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リチウム電池の主要企業|各社の電池事業の位置づけと規模を比較【2026年版】

日本のリチウム電池の主要企業は、事業のなかで電池が占める位置づけが大きく異なります。パナソニック ホールディングスはエナジー社が車載用電池の中核を担い(セグメント売上8,732億円)、GSユアサは電池専業ながら車載用リチウムイオン電池(828億円)は連結(5,803億円)の一部で、大半は鉛蓄電池です。民生小型ではTDKの子会社ATLや村田製作所が、特殊用途では東芝のSCiB、次世代では全固体電池のマクセルが役割を持ちます。各社の電池事業は連結売上に占める規模も開示の仕方も異なるため、単純な大小比較ではなく、それぞれが担う役割で整理します。

主要企業の連結売上高と電池関連セグメント

各社2025年3月期の決算短信より。電池関連セグメントは各社で定義が異なる(パナのエナジー=車載中心、TDKのエナジー応用製品=民生の電池と電源、GSユアサの車載用LIB=連結の一部で鉛蓄電池は含まない、村田=非開示)。会計基準はパナ・TDK・村田がIFRS、GSユアサが日本基準

下表は主要4社の連結売上高と、電池に関連するセグメントの売上高です。連結売上では電機・車載電池の総合であるパナソニックHD(8兆4,582億円)が最大で、電子部品大手のTDK(2兆2,048億円)・村田製作所(1兆7,434億円)が続き、電池専業のGSユアサ(5,803億円)は規模では小さくなります。ただし、電池関連セグメントの中身は各社で大きく異なります。パナソニックのエナジー(8,732億円)は車載用が中心、TDKのエナジー応用製品(1兆1,765億円)は民生用電池と電源、GSユアサの車載用リチウムイオン電池(828億円)は連結の一部で残りは鉛蓄電池が主力です。セグメントの定義(対象とする電池・事業の範囲)が違うため、セグメント売上の大小をそのまま「電池事業の規模」として比べることはできません。村田製作所は電池事業を構造改革中で、セグメント売上を開示していません。

パナソニック ホールディングス
電機・住宅・車載電池の総合。エナジー社が車載用電池の中核(IFRS・2025年3月期)
連結売上高
8兆4,582億円
電池関連セグメント
エナジー(車載中心)
セグメント売上高
8,732億円
TDK
電子部品大手。子会社ATLが民生小型電池で世界大手(IFRS・2025年3月期)
連結売上高
2兆2,048億円
電池関連セグメント
エナジー応用製品(民生・電源)
セグメント売上高
1兆1,765億円
村田製作所
電子部品大手。旧ソニーの民生小型電池を承継、構造改革中(IFRS・2025年3月期)
連結売上高
1兆7,434億円
電池関連セグメント
―(LIBは事業内)
セグメント売上高
非開示
GSユアサ
電池専業。車載用リチウムイオン電池は合弁中心、連結の大半は鉛蓄電池(日本基準・2025年3月期)
連結売上高
5,803億円
電池関連セグメント
車載用リチウムイオン電池
セグメント売上高
828億円

パナソニック ホールディングス — 車載用電池の中核

車載用リチウムイオン電池を担う日本勢の中核です。子会社のパナソニック エナジーが、北米・テスラ向けの円筒形セルに強みを持ち、和歌山工場やカンザス新工場で生産能力の増強を進めています。2025年3月期の連結売上は8兆4,582億円(IFRS)で、電機・住宅・車載電池・デバイスなどを幅広く手がける総合企業です。

電池を担うエナジーセグメントの売上は8,732億円で、連結の約10割にあたります。調整後営業利益は1,227億円でした。セグメントの内訳では、産業・民生向け(データセンター向けの蓄電システムなど)が好調に推移した一方、車載電池は原材料価格の低下に伴う価格改定や国内工場の減産、新工場の立ち上げ費用の影響で、減収・調整の局面にあります。

世界の車載用セルの搭載量では、パナソニックは日本勢の首位ですが、中韓の上位勢には量産規模で及びません(世界シェアの詳細は世界の競争構造のページで扱います)。量産規模での正面競争よりも、北米・テスラ向けや、高性能・次世代の車載電池での差別化に軸足を置いています。グループ全体では構造改革を進めており、電池事業を成長領域と位置づけつつ、収益性の立て直しが課題です。

