションでも蓄電池が支援対象となり、導入を後押ししています。

国は蓄電池・電源産業戦略で、国内製造基盤150GWh/年(2030年代半ば)の確立や、日本企業の蓄電池関連売上高を2025年から2035年に3倍へ拡大する目標を掲げています。あわせて、蓄電池を経済安全保障上の重要物資と位置づけ、部素材や製造装置を含む供給網の強化を進めています。

これらは、車載に偏っていた需要を定置用・産業用へと広げ、国内に製造基盤を取り戻そうとする動きです。一方でセル量産では中韓勢が先行しており、国内製造基盤の確立は容易ではありません。脱炭素と政策は、市場の裾野を広げると同時に、日本勢にとっての課題も映し出しています。

よくある質問 (FAQ)

リチウム電池・蓄電池業界の市場規模はどれくらいですか?
経済産業省 生産動態統計によると、国内のリチウムイオン蓄電池の販売金額は2023年に約9,000億円(車載用7,795億円+その他1,201億円)でピークを付け、2024年は約8,700億円でした。車載用が大半を占め、EV市場の拡大を背景に2012年から約6倍に伸びています。世界全体の市場規模はこれより大きく、調査会社によって幅がありますが、本ページの国内金額とは集計範囲が異なります。
リチウムイオン電池のセルは主にどこの国が作っていますか?
電池セルの製造は中国・韓国勢が世界で先行しています。2024年の車載用電池の搭載量シェアは、中国のCATLが約37%で首位、BYDが続き、韓国のLGエナジーソリューション・サムスンSDI・SKが上位を占めます。日本のパナソニックは約4%(6位)です。日本勢は2010年代には世界上位にありましたが、中韓の大規模な投資を背景に相対的な位置づけが低下しました。
日本の主要なリチウム電池メーカーはどこですか?
車載用ではパナソニック(北米・テスラ向けに強み)とGSユアサ(自動車メーカーとの合弁、産業用も)が中心です。民生小型では村田製作所(ソニーから電池事業を承継)やTDK(子会社がスマートフォン向けで世界大手)が担い、定置・特殊用途では安全性・長寿命に特色のある東芝のSCiB(チタン酸リチウム)があります。マクセルは全固体電池(小型)を手がけ、正極材やセパレータなどの部材でも日本勢が存在感を保っています。
車載用と民生用・定置用は何が違うのですか?
用途によって求められる性能が異なります。車載用はEVやハイブリッド車向けで、大容量と安全性、コストが重視されます。民生用はスマートフォンや電動工具向けで、小型・軽量が重視されます。定置用は家庭用や系統用の蓄電システム向けで、長寿命と安全性、設置コストが重視されます。化学(正極材の種類)も用途で異なり、三元系(NCM・NCA)、リン酸鉄(LFP)、チタン酸リチウム(SCiB)などが使い分けられています。
定置用・系統用蓄電池はなぜ伸びているのですか?
脱炭素と再生可能エネルギーの拡大が背景です。太陽光や風力は天候で出力が変動するため、電気を蓄えて需給を調整する蓄電池の役割が高まっています。とくに電力系統に直接つなぐ系統用蓄電池は、系統接続の申込みが短期間で大きく増えています。国の長期脱炭素電源オークションでも蓄電池が支援対象となり、家庭用・業務産業用とあわせて導入が進んでいます。
国の蓄電池政策はどうなっていますか?
経済産業省は蓄電池・電源産業戦略を掲げ、国内製造基盤150GWh/年(2030年代半ば)の確立や、日本企業の蓄電池関連売上高を2025年から2035年に3倍へ拡大する目標を示しています。あわせて、蓄電池を経済安全保障上の重要物資と位置づけ、部素材や製造装置を含む供給網の強化を進めています。セル量産で中韓勢が先行するなか、国内に製造基盤を確立できるかが課題です。
全固体電池など次世代技術はどうなっていますか?
全固体電池は、電解液を固体に置き換えることで安全性やエネルギー密度の向上が期待される次世代技術で、トヨタや日産、マクセル、村田製作所などが開発を進めています。ただし、量産には製造技術やコストの課題が残り、本格的な普及には時間を要する段階です。現在の市場の主役は引き続き液系のリチウムイオン電池で、リン酸鉄(LFP)系の採用拡大なども並行して進んでいます。

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参考資料 / 一次ソース

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