GSユアサ — 電池専業、車載用リチウムイオン電池と鉛蓄電池

自動車用電池と産業用電池を主力とする電池専業メーカーです。2025年3月期の連結売上は5,803億円(日本基準)で、パナソニックHDやTDKに比べれば規模は小さいものの、事業のほぼすべてが電池である点が特徴です。セグメントは、海外・国内の自動車用電池(主に鉛蓄電池)、産業電池電源、車載用リチウムイオン電池などに分かれます。

車載用リチウムイオン電池のセグメント売上は828億円で、連結全体の一部にとどまります。この事業はホンダなどの自動車メーカーとの合弁を通じてハイブリッド車(HEV)・EV向けに供給しており、ホンダ向けの数量は増えたものの、その他メーカーの数量減やリチウム市況の下落による売価低下で減収となりました。営業利益は14億円と薄く、量産と価格の競争が厳しい分野であることがうかがえます。

一方で、GSユアサの収益の柱は依然として自動車用の鉛蓄電池です。エンジン車のバッテリーやアイドリングストップ車用の需要が世界的に底堅く、国内・海外の自動車用電池と産業用電池が連結を支えています。リチウムイオン電池は成長を見込む分野ですが、合弁を通じた車載用が中心で、単独の規模は大きくありません。鉛蓄電池で稼ぎながらリチウムイオン電池を育てる、という構図です。

TDK・村田製作所 — 民生小型セルの日本勢

スマートフォンやノートパソコン、電動工具などに使う民生用の小型リチウムイオン電池で、日本勢の中心を担うのがTDKと村田製作所です。両社とも電子部品の大手で、電池はそのなかの一事業です。

TDKは、香港の子会社ATL(Amperex Technology Limited)が民生小型電池で世界大手の一角を占めます。スマートフォン向けを中心に高いシェアを持ち、電池を含むエナジー応用製品セグメントの売上は1兆1,765億円(2025年3月期、IFRS)と、TDK連結(2兆2,048億円)の柱の一つです。ただしこのセグメントは民生用電池(エナジーデバイス)に加えて電源も含むため、電池単体の規模とは一致しません。ATLは車載用電池の世界大手CATLと祖業を同じくする関係にあり、民生用に特化して成長してきました。

村田製作所は、ソニーから承継した民生用リチウムイオン電池事業を持ち、ゲーム機や電動工具、家電向けなどに供給しています。しかし近年は需要の減少と在庫調整で操業度が低下し、電池事業の低収益が続いて構造改革を進めている状況です。村田はセグメントとして電池単独の売上を開示しておらず、連結売上は1兆7,434億円(2025年3月期、IFRS)です。全固体電池(小型)の開発にも取り組み、民生の小型・高信頼分野での立て直しを図っています。

マクセル・東芝 — 全固体電池とSCiBの特色技術

量産規模ではなく、特色ある技術で存在感を持つのがマクセルと東芝です。両社とも、汎用の車載用セルで中韓勢と量を競うのではなく、特定の性能・用途で差別化しています。

マクセルは、全固体電池(コイン形などの小型)を2023年に量産出荷し、産業機器や医療機器などの高信頼分野で採用を広げています。電池を含むエナジーセグメントの売上は約425億円(2025年3月期、IR公表値)で、需要が落ち込んだ角形リチウムイオン電池の生産は2024年に終了する一方、全固体電池を成長の柱に据えています。2025年には村田製作所からマイクロ一次電池事業を譲り受けるなど、小型・高信頼の電池に事業を集中しています。

東芝は、負極にチタン酸リチウムを使うSCiBという独自のリチウムイオン電池を手がけます。SCiBは、安全性が高く、急速充電に対応し、長寿命(充放電の繰り返しに強い)という特色があり、鉄道車両・産業機器・定置用などの特定用途で使われます。東芝は2023年12月に株式を非上場化しており、電池事業単独の財務は公表されていません。汎用の量産競争とは別の、安全性・長寿命を重んじる用途で役割を持っています。

部材メーカーと大型定置用 — 正極材・セパレータと日本ガイシ

電池のセルそのものだけでなく、部材(材料)でも日本勢が存在感を保ちます。リチウムイオン電池の性能を左右する正極材では住友金属鉱山が、電池内部で正極と負極を隔てるセパレータでは旭化成や東レが、世界の電池メーカーに供給しています。セル製造で中韓勢が先行するなかでも、こうした部材は日本勢が競争力を持つ領域です(部材の産業構造は業界構造のページで詳しく扱います)。

大型の定置用では、日本ガイシがNAS電池(ナトリウム硫黄電池、リチウムではない)を手がけてきました。2002年に世界で初めて商用化した、メガワット級の大容量・長時間の蓄電に適した独自技術で、再生可能エネルギーの安定化などに使われてきました。しかし、中国勢の低価格なリチウムイオン電池との競争や原材料の高騰で将来の収益確保が難しくなり、日本ガイシは2025年10月、約40年続けたNAS電池の製造・販売事業からの撤退を決めました(2026年3月期に約180億円の特別損失を計上、最終出荷は2027年1月ごろの予定。日本経済新聞・時事通信ほか報道)。大型の定置用でも、汎用性とコストに優れるリチウムイオン電池が主流になりつつあることを映す動きです。

主要論点

なぜ各社の「電池事業の規模」は単純に比べられないのか?

リチウム電池の主要企業を比べるとき、「電池事業の規模」を単純に並べることはできません。理由は、各社で集計の対象や開示の仕方が異なるためです。

第1に、連結売上とセグメント売上は別物です。パナソニックHDの連結売上は8兆4,582億円ですが、車載用電池を担うエナジーセグメントは8,732億円で連結の約10割にすぎません。多くの企業が電池以外の事業を持つため、連結の大きさは電池事業の大きさを表しません。第2に、セグメントの定義が各社で違います。TDKのエナジー応用製品(1兆1,765億円)は民生用電池と電源を含み、GSユアサの車載用リチウムイオン電池(828億円)は自社の鉛蓄電池を含みません。同じ「電池関連セグメント」でも中身が違うため、金額の大小をそのまま比べられません。

第3に、開示していない企業もあります。村田製作所は電池事業を構造改革中で、セグメント売上を公表していません。東芝は非上場で電池事業の財務を開示していません。したがって、各社の電池事業は「規模のランキング」ではなく、どの用途で、どんな役割を担っているかで捉えるのが実態に合っています。

日本勢は、世界のセル競争のなかでどんな役割を担うのか?

世界の車載用電池セルの製造では中国・韓国勢が量産規模で先行しており、日本勢はかつての世界上位から相対的な位置づけを下げました。そのなかで日本勢が役割を保っているのは、量産規模での正面競争とは別の領域です。

車載用では、パナソニックが北米・テスラ向けの円筒形セルで、GSユアサが自動車メーカーとの合弁を通じてハイブリッド車向けで役割を持ちます。民生小型では、TDKの子会社ATLがスマートフォン向けで世界大手の一角を占め、村田製作所も一定の存在感を持ちます。特殊用途では、東芝のSCiBが安全性・長寿命で、マクセルの全固体電池が高信頼分野で採用を広げています。

さらに、セルの材料である部材では、正極材の住友金属鉱山、セパレータの旭化成・東レなどが世界の電池メーカーに供給し、競争力を保っています。日本勢は、汎用セルの量産で規模を競うよりも、特定の用途・技術・部材で付加価値を取る方向に軸足を移しているのが実態です。世界シェアの数字だけでは見えない、この役割分担が日本勢の現在地です。

各社の電池事業の収益性と課題は何か?

電池事業の収益性は、各社とも足元で厳しい局面にあります。共通する背景は、世界的なEV需要の一服とリチウム市況の下落、そして中韓勢との価格競争です。

パナソニックのエナジーは、産業・民生向け(データセンター向けの蓄電システムなど)が好調で調整後営業利益1,227億円を確保した一方、車載電池は原材料価格の低下に伴う価格改定や、和歌山・カンザスの新工場の立ち上げ費用が重しとなり、調整局面にあります。GSユアサの車載用リチウムイオン電池は、リチウム市況の下落による売価低下で減収となり、営業利益は14億円と薄い水準です。村田製作所は、民生用電池の需要減と在庫調整で操業度が低下し、電池事業の低収益が続いて構造改革を進めています。

各社に共通する課題は、量産規模で先行する中韓勢に対し、どの領域で付加価値を確保するかです。パナソニックは北米・次世代電池、GSユアサは鉛蓄電池で稼ぎながら車載用を育てる構図、TDK・村田は民生小型の立て直し、マクセル・東芝は特色技術での差別化と、各社が異なる道筋を描いています。国内製造基盤の確立を掲げる国の政策も、この収益性の課題と結びついています。

中期見通し

近未来1-2年

各社の電池事業は、EV需要の回復ペースとリチウム市況、価格競争に左右されます。パナソニックは北米・テスラ向けと新工場の立ち上げ、GSユアサは合弁を通じた車載用と鉛蓄電池の底堅さ、TDK・村田は民生小型の需要回復が焦点です。原材料価格の下落は売価低下として当面の減収要因になりますが、産業・定置用の需要が下支えします。

中期3-5年

定置用・産業用の需要拡大と、全固体などの次世代技術が各社の成長を分けます。パナソニックのデータセンター向け蓄電システム、東芝のSCiBやマクセルの全固体電池のような特色技術が、車載一辺倒だった事業に広がりをもたらすかが問われます。国の産業戦略による国内製造基盤の後押しも、各社の投資判断に影響します。

長期5-10年

長期では、日本勢が量産規模ではなく用途・技術・部材でどこまで独自の地位を築けるかが焦点です。汎用セルで中韓勢に量を競うのは容易ではないなか、次世代電池での主導権、部材での競争力、特定用途での差別化が、各社の電池事業の行方を決めます。脱炭素に向けた電池需要の拡大のなかで、収益性をどう確保するかが共通の課題です。

よくある質問

日本の主要なリチウム電池メーカーはどこですか?
車載用ではパナソニック ホールディングス(エナジー社、北米・テスラ向けに強み)とGSユアサ(自動車メーカーとの合弁)、民生小型ではTDK(子会社ATL)と村田製作所、特殊用途では東芝(SCiB)が中心です。次世代の全固体電池ではマクセル、正極材では住友金属鉱山、セパレータでは旭化成・東レなどの部材メーカーも役割を持ちます。多くが電池以外の事業も手がける多角的な企業です。
パナソニックの電池事業の規模はどれくらいですか?
パナソニック ホールディングスの2025年3月期の連結売上は8兆4,582億円(IFRS)で、車載用電池を担うエナジーセグメントの売上は8,732億円、調整後営業利益は1,227億円でした。エナジーは連結の約10割にあたります。産業・民生向け(データセンター向け蓄電システムなど)が好調な一方、車載電池は価格改定や新工場の立ち上げ費用で調整局面にあります。
GSユアサはリチウムイオン電池の会社ですか?
GSユアサは電池専業メーカーですが、連結売上(5,803億円、2025年3月期)の大半は自動車用の鉛蓄電池や産業用電池です。車載用リチウムイオン電池のセグメント売上は828億円で、ホンダなどとの合弁を通じてハイブリッド車・EV向けに供給しています。鉛蓄電池で収益を上げながら、車載用リチウムイオン電池を育てている構図です。
なぜ各社の電池事業の売上を単純に比較できないのですか?
各社で集計の対象や開示の仕方が異なるためです。連結売上には電池以外の事業が含まれ、セグメントの定義も企業ごとに違います(TDKのエナジー応用製品は電源を含み、GSユアサの車載用リチウムイオン電池は鉛蓄電池を含みません)。村田製作所のように電池セグメントを開示していない企業もあります。このため、金額の大小ではなく、どの用途でどんな役割を担うかで各社を捉えるのが実態に合っています。
東芝のSCiBとは何ですか?
SCiBは、東芝が手がける独自のリチウムイオン電池で、負極にチタン酸リチウムを使うのが特徴です。安全性が高く、急速充電に対応し、充放電の繰り返しに強い長寿命という特色があり、鉄道車両・産業機器・定置用などの特定用途で使われます。東芝は2023年12月に株式を非上場化しており、電池事業単独の財務は公表されていません。

参考資料 / 一次ソース

  1. 1.
    パナソニック ホールディングス・TDK・村田製作所・GSユアサ 決算短信(連結、2025年3月期)
  2. 2.
    マクセル・東芝・日本ガイシ(IR・公表値)
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